妻、小学生になる。 (第5話・2022/2/18) 感想

TBS系・金曜ドラマ『妻、小学生になる。』
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第5話『妻のママ、妻の秘密を知る』の感想。
なお、原作となった漫画・漫画・村田椰融『妻、小学生になる。』は、未読。
千嘉(吉田羊)と対立した圭介(堤真一)は、万理華(毎田暖乃)を助けようと2人の間に割って入るが、さらに千嘉の怒りを買う結果に。翌日、麻衣(蒔田彩珠)に愛川工務店の蓮司(杉野遥亮)から連絡があり、パソコンを買うので付き合ってほしいと頼まれる。寺カフェには守屋(森田望智)と詩織(水谷果穂)が来て、ひょんなことから麻衣と守屋は、互いに圭介の娘と会社の人間であることを知る。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:漫画・村田椰融『妻、小学生になる。』
脚本:大島里美(過去作/花燃ゆ、凪のお暇、おカネの切れ目が恋のはじまり)
演出:坪井敏雄(過去作/凪のお暇、カルテット、わたナギ、恋あた、リコカツ) 第1,2,5話
山本剛義(過去作/凪のお暇、コウノドリ2、わたナキ、オー!マイ・ボス!、最愛) 第3話
大内舞子(過去作/「凪のお暇」AD、恋あた、TOKYO MER) 第4話
加藤尚樹(過去作/コウノドリ1,2、ホワイト・ラボ、MIU404、にぶんのいち夫婦)
音楽:パスカルズ
主題歌:優河「灯火」
今回の感想は良い所と良くない所の両方に焦点を当ててみる
これまでも、本作を “面白い” とか “感動する” とか言う感情で見て感想を書いて来たが…
流石に、全部で何話か分からないが、今回のだ5話が恐らく “折り返し地点” の前後であることは、ほぼ間違いないはずだ。そうなると、私としては、妄信的に “面白い” とか “感動する” とか感想を書いているわけにはいかないなと。やはり、いつも通り、ドラマとして、ちゃんと評価するべきところは書かないと… と思う。
従って、「ここが良かった」、「あそこが感動した」だけの感想を読みたい人は、即ブラウズバック(この場を離れる)した方が、気分の良い土曜日を送れると思う…
今回の前半の展開に払拭しにくい違和感が"大きく二つ"ある
さて、どうして、今回を見て、もう、妄信的に “面白い” とか “感動する” とか感想を書いているわけにはいかないのかと言うと。今回の前半の展開に、払拭しにくい違和感があるからだ。理由は、大きく二つある。
【違和感その1】前半が、前回からの"続き"でなく、"問題の先送り"になっていたこと
その理由の一つは、今回の前半は、前回からの “続き” として、新島家の “かつての団欒風景” や、主人公たちの周辺に起こっている “様々な事態” を描いてはいるが、それらは冷静に考えれば、前回からの “続き” ではなく、問題の “先送り” だと言うこと。要するに、後半のための “時間繋ぎ” に感じてしまったってこと。
前々回のラストに、今回の30分過ぎを直結すれば解決できた
これ、違和感を簡単に払拭できた方法がある。それは、前々回のラストで、万理華の母・千嘉(吉田羊)が圭介(堤真一)たちが乗って来たタクシーの前に立ちはだかった場面の直後に、今回の30分過ぎに描かれた「寺カフェ」での三者会談に直結すれば良かったのだ。まあ、そうなると、前回と今回の前半は不要と言うことになるが。
そう考えると、前回での千嘉の不倫話も、圭介の上司・守屋好美(森田望智)とのやり取りなども絶対に必要なエピソードかと言うと、前々回のラストで問題提起した答えを先送りにするための “道具” にも見えてしまう。
「問題提起」と「回答」は直結せずとも、近い距離に置いた方が良い
いや、もちろん、「問題提起をしたなら、すぐにその回答を描け!」と無理を言っているのではない。「問題提起」と「回答」が直結している必要はない。物語の流れとして、距離や時間が離れていても、その途中で描かれている子に必要性があるなら、それこそ今回のように、前々回のラストでの問題提起を、2話あとの中盤で答え合わせをやっても良いのだ。
もちろん、今作は “連ドラ” だから、中間地点で無理矢理に答え合わせをせずに、最終回で帳尻合わせをしても良いわけだし。でも、“連ドラ” として「先が見たくなる」と思わせるなら、「問題提起」と「回答」は直結せずとも、近い距離に置いた方が良いと思う。
【違和感その2】"問題の先送り"のため、無理矢理<千嘉と万理華>の"すれ違い"を盛り込んだこと
もう一つの違和感の理由は、回答を先送りにするために、無理矢理に<千嘉と万理華>の “すれ違い” を盛り込んだこと。まあ、「そこが面白いし、泣けてくるポイント」でもあるのだが。しかし、いくらファンタジーでも、千嘉が万理華の行動の変化について、本気で考えているのかどうか、今一つハッキリしない描写が続いている。
それを「上手く焦らしている」と言う受け止め方も出来なくもないが。普通に考えれば、我が娘が、友だちの親だとか、親戚のおじさんが… と言われて、母親が納得できるのか? ってこと。
ファンタジーとして、どっちつかずの描写になっているのが勿体ない!
劇中で、圭介と万理華がアパートの部屋から飛び出して来た時、向かいの部屋の住人が警察を呼ぼうかと声をかけたが、それ以前に、千嘉は “万理華の保護者” として、赤の他人が勝手に家に入って来て、あれこれ言っている段階で、十分に警察案件なのだ。
それを、「ドラマだから」、「ファンタジーだから」と許容するのは勝手なこと。やはり、ファンタジーを信じ込ませるなら、それ以外の部分は徹底的に現実的に描いた方が、ファンタジーが際立つと思う。それか、逆に全部をファンタジーにするか。そこも、どっちつかずの描写になっているのが、勿体ないと思うのだ。
メイン監督である坪井敏雄氏の演出の、かなり"いい感じ"の"3つの描写"に注目!
まあ、ここまで愚痴と文句を言いながらも、最後まで見て、良かったと思う。特に、今回は第2話ぶりに、今作のメイン監督である坪井敏雄氏の演出になったため、かなり “いい感じ” の描写が幾つもあった。
【いい感じの演出その1】寺カフェで麻衣がグラスの水を溢すシーン
例えば、19分頃の寺カフェで女子4人がカウンター席で会話をしている中で麻衣(蒔田彩珠)がグラスの水を動揺して溢してしまうシーン。実に自然な演技で、その後のシリアス展開への分岐点として効果的なコミカル要素になっていた。
【いい感じの演出その2】身長差"27センチ"を活かしたカット割り
また、26分過ぎの麻衣と「愛川工務店」の愛川蓮司(杉野遥亮)がカフェの行列に並んでいる場面。身長185センチの杉野遥亮さんと身長158センチの蒔田彩珠の身長差 “27センチ” を活かしたカット割り。
特に、麻衣の「結婚したほうがいいとか…」の台詞の前後のカット割りが、屋外ロケで多数のエキストラを使った大変な撮影の中で、丁寧に細かくカット割りして、愛川が前向きに歩き始めている麻衣と今後深く関わる関係であることを上手に予感させたし、高身長だから、おばあさんのトラブルに一早く気付けた感じも違和感が無かった。
【いい感じの演出その3】ワンカットで貴恵から万理華に交代する瞬間
そして、語らないわけにはいかないのが、42分頃の貴恵(石田ゆり子)の姿になった万理華と千嘉の直接対決の場面での、万理華が登校するために家を出て行くシーンでの、貴恵から万理華へランドセルを取る瞬間に入れ替わるカット。ワンカットで “見切れる石田ゆり子さん” から “ランドセルを取る毎田暖乃さんの手” にチェンジ。
単純な撮影方法だが、貴恵と万理華を決してオーバーラップ(映像的に重ねる)させないと言う坪井敏雄氏の演出の拘りを感じる。このような、見応えのある演出あるから、脚本の気になる部分が、多少は軽減されるのだと思う。もちろん、出演者たちの演技力の素晴らしさも良き影響を与えているのは、言うまでもない…
今後への期待を込めて「もう少し、脚本家さん、頑張れ!」とエールを送りたい…
と言うわけで、やはり、今後への期待を込めて「もう少し、脚本家さん、頑張れ!」とエールを送りたい。描いていること、描こうとしていることは間違っていない。特に、個々のエピソード自体は、類似作品と比較しても、本作らしさがあって、決して悪くない。感動的なシーンや、共感しまくりのシーンもたくさんある。
ただ、“連ドラ” として一つの物語に繋がった時に、連結部分が長過ぎたり、ご都合主義に見える部分があるのが、残念なのだ。そこが、上手くいけば、より一層、面白い「家族再生の物語」にも「生れ変わりによるヒューマンドラマ」にも、なると思う。
あとがき
今回を見て思ったこと。まず、今回のサブタイトル『妻のママ、妻の秘密を知る』が、イケてますよね。それと…。これ、奇跡の再会を果たした新島家が、圭介の職場や麻衣の知人など周囲を巻き込みながら、改めて「生きること」に向き合っていくホームドラマと言う真面目な要素を封印して…
もっと「不思議な家族の物語」、「心温まる家族再生の物語」と言う “ファンタジー要素” を前面に押し出した上で、更に “ホーム・コメディ” っぱさを押し出していたら、現実的な問題が見えにくくなって、肩の力が抜けたホームドラマ担ったかもしれませんね。
で、ラストを見た限りでは、「生まれ変わり」と言うより「憑依」と言う展開? いずれにせよ、ハッピーエンドにして欲しいです。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16571/
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