妻、小学生になる。 (第2話・2022/1/28) 感想

TBS系・金曜ドラマ『妻、小学生になる。』
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第2話『小学生の妻に、小学生の彼氏!?』の感想。
なお、原作となった漫画・漫画・村田椰融『妻、小学生になる。』は、未読。
圭介(堤真一)は貴恵(石田ゆり子)の生まれ変わりだという万理華(毎田暖乃)の言葉を信じ、浮かれきっていた。スマートフォンで撮った万理華の写真を眺めてはにやにやする圭介の姿を、同じ販売促進部の部長・副島(馬場徹)や部員の宇田(田中俊介)は不審に思う。そんな中、圭介は上司となる課長の守屋(森田望智)と昼食を共にするが、スマホの万理華の写真を見られてしまう。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:漫画・村田椰融『妻、小学生になる。』
脚本:大島里美(過去作/花燃ゆ、凪のお暇、おカネの切れ目が恋のはじまり)
演出:坪井敏雄(過去作/凪のお暇、カルテット、わたナギ、恋あた、リコカツ) 第1,2話
山本剛義(過去作/凪のお暇、コウノドリ2、わたナキ、オー!マイ・ボス!、最愛)
大内舞子(過去作/「凪のお暇」AD、恋あた、TOKYO MER)
加藤尚樹(過去作/コウノドリ1,2、ホワイト・ラボ、MIU404、にぶんのいち夫婦)
音楽:パスカルズ
主題歌:優河「灯火」
スタッフが如何に各シーンの雰囲気を大切に作っているのが分かり易いシーンをご紹介
このドラマが、俳優陣、特に、小学生4年生の万理華を演じる毎田暖乃さんの演技力と存在感に支えられているのは言うまでもない。だから、これ以上は言わない(笑)
しかし、この “現実では有りえない奇跡” を “虚構の中の真実” と視聴者に見せ、感じさせるには、俳優陣の演技力だけでは、成立しない。とにかく、本作の演出家を始めとしたスタッフが如何に各シーンの雰囲気を大切に作っているのが分かり易いシーンがあったから、紹介したい。
「"消えモノ"があるシーンの撮り直しは、基本的にやりたくない」のがスタッフの本音
それは、序盤で、圭介(堤真一)が年下の上司・守屋(森田望智)と一緒にお弁当を食べるシーンだ。最初、圭介は一人で食べている。そこへ守屋がやって来て、圭介が座っている場所を変える瞬間だ。その時、圭介の割り箸の袋が足元に落ちるが、堤真一さんは自然に「あっ」と言って、拾って演技を続ける。
普通なら、撮り直しても良いシーンだ。しかし、その「あっ」も、きちんと字幕処理され、台詞として成立させた。私が何を言いたいのか? まず、食事のシーンは撮影し直すのが、とても大変なのだ。
「消えモノ」と言って、お弁当など食べて消えてしまことを示す業界用語だが、撮影し直しだと、少なくとも食べかけになった圭介のお弁当から作り直して、再び撮影しなければならない。だから、「“消えモノ” があるシーンの撮り直しは、基本的にやりたくない」のがスタッフの本音。
箸袋を拾う圭介を、ちょっと気遣う守屋の手の仕草に注目して欲しい
でも、ここで敢えて演出家が撮影を止めず、堤さんのアドリブを活かして、このシーンを最後まで撮影し、OKカットにしたのか? それは恐らく、このOKテイクが何回目かわからないが、明らかに、二人のやり取りの流れがスムーズだからだと思う。
特に、箸袋を拾う圭介を、ちょっと気遣う守屋の手の仕草なんて、実に、「成り立てのお弁当友達」って感じで自然だ。やはり、例え予期せぬハプニングでも、雰囲気の良いテイク(撮影)を活かすのは、多くのドラマで見掛けるが、分かり易かったので、取り上げてみた。興味がわいたら見直して欲しい。
「妻がモテる」ことを10分間のアバンタイトルに収めた脚本は、お見事
そして、脚本も褒めておこう。もちろん原作(未読)があるから、どこまでドラマ脚本なのか不明だが。前回で、奇跡が起こった。奇跡を受け入れる圭介(堤真一)と、彼の一人娘・麻衣(蒔田彩珠)の大団円がラストだった。
そして、今回は、序盤から、そこを簡単におさらいして、想定外のスピードの速さで、圭介が万里華にプロポーズしているのを目撃する男・友利を、神木隆之介さんが演じていることをサプライズで見せて。
更に、守屋と昼食を共にした際にスマホの万理華の写真を見られてしまい、その上、万里華に交際を申し出る同級生・タケル(川口和空)まで登場させて、「妻がモテる」ことを10分間のアバンタイトルで描いて見せた。回想シーンも挟んで丁寧に。
"コミカルさの強調" こそが、今作には最重要
きちんと、この先に起こるであろう展開に期待をさせるし、大人げない圭介で「圭介 VS タケル」をコミカルに描いた。その後のタケルの告白に「ときめいた万理華」を描いて、徹底的にコミカルさを強調した。そう、この “コミカルさの強調” が今作には重要なのだ。
とにかく、コメディをドラマの下味にしっかりとつけておかないと、ふとした描写で、「オジサンと小学生の女の子が…」と現実が顔を覗かせて、折角、心地好く感情移入している視聴者を興覚めさせてしまう。
序盤20分間での "コメディの下味" のつけ方は、大成功!
その意味で、生まれ変わった妻・貴恵(石田ゆり子)の弟・友利が “奇跡” を知るまでの約20分間の “コメディの下味” のつけ方は、大成功だと思う。これなら、余程のへそ曲がりかロリコンへの嫌悪者で無ければ、「歳を取ってから生まれた子だから可愛くて仕方がない」お父さん風に見えるし、それが微笑ましさに繋がった。
また、娘のデートの準備を手伝うシーンでは、10歳で母と死別した麻衣の “甘えっぷり” も良く伝わって来たし…
すべてが意図的に創られているのが、心地好い
とにかく、約20分間の “コメディの下味” のつけ方が絶妙だからこそ、守屋と親友・菊池詩織(水谷果穂)が圭介に抱く “ロリコン疑惑” も自然な感情に見えたし、二人のデート中に、守屋と詩織の “疑惑の目” を巧みに交わそうと機転が利く万理華と、それに振り回されっ放しの圭介が楽しい。
そして、その楽しさが感じ取れるから、映画のポスターが入ったショーケースのガラスに映った、見たままの「お父さんと小学生の娘の姿」が切ないし、その姿へ意図的に重なる「COMING SOON」が、この二人に、この先 “何か” が「もうすぐやって来る」のを期待させた。
そう、 “奇跡” が このまま “普通” として終わるのか、どうなるのか? やはり、すべてが意図的に創られているのが、心地好いのだ。
手抜きせず、無風なのに"クルクルと勢い良く回る風車"をやるスタッフの拘り
意図的な演出と言えば、 “多分” と前置きしてから書きたいのが、二人のデートの終盤で、“狩り” に失敗した麻衣が帰って来て合流するシーン。そこで注目したのが、ベンチの後ろにあった花壇に刺さっていた “カラフルな風車” が3つ共、クルクルと回っていたこと。
第1話でも、「新島家」のベランダの風車が、「万理華=生まれ変わった妻・貴恵」がいると、クルクルと勢い良く回るのが印象的だった。今回も、印象的にクルクルと勢い良く回っていた。だって、殆ど “無風” なのだから、恐らく電動式なのだろうが。
こう言う “拘り” を撮影が厳しい「夕方の屋外ロケ」でも手抜きせずやるのが、本作のいいところ。こう言う、さり気ないが確かな作り込みが、“奇跡” を “リアル” に見せながら、二人が見た映画のような “ファンタジー” に感じさせるのだ。
あとがき
「モテる妻」から始まって、「モテる小学生」から「疑惑の小学生」を経て、「本当はモテる夫」に嫉妬する妻へ帰着しましたね。そして、ラストは、万理華の今の母・白石千嘉(吉田羊)の娘への疑惑の目、時計の秒針の進む音と、10年ぶりに貼り付けたアルバムの1枚の写真。正に「COMING SOON」じゃないですか。
また、性的マイノリティや児童虐待など、単純な「奇跡を描くホームドラマ」では無さそうですね。10年ぶりに再会した貴恵に尻を叩かれ叱咤激励されながら、生きる喜びを徐々に取り戻していく家族再生の物語を通して、もっと人間の根深いところまで掘り下げるのか? その辺も大いに楽しみです。
泣けなくても、これだけ楽しめれば十分だと思います。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16509/
【これまでの感想】
第1話
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