ドラマ「岸辺露伴は動かない」(第4~6話) (第5話「背中の正面」・2021/12/28) 感想

NHK総合・ドラマ「岸辺露伴は動かない」(第4~6話)
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第5話『背中の正面』の感想。
なお、原作となる、荒木飛呂彦原作の漫画『岸辺露伴は動かない1,2』は既読。『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』は、未読。また、2020年3月に発売された『「岸辺露伴は動かない」OVA コレクターズエディション (2枚組) [Blu-ray]』は、鑑賞済み。
露伴の家にリゾート開発を請け負う会社の営業部に勤める男、乙(きのと)雅(まさ)三(ぞう)が尋ねてきた。家の中に招き入れると、男は背中を壁につけたまま這いずるようにして入ってくる。靴を脱ぐときも、椅子に座るときも、紅茶を飲むときも、愛想笑いは返しても、男は決して露伴に背中を見せようとしなかった。その奇妙な行動に猛烈に好奇心をかきたてられた露伴は策を弄して無理やり男の背中を見てしまう。すると背中を見られた乙を異変が襲い、その異変はやがて露伴にも…。
---上記のあらすじは[公式サイト]より引用---
原作:「岸辺露伴は動かない 2」第4話「ザ・ラン」収録
「ジャンプSQ.M vol.002 (集英社マンガ総集編シリーズ)」第5話「背中の正面」
「岸辺露伴は動かない 1」第6話「六壁坂」収録
脚本:小林靖子(過去作/:岸辺露伴は動かない2020)
演出:渡辺一貴(過去作/70才、初めて産みます~セブンティウイザン。~)
音楽:菊地成孔/新音楽制作工房
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
今回の感想では、少しだけテクニカルについて書いてみる
第4話の感想で、「本作は、漫画の本を読むように、映像に自分の身を委ね切って “味わうドラマ” だと思っている。従って、当ブログの感想も、いつもと違って、テクニカルな部分について書くのは、敢えて止めておく」と書いた。
しかし、そうなると、感想として書くことが無くなってしまうから、この第5話については、少しだけテクニカルについて書いてみる。それは、今回のカメラアングルとそのカット編集の “独特な妙” が生み出す世界観だ。
今回は、似たようなカットの連続になる可能性が高い
普通のドラマの場合、メインで登場する「二人(とするならば)」は、互いに言っての距離をとって、向き合うなり電話するなりして、一定の距離感を創り出すことで、その “距離感” で、二人の関係性を描くケースが多い。
しかし、この第5話「背中の正面」では、その「二人」の間にあるべき “距離感” が、背中へ乗っかって隙間が無い状態になっている。その上、「二人」の向いている方向が同じ方向を向いている場面が圧倒的に多い。こうなると、普通に撮影しては、似たようなアングルや印象のカットの連続になってしまう。
今回の演出の見所は、カメラアングルの多様性による表現
そこで、今回の演出では、カメラの位置を、地上擦れ擦れの低い位置や、3m近い高さからの引きの画を多用した。これによって、単純なワンパターン化は排除できる上に、「坂」がもつ “角度” の不思議さや、「振り返る(振り向く)」と言う動作自体の “怖さと滑稽さ” を生み出した。
これ、見ている側にとっては楽しいが、撮影側、特に演者にとっては、かなりの難易度があるはずだ。なぜなら、普段使わないようなカメラアングルから、自分がどう移されているのか想像して演技する必要があるからだ。そう、自身の演技チェックが難しいってこと。
難しい複数&多角カメラによる困難な撮影を乗り越えた演技
しかし、今回に登場した主軸の四人は見事にやって魅せた。それも、面白い部分をきちんと残しつつ、しっかりと恐怖心は視聴者に植え付けて。とにかく、歩道橋を歩いていた男を含めて、徹底的にキャラを作り込んでいるのがスゴイ。ここがブレると、作品全体がグニャグニャしてしまう。
でも、今回は、坂道、境目、境界線と言った、いわゆる「区切り」の恐怖を描くために、ワンカットに全員を入れて「区切らない」演出法を選択したと思う。そう、常に「一体化」だ。その、逆説的発想こそが、岸田露伴が主人公のドラマの骨格に繋がっていると、私は思う。
あとがき(その1)
幾度か録画を見ましたが、この手の作品って、1つの演技に対して、同時に複数のカメラを回して、多角的に一度に撮影することが多いのですが、今回に限れば、敢えて、そうやって撮影できるのに、わざわざ手間暇をかけて、何度も同じ演技を俳優陣にさせて、カメラの位置を動かして撮影していました。
これが良くない点は「動作が違ってしまうこと」です。しかし、本作ではそれを逆に使って、「カメラが被写体を捉える角度(=視聴者が物事を捉える視点)」が違うと、動作そのものも違って見える作用へ巧みに利用しています。
あとがき
これって、「背中の正面」が描くテーマに、とても隣接していますよね。要するに、見たり、言ったりしたらヤバイところほど魅力があって、そのことを知っている知的な感覚の持ち主が、その沼に嵌り続け、連鎖するってところへ。
そして、第5話の最大の見所は、市川猿之助さんの面白さと恐怖感の演技の “境界線” にも、ドラマと内容がリンクしています。
あとがき
次回は、原作既読の「六壁坂」。自他共に「岸田露伴ファン」の内田理央さんが、六壁坂村で300年続く味噌づくりで成功した大郷家の一人娘を演じます。楽しみでしょうがありません。
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【これまでの感想】
第4話『ザ・ラン』
【2017年からのスペシャルドラマの感想一覧】
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