連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第35回・2021/12/17) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
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第35回/第7週『1948-1951』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
ロバート(村雨辰剛)と共に、週一回英語のテキスト作りを続けている安子(上白石萌音)。カムカム英語の終了で途切れたかに思えた英語の道はこうして続いていったのでした。ロバートとの会話は、安子にとって今まで以上に新鮮な驚きの連続でした。一方、雪衣(岡田結実)は勇(村上虹郎)への思いを断ち切れぬまま、これまで通り接する日々を送ります。そんな雪衣の複雑な思いを知る算太(濱田岳)は、ある行動に出て…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2,4,7週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール) 第3,5,7週
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん) 第6週
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
今回は、とても脚本と演出が良かった
常連の読者さんならば、当ブログが、ドラマを脚本家と演出家の両方の立場と、脚本を受け取った演出(部)の人たちの受け止め方などについて、中心に感想を書いていることはご存じのはず。また、感想の書き方も、「見ながら一時停止スタイル」と「見終えてから細かく書くスタイル」があることも。
そして、今回は、とても脚本と演出が良かった。と、書いていると言うことは、今回の感想は後者のスタイルで書いている。
基本的に"回想シーンの箇所の指定"は、脚本家が脚本へ書く
さて、感想に入る前に、ちょっとだけ脚本と演出の関係性について、知らない読者さんがいらっしゃると、読んでいて、意味が分かりづらいところがありそうだから、最初に書いておくので、気に留めておいて欲しい。
作品や作家によって様々だが、基本的に、脚本家は、脚本を書く際に、「回想シーン」をどこに入れるのかも、演出部(一人ではないから)以外のスタッフ部署に伝えるために、しっかりと “指定する” のが基本のスタイル。
しかし、ドラマによっては、実際の撮影した尺が放送尺に足りず、「編集段階」で回想シーンを使って、尺を合わせたり、演出家の判断で回想シーンを使う時がある。
今回の回想シーンは、"流れ"がスムーズで、その上、物語に"深みや未来を感じさせる予感"を巧みに漂わせていた
なぜ、今回の感想の冒頭で、このようなことを書くのかと言うと、今回の15分間では、回想シーンが、とても有効に活用されていたからだ。それも、幾つかのパターンがあった。遠い昔の回想シーンを挟むパターンや、序盤で使った場面を、中盤以降で回想シーンとして活用するなど。
それが、脚本家の “指定” によるものなのか、演出家の “判断” や “裁量” によるものなのか、正直言って見分けがつかなかった。それ位に、今回の “流れ” がスムーズで、その上、その回想が物語に深みや未来を感じさせる予感を巧みに漂わせていた。
従って、今回の感想は、興味のない人には申し訳ないが、照明などの演出を含めて、ちょっと小難しい内容になるかも知れない。もちろん、極力、誰が読んでも分かるように書くつもりだから、出来たら最後まで読んで頂きたい。
娘るいを連れた安子が、神社にロバートに会いに来たところが、前回のラストシーンだった…
では、放送の時間軸に合わせて書いてみる… と言いつつ、前回のラストシーンが何だったか? 覚えていらっしゃるだろうか?
まず、夜のシーンで、安子(上白石萌音)が昼間、ロバート(村雨辰剛)と “木漏れ日” の話をして、そこから始めて英語に出会った頃の稔 (松村北斗)との思い出に浸りながら、娘るい(古川凛)に「るい」と亡き父が名付けた理由と話して、母子で未来を想像した。
そして、1週間後に、今度は、お娘るいを連れた安子が、英語のテキスト作りのために、神社にロバートに会いに来たところがラストシーンだった。
今回は「娘るいのクレヨンと白紙のスケッチブック」から始まった
そして、今回のファーストシーンは、神社の中。普通なら、前回のラストシーンを冒頭につけて、改めて「週一回の英語のテキスト作り」を描き始めるのに、安達もじり氏は、そこをカットして、神社の全景もなく室内で、それも、(この時点では)テキスト作りとは無関係に見える「娘るいのクレヨンと白紙のスケッチブック」から始まった。
ここ、凄くいい。安子が娘るいに「ここで お絵描きしとってね」と言い聞かせつつ、実は、視聴者にとっては、この白いスケッチブックに、これから様々な “あんこ” や “おはぎ” にまつわるエピソードが描かれそうな期待感を創出していると思う。
なぜなら、この白いスケッチブックと、ロバートが手にする黄色みがかった白紙のメモ帳(レポート用紙)が重なって、更に、あの “おまじないのテキスト化” へ巧みに進んで行くのだから。
更に、このちょっとした、一見無駄と思える「白いスケッチブック」が、恐らく、娘るいの心と同期して、やがて、大人になっていく過程の中で、英語との大きな思い出の一つになっていくような気がする。ちょっとロマンチックに例えるなら、白紙のスケッチブックが “娘るいの清らからな心” を表現していると言う感じだろうか。
英語文化と日本語文化の違いによる "相手の呼び方による親密度や信頼度の違い"についての話
そして、「週一回英語のテキスト作り」と言う難しい話に入る前、落語の “まくら” のように、ロバートから敢えて「日本への不満を言っていいですか?」と意外な否定の疑問から始まった。
でも、劇伴がコミカルでかわいいから「何だろな?」と思って見ていると、英語と日本語、いや英語文化と日本語文化の違いによる “相手の呼び方による親密度や信頼度の違い” についての話だった。この辺りは、初歩の文化交流の話としても面白かった。
ナレーションで「毎週、○曜日の午後は、英語のテキスト作りの日になっていました」と言うだけで済むのだが…
先日の感想では、「なぜ、安子と金太が、おはぎの行商をしないのか?」と疑問を書いた。しかし、前回のラストと今回を見ると、この「週一回の英語のテキスト作り」が、おはぎ行商の “休日” か “空き時間” であると想像できる。残念ながら、どちらかは判断できない。それは、「行商の休日=日曜日」だったら、商売としておかしいから。
また、行商の “空き時間” の割には、時間的に話し合いに期限があるようにも見えない。まあ、細かく見過ぎる必要はないが、ここは、「行商の休日=平日」と考えることにした。それなら、神社に大勢の人がいないことも納得できるし、貸してれたのも不自然でないし、「水田屋とうふ」が家族団らんの日曜日に休業していないことも繋がるし。
まあ、本当はナレーションで「毎週、○曜日の午後は、英語のテキスト作りの日になっていました」と言うだけで済むのだが。
主人公が"積極的"だったり"動的"でなくても、ストーリーが進むのが、私が言いたい「強い物語」だ!
そして、アバンタイトルで、一先ず先にロバートが安子を「安子」と呼ぶことを決めた。これ、さり気なく描かれているし、字幕でも書かれていないが、私は本作にとって、先日の花売りの行商の女性を介した “安子の初英会話” に続く、大きな出来事だと思っている。
それは、これが、安子がアメリカ人から「YASUKO」と認められた瞬間だからだ。これも、毎度言っている主人公の言動でストーリーが進んで行く「強い物語」の一つだと思う。それも、巧みなのは、安子は「YASUKO」と呼ばれることに照れて消極的で “動的” でないのに、ロバートと安子の心の距離は明らかに縮まった。
決して、主人公が “積極的” だったり “動的” でなくても、ストーリーが進む。これこそが私が言いたい「強い物語」なのだ。
橘家の代々の家族関係もしっかり見えて来たし、和菓子屋「たちばな」の商品に込めた情熱も伝わった
そして、主題歌明け。勇 (村上虹郎)の「あんころ屋のあんこ」の台詞をきっかけに始まった、ロバートと安子(YASUKO)との「あんこ、おはぎ作りの話」が、とても良かった。
実際に「YASUKOのおはぎファン」であるロバートが切り出した話だが、良く見ると、勇、ロバート、安子と繋がって、実際に「あんこ、おはぎ作りの話」を始めたのは、「あんこのおまじないを かけとるからじゃ」と言った娘るいで、そこから、話は膨らみ広がって、橘家の代々の家族関係もしっかり見えて来たし、和菓子屋「たちばな」の商品に込めた情熱も伝わった。
神社での「英語テキスト作り」の場面に、娘るいを存在させた脚本家のセンスの良さ!
それらを伝える大きな役割をしたのが、回想シーンだ。それも、煮込んでいる小豆の様子、職人たちの姿や言葉、家人や店の変化による時代の変遷なども、回想シーンが見(魅)せた。回想シーンが効果的に使える、使わられるのは、連ドラならでは。
特に、歴史を感じるような回想シーンを有効に使えるのは、その先の利用方法を見越して撮影しているからに違いない。もちろん、偶然撮影されたカットもあろうが、今回に限れば、これまで誰もが見て来た “象徴的なシーン” を回想に使って「たちばなのあんこ」、「たちばなのおはぎ」を丁寧に描いた。
更に褒めておくべきは、回想シーン内の台詞と、安子のモノローグを上手く合わせて、現在と過去と未来を同時に繋がれていること。このシーンに、娘るいを存在させた脚本家のセンスが生きた場面だ。
英語で書いた「あんこのおまじない」とナレーションが、絶妙にマッチ
そして、まさか、「あんこのおまじない」が、英語のテキストになった。ロバートがレポート用紙に手書きの英語で書いた「あんこのおまじない」とナレーションが、絶妙にマッチ。まるで、おとぎ話を聞いているような、英語の魔法にかかったような不思議で温かな雰囲気が素晴らしい。
とにかく、なかなか今日は手が込んでいる
英語のテキスト作りをしている一方で、勇の話が挿入された。全体の「2/3」の頃だ。父・千吉 (段田安則)との回想シーンを挟んで、日米野球試合。神社のシーンでの障子から入る日差しや木々の影の揺れも良かったが、ここで屋外ロケが入ると、一気に映像にメリハリがつく。
それだけでも清々しいのに、直前の千吉と回想があるから、清々しさの中にある勇の複雑な心境が、試合と、兄の稔との “キャッチボール” が、表現が適切か分からないが、兄弟での安子の “キャッチボール” へと繋がるように見えた。そして、ここでも勇の「あんこも」の台詞が、キュンとさせる。
野球一筋の勇だから、雪衣(岡田結実)との前半での回想も音声だけでキュンと出来る。いや、音声だけにしたから、キュンとなるのだ。生々しさが消えるから。とにかく、なかなか今日は手が込んでいる。
今の安子にとって"英語に没頭すること"が、何より、稔を思い続けることなのだと…
手が込んでいると言えば、「週一回の英語のテキスト作り」を終えた三人が分かれた後、ロバートが行商の花屋に寄るシーンを入れたのも、その姿を見守る笑顔の安子も良かった。
これ、見方、感じ方はひとそれぞれだから、きっと、「稔と永遠の愛を誓った神社で!」とか、「安子と言えるのは、稔だけ!」みたいに思う人がいるのは否定しない。
しかし、私はこう思う。稔亡き後、女手一つで娘るいを育てていく上に、額の傷を治そうと必死に行商している中で、天国にいる稔と繋がっていると思えるのは、稔に教えてもらった “英語”。
だから、英語に没頭することで、日々の疲れを癒すと共に、夫が好きだった英語やアメリカの文化を知ることこそが、今の安子にとっての唯一の安らぎであり、癒しであり、何より、稔を思い続けることなのだと。
あとがき
「あんこのおまじない」が、英語のテキストになるとは思いませんでした。あれは、いいアイデア。それと、帰り道にロバートが花屋に寄る場面も。こう言う丁寧な描写があると、ドラマ、連ドラとして、見応えが増えますね。やはり、全てのエピソードが繋がっているわけですから、活かさない方が不思議です。
あとがき
そして、今回で秀逸だったのは、回想シーンとナレーション。この二つによって、和菓子屋「たちばな」、橘家、雉真家、家族の景色、日本とアメリカ、日本語と英語、文化の違い、それぞれの思いが、15分間に凝縮された気がします。問題なのは、算太(濱田岳)の存在意義と「たちばな」の再建。そこを描いて欲しいです。
更に、次週以降、安子と勇がどうなるのか? 良いところで寸止めしたのも、上手かったと思います。
最後に、いつものおまじないを。
明るくなぁれ、楽しくなぁれ…(Be cheerful, be joyful...)
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16363/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
6 7 8 9 10 土
第3週『1942-1943』
11 12 13 14 15 土
第4週『1943~1945』
16 17 18 19 20 土
第5週『1946~1948』
21 22 23 24 25 土
第6週『1948』
26 27 28 29 30 土
第7週『1948-1651』
31 32 33 34
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