連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第23回・2021/12/1) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
公式リンク:Website、Twitter、Instagram
第23回/第5週『1946~1948』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
安子(上白石萌音)は試行錯誤を繰り返しながら芋あめを作っていますが、そう簡単には売れません。るいを守る一心で自分はろくに食べもせず、働きづめの日々です。そんな中、安子は住宅街の民家から漏れ聞こえる英語の歌に出会います。それは平川唯一という講師の『英語会話』第一回放送でした。それから毎日仕事終わりに民家の軒先に立ち寄り『英語会話』に夢中になって聴いていました。しかしある日、空き巣に疑われてしまい…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2,4週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール) 第3,5週
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
「英語」を聞くと、亡き夫を思い出してしまう安子が切ない
なんか、切ない…。ここ最近の『カムカムエヴリバディ』は、時代が時代だから切ない。切ないのは当然として。今回のアバンタイトルを見て、いや本当はアバンタイトルの一部は前回のラストで見ているのだが、「英語」を聞くと、亡き夫を思い出してしまうヒロイン・安子(上白石萌音)が切ない。
こう言う場合の「英語」って、単純に「異国の言葉」でもないし、「かつて敵国だった米国の言葉」でもないし、「亡き夫が常に喋っていた言葉」でもない。敢えて言うなら、「初恋相手の雉真稔さん(松村北斗)から、何気なく「聞いてみたら?」と勧められて、耳コピし始めた、初恋の人を思い出す言葉」かな? と思うが、それも、今や、しっくり来ない。
切ないが、「英語」が「交際時代を思い浮かばせてくれる素敵なオルゴール」のように聴こえて来た
そして、いろいろ考えた。そして、一つの結果が思い浮かんだ。それは「(戦死してしまった今でも)一生添い遂げるつもりの愛する夫・稔と出会いのきっかけの大切な思い出の言葉」ではないのかと。
そして、その「稔と安子にとっての大切な思い出の言葉」が、ラジオと言う電化製品から「ラジオの英語講座」として聞こえてくると、まるでタイムスリップしたように、日本語的に表現するなら走馬灯のように、「交際時代を思い浮かばせてくれる素敵なオルゴール」のように聴こえて来た。
安子とるいの行動力、生命力が「強い物語」のけん引力に!
とにかく、前回から安子は娘るいと一緒に、新しい人生を歩き始めた。そして、その安子とるいの行動力、生命力が「強い物語」のけん引力になる。そして、その “けん引力” のエネルギーこそが、「英語」であり「ラジオ英語講座」であることを、明確に示したのが、今回のアバンタイトルだった。
一週間の真ん中の水曜日であると共に、12月の1日目として、しっかりと本作の骨格を提示したのは、半年間も続く朝ドラとしては、すごく良いことだと思う。
安子の気持ちが、切なさから懐かしさ、そして、生きる元気へとグラデーションをもって演技されたのが素晴らしい
主題歌明けの、安子が「飴売り」の途中(因みに、細かいことですが、本作の字幕では「アメ」とカタカナ表記になっています。しかし、当ブログでは、映像を見られない人、まだ見ていない人に分かり易くするため、出来るだけ漢字の「飴」を使おうと思います、路地裏の、とある家の塀の中から聞こえてくる「英語会話」と言うラジオ講座の第1回の放送を、気が付いたら「15分間」最後まで聞き入ってしまったシーンも良かった。
特に、るいを背中に負ぶって塀に耳をつけるようして聞き入る安子の気持ちが、切なさから懐かしさ、そして、生きる元気へとグラデーションをもって演技されるのも素晴らしい。
読者さん一人ひとりが安子になって、塀の外で立ち聞きした気持ちになると、照明演出の美しさが味わえる
しかし、副音声で解説されなかった美しい映像が、内容を更に優しくさせた。路地の真ん中に立って塀の中のラジオを聴く安子には強い光は当たっておらず、画面左の家の木製の壁に茶色系の夕日、そのすぐ横の常緑樹の植木鉢の葉っぱには黄色い夕日、そして、安子の奥の家の壁には、まだ夕日には少し遠い午後の日差しが差し込んでいた。
この手前の「如何にも夕日のライティング」と、画面奥の「夕日直前の強い日差しを模したライティング」が、ナレーションの「15分間の放送に聴き入りました」と表現された画面真ん中の「照明が殆ど当たっていない安子」で描写したのだ。そう、読者さん一人ひとりが安子になって、あそこに立ったと思えばいい。
本当は、生活のために「飴売り」の手を休めてはいけないことは分かっていても、もうすぐ日が沈んで商売が出来ない時間になることも分かっていても、足が止まって、聴き入ってしまう。いや、この前回での怪しい輩たちから逃げ込んで来た路地で、偶然、耳に入ってきた音である「英語」と「ラジオ英語講座」が、安子に与える影響の強さを美しく描写した。
立ち聞きが習慣になったことを、逆アングルのカットで表現!
さて、その直後には、安子が毎日、仕事を終えると午後6時30分に例の家の窓から聴こえてくるラジオの番組「英語会話」に耳を傾けることが習慣になり始めたような描写。カメラアングルは、直前の「初回の立ち聞き(笑)」とは真逆のカット割りで時間経過。
「ドラマのタイトルを劇中の登場人物が言う」ことの是非
さあ、ここで、私が注目したのが、「ドラマのタイトルを劇中の登場人物が言う」ことの是非。私の立場は、ご存じかも知れないが、野暮だから反対派。でも、本作は違った。いや、こう言う手法があるのかと、感心してしまったのだ。それは、「字幕無し」では分からないが、「字幕在り」だと分かる。
平川先生の冒頭のお約束の挨拶に、番組タイトルを組み込んだのは目から鱗が落ちた
それは、ラジオ英語講座「カムカム英語」の講師・平川唯一(さだまさし)が、「カムカム英語」の冒頭のお決まりのご挨拶「みんな いらっしゃ~い」を英訳した『COME COME EVRYBODY』として引用したからだ。これは、意外と斬新だった。
お父さんが新聞を読むのをやめるカットも、お母さんが家事の手を休めるカットを、「顔無し」で描くことで、一軒の家族しか描かれていないのに、まるで全国の家庭で平川先生の「みんな いらっしゃ~い」を合図に『COME COME EVRYBODY』のタイトル・コールを心待ちにしているのが伝わって来た。この手法なら納得だ。
それに、直後の「芋飴づくり」の時の歌声が、平川先生になっていたことで、どんなに安子をあの歌が救っているのかも分かった。粋な演出だ。
「るいのためだ」と言って夕食までもてなした澄子の親切心
8分頃、芋飴の品質改良のための夜なべの過労が祟ったのか。ついに、道端で安子が倒れてしまった。そこへ、子供たちが「安子の芋飴ファン」と言う、あの家(小川家)の主婦・澄子(紺野まひる)が通り掛かり、小川家に連れて行って、休ませた。その上、「るいのためだ」と言って夕食までもてなした。
更に、もてなしのお礼にやった澄子の息子のセーターの肘の穴の繕いを見て、丁寧な作業を見込んで、衣類の繕い物の仕事を安子に与え、澄子の口コミで新規販路も開拓され、「芋飴」は “売り物” と “繕い仕事のおまけ” の二役を買うことに。
フィクションだから描くことが出来た、良き塩梅の "澄子の親切心や思い遣り"
確かに、都合が良すぎる。とんとん拍子過ぎる。でも、いつの時代にも親切な人はいる。ラジオの立ち聞きと芋飴が結んだだけの “縁” だけを信じて、名前も聞かず、身の上話も聞かず。ただ、相手が喋りたいことだけを、聞いてあげる。これが、親切だと私は思う。
もちろん、今どきは、このような親切をするのは、問題や事件に絡まれたりと勇気がいること。でも、これはフィクションの世界。そして、良き塩梅で “澄子の親切心や思い遣り” が描かれたから、全く気にならない。
ヒロイン自身の魅力が引き寄せる様々な様相で動く「強い物語」に期待したい
恐らく、「女人禁制的な和菓子の世界で、安子はどうやって芋飴を考案したのか?」とか、「繕い物が得意なんて描写は、過去にひとつも無かった」とか、「時代を考えると、きれい過ぎる」と思う人もいると思う。
でも、安子の心には、死ぬ直前まで「純粋な和菓子職人」だった父・金太(甲本雅裕)の「おいしゅうなれ」が身に沁み込む程に和菓子を愛していたのだから、母・小しず(西田尚美)や祖母・ひさ(鷲尾真知子)から、または、孫が大好きだった祖父・杵太郎(大和田伸也)から、簡単な和菓子づくりを教えてもらっていても、何ら不思議でない。
また、繕い作業についても、橘家や、嫁ぎ先・雉真家で鍛えられた可能性もある。前期作では愚痴ばかり零していた私が言うのもおかしいが、始まってからまだ一か月。目をつぶれるところは目隠しして、ヒロイン自身の魅力が引き寄せる様々な様相で動く「強い物語」に期待したい。
あとがき(その1)
本格的に、主人公の運命がストーリーをけん引して行く「強い物語」が始まったと言う感じですね。今も、今後にも重要な要素である「ラジオ」と「英語会話」を丁寧に描きつつ、視聴者へ印象付けた15分間でした。
多少、ご都合主義や、きれい事に映ったとしても、主人公の人柄や、周囲の人々の人情を、心地よい音楽と、平川先生のトークによって、戦後独特な悪知恵や野蛮さを見せられるより、ず~っと良いと思います。
あとがき(その2)
そして、今回で最大級に驚いたのは、ラストのラストで、るいが初めて喋った言葉(歌)である「カム カム エヴリバディ」の字幕の色が “水色” だったことです。
Wikipediaに書かれていることを要約しますと。NHKでは、字幕に使用される色は、全部で4色。黄、水色、緑、赤、白。左から右の順番で、作品への関与度、重要性が下がっていきます。そして、朝ドラでは、主人公が「黄色」、準主人公(強力な脇役)が「水色」、その他脇役とナレーションが「白色」と、一応の決まりがあります。
あとがき(その3)
そして、気付かなかった人もいたと思いますが、1歳児である、るい役のクレジットに「今井望鈴」と「永尾琉衣」の2名分がありました。恐らく、おんぶされてたるいと、終盤のるいは別人。因みに「琉衣ちゃん」が「るいちゃん」を演じた奇跡もあったわけです。
と言う訳で、るいが準主人公(強力な脇役)に格上げされたので、来週あたりから、安子とるいの “母と娘” のやり取りが増えるかも知れませんよ。これで益々「三世代100年史」を描く朝ドラとして、楽しみが増えますね。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16307/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
6 7 8 9 10 土
第3週『1942-1943』
11 12 13 14 15 土
第4週『1943~1945』
16 17 18 19 20 土
第5週『1946~1948』
21 22
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