連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第22回・2021/11/30) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
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第22回/第5週『1946~1948』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
千吉(段田安則)からるいを雉真家の養子にすることを求められた安子(上白石萌音)。その姿を見かねた勇(村上虹郎)は、るいを連れて岡山を出るよう安子を説得します。勇の援助を受け、るいと2人きり大阪へと向かったのでした。たどり着いたのは稔(松村北斗)が学生時代に住んでいたおぐら荘。大家の計らいで安全に暮らせる部屋を手に入れた安子は、お菓子を作って売ることで生計を立てようとしていました。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2,4週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール) 第3,5週
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
今回の感想は、褒めたいことや、気付いて欲しいことばかり
前回は、「もっと、こうしたら良かったのに…」と少し提案を書いた。しかし、今回の15分間を見終えて感じたのは、褒めたいことや、気付いて欲しいことばかり。もちろん、PV(閲覧数)や「Web拍手」を増やすのが目的ではない。やはり、褒める時も気付いて欲しい時も、きちんと理由も書きたいから。
従って、いつも通りに書くつもりだが、少々先週末から具合が良くないので、もしかすると、変な表現になるのは、許して戴きたい。因みに、我が家の専属看護師である妻によると「急激な寒暖差に自律神経が追い付いていない」とこと。今日は、部屋も心も暖(温)かくして感想を書こう思う。
安子の苦戦する立場を見かねた勇のナイス・バッティング!
まず、前回で描かれた、千吉(段田安則)から、孫るいを雉真家の養子にすることを求められた安子(上白石萌音)の苦戦する立場を見かねた勇(村上虹郎)の “ナイス・バッティング!” が、今回も振り返って描かれた。
安子のことが大好きだった(今も、好きだと思う)勇が、自分「お金」を支度して、るいを連れて岡山を出るよう安子を説得した。実に切ないシーンだ。
勇が現実を受容できずに苦悩している美都里の心の内を察するシーンは見応えアリ
しかし、私がこのシーンで注目したのは、勇が、少年、青年、戦争帰還者となり、今は「雉真繊維」の “跡取り候補” となった自覚からなのか、長男・稔 (松村北斗)の死を知らされて半月経っても、新しい現実を受容できずに苦悩している美都里 (YOU)の心の内を察しつつ、「母さんも もっと強うならんといけん」と考えていたこと。
決して、遺された息子として、正気でない母を優しく受け止めるのではなく、むしろ、冷たく接するこの台詞が、このアバンタイトル以降のドラマの根幹である「戦後に生きるには強さが必要」と言うことを、さり気なく提示したのは、アバンタイトルの役割としても、良く出来ていたと思う。
日本人の奥ゆかしき文化や、日常の何気ない気遣いを、ポンと放り込んで、サラリと進めるから、気持ち良く見られる
主題歌明け、夜明けの薄明かりの中で、幼馴染同士の安子と勇の別れのシーン。そして、泣けたのが、万が一のことがあったら、勇が安子を嫁にしてやると、微笑みながら伝えたこと。その笑顔に釣られて笑みを零す安子の背中には娘るい。
本当は、切ないし、悲しいし、ちょっぴり嬉しいし、今の安子とるいの置かれた立場の解決策が “生々しいお金” であることが、ファンタジーとリアルのさじ加減の良きところ。だって、勇が安子に援助した “生々しいお金” は封筒に入っており、生身のお札は見えなかった。
そう言う日本人の奥ゆかしき文化や、日常の何気ない気遣いを、ポンと放り込んで、サラリと進めるから、気持ち良く見られるのだ。
岡山発の一番列車の車内のシーンは、本作の名シーンの一つに加えたい
そして、画面は岡山発の一番列車の車内。客は窓辺に安子とるいの二人だけ。ただの移動シーンなら、放送尺が少ない本作なら、削除して当然のシーンだ。しかし、きちんと “夜明けの日当たり” を列車の外からのカメラで抑えた。
そして、今は亡き稔のモノローグ。ここも、下世話に考えれば、松村北斗さんのカットを大量投入すれば、ファン以外も喜ぶのは誰にも分っている。でも、本作はやらない。生前の実の姿をギリギリまで焦らして、使われたカットが、あの神社での “ハグの日” だった。
最近の朝ドラで、ここまで戦死して亡くなった脇役のモノローグに尺を割いて、視聴者を一気に明るい戦後から、日なたの戦前、そして再び今度は日なたの戦後へ巧みにタイムスリップさせ、感動させた作品があっただろうか。やはり、この岡山発の一番列車の車内のシーンは、本作の名シーンの一つに加えたい。
ご都合主義だって、使い方次第で話の展開を滑りを良くする"優れたワックス"になるってこと
4分頃、何のナレーションやテロップもなく、視聴者には見慣れた「難和電鐵 杉川町驛」の駅前のシーン。ここで、解説的なものを入れずに、まるで稔に導かれるように、稔が学生時代に住んでいた「おぐら荘」にやって来るのは、なんか個人的にはディズニー映画みたい。
もちろん、「そんな都合よく住む家が見つかるか!?」とお思いの人もいるだろうが、(コロナ禍前まで東京ディズニーシーの年パス歴17年だった)ディズニーの世界観が大好きな私にとっては、大家さんが都合良く出てきて、気持ち良くおせっかいを焼いて、安子の新生活が始まる展開なんて…
名作映画『アラジン』で、貧乏なアラジンが王女ジャスミンに会いたい一心で、ランプの魔人・ジーニーと、アラジンの相棒のサル・アブーたちの助けを借りて、お城に潜入していくシーンすら彷彿させた。突然に映画『アラジン』の話になって困惑中の読者さんもいらっしゃるだろうが。
要は、ご都合主義だって、使い方次第で話の展開を滑りを良くする “優れたワックス” になるってことだ。
「安子が出て行った雉真家の顛末」を描いたのは、ホームドラマとしての価値がある
さて、今回の15分間で最も驚かされた、意外な展開が「安子が出て行った雉真家の顛末」を描いたこと。いや、本来は描くべきなのだ。両親に内緒で孫るいと共に安子を逃がしたのだから、勇の両親のその後を描くのは当然なのだ。
しかし、本作には時間が少ない。だから、これまでも、削除できる部分は削り倒して来た。それを「箇条書き」と言う人もいるらしいが、そんなのは放っておけば良いだけのこと。なのに、端折らなかった。勇の母への愛も伝わるし、稔の安子への信頼も伝わった。短いシーンではあったが、ホームドラマとして価値あるシーンの一つとなった。
「なぜ、お菓子作りなのか?」は端折って作った放送尺の使い方が秀逸
端折るか、端折らないか、どちらの選択肢を選ぶのか興味深かったのが、安子が生きるために、「お菓子作り」を選ぶ過程と、お菓子を作る過程。
結果的には、前者はナレーションで捕捉しただけで、「なぜ、お菓子作りなのか?」は端折った。しかし、その逆の分だけ、いやそれ以上に、安子がお菓子を作る場面は、売り歩く場面と並行に描かれた。それも、るいとの二人暮らしの日常と共に、丁寧に。
ラスト1分間まで、華麗なる展開の15分間
更に、14分頃には、戦前の良き時代の頃の御菓子司「たちばな」の回想シーンが挿入された。
安子の父・金太(甲本雅裕)、兄・算太(濱田岳)、母・小しず(西田尚美)、祖父・杵太郎(大和田伸也)、祖母・ひさ(鷲尾真知子)と、幼少期の安子(網本唯舞葵)が上手く映り込んでいる菓子作りの場面で、安子に「♪証城寺の狸囃子」を楽しそうに口ずさませて…
そこから、再び “優れたワックス” に乗って、ラジオの英語の歌詞に吹き替えされた「♪証城寺の狸囃子」」になると言う、華麗なる展開とまで言いたくなる。
「それが 『カムカム英語』との出会いでした」から、15分間を構築したのかも?
いや、今作のスタッフ、特に脚本家と演出家なら、このラスト「それが 『カムカム英語』との出会いでした」のナレーションを先に作っておいて、アバンタイトルから緻密な「引き算の演出」で生まれた貴重な尺で、安子が「売れるもの」「原材料が安いもの」を、夜なべして工夫している姿の映像に割り振ったのかも知れない。
そうでもしないと、中盤の「安子が出て行った雉真家の顛末」まで入れて、15分間にまとめるのは、至難の業だと思うから。
あとがき(その1)
もっと、細かい脚本や演出の仕掛けも隠れていますが、それを宝探しするのも、連ドラや朝ドラの楽しみですから、今回は、ここまでにしておきますね。とにかく、「時間が少ない」を理由に、簡単に「安子の手作り和菓子が大人気」になるのも、「『カムカム英語』に出会ってしまっては面白くありません。
やはり、お菓子には試行錯誤が必要ですし、試行錯誤の上にラジオを買って聴けるようになる方が楽しいはずです。その意味で、「新章」のイントロとしては、100点満点でよいと思います。
あとがき(その2)
そうそう、ついに、「おいしゅうなれ」が、私の頭の中でヘビロテし過ぎて。
昨晩は、「私が夕食当番の日」だったので、妻が大好きなクリームシチューを作ったのですが、鍋の中のシチューをかき混ぜる際、自然に小声で「おいしゅうなれ」と繰り返していました(笑) おかげで、自画自賛ですが、おいしゅうシチューが出来ました。
皆さんも、料理の際は、「おいしゅうなれ」を唱えるのを忘れずに。ただ、知らず知らずのうちに、声が金太のように大きくなっていることがあるので、周囲に気を付けて…
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16304/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
6 7 8 9 10 土
第3週『1942-1943』
11 12 13 14 15 土
第4週『1943~1945』
16 17 18 19 20 土
第5週『1946~1948』
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