連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第16回・2021/11/22) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
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第16回/第4週『1943~1945』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
稔(松村北斗)の出征を見届けた安子(上白石萌音)。稔の子を授かっているとわかったのは、稔が出征したふた月後のことでした。ラジオからは連日アメリカからの攻撃の知らせが流れ、勇(村上虹郎)も徴兵が決まり、戦争はさらに安子たちの日常を変えていきました。時が経(た)ち、安子は元気な女の子を出産しました。名前は『るい』。稔が考えた名前です。しかしその名前に込められた本当の意味は、周囲には明かせないもので…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2,4週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール) 第3週
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
「アバンだけで凄い」と言った方が適切な感想かも知れない
アバンタイトルから、いや、アバンタイトルだけで凄いと言った方が適切な感想かも知れない。
今週のサブタイトルは『1943~1945』だが、映像的にも、「安子が稔の子をみごもっていると気がついたのは 稔が出征してから ふたつき後のことでした」と言うナレーションから考えても、アバンタイトルだけが「1943年」、そう、先週から繋がった時間のようだ。
とにかく、今週の演出担当は、メイン監督である安達もじり氏だから、更に期待は深まる。
神具「鈴緒」(紅白の紐)の"揺れ"を、さり気なく今回の演出の方が強調して見えた
その一端が、アバンタイトルのファースト・シーンである「神社詣で」のシーンにあったように思う。
このシーンは、先週の金曜日に使われたシーンだが、使い方や見せ方が微妙に違うのだ。先週では、あくまでも “願いを叶えたい” と言う祈願の要素が強調される演出になっていたのに対して、今回は “稔の我が子への希望と決意を伝えたい” と言う要素が強調されたような演出に感じた。
その理由が、参拝者が振り鈴を鳴らすための神具「鈴緒」や「鰐口紐」の名で呼ばれる紅白の紐の “揺れ” を、さり気なく今回の方が強調したように見えたから。
安子と稔の夜の寝室のシーンが「辞書のやり取りで、互いの愛情を確かめ合う愛の世界」に変化した!
「鈴緒」が “揺れている” と言うことは、金曜日分にも映像化されていないが、稔(松村北斗)と安子(上白石萌音)がお賽銭をいれて、鈴を鳴らしたに違いないはず。
「鈴緒」は、参拝者が神具へ触れることの出来る、ただひとつのもの。そして、鈴を鳴らす事により高いところにいる神仏を呼び覚まし、来意を伝えるために必要な道具。そう言う神聖なモノを僅かに強調したあとに続いたのが、英語の辞書の手渡しから始まる、安子と稔の夜の寝室のシーンだ。
本来なら、多少は “生々しさ” が醸し出されても不思議でないのに、安達もじり氏の演出の魔法にかかると、まるで、「辞書のやり取りで、互いの愛情を確かめ合う愛の世界」に変化する。
そして、とても切なく辛いシリアスなシーンなのだが、どこか明るさや温もりを感じるように描かれた。どうやら、アバンタイトルだけで、これだけ魅せるのだから、「凄い!」の一言しかない。
"変則的な構成"で戦時中を描くのが本作たる真骨頂!
さて、主題歌明けからの感想は、15分間を最後まで見た状態で “個々の場面を振り返る方法” で書こうと思う。
今回の構成で中心的に、且つ、徹底的に描くべきは、稔と勇(村上虹郎)の母・雉真美都里 (YOU)が終盤で苦しみの中から吐き散らすように言い続けた「鬼畜」に対する出来事としての「勇の徴兵が決まり出征していくこと」のはず。
しかし、「稔の出征を見届けた安子」や「稔の出征シーン」すら描かずに、「安子の兄・算太(濱田岳)の出征シーン」は描くと言った “変則的な構成” で戦時中を描くのが本作。
今回の「ほぼ二本立て構成」は、お見事だった!
だから、今回は時間が進み、徴兵年齢が更に下げられたことで岡山の実家に帰省して、出征していく “勇にとっての大切な実家で過ごす時間” を、なんと「安子の妊娠から出産、命名、そして、子守歌」と言う、安子と、娘の “るい” のストーリーに重ねた。ここが、ナイス・アイデア!
勇の徴兵と安子の妊娠を時間軸(歴史年表的に)同時期にすることで、視聴者には2つの出来事が強く印象に残るし、シリアスとハッピーが上手く重なって、メリハリや緩急が生まれた。だから、今回の「ほぼ二本立て構成」は、お見事だったと思う。
今回は「安子の出産」があるから、屋内が多かったが…
また、今回は、今作には珍しく屋外ロケのシーンが殆ど無かった。スタジオセット内による「雉真家内」のシーンが多く、そのため、本作がお得意の “季節感の創出” が分かりに難かったのは残念だ。
しかし、安子の妊娠が進む描写を紙芝居的に挿入することで、時間経過は十分に伝わった。また、地元では大変な裕福な「雉真家」の嫁の初出産だから、身内全体で、安子を大切にしていると言う見方をすれば、何の違和感もない。
特に、豪雪地域でも無ければ、人口密集地でもない地域の話だから、「テンポ優先」で15分間に「ほぼ二本立て構成」したことの方を評価する。
本当に「ドラマとしての一体感」は、微塵もブレていない!
また、前述の繰り返しになるが、「雉真家」がある場所が、岡山の商人たちの町で、人口密集地でもない地域であることによって、これまでの朝ドラに於ける「戦争中であることを示すアイテム」が少ないことに気付いた読者さんも、いたと思う。
しかし、良く見ると、様々な工夫が随所に施されている。分かり易い部分では、7分頃の婦人会のくだりが定番アイテム。その他にも、壁の張り紙、食事の内容、身なり(服装)、室内の電気灯による明るさの変化などで、しっかりと表現されていて不満はない。
その上、常に戦果を伝える “忌々しく聞こえて来るラジオのニュース音声” が、常に本作のテーマと、その都度のエピソードを強固に結び付けているから、本当に「ドラマとしての一体感」は、微塵もブレていない。そこも、凄いと思う。
「みんなで るいを守るんじゃ」で思い出した"兄弟のキャッチボール"
そして、いよいよ、生まれた。さり気なくいいのが、千吉 (段田安則)と美都里 (YOU)の “夫婦” が仲が良いこと。そのお陰もあって、朝、安子のもとに家族が集まり、千吉と美都里にとっての “初孫” の誕生のシーンは、実に微笑ましかった。
また、「雉真家」の “初孫” であり、安子と稔の “愛の絆の証し” である子どもの名前が、平仮名の「るい」で、遂にオジサンは泣いてしまった。そして、更に私の涙を誘ったのが、勇が「るい」の名に気付いた次の言葉だ。
勇「塁は 攻撃側にも守備側にも 一番大切なもんじゃ。
みんなで るいを守るんじゃ」
既に出征した兄が、安子たちに託した「るい」を、兄に続いて出征する弟が「みんなで るいを守るんじゃ」と言うのが、如何にも野球少年の勇らしいし、きっと、多くの人の心に、「あんこ」を兄に譲ると決めた時の “兄弟のキャッチボール” のシーンが思い浮かんだに違いない。
そして、そのシーンを回想で挿入しないことで、記憶にある視聴者だけが、どんどん本作の世界観へ引き込まれる。先日も書いたが、本作は、説明を見るドラマでなく、心で感じるドラマなのだ。そこを貫いた作風だから、共感する者同士が共感し合えるのだ。
稔から安子、安子からるいに伝わる、英語が世界を広げていくと言う思いが、丁寧に、繊細に、優し過ぎる位に描かれた!
そして、私の予想を良い方に裏切ったのが、約1分間と、長めの尺を割いて描かれた “るい” と添い寝をする安子のシーン。稔の下書きの歌詞で覚えた安子の “子守歌” である「On the Sunny Side of the Street(ひなたの道で)」が、字幕オンでは、「カタカナ表記」から「英語表記」へ。
稔から安子、安子からるいに伝わる、英語が世界を広げていくと言う思いが、丁寧に、繊細に、優し過ぎる位に描かれた、良いラストシーンだった。
あとがき
もっと、書きたいことがありますが、感想の本文で触れなかったので、ここで、少しだけ書き加えます。
「るい」の名前の意味を野球の「塁」に思い込んだまま、出征して行った勇の野球への熱い思い、名付け親の稔の気持ちを察した上で幼馴染である勇を送り出す安子の切なさ、両親の気持ちが詰め込めるだけ詰め込まれた「勇の出征」のシーンに、戦争は決してやってはいけないと、改めて思いました。
そして、今回のラストが、1944年の年末なので、次回は1945年でしょうか。1945年と言えば、オープニング映像のぺーバークラフトの中にも登場する「B29爆撃機」によって、東京、大阪と次々と市街地が襲われ、岡山でも空襲が始まる頃。う~ん、るいを始め、みんなの無事を祈るばかりです。
「カムカムエブリバディ」の“ペーパークラフト&コマ撮り”の世界観を、独自解釈してみた

©NHK(オープニング映像のぺーバークラフトの中にも登場する「B29爆撃機」)
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16262/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
6 7 8 9 10 土
第3週『1942-1943』
11 12 13 14 15 土
第4週『1943~1945』
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