連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第15回・2021/11/19) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
公式リンク:Website、Twitter、Instagram
第15回/第3週『1942~1943』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)は、結婚することになりました。「たちばな」を訪れて安子の姿を見た千吉(段田安則)は、安子こそ稔を支えてくれる相手だと確信し、進めていた銀行の頭取の娘との縁談を断って2人の結婚を許したのです。杵太郎(大和田伸也)の忌中のため、ごく簡素ではありましたが、祝言をあげることに。稔の出征まで2人が一緒に過ごせる時間は限られるなか、この上なく幸せな時間を過ごしていました。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール) 第3週
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
実は、昨日は複雑な心境で、今日の感想のことを考えていた
前回の感想では、これだけ、しっかりと作り込まれて、作者が伝えたいことが、余すことなく視聴者に伝わり、更に深い感動まで与え済みの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』に対して、そして、今回の第14回について、私なんぞの、誤字脱字ばかりの長文で拙稿の感想なんぞ、必要あるのかと… と、書いた。
すると、たくさんの読者さんから、非公開コメントで「続けて欲しい」とのリクエストを頂き、また、Web拍手への返信にも書いたように、意味不明な内容の投稿に怒りを覚え、複雑な心境の一日だった。
読者さんや作り手の人たちへ"リスペクトと感謝"を贈るつもりで…
しかし、やはり、私は書く。書こうと思う。いや、「書くな!」と言われても “書きたい” と思える朝を迎えた。私はもちろんのこと、病気で療養中な人や、介護や育児で多忙な人、病院で働く妻を含めた医療従事者の人たち、他の多くの読者さんたちにだって、辛いことや苦しいことが毎日あると思う。
でも、特に、私にとっては、少なくとも、この3週間は、“苦悩や葛藤” を大きく上回る “元気や意欲” を毎朝届け続けてくれたのが、この朝ドラ『カムカムエブリバディ』だ。
その第3週目のラストである金曜日を、しっかりと見届け、当ブログを通して、読者さんや、(出来ることなら)作り手の人たちへ “リスペクトと感謝” を贈るつもりで、第15回の心を込めて感想を書こうと思う。
今回の感想は、「まずは一気見」してから読んだ方が良い
常連の読者さんなら、私の感想の書き方に「二通り」あることは、ご存知だと思う。1つは、最後まで見ずに、最初から見て、見て感じて気付いたところを徹底的に掘り下げながら、15分まで辿り着くパターン。もう1つは、一度、最初から最後まで見て、全体の構成を頭に叩き込んでから、ワンシーン目から掘り下げるパターン。
そして、今回の私が選んだのは後者。と言うわけで、この感想を読んで下さる読者さんも、「まずは一気見」してから、細かな構成や各シーンの見所などを “おさらい” するつもりで読んで頂けると、いつもより、たかが拙稿な感想だが、少しは、より楽しめると思うし、そのつもりで、本気で私の気持ちを伝えようと思う。
最初に私の心に突き刺さったのが千吉の「待ちきれなんで」
まず、番組の冒頭で、私の心に突き刺さったのが、アバンタイトルで千吉(段田安則)が稔(松村北斗)に言った「待ちきれなんで」の一言だ。そう、みんな、待ちきれないのだ。作り手も、登場人物も、視聴者も。それを、開始僅か20秒で “宣言” した。だって、この15分間を見た人なら、誰もが思ったと思う。「凄い!」と。
千吉に安子(上白石萌音)との縁談を許され、両家の家族にも許され、更に祝福を受けて、その流れのまま、慎ましやかな祝言を挙げた。そして、始まる新生活の中に、嫁と姑を挟んで、その上にデート、そして、最期は子づくりの話まで。紛れもなく、15分間にピッタリ見事に収まっていた。
要らない演出も台詞も全部撤去しても、"安子と稔の家"は、1ミリも揺らぐことなく建った!
収めただけでも凄いのに、本作は次のことをやってのけた。まず、かなり個人的で年中起こるようなエピソードではないのに、その順序に一切の違和感が存在しないこと。そして、シリアスとコミカル、小ネタ的なものを織り交ぜて、メリハリも創り上げた。
そして、普通なら明らかに “盛り込み過ぎ” な印象になるはずなのに、私も読者さんも、千吉が言ったように「待ちきれなんで」だから、次々とテンポ良く話が好転して行くと共に、無駄と言う尺が皆無。要らない演出も台詞も全部撤去。
それなのに、『カムカムエブリバディ』の中に “一ヶ月だけ” ではあるが存在することなった “安子と稔の家” は、1ミリも揺らぐことなく建ち、清々しい上棟式を迎えたと言う感じ。もう、金曜日の15分間の構成としては、文句の付け所が無い!
私が考える見所を、放送の時間軸の順序に合わせて、感想を書いてみる
さて、ここから、私が「自論展開したくてしょうがないシーン」、「皆さんに気付いて欲しい演出」、「今日中に書いておかないと新鮮味が失われるシーン」などを、放送の時間軸の順序に合わせて、感想を書いてみる。時々、上から目線的に “解説部ってしまう部分” も出て来ると思うが、そこは大きな心で許して頂きたい。
最初の見所は、カメラの手振れ補正機能を積極的に使うか、使わないか?
まず、最初から専門的で恐縮だが。アバンタイトルで岡山駅を降りて来た稔を千吉が手を引っ張って、神社まで連れて行くカットに注目。
これまで、本作は、手持ちカメラは多用しているが、大雑把に言うと手持ちカメラには「二通り」あって、大きな違いを分かり易く説明すると「手振れ補正機能を積極的に使うか、使わないか?」だ。例えば、先日の稔の部屋で勇 (村上虹郎)と兄弟喧嘩するシーンでは、手振れ補正機能を弱めにして、良き塩梅の “ブレ感” を出して、緊迫感を創り出した。
神社で千吉が稔を誘導するカットの"やや強め"の手振れ補正の使い方が良い
しかし、今回の千吉が稔を誘導するカットでは、私の記憶違いが無ければ、これまでで最も手振れ補正機能を “やや強め” に活かした撮影手法が使われていた。
特に、神社の敷地内に入ってから、どんどん先を歩く千吉を、追い掛ける感じで事情説明をして欲しいと訴える稔とのツーショット(1つのカットに2人が映り込むカットこと)で効果的に使われた。その効果とは? 普通のドラマなら、「喋っている2人の顔を視聴者に良く見せたい」から、手振れ補正機能を “やや強め” に使う。
"やや強め"の手振れ補正した理由と、推測の根拠がある
でも、本作は違うと思う。稔が立ち止まって、画面には映ってない安子に気付いた時の “ドキッとした心情” を、絶対ブレない稔で、魅せたかったからだと思う。もし、ここのカメラの手振れ補正機能が弱めだったら、「待ちきれなんで」のスピード感がブレることになるのだ。
まあ、これは「有りと無し」で比較できないから、脳内予測して頂くしかないが。でも、この推理が、ほぼ間違っていない根拠がある。それは、稔が「父さん! と…」と立ち止まって、画面には映ってない安子に気付くまでに、僅か1/3秒間程の「静止画のように動かない稔だけのカット」が存在するから。
2人の物理的な距離感と、心の距離感を表すために、手間を惜しまないスタッフらの気合
だって、本来、普通なら、「父さん! と…」と、稔の言葉が詰まった直後に、安子のアップを編集で直結すれば済むのだ。
しかし、この撮影スタッフは、拘った。僅か1/3秒間程の「静止画のように動かない稔だけのカット」をわざわざ作って、更にカメラのアングルを真逆にし、画面の7割近くを稔の背中で覆い尽くした “僅かな隙間” へ、安子の立ち位置を作って、カメラを上手(画面右)にずらして、距離の離れた安子のバストショット(胸から上が見えるカット)で、この時点での2人の物理的な距離感と、心の距離感を表したのだ。
「オープニング映像」明けに、視聴者にアッと思わせる作戦を「僅か1分間」に仕掛けた
そして、千吉が「あの人が おめえの祝言の相手だ」の言葉で、稔と安子を交互にワンショットで切り返して映して、「待ちきれなんで」の第1回目の回収を見事にやった。この直後に、あの「オープニング映像」と主題歌を入れるのも、計算尽しだ。
もう、視聴者は本当に「待ちきれなんで」なのだ。だから、焦らす。焦らせるだけ焦らす。なぜなら、焦らした分だけ、「オープニング映像」明けに、待ちきれないものを怒涛のように描いて、視聴者にアッと思わせる作戦を「僅か1分間に命を賭ける思い」で、仕掛けてきたわけだから。
なぜなら「オープニング映像」の焦らすために尺を伸ばせないから、アバンで焦らしまくるしかない… と言う推測だが。
私と一緒に注目して欲しいのが、今まで少なかった"安子と稔のツーショット"や"2人が一緒にいるシーン"
千吉が、安子と稔の前から姿を消してからの感想や説明は、ほぼ要らないはずだ。見ているだけで、作り手の伝えたことが、120%くらい伝わって来るから。
しかし、今回で「ディレクター目線」になって、私と一緒に注目して欲しいのが、これまでストーリーの関係で少なかった “安子と稔のツーショット” や “安子と稔が同一画面に入っているシーン” たちだ。
例えば、今どきのようにハグせずに、自分のハンカチで安子の “嬉し涙” を拭ってやる優しい稔との絶妙な距離感。直後の2人の肩越しに映り込む勇との遠近感。2人横並びで、“愛のキューピッド” に礼を言うツーショットも、さり気なく素敵だ。
次に挙げる"安子と稔のツーショット"は見逃さないで欲しい
その後も、1つ1つ拾い上げたら、感想が長編大作になるから省略するが。5分頃の雉真家での母・美都里 (YOU)と2人の位置関係と距離感。7分頃の橘家では、縦長の構図の中、画面奥の円卓に横並びでお辞儀をする安子と稔のツーショットで見せる橘家の “庶民性”。
そして、人の死を軽率に扱わない「おじいさんの喪の開けんうちに こねえな件で」と言う日本人らしい “謙虚さ” も、円卓を前に正座するツーショットが描き出す。
10分頃の喫茶「出歯口の憂鬱」の店内での新婚デートのツーショット
また、9分頃の朝食のシーンでは、台所でのナレーションで新生活を伺わせ、食卓のツーショットの2人の “少し離れた距離感” で、新婚さんの愛らしさを、コミカルに表現。10分頃の喫茶「ディッパーマウス ブルース」改め「出歯口の憂鬱」の店内での新婚デートのツーショットは、朝食の時より近づいて、腕と腕が擦れ合う距離。
店のマスター・柳沢(世良公則)の “子づくりネタ” で珈琲を噴き出すシーンも、単純なコミカルなシーンで終わらせず、柳沢の一人息子・健一(前野朋哉)の話に繋がって、祖父と息子と、いない孫の話へ上手く展開して、少しだけシリアスに家族愛を描いた。
終盤のツーショットで、限られた2人の幸せな時間と、2人が語る戦争が終わったあとの未来の時間が見えた
そして、超ロングショットの神社で合掌するツーショット、続いて横からの寄りのツーショット、本堂側からお賽銭箱越しのツーショットを積み重ねて、稔が出征までの限られた2人の幸せな時間が描かれたと同時に、2人が語る戦争が終わったあとの未来の時間が見えた。
今回は、渡辺貞夫氏の「♪On the Sunny Side of the Street(明るい表通りで)」
そして、13分頃から流れる「On the Sunny Side of the Street(明るい表通りで)」は、第6回で2人が聴いた米国の名トランペット奏者・ルイ・アームストロングが演奏したヴァージョンではなく、本作の「オリジナル・サウンドトラック ジャズ・コレクション」に収録されているであろう(発売前)、冒頭のクレジットに表記があった、渡辺貞夫氏のサックス・ヴァージョンだと思う。
とにかく、安子と稔のツーショットの使い分けが絶妙だった
とにかく、安子と稔のツーショットの使い分けが絶妙だった。2人の物理的な距離感はもとより、2人とレンズの距離やサイズ、カメラのアングルや、編集による前後のカットやシーンで新たに生まれる意味、もちろん、2人の相思相愛、ラブラブ感が思う存分に伝わって来た。
やはり、全てが計算されて作り込まれているのに、演技は自然体を意識しているから、窮屈感がない。そして、ラストの抱擁からお手々繋ぎのツーショットまで秀逸だった。
あとがき(その1)
ラストの「短いけれど 幸せな日々でした」と言うナレーションが気になりますが…
本当に、「捨て回」無しの1週間でした。1回の構成、1週間の構成が、本当に緻密に計算されて、描いていることは山盛りなのに、テンポ良く必要な部分だけ描いて進むのが、とても心地良かったです。何となく、次週は切ない展開から始まりそうですが、安子と同様に、当ブログの応援も、よろしくお願い致します。
あとがき(その2)
また、前回の感想で、「杵太郎の死のシーンに"人の死"への気遣いや配慮、そして敬意すら感じた」と書きました。私は常に、「基本的に、不必要にドラマの中で安易に人の死を扱うな!」が持論ではありますが。
ある読者さんが、制作統括の堀之内礼二郎氏が取材会で「ちゃんと死を描きます」と発言した記事を教えてくれました。是非、読んでみて欲しいです。
【カムカムエヴリバディ】二度と戦争が起きないために NHK「ちゃんと死を描きます」(ENCOUNT) - Yahoo!ニュース
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16251/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
6 7 8 9 10 土
第3週『1942-1943』
11 12 13 14
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