「カムカムエブリバディ」の“ペーパークラフト&コマ撮り”の世界観を、独自解釈してみた

©NHK
「オープニング映像」について、私なりの解釈を書いてみる
これまで、現在放送中の朝ドラ『カムカムエブリバディ』の手作りのペーパークラフトによる「オープニング映像」について書いたことがなかった。そこで、今回は、あの「オープニング映像」について、私なりの解釈を書いてみる。
もちろん、作者の思いとは異なる可能性はあるが。作品は、自分(作り手)の手を離れた瞬間に、感じた人のモノになるのが、クリエイティブな仕事をしている人なら、誰でも思うはず。と言うわけで、まずは、今作のオープニング映像&タイトルバックについて、概要から。
先の記事を読む前に、おさらいを兼ねて、下↓の動画を見て
『カムカムエブリバディ』のオープニング映像は、AIさんが歌う「アルデバラン」をBGMに、可愛らしいペーパークラフトで展開していく。その映像が、NHKによって「フルバージョン」が公開されている。まずは、先の記事を読む前に、おさらいを兼ねて、下↓の動画を見て頂きたい。
しかし、残念ながらNHKの著作権保護の観点で、当ブログにそのまま掲載できない。従って、下記のリンクから、まずはNHKの公式YouTubeチャンネルの当該ページへ、エブリバディゴー!
https://youtu.be/ZrdJwDarFdA
『カムカムエブリバディ』は朝ドラ史上初の、3人のヒロインが登場する物語で、親子三世代による100年間を描いた作品。オープニング映像の中にも、その3人のヒロインが描かれており、各時代を象徴するものも描かれている。それが、この「オープニング映像」へ、どのように反映されているのか、考えてみたい。
「コマドリスト」竹内泰人氏と美術スタッフで、約10日間で制作
さて、そもそも、このオープニング映像は、誰がどうのように創ったのか調べてみた。コマ撮り撮影(1コマ1コマ撮影するアニメーションのこと)業界では有名なコマ撮り監督で「コマドリスト」の愛称で活躍中の竹内泰人氏(1984年生まれの37歳前後)が、番組スタッフから全体の構成を聞き、イメージを作成。
そのイメージを基に、ドラマの美術スタッフが絵コンテ(下絵)を作成。そして、両者の話し合いで、竹内泰人氏と彼のアシスタントたちが紙から絵を切り抜いて作成して、竹内氏がコマ撮り撮影をして「約10日間」で完成させた。
オレンジの女の子は、安子ではなく「3世代、3人のヒロイン」のシンボル的な存在(象徴)だと思う
では、オープニング映像の印象的なシーンに、スポットライトを当てて、深掘りしよう。最初に映像に登場する印象的な人物は、幾重もの幕が開いて、最初に登場する、オレンジ色の女の子。木製の机の上にピンクのラジオを黄色のライトを前に、椅子に座って勉強しているシーンだ。
このオープニング映像の構成が面白いのは、本作の「3世代の祖母、娘、孫を時間軸に沿って描く作品」とは異なる点だ(あくまで推測だが)。従って、あのオレンジの女の子は、安子ではなく「3世代、3人のヒロイン」のシンボル的な存在(象徴)だと思われる。
オレンジ色の女の子が、「安子」でない理由とは!?
なぜなら、オレンジの女の子は、オープニング映像が進む中、終盤で下手(画面左)から、赤い老婆、黄色い少女、オレンジの中年女性と年齢が変化するからだ。
と言うのも、本編のドラマ自体の構成は「安子(祖母)、るい(母)、ひなた(娘)と言う “3世代の女性たち” が紡いでいく、一世紀(100年)のファミリーストーリー」を時間軸(歴史順)に描きつつ、3人の傍らには、いつもラジオ英語講座があった… と言うもの。
だから、3人のヒロインの内の誰か1人をモチーフに創り上げられていないと推測できる。また、ドラマが進む時間軸の流れと、オープニング映像の時間軸の流れも異なることも分かる。
幕開けのシーンは、「人生は、一生勉強である」と言うことを、象徴的に描いた
従って、幕開けのシーンは、「本作のシンボルであるヒロインがラジオを聴きながら勉強している」と言う、本作の別のテーマである「人生は、一生勉強である」と言うことを、象徴的に描いたのだ。
また、このオープニング映像の面白いところとして「英語」が一切登場しないことが挙げられる。第11回の本放送の感想の中で、私は次のように書いた。本作は “英語” と言うアイテムを、「人と人とのコミュニケーション・ツール」としてではなく、「人と人をくっつける接着剤(道具)」として使っている… と。
ここまで書けばお分かりだろう。文字通り、オープニング映像に使われているペーパークラフトを作る際に使う接着剤こそ「英語」と考えるのは、流石にやり過ぎだろうか。
自転車練習は、安子と稔でなく、製作者の竹内氏と娘さん!
次に注目するのは、自転車の練習のシーン。オレンジの女の子が乗る自転車を、後ろから支える紫の男性が描かれている。第2週まで見た視聴者なら、殆どが「松村北斗さん演じる雉真稔が、最初のヒロイン・上白石萌音さん演じる安子の自転車の練習の手伝いをしている」と答えるに違いない。
しかし、現実は、製作者の竹内氏がご自分の娘さんに自転車の乗り方を教えた経験があり、是非とも入れたいと入ったシーンであり、偶然と言うことになる。
「人生は、イヤなことばかりでなく、イヤなことの後には出会いがある」
次に注目するのが、雨のシーンから猫と出会うシーン。雨降りの中を傘を差して歩くオレンジ色の女性が、近くを走り去る車の水しぶきを浴びてしまうが、その後、雨は上がって、ベンチの近くで可愛い猫と出会う。もちろん、このシーンには、「人生には良い時もあれば、そうでない時もある」と言う意味も伺える。
しかし、その直後のシーンで、その猫が、オレンジ色の女性のパートナーと思われる男性のいる部屋にもいる。もしかすると、「人生は、イヤなことばかりでなく、イヤなことの後には出会いがある」と言う暗示もあるかも知れない。
三世代の女性に共通する「出産」「育児」「勉強」が前半の部分に散りばめられている
そして、このオープニング映像で最大に注目すべきは、三世代の女性が一緒に歩くシーンだ。良く見ると、この道、三世代の中で最も古い世代のオレンジ色の女性が歩く道が一番奥で、続いてオレンジ色の女性の世代、そして一番新しい世代の黄色い女の子は最前面に描かれている。
それぞれの女性が生きた時代を象徴する建築物や乗り物が登場し、3本の道は枝分かれをして、最後の三角錐のシーンで合体する。ドラマに登場する「安子(祖母)、るい(母)、ひなた(娘)」の3人には当然 “重なり(のりしろ)” がある。それが「出産」「育児」「勉強」であり、その様子が前半の部分に散りばめられている。
やはり、本作も列記としたホームドラマだと言うことだ。
同じ時代を生きた人の"横軸"と、100年間の時間を生きた人"縦軸"が創る大きくて美しい大きな輪
この映像の前半で面白いのは、季節の移り変わりを、奥行きで表現しているところ。最初は「春」で、「夏」になると「春」は奥へ行き、「秋」、「冬」と順に奥へ行き、雨のシーンの直前で「春」になる。正に「春夏秋冬」であり、過ぎた季節は奥へ行き、新しい季節が手前になることで、立体感もさることながら、季節の変遷が軽やかに見える。
まるで、古い写真の上に、新しい写真を重ねていくような雰囲気。そして、クライマックスは、これまでのシーンが「大輪の花」のように広がる。でも、良く見ると一番奥の赤岩の部分に、真っ黒な「B29爆撃機と投下された原爆ミサイル」のペーパークラフトがある。

©NHK
明るく、楽しく、その時代を反映するペーパークラフトの中にある第二次世界大戦のペーパークラフト。やはり、ラジオ英語講座の100年を描く朝ドラのオープニング映像から外すことは許されなかったのだろう。
同じ時代を生きた(生きる)人たちの “横軸” と、100年間の時間を生きた(生きる)人たちの “縦軸” を、一つのオブジェクトに詰め込んだ大きくて美しい大きな輪。それは、ドラマの物語とどう交錯して行くのか、楽しみだ。
あとがき
AIさんが歌う「アルデバラン」のゴスペル調の広大さと「100年史」もピッタリ。「オープニング映像」で使用されている歌詞と、ペーパークラフトのコマ撮りと、ドラマの雰囲気も合っていますね。今後、どんな展開になるのか予感できそうで出来ないのも、面白味がありますし。
『ひよっこ』の昭和レトロな、ミニチュアで作った「オープニング映像」の世界観と並んで、好きな作品です。
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