連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第13回・2021/11/17) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
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第13回/第3週『1942~1943』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
姿を消していた算太(濱田岳)に召集令状が届き、久々に橘家に帰ってきたのもつかの間、算太は出征しました。人手も材料も乏しくなった「たちばな」は、次第に商いを縮小せざるを得なくなりました。一方、雉真繊維は戦争の勢いが増すにつれ軍への納入も増え、事業を拡大。稔(松村北斗)には、銀行の頭取の娘との縁談が上がっているようで…。そのことを知った勇(村上虹郎)は稔のもとを訪ね、複雑な思いをぶつけるのでした。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール) 第3週
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
週の折り返しの水曜日の"キーパーソン"は誰になるのか?
さて、前回のラストシーンが、オジサンも涙腺崩壊しそうなくらいの怒涛の10分弱の様々な家族、家、店、商売、恋心を集約した、見事な主人公の物語をけん引した「強い物語」の証しになっていたのは、まだまだ記憶に新しい。
従って、今回では何を描くのか、大変気になっていた。何せ、「100年史」を描く朝ドラだから放送尺に限りはあるし。その上、回を増す毎に「先が見たくなる展開」が増殖中だから、週の折り返しの水曜日のキーパーソンが誰になるのか、とても興味深く、朝8時をテレビの前で待った。
青い紫陽花の花言葉は、『冷淡』『無情』『辛抱強い愛情』
まず、冒頭だ。母・小しず(西田尚美)が庭に咲いていた青い紫陽花を摘んだ。花言葉をご存知の読者さんならピンと来たはずだ。色鮮やかな紫陽花が、この世に存在するが、橘家の庭に咲いていた紫陽花は、青と緑(と言うか、一般的には「白色」と言う)の2色。
白い紫陽花の花言葉は『寛容』。結婚式や披露宴でも、ジューンブライドのシーズンには、“パートナーとして認めある” と言う意味を込めて、使われることが多い。一方、今回のファーストシーンで母・小しずが積んだ青い紫陽花の花言葉は、『冷淡』、『無情』、『辛抱強い愛情』とされる。正に、今回の15分間を象徴するような “花選び”。
こう言うスタッフの気遣い、心配り、センスが、本作の大きな見所であることは言うまでもないが。花言葉の意味を知るだけで、ドラマの奥深さを堪能できる。それが、演出面からドラマを解析する醍醐味なのだ。
召集令状の色と、「たちばは」の暖簾の色で状況を描く
そして、今回は、ここ暫く休憩中だった、ラジオ、ラジオからの情報が大活躍。アバンタイトルから、しっかりと本体を画面の半分を使って強調。木目の本体の優しさと裏腹に、ラジオの裏側は何やら規則的に穴が空いており、それと音声が何とも “非人間的” な雰囲気を醸し出している。そんなところへ、姿を消していた算太(濱田岳)に召集令状が届いた。
副音声では「赤紙」のことを「薄紅色の紙」と表現していたが、ご覧の通り、御菓子司「たちばな」の暖簾の色は、和菓子を扱う店だから「京都の雅」を象徴する “京紫色” に似た色で、どことなく召集令状に類似した色ゆえに、今まで見て来た「たちばな」の暖簾と違う印象を受けた。同系色の濃淡で、「赤紙」らしさを強調するのも、実に映像的な表現だ。
※「オープニング映像」の私による独自解釈の投稿は、後ほど。お楽しみに。
【追記】投稿完了!
「カムカムエブリバディ」の“ペーパークラフト&コマ撮り”の世界観を、独自解釈してみた
算太は出征のシーンに込められた、巧みな撮影と照明演出!
久し振りに橘家に帰って来たのも束の間、算太は出征して行った。ここも、いつも通りに脚本も演出も、徹底的に「引き算の法則」を使って、最小限の、両親や家族の見送りの悲しみを表現して見せた。特に、印象的に見えたのは、大きな大きなおむすび。
初期の本作を象徴するかのように登場している「おはぎ」と、「白いご飯だけのおむすび」と「青い月夜」が、悲しさをそそる。
そして、翌朝のシーンの冒頭では、カメラを算太の右肩上の頭上に置いて、算太の挨拶と町の人たちをゆっくりと “俯瞰のワンカット” で描き出して行きつつ、そのカメラと真逆の低い位置に置かれたカメラで、たったのワンカットで算太の心細さを下から描く。立派に見えるべきアングルなのに、算太らしさが映し出される。
そして、父・金太(甲本雅裕)は、一人、作業場で丹念に菓子の生地をこねる。その力強さを、息子に分け与えるように…
「和の美」の中で描かれる"父の後悔と娘の諦めに似た決意"の対比が切な過ぎる…
気が付くと、まだ5分。今日も濃厚だ。人手も材料も乏しくなった「たちばな」は、次第に商いを縮小せざるを得なくなった。画面は、美しく輝く銅色(あがねいろ)。普通なら、アンバー(橙色)系の照明で「夕景」を作るが、私が見る限り、照明さんが意識した色は、和服に良く使われる銅のような赤黒く “つや” のある銅色だ。
明るめに仕組まれた銅色の照明が、「召集令状」の時は冷酷に見えた暖簾を主人公・を安子(上白石萌音)を登場させる “カーテン” のように映し出す。そして、作業机に差し込む夕日がうっすらと「たちばな」と書かれたお盆を照らし出すなかで、父の後悔と娘の諦めに似た決意の対比。「和の美しさ」の中で描かれるだけに、切な過ぎる…
男心同士、しかも兄弟の、本気で悔しく切ない葛藤と無念…
一方、雉真繊維は戦争の勢いが増すにつれ軍への納入も増え、事業を拡大が始まっていた。季節は冬。勇(村上虹郎)が雉真家に帰って来た。そんなある時、兄・稔(松村北斗)には、銀行の頭取の娘との縁談が上がっていることを知り、勇は大阪にいる稔のもとを訪ねる。
狭い部屋へ、手持ちのカメラ数台を持ち込んで、稔に複雑な思いをぶつける勇を描く。「兄さんじゃから…」と訴える勇と、自暴自棄になっている稔との、「安子を守りたい」、「安子を大切にしたい」の男心同士の、本気で悔しく切ない葛藤と無念。ワンシーンに今の兄弟の全てを詰め込んだシーンだった。
祖父・杵太と祖母・ひさとのコミカルなやり取りも見事
さて、11分頃のラジオからの情報で、今回の11分頃から「1943年」へ突入したことが分かる。そして、緊張が続く中に、ホームドラマであることを再確認させると共に、息抜きの場として、祖父・杵太郎(大和田伸也)と祖母・ひさ(鷲尾真知子)とのコミカルなやり取りが入る。
もちろん、次の勇の野球のシーンとのメリハリを、より付けるための仕掛け。でも、「小豆は宝」と言う祖父・杵太郎の何気ない一言が、ホッとさせてくれた。まだ、「たちばは」は終わっていないと…。しかし、ラジオは遂に告げた。学徒出陣が始まったと…
詰め込み過ぎの印象も無ければ、必要上の悲壮感が伝わって来ない
とにかく、今回も褒めるところしか見当たらない。
特に、絶妙だったのが、城田優さんのナレーション。シーンの切り替わりの、ちょっとした “間” を使って、状況変化の補足を説明にならないように語り聞かせた。また、良く見ると分かるが、この15分間で「約1年半」の時間経過が描かれている。そのこと自体も凄いことだが…
更に絶妙なのが、城田優さんがミュージカルで台詞を言うようなメロディを感じる “声” と、選曲センス抜群の劇伴と相まって、物語が進行しているため、詰め込み過ぎの印象も無ければ、必要上の悲壮感が伝わって来ない。これも、「引き算の法則」が活きている証拠だろう。
あとがき
やはり、称賛すべき一つ目は、この15分間で何気に「約1年半」も時間経過させていることに、殆ど気付かせない技術。これによって「箇条書き」や「歴史年表」らしさが、一切阻害されているのです。
もう一つは、戦争中なのに悲壮感、絶望感、緊張感を極力最低限しか視聴者に伝えない「引き算の法則」のさじ加減の上手さ、いや、絶妙さと言った方が適切だと思います。これ、本当に、スゴイ朝ドラになりそうな予感がします。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16243/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
6 7 8 9 10 土
第3週『1942-1943』
11 12
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