連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第11回・2021/11/15) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
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第11回/第3週『1942~1943』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
英語講座を放送しなくなったラジオからは勇ましい日本軍の戦果が流れる日々。衣料品の購入や製造にも制限がかかる中、雉真繊維は軍服や国民服の需要拡大に伴い、工場の拡大を検討していました。そんな中、春休みに帰省することになった稔(松村北斗)。安子(上白石萌音)も稔も2人で出かけるのを心待ちにしていました。しかし、帰ってきた稔には千吉(段田安則)から事業拡大に先立って銀行の頭取の娘との縁談が持ちあがり…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール) 第3週
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
本作に魅了されている読者さんたちと、魅了される理由を考える
今日は、今朝一番で投稿した【速達】に書いた通り、「絶対に書きたいこと」を最初に書こうと思う。と言うのも、最近の朝ドラって、1~2か月経ってから、一気に崩壊への道を進み始める作品があるから、褒めたい時に褒めておかないと、愚痴ばかりになる。
そこで、私が、『カムカムエブリバディ』を見始めて、「第2週まで良く出来た朝ドラだと思ったら、絶対に書こうリスト」を作っておいたのだ。今回は、本編の感想に入る前に、その「絶対に書こうリスト」を綴って、今のところは本作に魅了されている読者さんたちと、本作に魅了される理由を考えてみたい。
本作では "意味"” を読み取ろうとするのは意味がない!
まず、言いたのは、言いたいことは言わないこと。「何のこっちゃ?」と思われた読者さんもいたと思うが、真意は、こうだ。本作は、最近の朝ドラと比較して、台詞やナレーションが少ないのは、何となく感じていると思う。そして、「台詞やナレーションが少ない」と言うことは、言葉を使って、不要な説明をしないと言うこと。
これは、当然、脚本家の工夫によって施されている作戦だが。では、なぜ、そのような作戦を使うのか? 例えば、普通の朝ドラなら人間関係や時代背景を、言葉やテロップで分かり易く “説明” するのがお約束。でも、本作は意図的にそれを極力しないようにしている。
なぜなら、視聴者を “単なるテレビの中の出来事の見物人” にせず、登場人物たちと一緒、同時に五感をフルに使って、“説明” されるべき部分を、「同時体験」して欲しいからだと推測する。だから、本作では “意味” を読み取ろうとするのは意味がないと言うか、折角、脚本家がくれたお楽しみを捨てているようなものなのだ。
考えるな!感じろ!
そう、知る人ぞ知る、あのブルース・リーが映画「燃えよドラゴン」で言った名台詞に例えると、こうなる。
「Don’t think. feel! It’s like a finger pointing away to the moon. Don’t concentrate on the finger, or you will miss all the heavenly glory.」
(考えるな!感じろ!それは月を指差すようなものだ。指を見ていては栄光はつかめない!)
そう、本作も、説明を期待しては見物しているだけではいけないのだ。ドラマ世界にそのままに入り込んで “五感” をフルに使って味わうべき作品なのだ。
言葉で説明しないのを補強と補完しているのが、映像だ!
では、言葉で説明しないのを補強と補完しているのが、映像だ。先日の感想で触れた「勇 (村上虹郎)の肩の小さな動き」に代表されるような微妙な描写。他にも、失踪していた算太(濱田岳)に起きていたことをトーキー映画のように伝えた。
このように、台詞やテロップを極力控え、その分、映像とラジオ音声で人間関係や時代背景を視聴者に伝える手法が用いられている。だから、先日のあるコメントに返信したように、ラジオのニュースが語っているのだから、「日米開戦 1941年12月8日」のテロップが不要で野暮なことが、お分かり頂けると思う。
地域性や季節感を生活感に組み合わせて、ドラマの中に描き込む演出
さて、映像について、もう一つ。朝ドラを見る醍醐味でもあり、朝ドラだからこそ楽しめるのが、ドラマの舞台となる場所の地域性や季節感だ。最近の朝ドラは、コロナ禍の撮影の影響も受けて、屋内撮影が増えている。
そんな中でも、本作の映像には、ドラマの舞台となる場所の地域性や季節感を視聴者に伝える工夫に、一つ、主人公の実家で家業の御菓子司「たちばな」の和菓子を巧みに利用している。おはぎに始まり、月見団子、お汁粉、餅つきなど、和菓子で “季節の変化” を描いている。
また、地域性や季節感と切っては切れないのが、生活感。薄手のワンピースから浴衣へ。彼岸花からコスモスへ。カタカナ表記だった煙草「チェリー」が、漢字表記の「櫻」へ。このように、私たちが日常忘れがちな地域性や季節感を生活感に組み合わせて、ドラマの中に描き込んでいる。ここも、見逃せない。
「英語」は「人と人をくっつける接着剤(道具)」として使われる新鮮さ
本作が、ヒロインたちだけでなく、「ラジオ英語講座」の100年間も描くことは、既にご承知のはず。そうなると、主人公は “人間” でも、主役は “英語” になり、その英語を発する「ラジオ英語講座」自体のエピソードが中心になりそうだが。この2週間と1日を見た限りでは、その気配を感じない。
その理由は、本作が “英語” と言うアイテムを、「人と人とのコミュニケーション・ツール」としてではなく、「人と人をくっつける接着剤(道具)」として使っている。ラジオ講座での耳コピ英語も、手紙で送られた英語の歌詞も、全ては二人をくっつけるための接着剤(道具)。
そして、どうしても言いたいのが、字幕表示に於ける英語の「英文」と「カタカナ分」の使い分け。この絶妙な使い分けによって、接着剤の強さや用途の違いが見えて来る。今後は、字幕表示にも注目して欲しい。
良い演出には "引き算" による抑制が効いた美学がある!
それでは、ここで「第2週まで良く出来た朝ドラだと思ったら、絶対に書こうリスト」の総括をしよう。
ロケ地を活かした映像美、季節感や生活感をさり気なく丁寧に描くことを徹底的に考え抜かれた映像。俳優陣も実力と演技指導によって、的確なメリハリがある上に、遊び心があったり、泣かせたり。強引や過剰とは無縁の演技を魅せてくれている本作。
時々、私が当ブログに書く、「良い演出には “引き算” による抑制が効いた美学がある」を、続けている。この調子で進んで欲しい。
小物や情景や自然界の生き物で季節感を表すのが、本作のいいところ
さて、今回の感想。先週の金曜日の終盤で「1941年12月8日」を迎えた。そして、登場人物たちの着物、雉真家の庭からのカットの、大きく開いたガラス戸、画面に映り込ぬ白い椿の花、ヒヨドリのような鳥の遠くの鳴き声から、時は、1942年の春、3月上旬頃だろう。ガラス戸への反射像と影の雰囲気から、春の昼前だろうか。
こう言う小物や情景や自然界の生き物で季節感を表すのが、本作のいいところだ。そして、日差しがたっぷり室内に注ぎ込む豪邸である雉真家の千吉 (段田安則)たちの服装と、同じ岡山の市街地の「たちばな」にいる安子(上白石萌音)たちと、若干、着る物の質や厚さも違えてある、この辺の細かさも見逃した良くないところだ。
ゆっくりなズームインと切り返しだけで、物語の舵が切られた妙
10分頃、夕食時に千吉から別件の見合い話が始まる。もちろん、多くの視聴者は稔 (松村北斗)が縁談を断るはずだと思っている。その時の稔の気持ちを、カメラはどう表現したか? そう、ずっとカメラは稔の背中を映していて、「お断りします」と頭を下げた瞬間、アングルが切り替わり、稔の顔が見える。
そう、「お断りします」の瞬間の稔の表情を、敢えて視聴者には見せないで想像させたのだ。なぜ? それは「僕には…」から始まる父への決意表明を印象付けるため。それも、アップを使わず、出来るだけ「親子3人のスリーショット」をじっくり活かしつつ、ゆっくりとしたズームインで、長男の成長を稔のバストショットで描く。
落乱する両親へ一旦カットを切り替えて、再度カメラが稔に戻ると、ほぼアップ。このズームインと切り返しだけで “稔の成長” や “稔の独立心” や “稔の本気度” が分かる。だから、ナレーションはない。
そう、徹底的に無駄を削いで、先週までの「二人だけの夢溢れる恋バナ」から「岡山の繊維産業を大表する大企業と、町の和菓子屋の後継ぎ問題」へ、物語の舵が切られた。
台詞とナレーションを合体させて状況説明するから、本当に、見逃さない、聞き逃さないように!
中盤までは、相当量の状況説明があったが、時代の変遷を描くには、流石に必要枠のナレーションだろう。ただ、ここで気付いたのは、説明過多になる理由が、「月曜だから」で無いように感じたこと。
なぜなら、本作は基本的に流れが速く、「引き算」の演出で魅せるから、ナレーションも心なしか普通の朝ドラの月曜の説明過多とは異なって、台詞とナレーションを合体させて状況説明するから、本当に、見逃さない、聞き逃さないようにしないといけない。
あとがき
第3週も、期待を裏切らない丁寧な描写で始まりました。そして、15分間へ詰め込んだ情報量の多さも凄かったです。ただ、やはり、きちんと状況だけを描いているのではなく、あくまでも登場人物の心情を紡いでいるので、ドラマとして満足度は高かったです。そして、いよいよ「先が見たくなる朝ドラ化」が更に進化した感じですね。次回も楽しみです。
ごめんなさい。朝からたくさんのコメントやWeb拍手を頂いており、嬉しい限りです。しかし、朝7時から午後2時半過ぎまで、全く自分や家のことがやれておりません。従いまして、お返事は少しずつ時間を見つけて書いていきますので、もう少しお待ち下さい。できれば、通常コメント欄をご利用下さい。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16233/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
6 7 8 9 10 土
第3週『1942-1943』
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