日本沈没―希望のひと― (第5話・2021/11/14) 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』
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第5話『国土喪失と復活のとき』、ラテ欄『涙の告白… 救い出せ 命をかけた救出計画!! 希望を消すな』の感想。
なお、原作となった小説・小松左京『日本沈没』は既読。また、過去のドラマや映画も鑑賞済み。※本作は、今春に全編撮影終了しているため、要望などは書きません。
首都圏を含めた関東地区の沿岸部が水没した。東山(仲村トオル)は常盤(松山ケンイチ)に、日本未来推進会議が中心となって第2波に備えた住民避難を取り仕切るよう指示する。そんな中、データの検証を終えた田所(香川照之)は、ある信じがたい結論にたどり着き、総理官邸に報告。一方、高速道路上で避難バスなど多くの車両を巻き込むトンネル崩落事故が発生したことが判明する。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:小説・小松左京『日本沈没』
脚本:橋本裕志(過去作/LEADERS リーダーズ、死神くん、リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~)
演出:平野俊一(過去作/S最後の警官、インハンド、TOKYO MER) 第1,2,5話
土井裕泰(過去作/重版出来!、カルテット、凪のお暇、逃げ恥) 第3,4話
宮崎陽平(過去作/下町ロケット、陸王、ブラックペアン、集団左遷!!、半沢直樹2020)
音楽:菅野祐悟(過去作/半分、青い。、シャーロックUS,テセウスの船、危険なビーナス、青のSP、恋はDeepに)
危機感を描くのは、ドラマとして間違っていないが…
遂に、首都圏を含めた関東地区の沿岸部が水没したのだから、その危機感を描くのは、ドラマとして間違っていない。非難する人たちの表現は、TBSのプレスリリースかなんかで読んだのだが、「低予算」が原因で、CGを含めて、今回くらいが限界だそうだ。とは言え、常盤(松山ケンイチ)の水没に対する対応や動きは悪くないから、何とか見てはいられた。
なぜ簡単に田所博士の「第二波はない」を信じちゃうの?
ただ、偶然にも「コロナ禍に於ける現日本政府の後手後手の対応」を約2年間見せられ体験して来た<私>には、序盤の主人公たちの表現には、納得がいかなかった。
いくら、田所博士(香川照之)が序盤で「第二波はない」と宣言したとしても、政府としては、田所博士へおんぶに抱っこするのではなく、第二波、他の次の崩落や崩壊を予想し、その対策を練る必要があるのでは?
なのに、官僚たちが二次被害対策に動くようには見えなかったし、むしろ、一般の被災者と一緒に安堵して、呑気な人たちに見えたのが、残念だった。
この時点で、まずやるべきは、日本の政治の中枢機能を、関東から移転することでは?
これ、どうして、おかしな状態に見えてしまうのかと言うと、私なりの根拠はある。それは、前半の1/3位の頃は「第二波はない」と言う前提だったから、崩壊した関東から、政治家や官僚たちが、少しでも早く関東から脱出しろ! と、言っているわけでは無い。
この時点で、まずやるべきは、日本の政治の中枢機能を、関東から移転させて、関連する人材も移動すべき! だと言うこと。しかし、本作の脚本と演出で強調しているのは、危機の中での国民の非難と、その対策をやっている人たちの姿になっている。それも、チープな映像で。
要するに、「国民が関東から “逃げる” こと」と「政治の中枢を関東から “ある意味で逃げる” こと」は、同じ “逃げる” や “回避する” と意味が違うと思うのだ。 この2つの “逃げる” の強調する方を間違っているから、おかしな状態に見えてしまうのだと思う。
水没以外の大地震や、二次、三次被害は起こらないと思ってるのが不思議…
それに、第1話からの “沈没のスピード感” から察すると、関東のあれだけの広範囲が水没しているのだから、原因から考えても、水没以外の大地震が発生するとか、地震による大火災、大火災による火炎竜巻などの、二次、三次被害が起こって当然だと思うが、映像的には、予算がないから、僅かしか描写はない。
要は、予算不足で『日本沈没』を現代で描こうとしたことに無理がある。従って、もっと被害状況の描写について「少な過ぎる!」と騒いだところで、無駄なだけ。そう、“ドラマ” として成立しないから、今回くらいで諦めて、被害の映像は “脳内CG” を大活躍させるしかいないだろう…
いっそのこと、今回を最終回にしても良かったのでは?
さて、今朝は、すこぶる<私>の元気が良いので、書いてしまうが。どうせ、この程度が「沈没の描写」の限界であるなら、そして、物語として意外と切りが良いことを考えると、今回を最終回にしても良かったのではと思ってしまった。もちろん、作り手たちは、名作をどう料理して、後半戦を描こうと頑張っているとは思うが。
でも、今回の後半のように、主人公の周りばかりを描かれると、前回までの主人公の「日本国民を救う!」と連呼していた、あの情熱や必死さは何だったのか? と、思ってしまった。
中盤で「船を出して欲しい」と漁師に願い出る場面があったが、あれだって、地震による津波が発生する可能性がゼロではないのだから、前回までと今回の主人公が、まるで別人に見えてしまった。ガッツ石松さんは印象に残ったが…
前回までの"国民を背負った主人公"と、今回の"頼りになるパパである主人公"では、かけ離れ過ぎ!
28分頃、常盤が「俺は(中略)国民一人一人の顔は見ていなかった」と言っていたが、そう感じた姿勢、態度、意識こそが、「日本国民を救う!」と言う言葉になって、主人公の口から発されないと、意味がないと思う。
その上、40分頃の避難所で救助を呼ぶ動機だって、娘が困っていると言っているからが理由では、前回までの “国民を背負った主人公” と、今回の “頼りになるパパである主人公” と、かけ離れ過ぎている。ここだけは、何とか修正して欲しいものだ。
あとがき
あの日本SFの金字塔『日本沈没』を、低予算で新解釈を入れて再構築するなら、あれこれ盛り込まずに、単純に「若き官僚たちが、上を説得し、下を動かし、国民を救う!」だけで良かったと思います。まだ、後半戦があるので、とにかく、危機感と切迫感を国民が強く感じているように描いて欲しいです。もう、それしかないと思います。
『救命病棟24時』や『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』のスペシャルや、最近放送されたばかりの『TOKYO MER~走る緊急救命室~』より、日本が沈没、関東が水没する方が、災害としてチープに見えちゃだめだと思いますよ。
CGとか、エキストラで何とかできないなら、やはり主要な俳優陣と、メインの登場人物たちで、危機感と切迫感を国民が強く感じているように描くしかないです。でないと、このままでは、主人公がヒーローで活躍するだけの薄っぺらなストーリーになりますよ、きっと…
と言いつつ、推しの出演者目当ての視聴者たちで、視聴率はアップするでしょうが。そこに頼ると、ドラマとしては面白くないんですよ。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16231/
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