連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第10回・2021/11/12) 感想
ある読者さんからの【非公開コメント】で「稔」と「勇」の表記を一部修正
ありがとうございました。

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
公式リンク:Website、Twitter、Instagram
第10回/第2週『1939~1941』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)の関係を知りつつも、安子への恋心を諦めることは出来ない勇(村上虹郎)。複雑な思いを抱えたまま、甲子園出場を目指してひたすらに練習に励んでいます。しかし若い男性には召集令状が届きはじめ、連日ラジオからは各国の戦況を伝える臨時ニュースが流れていました。勇にとって最後の夏にも戦争の波が襲いかかります。着実に戦争が日常を変えていく中、安子の心も大きく揺れ動いていて…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール)
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
※拙稿の上、かなりの長文です(謝)
前回の感想で、勇の告白に触れなかったネタ証しから始める
やはり、今のところ、(他の過去の作品は別にして)本作でのメイン監督である安達もじり氏とは、気が合っている。
前回の感想で、前回のラストシーンでの、安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)の関係を知りながらも、安子への気持ちを諦められずに稔に打ち明けた勇(村上虹郎)のことには、一切触れなかった。読者さんの中には「なぜ、触れないの?」とか「書かない意味が他にあるの?」と疑問を持たれた人がいたかも知れない。
そこで、今回は、そのネタ証しから感想を始めようと思う。
前回のラストカットの"稔の肩が微妙に上がっている"のに気付いたか?
恐らく演出家の誰もが、作品のワンカット目とラストカットに最大の注力をする。前回の稔と勇のラストシーンを見れば分かると思う。兄弟がキャッチボールをしている。勇が投げたボールを取り損ねた稔が立ち尽くす。カットが稔のバストアップ(胸より上を映すサイズ)になった時の勇の “呼吸” に注目して欲しい。
普通の演出家なら、言い難いことをやっと兄に言った勇は、胸をなでおろすはず。そして、その胸をなでおろし切った演技でカットする。でも、よ~く勇の “呼吸” を見て欲しい。カットの直前で勇の “肩” が微妙に上がっている。わかるだろうか? これが何を意味するのか?
演出家は、稔のたった1つの台詞のための息継ぎに、丸1日使ったのだ!
ここからは、私の想像の域。
恐らく、脚本も演出も演技指導もリハーサルも、このキャッチボールのシーンは、「日を跨ぐ」のを前提に、一気に撮影し、編集の一番最適なところで、日を跨いでいるのだ。それが「稔の肩が上がった瞬間」だってこと。この瞬間でカットすれば、翌日(現実には今回)の冒頭で勇が話の続きをするのが、最も自然だからだ。
勇がボールを投げて、稔が取りこぼしたボールのアップから2ショットになって、勇が話を続けるのには “呼吸の間” が必要なのだ。でも、その “間” を続けて描いてしまうと、やや、弟が兄を責めている感じに映ってしまう。
そこで、この演出家は、勇の今回の最初の台詞「あんこが 兄さんを好きなんは知っとった」と言うための “息継ぎ=呼吸の間” に「丸1日(視聴者にとっての “24時間” と言う意味」使ったと言うことだ。
前回での稔が安子の両親へ謝罪と願いを言うパートと、兄弟のパートに、きちんと区切りを付けたかったから
なぜ、こんなことを演出家はやったのか? それは、前回での稔が安子の両親へ謝罪と願いを言うパートと、兄弟のパートに、きちんと区切りを付けたかったからだと思う。
だって、もし、前回のラストシーンが無くて、今回のアバンタイトルの冒頭だったら… と、前回を「脳内編集」して想像して欲しい。二人の男性、それも兄弟に好きになられた状態の安子の存在が、稔だけのもので終わってしまう。でも、劇中では “まだ” そうではない。稔の気持ちが片付いていない。
だから、金曜日のメイン料理のために、木曜日のラストに、フランス料理で言う「アミューズ」を出したのだ。因みに「アミューズ」とは、フランス語で「お楽しみ」の意味で、「お店の最初のおもてなし」ってこと。それを、朝ドラでやっちゃったと言うわけ。
従って、「アミューズ=お楽しみ」に前回で私が触れるのは “野暮” だから、書かずに触れなかったが答え。お分かり頂けただろうか?
主題歌明けの展開が楽しみになる、主題歌までの展開
まあ、なんとグッドタイミングで『アルデバラン』が入って来るのだろう。直前の雰囲気、勇の決意を全部包み込むようなオープニング。このタイミングをやりたかったから、前回のラストで時間調整したと思う。そう、「アミューズ=お楽しみ」の時間で。
そして、あの兄弟のシーンのあとに流れると「♪君と私は仲良くなれるのかな」の歌詞が、自然に勇と稔に聞えて来る。そして、「♪笑って 笑って 愛しい人」が、安子に聞える。こう言う計算し尽くされた脚本と演出で『1939~1941』を描こうと言うのだから、本当に主題歌明けの展開が楽しみでならないのだ。
今のうちに、明るい日常を描いておこうと言うのも、先程のキャッチボールと共に良かった
主題歌明けは、「丸1日ぶり」の、ラジオの基礎英語講座とラジオ体操。所謂、本作のテーマに一番近いパーツであり、アイテムの話だ。ラジオ体操を仕切る荒物屋「あかにし」の赤螺吉兵衛(堀部圭亮)の演説の内容も、以前からは若干 “戦争寄り” に変化しつつ、ちゃんとコミカル仕立ての親子のホームドラマにもなっている。
やはり、金曜日の5分頃と言えば、服装や草木の状況を見る限り、劇中はまだ1941年の春のようだ。太平洋戦争が始まるのは12月。今のうちに、明るい日常を描いておこうと言うのも、先程のキャッチボールと共に良いと思う。
衣装や会話、草花や様々な音をさり気なく利用して、季節、状況、時間の変化を丁寧に描く
その後の描写も、決して暗過ぎずに、明る過ぎずに… を微妙に保ちながら、前述の通りに、衣装や会話、草花や様々な音をさり気なく利用して、季節の変化と、状況の変化と、そして、それらをひっくるめた時間経過を、丁寧に “安子の日常” を中心にして描く、描く。
くどくなく、でも、手堅く描く。そして、この脚本と演出の妙は、例えば普通でやるように、幾つかの出来事を時間軸に合わせて箇条書きに並べた結果として、視聴者に時間経過を感じ取らせる手法でないのだ。
本作の脚本家と演出家は、視聴者に時間経過を感じ取らせる手法
今回で言うなら、アバンのキャッチボール、ラジオ体操、赤紙、甲子園の予選大会、「たちばな」の厨房とラジオ中継のように、具体的にそれぞれの出来事の日時を提示することもなく、順番も明示することもなく、ただただシーンを繋いで行くだけで、視聴者に時間経過を感じ取らせる手法なのだ。
だから、視聴者は想像する。「今、いつなんだ!」、「今は、どんな状況なのだ?」と。そう、視聴者に9分間、想像させたところで、ラジオのニュースで、「昨22日 現地時間未明…」と、日付だけを提示して、ソ連とヨーロッパの戦争へ時を進めた。
本来、昨夏放送予定だった本作が今年放送する意味を考える
そして、勇たちに夏の甲子園大会の中止の知らせのシーンと、勇と安子のやり取りのシーンだ。
これから書くことの出展はNHKのプレスリリースだったと思うが。実は、本作の企画が始まったのが、2018年頃だったそうだ。放送は2020年の4月~9月予定。要は、新型コロナウイルス感染が無かったら、東京五輪に日本中が沸き上がり、パラリンピックも終わった頃に、本作も終了する予定だった。
しかし、コロナ感染拡大によって、撮影が始まる約1年前(企画はスタートしている)に夏の甲子園が中止になり、東京五輪が翌年に延期さえることが決まった中で、本作は2021年3月26日に撮影が始まった。
だから、私は、次のように思う。世の中がコロナで先が見えない頃に撮影が始まった本作のタイトルが、明るく楽しい『カムカムエヴリバディ』で、要するに「楽しい毎日が訪れますように」と名付けられたと言う運命的なものを、感じたシーンだ。
稔と安子のその後も少しは見てみたかったが…
で、今回のラストは、遂に1941年12月8日の日米開戦。今回の15分間で、かなり詰め込んで、日米開戦まで持って行った。稔と安子のその後も少しは見てみたかったが、今週末でここまで進めておけば、次回(次週)からは「1942年~」を描くわけで、作る側も、見る側も分かりやすくて良かったと思う。
あとがき
それにしても、スゴイですね。かなり足早に進んでいるのにそれを一切感じさせず、むしろ、丁寧に物語を紡いで進んでいるように感じます。もう、安子だけで半年でも十分のような。
そう考えると、いろいろ諸事情はあるでしょうが、『エール』や『カムカムエブリバディ』のような作品は、半年でなく「1年放送」でも、良いような気がしました。次週から、どうなるのか先が気になります。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16214/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
6 7 8 9
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