連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第6回・2021/11/8) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
公式リンク:Website、Twitter、Instagram
第6回/第2週『1939~1941』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
夏休みが終わり、岡山から大阪に帰った稔(松村北斗)と文通を始めた安子(上白石萌音)。何通ものやりとりを通じて2人は心を通わせていくのでした。稔との仲を深める安子を小しず(西田尚美)は心配しています。一方、甲子園出場を目指して野球の練習に励む勇(村上虹郎)は、昔から安子へのある思いを抱き続けていますが、いつも言えずじまいです。そんな中、ヨーロッパでは戦争が始まり、世の中の気配も変化してきて…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール)
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
今回のアバンで期待したのは"文通"の続きの描き方…
演出が、第2週も安達もじり氏だから、先週と同じような演出にはなると思うが。今回のアバンタイトルは、演出的に “好き” と言うよりも、脚本と演出を含めて “感心” したと言う感じだ。
第2週の月曜日のアバンタイトルは、恐らく、「土曜日版」が「ほぼ完全なダイジェスト版」であったから、「1週間の振り返り」でなく、「第1週で最も印象に残ったエピソード」の “続き” から始まると予想していた。何せ、本作には「ヒロイン3人、100年間を描く」と言う使命があるから、そんなに後戻りや振り返りをやる時間はない。
となると、期待したくなるのは、「文通(まだ、恋文とは言えないはず)」の “続き” の描き方だ。
アバンが、情景&説明カットから入ったのに驚いた
まあ、普通なら、アバンだし、時間もないから、既に稔(松村北斗)が安子(上白石萌音)からの手紙を読んでいるカットから始まっても、文句はない。
しかし、今作は、情景&説明カットから入った。それも、下手(画面左)に当時らしい自転車を舐めて(画面に入れ込むと言う意味の撮影用語)路地の細長さや奥行き感を創出。
更に、画面中央に “めんこ” で遊ぶ子供たちを配置して、日差しは入り込まないが、昼過ぎから夕方前の時間帯、薄手の長袖で夏が終わり “秋近し” の雰囲気を醸し出した。そして、稔がポストから安子の手紙を取りだした。
押し付けずに "何となく" だから印象に残る
敢えて、強引に言えば、こんなカット、要らないのだ。要らないが、あると無いとでは雲泥の差が生まれる。まず、前述のような季節感や時間帯や、稔の住まいの雰囲気やご近所の感じが、何となくでも伝わる。これが重要なのだ。押し付けずに “何となく” だから印象に残るのだ。
押し付けられると人間は基本的に反発する。でも、“何となく” だと “何となく” 記憶に残る。こう言う描写の積み重ねこそが、その時代、人々、空気感を、視聴者へ知らず知らずに刷り込んで、作品の世界に惹き込むのだ。上手い演出だと思う。
安子がすぐに手紙を書いたと予想するし、期待するのではないだろうか?
そして、先週を見ていない人のために、駅前での会話の回想をちゃんと挟んで補強。また、この回想が入ったから時間経過が、衣装や日差しで分かる。そう、もう稔が手紙を開く前に、今回紹介される文通が「第1号」でないことを表現しているのだ。もちろん、安子があの駅前の日から1か月ほど経ってから手紙を書いたと言う可能性はある。
しかし、第1週の、すぐにラジオの英語講座に取り組んだ安子、あの自転車練習レベルの安子、そして。あのヨタヨタ初乗りの安子を見た視聴者なら、安子がすぐに手紙を書いたと予想するし、期待するのではないだろうか。そう、これが “行間を描く” と言う演出なのだ。
稔が安子からの手紙を読む、夜のシーンがいい
そして、安子のモノローグで読まれる手紙のシーンは夜。ここで “好き” なのが。1つは、稔に当たっている照明が「電球」の温かな色になっていること。
蛍光灯が日本で一般家庭に普及し始めたのが「1955年以降」と言われているから、そもそも、今週のサブタイトル『1939~1941』の時代には無いのだが。そこもちゃんと検証されているはずだし、何より、ホンワカとした雰囲気が良いじゃないか。
もう1つの “好き” は、手紙の内容が「今夜は十五夜」ってこと。もう「十五夜=お月見=月見団子=和菓子屋」は定番の連想ゲームで、映像も連想ゲームに合わせて進んで行く。
たった「今夜は十五夜」だけで、主人公の実家の仕事や、安子が看板娘として活躍する様子が分かるし、やや季節感の薄い「おはぎ・ぼた餅」から「月見団子」に画面に映る和菓子が変わるだけで、季節の移り変わりと、安子と稔の関係の進展まで見えて来る。いや、正確に言えば、何となく感じ取れる。
そして、“何となく” だから、先が見たくなると言うわけだ。
1941年12月8日午前6時。突然、ラジオから、次の臨時ニュースが流れた
さて、気分良くドラマも始まり、感想もいい感じで始まった第2週の月曜日ではあるが。注目して欲しいのは、サブタイトルの『1939~1941』の「1941年」だ。私が、わざわざ解説する必要もないが。敢えて、本作だから、書こうと思う。昭和16年12月8日午前6時。突然、ラジオから、次の臨時ニュースが流れたのだ。
「帝国陸海軍ハ今8日未明西太平洋ニオイテ米英軍ト戦闘状態ニ入レリ」
そう、1941年(昭和16年)は、あの太平洋戦争が勃発した年。要は、第2週で、太平洋戦争突入まで描くと言う意味だ。主題歌明けも、安子と稔が何通もの文通のやりとりを通じて、二人の心を通わせて行く姿が描かれたが、恐らく今週末には「1941年」が描かれるはず。
となれば、この第2週では、安子の初恋が芽生えた「1939年」からの「ヒロインの2年間」を見るのだと思うと、何となく嬉しくもあり、悲しくもあり、辛くもあり、応援したくなる。
今回の15分間を、文通だけで描いたのは成功だったのか?
季節の旬の和菓子が変わると言うことは、時間が前に進んでいること。それは、劇中で安子が自転車に乗っている姿にも見て取れるし、タバコの名前が「チェーリー」から「桜」になったこと、その他のことでも、表現されている。そう、前述のように、劇中の二人にとっては決して幸せな時代に向かっているわけでは無い。
そのことを、今回は、安子と稔のやり取りは、「全編を文通」で「互いの読み手の声」で表現した。この「相手の文通を読むことで、相手と自分の “日常” を描写するのが、安直なアイデアなのか、ベストなチョイスなのか、演出の目線で考えると微妙だ。いや、脚本の目線で考えると自然だし、描き易いと思う。
しかし、それが文字から映像になると印象が変わる。だから “微妙” と言ったのだ。
終盤3分間の脚本と演出のテーマとの親和性はお見事過ぎる
しかし、この脚本家は、そんな私の “微妙” との判断を打ち消した。それが、14分頃から始まった、先週の二人が聴いた米国の名トランペット奏者・ルイ・アームストロングが演奏した「On the Sunny Side of the Street(明るい表通りで)」の歌詞の英語版だ。
これを、オリジナル楽曲に合わせて、安子と稔が口を合わせているように、一緒に “日本語に翻訳された歌詞を喋る” と言う表現に使った。
単純なのは、英語の歌詞を二人合わせて読んで、視覚障害者向けでない、一般的なテロップで翻訳された歌詞を画面に乗せると言う手法でも、これなら、歌を知っている二人が歌っていないと言う不自然さが生じる。しかし、歌ったらミュージカルのようになって、ドラマの世界が壊れてしまうし、違和感も生じる。
また、英語歌詞のまま二人が読んで、テロップで日本語の意味を言えると、一昔前のカラオケビデオのようになってしまう。そこで、今作は、英語の歌詞を、それぞれの英語力(安子は辞書を使うが)で翻訳し、それを “二人の言葉” にして、音楽に乗せた。そのことで、「ラジオ英語講座」と言う本作の “テーマ” を更に印象付けることに成功した。お見事としか褒めようがない…
あとがき
正直、15分間ラストまで、文通のやり取りの読み合いで締め括るのは、いくら何でも厳しいと思って見ていました。しかし、最後の約3分で、「文通=英語=人生の輝き」を全部一度に描いてしまいましたね。これ、サブタイトルの最後の年が「1941年」だから、そして、ラストシーンが年明けの「1940年」と分かっている人の方が、感動できたでしょうね。
でも、それを言わないし書かないのが本作。わかる人にだけ、「明るい表通りで」と言う歌の歌詞が、どれだけ人々の心に勇気と希望を与えた歌なのか、知って欲しいです。もちろん、ここに翻訳文を書くような野暮はやりません。
ただ、調べるのが億劫と言う読者さんにだけ、私の解説を。この曲が初出されたのが1930年。その前の年、1929年はウォール街株価大暴落から始まった世界的な経済大恐慌によって多くの人達が貧困にあえいでいた時代です。その生きる活気を失った多くの人々の心に勇気と希望を与えて大ヒットしたのが、今回の「On the Sunny Side of the Street(明るい表通りで)」。
劇中にもあったように、太平洋戦争突入前に作られた名曲ですが、歌詞の内容をよく読むと、第二次世界大戦で敗戦した戦後の日本で大流行した、並木路子さんや美空ひばりさん「りんごの唄」に、どこか胸中するものを感じます。絶望真っ只中の人々に与えた “希望のそよ風” が「りんごの唄」。
これから、戦争に巻き込まれて行くであろう安子と稔の運命に幸あれ… そんな気持ちでいっぱいです。
ルイ・アームストロングの「On the Sunny Side of the Street(明るい表通りで)」も素敵ですが、今回は、女性ヴォーカルから、サザンオールスターズの「いなせなロコモーション」の歌詞にも登場する、米国名ヴォーカリストから、ドリス・デイの歌う、ちょっぴり明るい希望を感じる 「On the Sunny Side of the Street(明るい表通りで)」をご紹介して、終わりにします。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16194/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
1 2 3 4 5 土
第2週『1939~1941』
- 関連記事
-
- アバランチ (第4話・2021/11/8) 感想 (2021/11/09)
- ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~ (第6話・2021/11/8) 感想 (2021/11/09)
- 連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第6回・2021/11/8) 感想 (2021/11/08)
- 真犯人フラグ〔2クール放送〕 (第4話・2021/11/7) 感想 (2021/11/08)
- 日本沈没―希望のひと― (第4話・2021/11/7) 感想 (2021/11/08)