最愛 (第4話・2021/11/5) 感想

TBS系・金曜ドラマ『最愛』
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第4話『動きはじめる禁断の恋! 殺人事件の証拠がついに出現!?』の感想。
事業説明会での騒動などが原因で、後藤(及川光博)の梨央(吉高由里子)への風当たりがさらに強くなる。また、後藤は会社の裏事情を探るフリーライター・しおり(田中みな実)について調べるよう情報屋(高橋文哉)に指示。一方、大輝(松下洸平)と桑田(佐久間由衣)は、昭(酒向芳)へ500万円を渡した男について梨央と加瀬(井浦新)に聞く。そんな中、新薬の中傷記事が出て…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:奥寺佐渡子(過去作/夜行観覧車、Nのために、わたし、定時で帰ります) 第1,2,3話
清水友佳子(過去作/夜行観覧車、わたし、定時で帰ります、朝ドラ「エール」) 第4話
演出:塚原あゆ子(過去作/アンナチュラル、グッドワイフ、グランメゾン東京、MIU404) 第1,2話
山本剛義(過去作/凪のお暇、コウノドリ2、わたナキ、オー!マイ・ボス!恋は別冊で) 第3,4話
村尾嘉昭(過去作/アンナチュラル、Nのために、キワドい2人、死にたい夜にかぎって)
音楽:横山克(過去作/わろてんか、映画「ちはやふる」シリーズ、ドリームチーム、メネシス)
主題歌:宇多田ヒカル「君に夢中」
まえがき
「まだ、他に真実がある」とか「○○が真犯人であって欲しくない」のような、本作の内容に関する憶測については、今回の感想では書くつもりは無い。従って “真実&犯人捜し” を期待している人は、この感想から離れた方が、時間の有効利用になる。
まず、いつも私が書いている上記の「毎回の担当スタッフ一覧」を見て欲しい
私が、感想の冒頭でこのような宣言をするには、理由がある。その前に、いつも私が書いている上記の「毎回の担当スタッフ一覧」を見て欲しい。まず分かるのは、脚本家が、第3話までと交代したこと。そして、演出家は第3話と同じこと。そして、脚本家と演出家のコンビで見ると、第1,2話と両方共に変わっていること。
スタッフの切り替えのタイミングすら"計算尽く"なのだ
このことで何が言えるのか? このことで、私は何をどう考えたのか? 要は、ドラマ『最愛』の全体の雰囲気や基本情報などは、メインの脚本家と演出家で、“既に構築済み” って、こと。
もちろん、脚本家の交代はドラマ全体に及ぼす影響は大きく、第3話と同じ演出家が担当しても、梨央(吉高由里子)と大輝(松下洸平)の二人だけのシーンの雰囲気や、梨央と加瀬(井浦新)だけの場面では、演出による変化が見られる。
しかし、「本作のスタッフは巧みな作り込みが巧いから、視聴者を引き寄せる」ようなことを言い続けて来た私には、「脚本家交代」と「人間関係の変化」のタイミングがバッチリ合っているため、逆に意図的に視聴者には意識させていない “時間経過” が見て取れる。
例えば、26分頃の居酒屋の屋内外での「梨央と大輝のやり取り」なんて、前回よりも微妙に “親近感” に違いが見えた。しかし、物語上の視点から同じシーンを見えれば、“親近感” が増していて当然なわけで。そう言うスタッフの切り替えのタイミングすら “計算尽く” だと、私は考える。
異論反論あろうが、秀作だからこそ、ここで最終回だけ見ても、十分に"元は取れる"のだ
そして、もう一つ考えたのが、なぜ、第3話で脚本家だけ変更したのか? 当然、第4話で同時に、脚本家と演出家を交代することも出来るはず。しかし、本作のスタッフは、そちらを選択しなかった。当然、二人が同時に交代すると、映像的な雰囲気までもが、一気に変わってしまう可能性を阻止するため… とも考えられる。
しかし、私は、「脚本家の交代」にスポットライトを当てた。なぜなら、 前述した “真実&犯人捜し” を期待している人たちは別にして。
私は、本作の於いては、既に過去の事件の真相は全て描き終わっており、最終回までに描くのは、その “過去の事件” と “未来の事件” の繋がりと、特に、 「梨央と大輝の今後の関係性」、そして、「結末」を描くだけだと思ったから。要するに、極端に言えば、本作ファンには叱られるのを覚悟で書くと、最終回だけ見ても、十分に “元は取れる” のだ。
第4話から脚本家を交代させた最大の理由は…
ただ、第1~3話の怒涛の展開を見て来た視聴者にとっては、「最終回を見れば全てが分かる」では気が抜けるし物足りない。また、作り手たちにとっても「最終回を見れば全てが分かる」なんてことをするはずがないと、容易に想像できる。
だから、敢えて、第4話から脚本家を交代させた最大の理由は、登山に例えるなら “胸突き八丁” であり、人生に例えるなら “頑張りどころ” であり、サスペンスラブストーリーにとっては正に “正念場” だからってこと。
要するに、これまでも十分に面白かったが、この第4話以降は「最終回を見れば全てが分かる」と言われないように、今まで以上に “過去の事件” と “未来の事件” の繋がりと、特に、 「梨央と大輝の今後の関係性」を丁寧に描いて、「結末」まで盛り上げていくと言う “宣言” なのだ。
歩行者用信号の色を使った「過去と現在の演出」に注目
それが誰の目にも分かるのが、30分前後での居酒屋のシーンの直後の歩行者用信号の色を使った演出。「赤信号」の時は、昔の梨央と大輝で、「青信号」に変わると、容疑者と刑事になるような演出は、第1,2話では強調しなかった。やったとしても、さり気なく。
しかし、第4話では、「ここを見て!」と言わんばかりに、分かり易く、且つ、印象的な表現をぶち込んで来た。通常撮影と、スローモーション(撮影ではなく、恐らく編集で作った)との悔い見合わせの妙と、吉高由里子さんと松下洸平さんの演技も自然で、第4話では “最も魅せる演出” の一つで、「梨央と大輝の今後の関係性」を丁寧に描いて、「結末」まで盛り上げていくと言う “宣言” が見えたはずだ。
第4話は、「最終回を見れば全てが分かる」に対抗するために、とても巧妙に創られた"1話"
そして、実際に第4話を見終えると、不思議な感覚に襲われた。まず、様々な証拠と見られる物証が、今流行りの “フェイク” である可能性だ。劇中の女性記者なんかの使い方を見ると、あり得ないことではない。しかし、本作の作風からすると、そこまで戻ってしまうと、折角気づき上げて来た見事なストーリ―が陳腐になるような気がするのだ。
ただ、これは一視聴者の私には到底判らぬこと。とは言え、一視聴者として言わせて頂くなら、「これ以上は、第1,2話の雰囲気を変えないで欲しい」 ってこと。まあ、相当に脚本家と演出家の内々の打合せが出来ているようだから、あまり心配はしていない。
いずれにしても、本作のタイトルは『最愛』。「刑事ドラマ」よりも「ヒューマン・ドラマ」へ向かっていく可能性は残っている。この第4話は、「最終回を見れば全てが分かる」に対抗するために、とても巧妙に創られた “1話” だ。
あとがき
今回も、主題歌:宇多田ヒカルさんが歌う「君に夢中」が絶妙なタイミングで流れましたね。本投稿時点で、リリース日は未定で、11月中にデジタル先行配信の噂がありますが、不確かな情報です。ドラマの内容も、主題歌も気になってしょうがないです。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16182/
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