連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第5回・2021/11/5) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
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第5回/第1週『1925-1939』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
ラジオ英語講座を聴くことは安子(上白石萌音)の毎朝の日課になっています。そして安子の中には稔とのささやかな甘い夢が芽生えようとしていました。ある日、そんな様子を見た親友のきぬ(小野花梨)の計らいで、安子と稔は2人で夏祭りに行くことに。しかし、稔の弟で幼なじみの勇(村上虹郎)から、社長の跡取りの稔と「あんころ屋の女では釣り合わん!」と言われてしまいます。落ち込む安子は、稔の前から走り去ってしまい…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール)
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ)
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん)
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
冒頭での「水田とうふ」店の使い方が絶妙過ぎる!
冒頭で、安子(上白石萌音)の実家である岡山市内の商店街にある和菓子屋で生まれた御菓子司「たちばな」と同じ商店街に店を構える豆腐屋「水田屋とうふ」が、全面的に映像で描写されるのは初めてだろうか。
屋外ロケの特質である、太陽光の色温度(申し訳ない。ここで詳しく説明していると、大変なことになるから、豆腐屋のシーンだけに、「水臭い」と言わずに前へ、前へ)と、影の角度で、季節は夏、時間は早朝であることが分かる。もちろん、「おはよう」と言う台詞もあるが。
やはり、昭和では「朝食前の豆腐屋」と「夕食前の豆腐屋のラッパ」が季節の風物詩。そこを上手く利用したアバンタイトルの冒頭部分。やや、青味掛かった太陽光が、夏の朝を象徴している。うん、当ブログ読者の常連さんなら、こう言うさり気ない「情景カット」と「やり取り」で、季節感や時間帯を描くことが、私の大好物であることは、重々承知だと思うが…
小道具や衣装で登場人物の心情描写は、私の大好物!
更に、褒めたくなるのが、今回、最初に登場した安子の衣装が、前回で “縫い間違い” をしてしまって着替えた、緑色基調のワンピースだったこと。その後に、稔(松村北斗)と自転車乗りの初練習する時のワンピースは、赤色の花柄基調のワンピースだったし、“縫い間違い” をする前に来ていたのは、グレー系のワンピース。
何が言いたいのかと言うと、この2日間で、主人公の安子は、普段着のグレー系、家の手伝い用の緑色基調、ウキウキワクワク気分の時は赤の花柄系のワンピース3着だけを着替えているってこと。
これ、分かり易くて良いと思う。まず、大量のワンピースを持っているような大金持ちでないことを表すし、朝から緑色基調のワンピースってことは、いつでもお手伝いで外出する準備をしている安子が分かるから。ハイハイ、私、こう言う小道具や衣装で登場人物の心情描写をするのも、大好物なのだ。
アバンとして、季節感、時間表現、リズミカルさなど、申し分なし!
そして、「丹原さん おはようございます」と朝の挨拶をする時も、もう月曜日から刷り込まれている “安子のすり足の小走り” で、金曜日も安子らしさを強調するのを忘れない。
この “安子のすり足の小走り” のテンポに合わせて、御菓子司「たちばな」の従業員・丹原(中村凜太郎)が「おはようございます。お嬢さん 近頃 お早いですね」と問われて、笑顔で返す。
そして、昭和世代の人には懐かしい「耳コピ」で英語のお勉強。そこへナレーションで、既に「安子の日課になっていました」と、自転車練習の翌日から少し時間経過している雰囲気も漂わせた。ここまで、約1分間。
安子の実家が和菓子屋であることなどの「主人公の周辺状況」の説明は多少割愛したが、週の終わりの金曜日としては、 「御菓子司」の暖簾や商品ケースを見せたり、「豆」に関連する業界であることを匂わせて、全面に押し出したのは、主人公が「朝6時半に始まるラジオ講座に嵌り始めたこと」。
アバンタイトルとしては、季節感、時間表現、リズミカルさなど、申し分ないと思う。
笑い声とセミの鳴き声と風の音が、私の青春を映し出させた
褒めてばかりだと、気持ち悪いと思われる読者さんもいられると思う。しかし、いつ、この「称賛の嵐」が「愚痴の山」になるか見当がつかないのが、昨今の朝ドラ。だから、褒められる時には出来るだけ、口には “おはぎ” を咥えて、褒めパーツには私なりの解釈を加えて、書き続けてみる。
主題歌明けのシーンが良いのは、やはり緑豊かなロングショットから始まる清々しい気持ちになれる屋外ロケ。そこで、稔から “お古” の辞書を貰って、自転車の練習へ。それを近所では裕福で有名な「雉真繊維」の稔の弟・勇(村上虹郎)が目撃。白色、黒色、緑色、茶色の4色で描く、夏らしいコントラストと配色の世界。
笑い声とセミの鳴き声と風の音が、何とも言えない青春を映し出させた。
豆腐屋の看板娘が友だちの和菓子屋で店番をすると意味…
そして、御菓子司「たちばな」に帰宅した安子が、店番をしてくれている豆腐屋「水田屋とうふ」の看板娘・きぬ(小野花梨)とご対面。因みに、豆腐屋の看板娘だけに “きぬ” と言うのも、如何にも関西らしい雰囲気。関東なら “もめん” になっちゃうから(笑)
ここも上手いと思う。何の説明も解説もないが、きぬは「水田屋とうふ」の店番や後継ぎよりも、「たちばなの和菓子」で時間潰しするのが好きなのが、見えて来る。そう、こう言うのを “脚本の行間を読む” と言うのだ。そして、ここで、食べる人を明るい顔にしちゃう和菓子の象徴として “おはぎ” が登場。では、こちらも…
僅か5分に満たないが、冒頭の内容の切り取り方、端折り方、時間経過の使い方、どれをとっても美しい!
美味しそうにおはぎを食べる稔に、甘いものうんちくをご披露する安子も可愛らしい。と、思ったら、“もめん” ではない “きぬ” が安子と稔の仲を察して気遣いをして夏祭りへ一緒にいくことに。この辺までのテンポの良さもさることながら、ここでちょっと気付いて欲しいことがある。
それは、直前の「たちばな」は昼間で、直後の「雉真繊維」と言うか実家は夕景。ここで、敢えて時間経過を表す「情景カット」を入れるのが常套句だが、勇の汚れたユニフォームと「ただいま」だけで済ませた。この演出家なら入れて当然なのに。でも、入れるとテンポが悪くなるのだ。そう、会話の。
だから、敢えて会話先行で編集。この辺も細かい。更に、夕飯までの “繋ぎ” として、「たちばなの、おまんじゅう」が “稔を通じて” 雉真家の定番食品になっていることまで一気に描いた。もはや、内容の切り取り方、端折り方、時間経過の使い方、どれをとっても美しい位だ。それでも、まだ5分しか経っていない。お見事だ。
コロナ禍で全国的に「夏祭り」が少なかった今年の夏を経験したからこそ響く…
そして、5分にナレーションを挟んで、夏祭りの当日。ここも、褒めておこう。最初は昼間の屋外で、次に短く “安子の浴衣” を見せて、岡山県では有名な「やかげ夏の行灯まつり」を模したような、文字が描かれた行灯の行列のカット。全国区的にも「床置き行灯」でない「吊り行灯」は珍しいらしい。
そんな夜店の中を歩く安子と稔の会話の音声は、前半では劇伴のビオラかチェロ、そしてヴァイオリンの伴奏に置き換えられて、ゆったりとした時の流れを表現。コロナ禍で全国的に「夏祭り」が少なかったはずの今年の日本を経験した私や視聴者にも、「忘れていた日本の夏」を思い出せてくれた、明るさと懐かしさを感じる素敵なシーンだ。
勇の言葉が、安子の"心の時計"を止め、下駄の音が耳に残る
祭りの後半は、台詞が復活。勇の嫉妬心や安子への優しさが入り混じった言葉が、安子の “心の時計” を止めた。そして、安子自身が一番楽しんでいた “安子の初恋の夏” に、自分から区切りを付けた。“おんころ屋の女” の赤い鼻緒の下駄が地面を摺って走る音が切なく、祭りの雑踏の中で切なく響く。
やはり、これは「アオハル」でなく「青春」だなぁと…
きっと「10時間ほど前」の出来事さえなければ、いつもの朝がやって来たのに…
9分過ぎ、「6時16分」を指す銀色の目覚まし時計が映る。夕景でも、真夜中でもなく、早朝の雰囲気。そして、今回の冒頭と似てはいるが、安子の気持ちは全く違うシーンで、大きな心境の変化と時間経過を一度に見せた。
きっと「10時間ほど前」の出来事さえなければ、いつもの朝がやって来たのに、14歳の安子にもやって来た。きっと、多くの視聴者にも似たような「来なきゃ良かった出来事」があったに違いない。そのことを、ヒロインに体験させることで、視聴者との間に “共感” や “応援” が芽生えるのだ。
この先、何十年も経った時、安子の人生の"骨董品"になるのだろう…
夏が終わろうとしている頃へ。勇が、祭りの夜のことを大福を食べながら謝罪して、兄の情報だけ注げて去って行った。
そして、安子がラジオの英語会話でお勉強。その中で、「キュウリ」から「キュリオ」、「キュリオ」から「curio」になって、その意味が「骨董品」だと分かった “あの日” を思い出して、自転車の練習が途中で終わった安子にとっては、自分の足で全力疾走した方が速いのに、稔に教わった自転車で、ふらふらと転びながらも駅へ急ぐ安子。
そして、何とか再会できた。14歳の安子にとっては、「文通のきっかけとなった日」なのだろが、この先、何十年も経った時、この時の出来事が、人生の “骨董品” だと分かるのだろうと想像した。
あとがき
今回が称賛の嵐になった理由をまとめると、時計を雑に扱わずに、豆腐屋、朝6時半のラジオ、季節感、お祭り、自転車等を使って、時計やカレンダーのカットで簡単に逃げずに、時間経過と心情の変化を描いたことです。『カムカムエヴリバディ』の第1週、お見事でした。
それと、下記の本作のサントラ盤のリンクを見ると分かりますが、本作には「通常のサントラ盤」と、演奏にジャズ界のレジェンド北村英治さんと渡辺貞夫さんをスペシャル・ゲストに迎えた「ジャズ・コレクション(Blu-spec CD 2枚組)」があります。
サントラファン、関西のジャズファンは、要チェックです!
※因みに、両方のサントラ盤が劇期中で使用されます。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16179/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
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