最愛 (第3話・2021/10/29) 感想

TBS系・金曜ドラマ『最愛』
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第3話『見えない敵の正体は…!? さらに浮かび上がる新事実!』の感想。
大輝(松下洸平)から「友達として話をしたい」と呼び出された梨央(吉高由里子)は、事件当夜に昭(酒向芳)と会ったことなどを明かす。その後、大輝は梨央の足取りを防犯カメラで確認。梨央の話に矛盾はなく、相棒の桑田(佐久間由衣)も梨央は犯人ではないと感じるが、煮え切らない態度の大輝が気になる。そんな折、「真田ホールディングス」に1通の脅迫メールが届く。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:奥寺佐渡子(過去作/夜行観覧車、Nのために、リバース、私、定時で帰ります) 第1,2,3話
清水友佳子(過去作/夜行観覧車、女はそれを許さない、リバース、私、定時で帰ります)
演出:塚原あゆ子(過去作/アンナチュラル、グッドワイフ、グランメゾン東京、MIU404) 第1,2話
山本剛義(過去作/凪のお暇、コウノドリ2、わたナキ、オー!マイ・ボス!恋は別冊で) 第3話
村尾嘉昭(過去作/アンナチュラル、Nのために、キワドい2人、死にたい夜にかぎって)
音楽:横山克(過去作/わろてんか、映画「ちはやふる」シリーズ、ドリームチーム、メネシス)
主題歌:宇多田ヒカル「君に夢中」
読者さんから、演出家交代への質問が届いたのでこう答えた
フジテレビ系・木曜劇場「SUPER RICH(第3話・2021/10/28) 感想」について、ある読者さんから、次のような質問を頂いた。「作風が微妙に違う原因は放送された各回とも演出担当が違うからでしょうか?」(リンク)
その質問に対する私のコメントは、「本作に限らず、演出家による違いはあるでしょうね。ただ、連ドラと、それを狙ったテレ東の深夜番組以外に於いては、そもそも演出家の違いは必要ないと言うのが私の考えです。全話、演出が統一されているのが理想形ではないでしょうか? その意味で、本作について、演出家による違いを語るのはある程度意味はあると思いますが、楽しむモノではないと考えます」と、お答えした。
第3話の演出担当が、メイン監督の塚原あゆ子氏から山本剛義氏へ交代した
なぜ、ドラマ『最愛』第3話の感想の冒頭で、ドラマ『SUPER RICH』への演出論を書いたのかと言うと、上記を見ればお分かりのように、第3話の演出担当が、メイン監督の塚原あゆ子氏から山本剛義氏へ交代したから。そして、演出家の交代によって、ドラマの雰囲気が空くし変わったのを実感したからだ。
今回は「プチ演出講座」続編で塚原あゆ子氏の演出を掘り下げるつもりだったが…
実は、第1話と第2話で「プチ演出講座」を開設する程、塚原あゆ子氏の演出の “技” について触れて来た。そして、前回の感想の後に「もっと詳しく映像の解説をして欲しい」とのコメントを幾つか頂いたので、第3話では、具体的なシーンやカット割りや編集について書くつもりでいたのだ。しかし、演出家が交代したことで、それらは、一先ずお預けとさせて頂きたい。
上記の二人の演出家が過去に担当した作品群に注目して欲しい
そこで、今回は、演出家が塚原あゆ子氏から山本剛義氏へ交代して “何が、どう変化したのか” について書いてみようと思う。
まず、もう一度、上記の二人の演出家が過去に担当した作品群に注目して欲しい。ざっくり違いを言うと、塚原あゆ子氏は「テンポ感とリアルと現代を意識した、ややサスペンス風な作品」が多い。一方の山本剛義氏は「のんびり、ゆったり、親子愛を中心にしたヒューマンドラマ風の作品」が多い。
ここからは、私のドラマ愛への自信と、ドラマ『最愛』スタッフへの期待と信頼を込めて"決め付け"で書く
察しの良い読者さんならお分かりだろう。そして、ここからの文章は「私の勝手な推測に基づく決定事項」として書いていく。従って、完全に間違っている可能性はあるが、私は、私のドラマ愛への自信と、ドラマ『最愛』スタッフへの期待と信頼を込めて、“決め付け” で書くことを了解して頂きたい。
第2話までと第3話で決定的に違うのが、梨央と大輝のバランス!
では、早速、本題へ。第2話までと第3話で決定的に違うのが、梨央(吉高由里子)と大輝(松下洸平)のバランスだ。描写時間や印象付けのやり方、個性の魅せ方など、ある人には “微妙” に、私には “かなり” 違って見えた。梨央と大輝のどちらを強調しているとか言う統一性ではなく、場面やシーン毎にバランスが違うのだ。
ここも、本当は「このシーン」と言いたいのだが、何せ比較対象が私の頭の中にしかないから、ここで提示できないことを、お許し頂き、何とか、ご自分で「あの場面かな?」と前回の感想同様に「宝探し気分」で楽しんで頂きたい。
ドラマ『最愛』のスタッフが、意図的、意識的に、第3話から演出家を変えた
私は、TBS、ドラマ『最愛』のスタッフが、意図的、意識的に、第3話から演出家を変えたと思っている(決めつけている)。その理由は、第2話までと第3話では、ドラマの性質がかなり違うから、その性質に合わせて、考えて演出家を選択したのだと思う。
意図的に、第3話の演出を山本剛義氏に交代した理由
第2話までは、基本的に「ドラマの初期設定」の説明と言う淡々としがちな部分と、「サスペンスドラマが始まる予感」をヒシヒシと感じさせなくてはいけない部分があった。この二つは、当然、ある意味に於いて正反対で、前者はじっくり見せたいし、後者は視聴者をグイグイと作品の世界に惹き込む必要があって、共存させるのは至難の業。
そのため、第2話までは、「15年前の二人の恋バナ」的な要素と「刑事ドラマ」風の要素のバランスを均衡にした。従って、どちらかと言うと、登場人物たちの心情の変化、その変化の描き方の変化で、物語を進めて行った。
しかし、第3話は、様々な事情が見えて来て、ドラマとしても、視聴者としても、一段進んだ。そう、より一層 “サスペンス” であることを強調して来たのだ。その一方で、しっかりと “刑事ドラマ” の部分も更に強調して来ているから、第2話までとドラマの雰囲気が少し変わるのは当然なのだ。いや、私は意図的に変えていると信じている。
なぜなら、ここで演出家を交代させるのが、最も雰囲気を変えるのが簡単だし。二人の演出家の得意分野を考えれば、三人目に控えている村尾嘉昭氏よりも、山本剛義氏の方が適任なのは、過去の担当作品を見れば、お分かり頂けるはずだ。
演出家が山本剛義氏に交代して、どの辺に変化したのか?
では、演出家が山本剛義氏に交代して、どの辺に変化が生じたのか? 解説が相変わらず具体的な場面でないのは諦めて頂くとして。
まず、緊張感の伝わり方が違う。前回までより物語が大きく変わって来たのに、それによる緊張感は逆にガツンと視聴者へ伝えずに、じわじわとが伝わって来る感じ。それと、メインの二人に限らず、登場人物全員が怪しく見えたし、逆に「余計に何者か分からなくなったりした人物」も増えた気もする。
謂わば「見れば見る程、誰が何であるのか分からなくなる」と言う世界に没入させ続けている気がしてならない。分かって来る事実が増えれば増える程、闇も増えるって感覚だ。そう、あくまでも、私が “気がする” だけなのだが、恐らく、多くの読者さんが「私も、ちょっと違うドラマに感じた」と思ったのではないだろうか?
あれだけ特徴溢れる演出家から交代したのに、違和感がないのが凄い!
そして、どうしても称賛しておかなければならないことを書いておく。
一つは、あれだけ特徴溢れる演出家から交代したのに、違和感がないこと。だから、私は意図的だと言っているのだが。これ、二人とも個性的で有名な演出家だから、相当に第2話までと第3話からの “繋ぎ目” 部分からの雰囲気の変化は、相当に打合せしないと出来なこと。それをまず、まんまと上手くやり遂げたのは凄い
と思う。
これが本当に「意図的な演出家の交代」だったら、脚本家もそれに順応しなくてはいけないってこと
更に、忘れてならないのが、これが本当に「意図的な演出家の交代」だったら、脚本家もそれに順応しなくてはいけない。だって、普通の連ドラの脚本は、メイン監督に合わせて書かれるから。
もしも、脚本家が「第○話の演出家は○○さんだったら…」と、更に意図的に脚本を修正したとしたら、ドラマの内容より恐ろしいことになる。だって、脚本と演出が一体化し、その上、各話で違うわけだから。
ことの真実は闇の中だ。しかし、この第3話を敢えて、メイン監督の塚原あゆ子氏が演出しないことの方が “ミステリー” だから、恐らく、全てが意図的に作り込まれていると信じたい。恐るべし、ドラマ『最愛』…
あとがき
内容にも、少し触れておきます。
やはり、タイトルの『最愛』が良いなと思います。それぞれに “最愛” が存在し、その一つひとつの “最愛” の尊さと思いの深さに泣けます。
また、「刑事と重要参考人」と「一人の刑事と新進気鋭の女性実業家」と言う関係が、今わかっている範囲でも、絶望的であり残酷なのに、ふとした昔使っていた方言と呼び名で切なくも簡単にタイムスリップ敷いてしまう。そんな泣けるところや、切ないところが、本作の好きなところです。もちろん、スタッフ&キャストも文句なしです。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16153/
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