連続テレビ小説「おかえりモネ」〔全120回〕 (第108回・2021/10/13) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『おかえりモネ』(公式サイト)
第108回/第22週『嵐の気仙沼』の感想。
※ 本作は、9月3日、宮城県気仙沼市のロケで約11か月間の撮影が終了しました。
※ 従って、僅かな編集への期待と、直感的な賛美や愚痴を書いています。
※ 毎日毎日の感想なので、私の感想も雲のように毎日変わります。ご理解を。
2020年元旦。未知(蒔田彩珠)は亮(永瀬廉)に「漁から帰ってきたら話しをしたい」と伝える。百音(清原果耶)が天気図を見ていると、亮が漁から戻ってくる日の気仙沼市周辺は、風速15メートル以上の風が吹き、海がしけることがわかった。滋郎(菅原大吉)に「漁に出ている船に戻るよう伝えてほしい」とお願いするが、全く相手にされず、電話を切られてしまう。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:安達奈緒子(過去作/透明なゆりかご、コード・ブルー3、きのう何食べた?)
演出:一木正恵(過去作/どんど晴れ、ゲゲゲの女房、まれ) 第1,2,7,9,12,15,20週
梶原登城(過去作/おひさま、あまちゃん、マッサン) 第3,4,10,11,16,19週
桑野智宏(過去作/ウェルかめ、梅ちゃん先生、あまちゃん) 第5,6,8,13,18,22週
押田友太(過去作/まいご。、うつ病九段) 第14週
中村周祐(過去作/ハムラアキラ、「おかえりモネ」プロデューサー) 第17週
原英輔(過去作/オーディオドラマ「エンディング・カット」) 第18週
津田温子(過去作/龍馬伝、西郷どん、いだてん)
田中諭(過去作/いいね!光源氏くん) 第21週
舩田遼介(過去作/NHK FMシアター「空振りホームラン」) 第21週
音楽:高木正勝(過去作/映画「バケモノの子」、「未来のミライ」、「静かな雨」)
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
語り:竹下景子
制作統括:吉永証(過去作/トクサツガガガ、詐欺の子)
須崎岳(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
気象考証:斉田季実治(NHKニュース7、ニュースウオッチ9)
※敬称略
お知らせ
●第7週目から “超” が付く程、好意的に本作を見るモードに入っております。そのつもりで、読んで頂ければ幸いです。
●先日、脚本・俳優・演出の関係を簡単に “おさらい”出来るように 【脚本プチ講座】を投稿しました。最後まで読んで頂けると、本作へ漂い始めた暗雲が晴れて、木漏れ日が差し込むかもしれません。途中離脱するまでは、愚痴や意見を言いながら応援します。
【脚本プチ講座】脚本家と俳優と演出家の関係とは? 良き脚本「強い物語」とは? ※現在放送中の連続テレビ小説『おかえりモネ』完全対応版
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今回の感想は、長文で拙稿ですが、本作への思いを、いつも以上に込めて書きました。
今回だけ、顔が見える人のために 仕事がしたいと思って」と、百音に言わせた理由を考えてみた
さて、今回のアバンタイトル。あちこちに何か違和感が…。
まず、百音が百音(清原果耶)と菅波(坂口健太郎)とのやり取りで、自分が故郷に戻った理由を「顔が見える人のために 仕事がしたいと思って」とメッセージを送っていた。確かに、ドラマとしては間違っていないが、これまで百音がこんな言い回しをしただろうか? と言う疑問。
「故郷のために役に立ちたい」とか、いつもの台詞で良かったと思う。ただ、ここに脚本家の浅はかな目論見が隠されている。それは、今回のメインの話が、漁協長・滋郎(菅原大吉)に「漁に出ている船に戻るよう伝えてほしい」とお願いする話だから、大袈裟な表現を使ったのだろう。しかし、「顔が見える人のため」だったら、気仙沼である必然性が無いわけで(失笑)
百音を庇うつもりは無いし、三生たちにも百音を励ましたい気持ちがあるのは分かっていても、何度も傷に塩を摺り込むような描写は何度も見たくない
更に、前回では三生(前田航基)に故郷に戻って来たことを指摘され、サヤカ(夏木マリ)にも言われ、遂に菅波(坂口健太郎)にまで、「故郷のために役に立ちたい」と大見えを切って東京を出て行った百音が否定されるのを描くのって、脚本家や演出家の趣味の悪さを感じて、私は、亮(永瀬廉)が言った「きれいごど」だけで十分だと思う。
だって、百音の故郷に戻ったことを否定している人たちは、百音が本気で仕事をしているように見えていないから指摘したのだと、私は思っている。だから、ここはドラマとして間違っていない。でも、何度も傷に塩を摺り込むような描写は何度も見たくない。もちろん、三生たちにも、百音を励ましたい気持ちがあるのは分かっていても…
アバンで感じる違和感は、百音の無力感の根源が分からないから
では、なぜ、このアバンタイトルに違和感を覚えるかと言うと。そもそも、百音が、「最終的に、どんな状況を目標にしているのか?」が全く分からないし、更に「今、何に悩んでいるのか?」が不明瞭過ぎて分からないから。
だって、前回でも今回でも見ていれば分かるが、百音は海や船や漁業のことも、農業や農家のことも、“専門家” でなく “素人レベル” で、牡蠣の開口にしても、前回の農家の件にしても、泥縄的な資料集めた知識と、一応専門である気象予報士としての知識や勘を使って、取り敢えず乗り越えただけ。なのに、無力感を感じるのかが分からないのだ。
なぜ、本作は、主人公を視聴者たちが"自然に応援したくなる人"として描かないのだろう?
それこそ必死に、「顔が見える人のために 仕事がしたい」なら、あちこち歩き回って、今、百音自身の目の前にいる “顔が見える人” が何を欲しているのか調査し、それを何とか “お金になる仕事” にしようと、孤軍奮闘している姿を描いて欲しいのだ。それが無いから、三生たちの意見に賛同せざるを得なくなってしまう。
なぜ、本作は、主人公を視聴者たちが、 “自然に応援したくなる人” として描かないのだろう? そこが不思議でたまらない…
百音が無力感を感じてしまったら、そもそも論として、ドラマとして破綻しているのでは?
それと、前回の農家の人にも似たようなことを言っていたが、今回は菅波に「自然を前にして やはり無力です」とメッセージを送った。これって、好意的に見てみても、すごく卑怯な感じがするのは、私だけだろうか。
だって、もう、本作は、幾度も気象への解釈を都合良く変えて、最終的な現在は、朝岡(西島秀俊)の「天気は予測しても、思いがけない方向に変わるもの」として定義づけされているはず。
だったら、繰り返すが、師匠の朝岡が「天気は予想しても変わる」と決めてしまった今、そのことを背負った状態の百音が、あのプレゼンで勝ち取った仕事に対して、無力感を感じるのは、そもそも論として、ドラマとして破綻しているのでは? と思ってしまうのだ。
最近の大災害が出そうな天気予報の後には、よく、こんな言葉が言われるようになっているのを、利用したら良かったのに…
やはり、以前にも書いたと思うが、脚本家や演出家が、きちんと、百音も本音では「天気は予想しても変わる」と思っているのは理解済みなのだから…
最近、気象予報士が天気予報で大きな被害が出そうな予報を伝えた後には、アナウンサーやコメンテーターが言う、「天気予報が悪い方にハズレて、大きな被害が出るより、天気予報が良い方にハズレて、被害が出ない方が良い」と言う立場で百音は仕事を売り込んで、手にして行く方が、余程、筋が通っているように思う。
なぜ、いつも百音からの電話の第一声は、自分を名乗らないのか?
それと、どうでも良いことだが、実はいつも気になっていたことを書く。それは、百音が電話を掛けるとき、ほぼ必ず自分の名前を先に言わないこと。まあ、スマホ同士なら電話を掛ける側も、受ける側も相手が誰であるか画面で確認できるから、最初から相手の声だけを確認するのが、今どきの若者なのかも知れないが。
今回の8分頃に、百音がウェザーエキスパーツ社の野坂碧(森田望智)に電話を掛ける場面で、百音の第一声は「お疲れさまです 野坂さん」だった。暫く会っていない先輩に「お疲れさま」と言うのも、オジサンとしては違和感を覚えるが。ここは「お久しぶりです 永浦です」ではないのか? だって、野坂だって直後に電話口の声で推測して「永浦さん?」と聞き直しているし。
電話の第一声で、感じ良く「永浦です」と名乗るだけで好印象になるのに…
10分過ぎに野坂から電話がかかって来るシーンでは、「はい」だけ。百音は先輩に依頼したんだよね。だったら、最低限のマナーとして、「はい 野口さん 何かわかりました?」位は言っても良いような。同じ会社なのは分かるが。
ついでに、11分頃には百音から漁協長に電話が入るが、その時の百音の第一声は「すみません 突然 電話して」だった。もう細か事は書かないが、一つだけ言いたいのは、百音が架ける電話の第一声は、何かと上から目線に聞えるのが気になるってことだ。最初に名乗るだけで、好印象になるのに、なぜ、やらない?
本社の指示を仰ぎ、気象庁の発表を待ったのは、褒めたい
愚痴ってばかりでは、申し訳ないので、少しだけ良かった部分に触れてみる。
それは、百音が独自で、いくら限定的な地域への天気の変動であっても、本社の指示を仰ぎ、気象庁の発表を待ったこと。こう言う本社との連携を描くことで、会社が認めた企画であることがわかるし、百音にも気象予報士としての一定の常識があるのが表現されるから。ここは、褒めても良いと思う。
終盤の漁協での5分間は「強い物語」として決して悪くない
さて、10分頃、いよいよ百音自身が、漁港組合へ乗り込んで来た。そして、何となく、漁協長が百音の言い分を信頼する感じで終了した。ドラマとしては間違っていない。主人公自身が動いて、ストーリを進めたから、「強い物語」論としても、決して悪いとは思わない。
ここから書くことは、愚痴とは思って欲しくない
しかし、ここから書くことは、愚痴とは思って欲しくない。こうして、少しでも「強い物語」が書けるなら、私は次のようなことに注意して本作を書いて欲しかったってことを書こうと思う。特に東京から帰郷してからの部分のことになるが。
帰郷してからの百音で描くべきは、百音の企画の後ろに"専門家"の存在があることだったのでは?
本作で帰郷した百音で描くべきは、「自然は、気象予報士でも変えることは出来ない」と無気力感に襲われたり、「天気予報は、ハズレることもある」と気象予報士として言い辛いことを言うのが厳しいとか、「苦しんでいる農家の人を助けられない」と言う自信喪失感を描くことではないのでは? と、思う。
要は、百音ひとりで出来ることは限られているから、「百音推しの企画(仕事)」の裏には、きちんとウェザーエキスパーツ社の、それぞれの得意分野を持った “専門家” がいることを強調した人間関係を描くことではなかったのでは? と言うこと。
決して、今回の終盤のように百音自身が直談判するのではなく、百音のサポーターとして “専門家” の助言や見解が漁協長たちを説得し、その百音のサポーターたちの存在を知って、百音が信頼を得て行った方が、断然に良かったと思う。
百音が東京で企画書を書いている時点で描いておくべきだったのは…
そして、そのために帰郷する前、プレゼンの前、そう、百音が東京で企画書を書いている時点で描いておくべきだったのは、百音が「故郷の人たちを守る」と言う個人的な思いだけでなく、ウェザーエキスパーツ社の一大プロジェクトの第一弾として、“百音のために動いてくれる、強力な専門家たちの応援団” を作っている百音を描くべきだった。
もちろん、その “百音のために動いてくれる、強力な専門家たちの応援団” の中には、ウェザーエキスパーツ社の気象予報士だけでなく…
帰郷後も"百音のために動いてくれる、強力な専門家たちの応援団"の人間関係づくりを描いて欲しかった
報道のプロであるテレビ局の社会部気象班デスク・高村沙都子(高岡早紀)や、ラジオで喋るのだから、莉子(今田美桜) 、森林組合でナラの伐採の指揮をする山番頭・熊谷さん(山本 亨)やサヤカを始めとした “山の専門家” たちを入れておくのは当然で。
災害で避難するサポートまで考えれば、幼稚園や学校の先生、教育委員会なんかも、百音のサポーターにあるように描いたら良かったと思う
この最後の一ヶ月の前半で描くべきは、帰郷してから…
そして、この最後の一ヶ月の前半で描くべきは、帰郷してから、いよいよ、これまで知り合った人たちとは、かなり考え方ややり方が違う漁業に携わる “海や船の専門家” を “百音のために動いてくれる、強力な専門家たちの応援団” に引き入れるのを、百音の最大の仕事して描くべきだったと思う。
どうして、今更、私がこんなことを書くのか? それは、個人で仕事を請けるのも続けるのも、簡単でないことを私が “今” 痛感にしてるから。でも、百音は基本、ウェザーエキスパーツ者の人。だったら、その設定を活かす方が、会社に所属する気象予報士を扱うドラマとして当然だし、見てみたかったから…
あとがき
私、本作の感想で初めて書いた「百音のために動いてくれる、強力な専門家たちの応援団」を、上手くナレーションで “存在が増えて行っているように” 補足したら、良かったと思います。例えば、前回の農家さんだって帰るカットに、「実は、相談に乗ってくれただけでも、嬉しかったそうです」と足したら、だいぶ印象が変わったと思いますし。
三生の時も「本当は、百音が帰って来たのを嬉しく思っているのです」と補強するだけで、人が受ける印象は、だいぶ違うと思います。まあ、もうここまで来たら、百音も使っていたカフ(マイクのオンオフを手元で操作する機器で、正式名称は「カフ・ボックス」」を脳内にせっしオンにして、自分で脳内ナレーションでも入れますか(笑)
お願い…
管理人が返信に困るようなご意見などには対応いたしかねます。発表するなら、ご自身の場所でやって下さいませ。また、何度も諄いコメントの投稿者は、投稿機能をブロックします。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16063/
【これまでの感想】
第1週『天気予報って未来がわかる?』
1 2 3 4 5 土
第2週『いのちを守る仕事です』
6 7 8 9 10 土
第3週『故郷の海へ』
11 12 13 14 15 土
第4週『みーちゃんとカキ』
16 17 18 19 20 土
第5週『勉強はじめました』
21 22 23 24 25 土
第6週『大人たちの青春』
26 27 28 29 30 土
第7週『サヤカさんの木』
31 32 33 34 35 土
第8週『それでも海は』
36 37 38 39 40 土
第9週『雨のち旅立ち』
41 42 43 44 45 土
第10週『気象予報は誰のため?』
46 47 48 49 50 土
第11週『相手を知れば怖くない』
51 52 53 54 55 土
第12週『あなたのおかげで』
56 57 58 59 60 土
第13週『風を切って進め』
61 62 63 64 65 土
第14週『離れられないもの』
66 67 68 69 70 土
第15週『百音と未知』
71 72 73 74 75 土
第16週『若き者たち』
76 76 77 79 80 土
第17週『わたしたちに出来ること』
81 82 83 84 85 土
第18週『伝えたい守りたい』
86 87 88 89 90 土
第19週『島へ』
91 92 93 94 95 土
第20週『気象予報士に何ができる?』
96 97 98 99 100 土
第21週『胸に秘めた思い』
101 102 103 104 105 土
第22週『嵐の気仙沼』
106 107
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