日本沈没―希望のひと― (第1話/初回25分拡大・2021/10/10) 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』
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第1話/初回25分拡大『異端学者の世紀の大予言』、ラテ欄『日本最大の危機!? 異端学者の大予言は嘘か真実か!? 日本を救うリーダー誕生』の感想。
なお、原作となった小説・小松左京『日本沈没』は既読。また、過去のドラマや映画も鑑賞済み。※本作は、今春に全編撮影終了しているため、要望などは書きません。
2023年、東京。東山栄一首相(仲村トオル)は、未来の日本を見据えて各省庁の優秀な若手官僚を集めた“日本未来推進会議”を発足させ、環境省の天海啓示(小栗旬)、天海の大学の同期で経産省の常盤紘一(松山ケンイチ)らがそのメンバーに選ばれる。そんな折、週刊誌に関東沈没へ警鐘を鳴らす田所雄介(香川照之)の記事が掲載され、天海は事態収束のため田所と対面することに。そこで田所は「近い将来、伊豆沖で島が沈没する。その島の沈没は、関東沈没の前兆になる」という不気味な予言を放つ。その矢先、天海は週刊誌記者の椎名実梨(杏)に、企業と環境省の癒着疑惑を突きつけられ、さらに衝撃的な出来事に遭遇する。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:黒岩勉(過去作/モンテ・クリスト伯、グランメゾン東京、アンサングシンデレラ、危険なビーナス)
原作:小説・小松左京『日本沈没』
脚本:橋本裕志(過去作/LEADERS リーダーズ、死神くん、リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~)
演出:平野俊一(過去作/S最後の警官、インハンド、TOKYO MER)) 第1話
土井裕泰(過去作/重版出来!、カルテット、凪のお暇、逃げ恥)
宮崎陽平(過去作/下町ロケット、陸王、ブラックペアン、集団左遷!!、半沢直樹2020)
音楽:菅野祐悟(過去作/半分、青い。、シャーロックUS,テセウスの船、危険なビーナス、青のSP、恋はDeepに)
今作の撮影は既に今春終了しているため、いつもの感想とは異なる
本感想文の序盤で触れた通り、今作の撮影は既に今春終了しているため、いつもの感想のような、スタッフへの称賛や要望は基本的に書かないことを、まずお断りしておく、そして、私は、原作は既読で、映画など幾つかの他の映像化作品も見ている。こんな立場の私であることを、知って頂いて読んで頂ければと思う。
サブタイトル『希望のひと』に、今作の全てが詰め込まれていると思う
さて、サブタイトルに『希望のひと』と加えてある理由を考えてみた。いや、このサブタイトル『希望のひと』こそ、本作の核心だと勝手に推測している。
恐らく、原作を読んだ人や映画版を見ている人なら、より実感できるのは、基本的に、“全体の流れ(物語の運び)” は、そんなに変わらない(変えることは出来ない)ことと思う。いや、やれても「2023年秋(第1話)」風に、設定等の小変更は出来るが、今、この作品に手を付けると言うことは、全てが “結末” に圧し掛かってくると思う。
そのキーワードが『希望のひと』であり、それは恐らく「未来を背負っていく子供たち」のことで、そのために、劇中の大人たちが何をし、何を残してやれるのかが、恐らく、本作の成功を左右する “結末” に圧し掛かってくるものだと推測した。
SF作家・小松左京の『日本沈没』は、日本を舞台にしたSF小説の金字塔
さて、先日、ある深夜ドラマの感想を書いたら、「えっ? 管理人さんって “ホラー” も好きなんですか?」と言われたことがある。その意味で言えば、「SF」も映像業界に入りたいと思った理由の大きな1つだ。
そして、本作の原作となった作品は、日本、いや世界的にも評価されている、「昭和の日本を代表するSF小説の代表作」であると共に「昭和の日本を代表するSF作家・小松左京」が描いた、当時は斬新で社会性がある、お世辞抜きの、日本を舞台にしたSF小説の金字塔なのだ。
「サイエンス=科学」を映像で表現するのは難しいことだから…
ここで、重要なのは、原作は「SF=サイエンス・フィクション=科学的な創造物」であると言うこと。一般的に、「サイエンス=科学」を映像で表現するのは難しいこと。
だから、当然「サイエンス・フィクション」を表現するのも難しい。だって、科学知識や見識は人それぞれレベルが違うし、1つの科学現象に対しても、賛否が分かれるような、実に難しいジャンルがSFなのだ。
SFを映像化するのは難しいのに、SF映画やアニメの名作は、ここが違う!
しかし、世の中には数々の映画を始めとしたメディア(漫画やアニメーション)でも、所謂 “名作” と呼ばれる作品は多い。きっと、この感想を読んでいる読者さんの中にも、「推しのSF作品」があると思う。それらのことに、少しだけ想いを飛ばして欲しい。
恐らく、それらの殆どが、「サイエンス=科学」の魅力を描いたものではなく、「サイエンス=科学」に翻弄される「人間ドラマ」を魅力的に描いた作品群ではないだろうか。
私は、映像学校の卒論のテーマを「SF映画とスティーブン・スピルバーグ監督が描く、科学と社会と人間性について」としたくらいだから、感想の冒頭から、やや熱量が上がってしまったのだ。もう一度書く。「人間ドラマ」の部分に魅力があってこその “SF” だと言うことを。
『日曜劇場』枠で、SF、それも『日本沈没』を放送するとは!?
それと、ついでに、「難しいサイエンス」と「魅力的な人間ドラマ」の見せ方も “SF” には重要だ。映画であれば。上映時間が2時間前後だから「難しいサイエンス」の尺は短めにして強烈な映像で印象付ける。そして、「魅力的な人間ドラマ」の尺を長めにしてじっくり魅せることが出来る。
しかし、本作は連ドラだ。この投稿を書いている時点で全話数は発表されていないが、『日曜劇場』と言う放送枠を考えれば、全10程度、時間にして、11時間(CMも含めて)の放送尺がある。聡明な読者さんならお分かりだろう。
「難しいサイエンス」の部分の尺をいくら短くしても、それなりの放送時間は割かないと、「魅力的な人間ドラマ」を描くことが出来ないのだ。そんな難しいことに、敢えて、この原作を『日曜劇場』へ起用した、TBSの勇気と無謀さに、一応敬意を表しておく。最終的に、全面撤回する可能性も秘めて…
序盤20分間は、「一体、あの『日本沈没』を、どこへ連れて行くの?」と思って見ていた
何せ、『日曜劇場』と言う “放送枠” の大きな特徴として、良くも悪くも、濃くも薄くも “煽り” や “焚きつけ” を巧みに挟み込んで、食い付いて来た視聴者を食い止めるべく “引き伸ばし” もやりつつ、本当に上手く「次回も見たい」と思わせる。そこが “個々の作品” ではなく、“枠” の魅力と特徴なのだから・
この第1話だって、序盤の20分間前後は、今後、どのように利用するのかしないのか、見当もつかないような、大量のフラグが投下さていた。そのフラグが、あまりにも大小、大量にあるがために、既にドラマとしての方向性が分かり難かった。「一体、あの『日本沈没』を、どこへ連れて行くの?」って感じで。
43分あたりからストーリーが動き出して来たのでホッとした
しかし、きちんと(と言う表現をプロに対して使うのはどうかと思うが)「関東沈没説」の影響で「平均株価8ヶ月ぶり急落」の大見出しの報営新聞(日付は「2023年(令和5年)10月18日(水))のアップから、と言うのが正直な気持ちだ。
あとは、原作を知っている人も、最終回まで楽しめるかどうかは、次回(15分拡大)以降になるだろう。
序盤で、もっと衝撃的な「関東沈没説」が現実化するよう、一目でわかるような展開にしてしまっても良かった!?
また、第1話の構成を考えてみると、第1話の序盤で、もっと衝撃的な「関東沈没説」が現実に起こりうることであると、一目でわかるような展開にしてしまっても良かったかな? と思っている。
なぜなら、SFに於いて重要なことは、前述した通り、「難しいサイエンス」の尺は短めにして強烈な映像で印象付け、あとは「魅力的な人間ドラマ」の尺を長めにしてじっくり魅せることだから。そう、“何か大変な事態” が起こるかどうかは、それ程に重要ではなく、“何か大変な事態” が起きてから、人間たちがどう動き出すかだから。
いや、SFを描くなら、そこが最大の “肝” だと思う。本作がその “SFの肝” を第1話で魅せることに成功したのか、失敗したのか、私には、本作に対して、もう一つ、どうしても第1話の感想で書いておきたいことがあるから、流石に、第2話を見てから… と、させて頂きたい。
2021年秋に放送する『日曜劇場』に相応しいドラマになって欲しい
どうしても第1話の感想で書いておきたいことを書く。それは、2021年の秋ドラマとして、『日本沈没』を題材にしたドラマが必要かどうかと言う点だ。反論もあろうが…
何とか阪神・淡路大震災の被害から復興を遂げたと思ったら、10年前に未曾有の大災害である東日本大震災が発生し、地球温暖化による海水温の上昇によって、日本の季節感は昭和の頃のような「くっきりとした春夏秋冬」から「短い春と秋に、長い夏と冬」になった。
また、この10年間だけを見ても、日本各地で「100年に一度」と言われるような大災害が次々と発生し、数年前から太平洋プレート、フィリ ピン海プレート、そして陸側のプレートの最低3つの地底プレートが重なる日本の中心部分で、プレートテクトニクス(地球の様々な変動を原動力とした地震や火山を始めとする様々な地学現象」が発生。
その他、日本各地で毎年、多くの人たちが亡くなり、家や仕事を失い、未だに心も身体も、家も仕事も、傷が癒えていない人がいるのが、今の日本。更に、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、たくさんの日本国民が苦しんでいるのも現実。
だからこそ、前期作の『TOKYO MER~走る緊急救命室~』で描き続けた、“命の大切さ” と “命を守る人たちへの思い” に共感が集まり、視聴者にテレビを見ている間だけでも、現実から少し逃避して、生きる希望や生き残ることの大切さが指示された… と、私は思っている。
であるから、敢えて「SF好き」、「日本沈没も好き」の私が言いたいのは、今後の展開が『希望のひと』に “明るい未来は必ずある” や “生き続けようとする思いの強さの大切さ” のような強いメッセージを送ってくれることを願いたい。
あとがき
今作の感想と言うより、「SF」、「日本沈没」を扱うドラマへの期待を綴らせて貰いました。とにかく、前作に続いて。「今、見るべきドラマ」になって欲しいです。クランクアップしているドラマに言えるのは、今はそれだけです。俳優さんたちや、その他の脚本や演出に関しては、次回以降の感想に書くつもりです。まずは、次回に期待します。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16053/
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