TOKYO MER~走る緊急救命室~ (第5話・2021/8/1) 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(公式サイト)
第5話『妊婦に迫る炎! 絶体絶命の密室で母子の命を救え』、ラテ欄『エレベーター火災! 決死のオペで閉じ込められた妊婦を救え!』の感想。
MERを訪れた赤塚(石田ゆり子)は喜多見(鈴木亮平)に、‘空白の1年’を探る音羽(賀来賢人)の官僚としての動きを忠告。折しも、官僚が逆らえない政界の大物・天沼(桂文珍)が闇献金疑惑の追及を逃れ、東京海浜病院に入院していた。そんな中、小児科にいた涼香(佐藤栞里)は妊婦を介助。音羽と車いすの天沼とエレベーターで乗り合わせるが、トラブルで4人は閉じ込められてしまう。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:黒岩勉(過去作/モンテ・クリスト伯、グランメゾン東京、アンサングシンデレラ、危険なビーナス)
演出:松木彩(過去作/下町ロケット2018、半沢直樹2020、危険なビーナス) 第1,2,5話
平野俊一(過去作/S最後の警官、インハンド、ノーダイド・ゲーム) 第3,4話
音楽:羽岡佳(過去作/チーム・バチスタシリーズ)
斎木達彦(過去作/ガールガンレディ)
櫻井美希(過去作/4分間のマリーゴールド ※兼松衆と共同)
主題歌:GReeeeN「アカリ」
医療監修:関根和彦(東京都済生会中央病院 救命救急センター)
浅利靖(北里大学病院 救命救急・災害医療センター)
長谷川剛(上尾中央総合病院)
医事指導:北里大学病院 救急救命・災害医療センター
看護指導:堀エリカ(過去作/朝ドラ「エール、日曜劇場「テセウスの船)
消防協力:東京消防庁
レスキュー指導:幾田雅明(NPO法人 日本消防ピアカウンセラー協会)
警察指導:伊藤鋼一
「医療ドラマ」の"最大の醍醐味"を味わう秘訣、ツッコミ過ぎないこと
どの辺りから、感想を書いたら良いのか難しいが。
冒頭で、常に医療従事者たちがスキルアップをし続けるのを描き、更に「NPO法人キッズオレンジ かみしばい」の場面で、喜多見(鈴木亮平)の妹・涼香(佐藤栞里)が手話を使えることを描く。
そして、如何にもと言う感じで、官僚が逆らえない政界の大物・天沼(桂文珍)が闇献金疑惑の追及を逃れ、東京海浜病院に入院。そして、妊婦・立花彩乃(河井青葉)と涼香、MER内を天沼に案内中の音羽(賀来賢人)が、これまた偶然にエレベーターで乗り合わせて、緊急停止。
もう、これだけでお膳立ては万全。まあ、味方によっては、緊急停止したエレベーター内と言う “ほぼワンシチュエーション・ドラマ” であり、かなりご都合主義な状況設定ではある。
でも、そこをツッコミ始めると、殆どのドラマ、特に医療ドラマは楽しめない。やはり、我が身(視聴者本人)でなく、テレビの中の人が患者で苦しみ、それを救うのが医師であると言うのが「医療ドラマ」を見て得られる “最大の醍醐味” だから、私は、闇雲にツッコむことはしない(あとで、1つだけ、ツッコムが…
【ブラック】に光を当て、黒光りする展開は良かった
さて、ドラマの内容は、若手エリート官僚で医系技官の音羽(賀来賢人)の人物設定の “掘り下げ” だ。
前述の、あれこれの装飾は施されていても、描かれた中心は「厚生省官僚+医師=医系技官」であり、TOKYO MERのメンバーでもある、(もう詳しく書かないが)「戦隊ヒーローモノ」としての、【ブラック】= “凄く強い一匹狼” を掘り下げたストーリーだ。
エレベーターが緊急停止した段階で、【ブラック】が「医師の立場」と「官僚の立場」のどちらを最優先し、どのようにまとめるのかが、冒頭のMER出動決定までの “約9分間” にコンパクトにまとめられた。
まあ、全話数はわからないが、第5話で「喜多見の空白の1年間」を掘り下げたら、アッと言う間に「最終章」だから、ここで、『秘密戦隊ゴレンジャー』風に例えるなら、【ブラック】に光を当て、黒光りするストーリー展開は良かったと思う。連ドラの分岐点としても。
喜多見と音羽の因縁を描きつつ、音羽の将来の究極の選択まで、一気に描いた
そして、今回の最大の見所でもあり、凄く強い一匹狼的な微妙な立場と役割になっている【ブラック(幾度も書くが、「ブラック=悪役」の意意味ではない。戦隊ヒーローモノとしての色分けの意味で】役が、喜多見らの影響を少しずつ受けて「医師」としての自覚の方が(この一瞬だけかも知れないが)強くなったのが、次の音羽の台詞だ。
音羽「天沼先生の救助は 後回しにしてください」
天沼「お前の官僚人生は終わるぞ」
音羽「はい ですが
人の命より大事なものなんて この世にないんです」
これ、脚本が良く練られている。いつものように、屋外の災害現場なら、音羽が専門外の緊急帝王切開をしなくても、【レッド】=熱血漢のリーダーである喜多見が、ササッと済ませてしまう。
でも、孤立したエレベーター内に「医師1人」と言う究極の設定を作って、喜多見と音羽の因縁を描きつつ、音羽の将来の究極の選択まで、一気に描いた。本来なら、このような連ドラの “縦軸” は1時間の最後に小出しにするのが理想的だが。
すべての色を吸収すると言われる【ブラック】の音羽は、7人(色)目なのか?
何度も書くが、本作は「7人の戦隊ヒーローモノ」のフォーマットを利用した異色な医療ドラマだ。だから、既に下記の6名は “色” が確定している…
●熱血漢のリーダーの喜多見の【レッド・喜多見】
●臨床工学技士で医療機器のスペシャリスト・徳丸(佐野勇斗)が知的でクール【ブルー】
●麻酔科医の冬木(小手伸也)が明るいムードメーカー【イエロー】
●シングルマザーで外科病棟副看護師長・蔵前(菜々緒)が癒し系のバランサー【グリーン】
●ベトナム出身の看護師・ホアン・ラン・ミン(フォンチー)が女性を活かしたキャラ【ピンク】
●研修医・弦巻比奈(中条あやみ)が未だ何の色に染まっていない【ホワイト】
そして、7人(色)目として、音羽がすべての色を吸収すると言われる【ブラック】としての究極の選択を、連ドラの “折り返し地点” に持って来た構成は、良く出来ていたと思う。
天野議員を「8人目のヒーロー」にする台詞と展開はお見事
そして、「戦闘ヒーローモノ」の “お約束” である【レッド】の大活躍だ。ここも良く出来ている。喜多見がエレベーター内に入ったら、即解決しても良さそうなのに、これまで悪役扱いされていた天沼議員へ、喜多見が次のように願い出た。以下に引用した台詞は、少し間引いている。
喜多見「天野先生 お手を貸していただけませんか?
オペを手伝いたいんですが酸素を吸ってると両手が使えません
俺の口に当てていてほしいんです
協力してくれたら 一躍ヒーローじゃ無いですか~」
遂に、本作へ「8人目のヒーロー」の登場だ。色は… 灰色議員ってことで【グレー】なんて新色はどうだろう(笑) この喜多見の台詞で、本作が完全に「戦隊ヒーローモノ」をベースに創り上げていることも分かった。それにしても、この台詞を書いたのは、凄いと思う。
登場人物たちが動いてストーリーを進めていくという「強い物語」で、しっかりと創り上げた
まあ、本作が「戦隊ヒーローモノ」をベースに創り上げていること、連ドラの構成が見事なこと、医療ドラマとしてツッコミどころは多々あるが、それが気にならない程の、登場人物たちが動いてストーリーを進めていくという「強い物語」で、しっかりと創り上げた。
脇役のバックボーンを意外と深く掘り下げずにメインを描く
そして、私が意外と気に入っているのは、脇役のバックボーンを意外と深く掘り下げずに、あくまでも描くのは喜多見を中心にしたチームの活躍だってこと。
先週では、駒場室長(橋本さとし)が車椅子生活になった背景や今の思いが描かれたが、第4話のメインではなかった。そして、この第5話でも、官僚としての出世を捨てて妊婦を助けると言う医師としての音羽を描いたが、メインではなかった。
やはり、脇役に関する過去にまつわる “縦軸” は薄めにして、人情モノ風なドラマになることを割け、あくまでも最終回まで「戦隊ヒーローモノ」で突っ走ると言う、つくり手たちの意図を再確認できた、良き全体のバランスの1話だった。
あとがき
さっき、1つだけツッコミを… と書きましたが…ツッコミを入れたのは現役の助産師である妻です。
36週目の39歳の初産婦で、「妊娠高血圧、子宮頸菅丁の短縮が認められて2週間前から入院。更に、翌日に帝王切開が決まっていたなら、赤ちゃんはあんなに大きくは育たない。なぜなら、母体から胎児へ十分な栄養が行かないから、かかりつけ医から転院し、結果、東京海浜病院でも治療の効果が十分に表れないから翌日に帝王切開になったわけで。
更に病名は「妊娠高血圧症と切迫早産」、主訴「血圧コントロール不良」とのカルテのワンカットもあったから、いつ破水してもおかしくないし…」と言うツッコミです。しかし、妻のツッコミには続きがあるのです。
それは、「コロナ禍でのドラマ撮影で、この病状に合うような、より細く低体重の赤ちゃん(子役)を撮影に参加させるのは、産科的にもコロナ感染的にもリスクが大きく伴うから、少し体力のある子役を選んだのでは?」と言うものです。
なるほど、スタッフの苦肉の選択だったわけです。まあ、基本的に「産科ドラマ」に登場する赤ちゃんは、撮影条件が過酷だったり、撮影に慣れていなかったりするため、人数を多めに準備しておく必要があります。しかし、新生児クラスになあると “プロの子役” は皆無なので、殆どがスタッフやその知り合いの紹介による赤ちゃん。
そう言う意味医でも・ドラマとして成立させるためには、否定する程のツッコミでないことは、お分かり頂けると思います。
因みに、今回、妊婦を演じておられた河井青葉さん。何処かでお見受けしたと思ったら、NHK「連続テレビ小説」の『エール』(2020年度前期放送)で、音(二階堂ふみ)が工員達と歌う合唱曲の選曲に感心した、音楽挺身隊のリーダー・蓮沼タツエ 役を演じておられました。
次週(第6話)の放送は、通常通り「8月8日よる9時からです。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/15809/
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