TOKYO MER~走る緊急救命室~ (第4話・2021/7/25) 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(公式サイト)
第4話『トンネル崩落! 移植手術へ命のタイムリミット』、ラテ欄『トンネル崩落! 心臓移植へ命のリレー!』の感想。
喜多見(鈴木亮平)は妹・涼香(佐藤栞里)の計らいで、元妻で循環器外科医の高輪(仲里依紗)と食事をする。高輪は涼香に、音羽(賀来賢人)が喜多見の‘1年前’を探っていると忠告する。直後、高輪の担当患者が臓器提供候補1位に選ばれ、移植手術には勉強のため比奈(中条あやみ)も立ち会うことに。だが、提供予定の心臓を運んでいた緊急車両がトンネル崩落事故に巻き込まれる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:黒岩勉(過去作/モンテ・クリスト伯、グランメゾン東京、アンサングシンデレラ、危険なビーナス)
演出:松木彩(過去作/下町ロケット2018、半沢直樹2020、危険なビーナス) 第1,2話
平野俊一(過去作/S最後の警官、インハンド、ノーダイド・ゲーム) 第3,4話
音楽:羽岡佳(過去作/チーム・バチスタシリーズ)
斎木達彦(過去作/ガールガンレディ)
櫻井美希(過去作/4分間のマリーゴールド ※兼松衆と共同)
主題歌:GReeeeN「アカリ」
医療監修:関根和彦(東京都済生会中央病院 救命救急センター)
浅利靖(北里大学病院 救命救急・災害医療センター)
長谷川剛(上尾中央総合病院)
医事指導:北里大学病院 救急救命・災害医療センター
看護指導:堀エリカ(過去作/朝ドラ「エール、日曜劇場「テセウスの船)
消防協力:東京消防庁
レスキュー指導:幾田雅明(NPO法人 日本消防ピアカウンセラー協会)
警察指導:伊藤鋼一
数学的にしっかりと筋立てが考慮された脚本のドラマは秀作
やはり、数学的にしっかりと筋立てが考慮された脚本家が書いた「緻密な設計図」の存在が大きいと言わざるを得なかったのが、第4話だ。
まず、この脚本家がスゴイのは、喜多見(鈴木亮平)の元妻・高輪(仲里依紗)が “心臓移植の専門家” である循環器外科医と言う人物設定と、「待ってるだけじゃ、助けられない命がある」をモットーに、死者ゼロを目指して病院を飛び出して行く“最強の救命医療チーム” であ「TOKYO MER」の専任チーフドクターである人物設定の “2つ” を、ドラマの骨格部分にしっかりと据えていること。
要は、建築設計図なら、基本的な基礎工事のやり方も、間取りも配慮済みってこと
ERカー出動のテンポの良さは、3つの交通ドラブルが同時発生
これだけでもスゴイのに、今度は、そこへ移植先の病院へ行く過程に “渋滞” と “迂回路” と “高速道路内のトンネル崩落事故” と言う “3つの交通トラブル(全てが交通トラブルと言うのがミソ!)” を同時発生させた。
そして、まず、サクッとテンポ良く、最新の医療機器とオペ室を搭載した大型車両(ERカー)で、危険極まりない重大事故・災害・事件の現場に駆けつけ、負傷者にいち早く救命処置を施すことを始めちゃう。もう、これだけで、第3話まで見て来た視聴者は「いつもの感じだね」と安堵できる。
テンポの良さと速さの"さじ加減"が絶妙
しかし、医療ドラマの冒頭で、視聴者が安堵したら、医療ドラマの意味がない。やはり、医療ドラマに於いて、視聴者の “安堵” と “感動” は終盤に構成するべきが、王道路線だから。
そこで、早期にERカーを出動さえ、喜多見たちに医療行為を始めさせることで、最も冒頭で描かれた喜多見の妹・涼香(佐藤栞里)の計らいで、元妻らが食事をする “一家団欒” 的な、ある意味で “本作には相応しくないシーン” を視聴者の記憶から即刻排除。
この辺のスピード感は早過ぎる気もするが。でも、遅いと、ドラマ全体のテンポが悪くなる。だから、やはり、ドラマのスピード感としては、抜群のさじ加減と言って良いと思う。
脚本家が救命医療ドラマとして"目指すハードル"を上げ成功
まだまだ、第4話の脚本には、褒めたい部分がある。
例えば、医療ドラマで最も大切な「救える患者は絶対に救う」と言う “個々の救命医” の “矜持” が描かれている。また更に、本作が最大限に強調し続けている「死者ゼロ」と言う “MER=モバイル・エマージェンシー・ルーム(The Mobile Emergency Room)の略称” である “救命救急のプロフェッショナルチーム” の “使命” も描かれている。
この2つをきちんと対比させることで、個人とチーム、ベテランと新人、アナログな診療と最新な治療が、明瞭に描き分けられている。なぜ、このようなことを毎回やるのか?
それは、もはや令和の救命医療ドラマでは、交差点で救命医の主人公が突然倒れた患者の肺にストローを突っ込んで気胸を緊急治療する程度では、救命医療ドラマとして “面白い” とか “感動した” と評価されない時代なのだ。
そのことを十分に脚本家が理解して、自ら救命医療ドラマとしての “目指すハードル” を上げ、私は、第4話までハードルを見事に毎回飛び上がっていると思う。
移植用の心臓には、ドナーとレシピエントの2人分の命が!
褒めたいところは、まだまだある。
今回のエピソードには “数名の命” がかかっているが、その中に “移植用の心臓=ドナー(臓器提供者)から受け取った命” と、“レシピエントの命”も描かれた。
そう考えると、移植用の心臓には、必死に生きていた人が何らかの理由で亡くなり、数々の段取りを通過して “死後に臓器を提供したいという人(ドナー)” となった人と、心臓の移植を希望する人(レシピエント)と言う、喜多見たちの目前にはいない “ドナーとレシピエントの2人分の命” も入っていると言うこと。
そう、救命医やレスキュー隊の目の前で苦しんでいる患者以外の “ドナーが生きた証” が “レシピエントの未来” までも担っていることも、臓器移植を描くことで表現したのは素直に褒めたい。
さり気なく駒場室長の過去のエピソードを加えたのも良い
そして、今回の感想で、どうしても書かなければいけないことがある。
それが、私が第1話の感想で指摘した「駒場室長(橋本さとし)が座っているのが “車椅子” である事実」についてだ。正直、第1話では一瞬しか映らなかった。しかし、第2話、第3話と回を増やす度に、車椅子が画面に映り込むカットが増えて行った。
いや、恐らく、正確に書くなら、今回のエピソードで、駒場室長の過去を描くために、演出サイドが計算して意図的に小出しにしたのだろう。
だから、気付いていた視聴者は「いよいよ、駒場室長の過去に迫るのか!」と大きく期待が膨らむし、気付かずにいた視聴者は「駒場室長に、そんな過去があったのか?」と、如何に本作が、連ドラとして、全話の構成が、しっかりと組み立てられているのかが分かると思う。これも、お見事と言わざるを得ない。
第4話のスーリーは、ある意味で「戦隊モノ」を超えた
そして、「まだ、褒めるの!?」との読者さんからの声が聞こえてきそうだが、今期は気持ち良く感想を書きたい作品が少ない。だから、あと少しだけ許して頂きたい。
この第4話のスーリーは、これまでのエピソードとは違って、より「戦隊モノ」になっている。と言うか、「戦隊モノ」をある意味で超えた。
そして、駒場室長は当然のこと、東京消防庁レスキュー隊の最精鋭集団である即応対処部隊隊長の千住(要潤)や元妻の高輪と言った謂わば身内だけでなく、微妙な立ち位置の音羽(賀来賢人)まで、喜多見のスポ根並みの救命医療への情熱と矜持に、過大な影響を受けている。
喜多見の言動がエピソードを紡ぐ「強い物語」になっている
ここまでは、私でも頑張れば思いは付く。しかし、本作が秀作である理由は、喜多見が主人公だから、喜多見だけが特別な救命医だからと言う “主人公特権” を全面的に押し出したヒーロードラマにはしなかったこと。
あくまでも「戦隊モノ」や「スポ根ドラマ」的に、自分の仕事に誇りやプライドを誰よりも強く持ち続け、自然に周囲から尊敬すべき人間となって、結果的に「みんなが “喜多見チルドレン” 的に意識変革し、“すべての命” を救った物語」まで、ちゃんと昇華&進化させたこと。
そう、喜多見の言動がエピソードを紡いでいく「強い物語」にもなっていること。これらが、私が本作を秀作と呼びたくなる理由だ。
あとがき
全体的に詰め込み過ぎな感じは否めませんが、「“すべての命” を救った物語」にするには、全員を助けないといけないので、全く不満はありません。むしろ、感動の方が大きいです。
看護師・夏梅が圧し潰された車内から救った移植ネットワークの医師・小山希望 役の高橋ユウさんですが、菜々緒さんが出演されていた『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』の第6話で、『MIYAVI』の雑誌撮影に呼んだモデル・ジェシカ 役で出演されていたと言う、ご縁があったようです。
最後に。今回のエピソードで描かれたのは前述のように「“すべての命” を救った物語」であり、その中には、何らかの理由で心臓を提供されたドナーの尊い意志と、ドナーの家族の複雑なお思いまで、直接は描かれていませんでしたが、ドラマに内包されていました。そこも感動的でした。
強制するつもりは、全くありませんが、つい先月に運転免許証の書き換えに行ったばかりなので、ちょっとだけ書きます。今回を見て、心の何処かに何かを受け取ったならら、「自分の運転免許証の裏面の臓器提供意思表示記入欄」について、考えるきっかけにするのも良いと思いました。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/15791/
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