TOKYO MER~走る緊急救命室~ (第2話/15分拡大・2021/7/11) 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~ 』(公式サイト)
第2話/15分拡大『若き医師への『命』という試練』、ラテ欄『医者なら全力で命を救え! 研修医の試練』の感想。
厚生労働省医系技官でMERの医師でもある音羽(賀来賢人)が喜多見(鈴木亮平)の経歴に疑念を抱く中、中学生数人が落下した鉄骨の下敷きになる事故が発生。危機管理対策室室長の駒場(橋本さとし)は救助活動終了まで待機を指示するが、喜多見は治療の優先順位を決める「トリアージ」のため1人で中学生達に近づく。一方、研修医の比奈(中条あやみ)は危険な現場に足がすくみ…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:黒岩勉(過去作/モンテ・クリスト伯、グランメゾン東京、アンサングシンデレラ、危険なビーナス)
演出:松木彩(過去作/下町ロケット2018、半沢直樹2020、危険なビーナス) 第1,2話
平野俊一(過去作/S最後の警官、インハンド、ノーダイド・ゲーム)
音楽:羽岡佳(過去作/チーム・バチスタシリーズ)
斎木達彦(過去作/ガールガンレディ)
櫻井美希(過去作/4分間のマリーゴールド ※兼松衆と共同)
主題歌:GReeeeN「アカリ」
医療監修:関根和彦(東京都済生会中央病院 救命救急センター)
浅利靖(北里大学病院 救命救急・災害医療センター)
長谷川剛(上尾中央総合病院)
医事指導:北里大学病院 救急救命・災害医療センター
看護指導:堀エリカ(過去作/朝ドラ「エール、日曜劇場「テセウスの船)
消防協力:東京消防庁
レスキュー指導:幾田雅明(NPO法人 日本消防ピアカウンセラー協会)
警察指導:伊藤鋼一
改めて本作の各登場人物を、「戦隊モノ」風に色分けしてみる
前回の感想で、本作に登場するメインの医者たちが「戦隊モノ」の構成になっていることを書いた(分からない読者さんは、下記にリンクがあるので、是非「第1話の感想」を読んで欲しい。
さて、一部の「戦隊モノファン」にとっては、【黒】の位置付けに疑問を持った人がいたようだが、ここは、あくまでも本作の人間関係、劇中での役割、そして何より重要なのは「脚本に於ける、物語を面白くするための "役目"」だと割り切って、改めて “ドラマの創り方” の1つの考え方として、下記の私の色分けを見て欲しい。
【ブルー】=知的でクール:臨床工学技士で医療機器のスペシャリスト・徳丸(佐野勇斗)
【イエロー】=明るいムードメーカー:外見からも麻酔科医の冬木(小手伸也)
【グリーン】=癒し系のバランサー:シングルマザーで外科病棟副看護師長・蔵前(菜々緒)
【ブラック】=すごく強い一匹狼:若手エリート官僚で医系技官の音羽(賀来賢人)
【ピンク】=女性を活かしたキャラ:ベトナム出身の看護師・ホアン・ラン・ミン(フォンチー)
【ホワイト】=まだ何の色に染まっていない:研修医・弦巻比奈(中条あやみ)
「7人チーム」での【黒】【ピンク】【白】の使い分けが秀逸!
まあ、普通の「戦隊モノ」として考えると、【赤】、 【青】、 【黄】、 【緑】、 【ピンク】の「5人組構成」が一般的だ。しかし、本作が普通の「戦隊モノ」と違って、脚本の7人の構成で、とても考えられているのが、【黒】、 【ピンク】、 【白】の3人分の使い方だ。
まず、【ピンク】の特徴である “女性らしさ” や “可愛らしさ” をドラマの中で必要最小限の表現に留めて、むしろ若干「5人組」の “外側” に置いている点。このことで、視聴者に、特に “子どもたち” に対して本作が「ありふれた戦隊モノ」には見えづらいと言う効果が得られる。
もう1つは、今現在の展開では、敵か味方か判別が出来ない【黒】を「5人組」の一員にして、更に【赤】から絶大な信頼を得ている医師として描いている点だ。これによって、視聴者は若手エリート官僚で医系技官の音羽尚(賀来賢人)の一挙一動に興味関心を抱く。そう、「音羽は、最終的に見方なのか敵なのか?」って。
これが、更に医療ドラマの背中を貫通している “縦軸” である「政治」や「医療界」との問題と上手く絡んでいるから、余計に面白く見える。
比奈の"研修医"と言う立場を活かしたストーリーも良かった
そして、問題の【白】だ。良く言えば確かに「特に何色にも染まっていない純白」と言えるが、言い方を変えれば「どっちつかず」あり、「中途半端」な存在だ。
しかし、今回の序盤の「工事現場での鉄骨落下事故」では、中途半端な【白】が “循環器外科で研修医” であると言う、医療現場では「医師未満、医学生以上」と言う更に中途半端な立場を活かして…
チーフの喜多見幸太(鈴木亮平)に反発する研修医・弦巻比奈(中条あやみ)と、実際に出動した最新の医療機器とオペ室を搭載した大型車両(ERカー)の車中での緊急オペでは、注射のルートもまともに取れない【白】を、患者の生命第一優先のために【赤】が無視する描写が使われた。
私の妻もベテラン・ナースだから「慣れた看護師より新人の研修医は使えない」は、ある意味日常的なことだと言うが。でも、本作のような緊急の救命救急の現場治療では「研修医は使えない」事の方が一般的(もちろん、実際には先輩医師が教育していくが)。
そこを敢えて、小学生から49歳の子育て親世代まで、幅広く見てもらうドラマで描いたのは、結構、作り手として勇気が必要だったと思うし、描いたことは、本作をよりリアルに見せる価値もあったと思う。
後半の「夏祭りでの爆発事故」では、「3ドクター体制」へ
後半の「夏祭りでの爆発事故」では、更に【黒】も【白】の “弱音” と “言いわけ” を無視する、こうなると、事前にくぎを刺された通りに “サポートドクター” と言う名ばかりのドクター以下のお手伝いなる。そこで、研修医の比奈(中条あやみ)も “やってはいけないはず” のトリアージを始めて「3ドクター体制」へ。
ドラマ的に上手いなと思ったこと
さて、ドラマ的に上手いなと思ったことと、「もっと、こうするべきだったのでは?」と思ったことがある。
前者は、前半での「工事現場での鉄骨落下事故」では、事故の規模に合わせて「ERカー」と「TOKYO MER」のメンバー中心で現場解決。しかし、後半の「夏祭りでの爆発事故」は規模が大きい。流石に最新の「ERカー」と技術力には定評のある「TOKYO MER」のメンバーでも、手に余る規模。そこで、救急車3台を追加し、早期に病床3確保。
やはり、いくら「戦闘ヒーローモノ」らしく、作っているとは言え、何でも緊急事故が発生したら、「ERカー」と「TOKYO MER」のメンバーだけで「死者ゼロ」にするには無理がある。今回位の “東京消防庁の応援体制” も併用した方がリアルで、面白いと思う。単純に後半の事故が “スゴ過ぎる” ことをアピールするだけでも… だ。
後半の大事故は、前半の事故とは規模が違うから、描写にも差があっても良かったと思う
ただ、「もっと、こうするべきだったのでは?」と思った後者について。それは、もっと “近隣病院の応援体制” も描いても良かったのでは? ってこと。例えば、「ERカー」以外のテントで作った病床では、「TOKYO MER」のメンバー以外の医師や看護師が、治療に当たるカットをワンカットだけでもインサート(挿入)するとか。
確かに、それをやってしまうと、「TOKYO MER」の意味合いが薄まるが、脚本と演出で「TOKYO MERがあるから」と、視聴者に “きちんと魅せる” ことが出来れば、もっと面白くなると思う。
だって、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』なんて、フライトドクター候補生4名とフライトナース1名で、消防や他の病院を上手く利用して大事故を解決するってストーリーを、2008年に既にやっていたのだ。本作だって、出来ないはずがない。と言うか、今後は大事故を扱うなら、よりやるべきだと思う。
喜多見が比奈をメンバーに選んだ理由が、とても良かった
ラストも、凄く良いなと思った。喜多見が比奈に言った
喜多見「当り前ですね 当たり前なんですけど
意外と少ないと思うんですよね
ただ純粋に 人の命を救いたいってだけの医者は」
この台詞、深い意味が込められていると思う。そもそも、大雑把に言うと医者には「今、医療現場で患者を救う医師」と「未来の病いを治療する研究医」に分かれる。でも、どちらも「人の命を救いたい」と言う気持ちには違いない。違うのは「今、目の前にいる患者」が対象か、「この先、将来の何千人、何万人の患者」が対象かってことだから。
それに、「実家が病院だから後継ぎとして医師にならなければイケない立場の医者」もいるし、「大切な人が医者に助けてられたから、自分も医者になりたい」って人もいる。「何となく人の役に立ちたいから」って人もいるだろうし、具体的に「地域医療、僻地医療に関わりたい」から医者になった人もいるはずだ。
いや、医療従事者の妻の話を聞けば、これら医師を職業に選ぶ理由は多種多様なのが現実。だから、【赤】が【白】の素直な理由に心を動かされ、託してみようと思ったのは良かった。
あとがき
今回は、「喜多見の活躍」と「比奈先生の成長」の “二本立て” で、見応えのある「15分拡大」だったと思います。
ただ、指令室からの「死者ゼロ」を聞いて、みんなが大喜びするシーンには違和感を覚えてしまいます。確かに「死者ゼロ」は大切な目的ではあるでしょうが、事故によって、これからリハビリや後遺症に悩む患者さんもいるわけで。1話に何回も必要ないと思います。それ以外は、満足な仕上がりでした。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/15741/
【これまでの感想】
第1話
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