"米津玄師×有働由美子"のドラマ「リコカツ」主題歌『Pale Blue』と「news zero」エンディングテーマ『ゆめうつつ』に関する対談をまとめてみた(2021年6月17日 放送)

©news zero
【今夜放送 #米津玄師 × #有働由美子 スペシャル対談】
#newszero のテーマ曲「#ゆめうつつ」
米津さんは「歌詞を書くのが難しかった」といいます
その理由とは?有働キャスターがじっくり話を聞きました
今夜、ぜひご覧下さい!#PaleBlue pic.twitter.com/J4hhwcarJw
— news zero (@ntvnewszero) June 17, 2021
昨夜(6/17)放送の日テレニュース番組『news zero』で…
昨夜(6/17)よる放送の日テレニュース番組『news zero』の中で、番組中で2回目となるキャスター・有働由美子氏とシンガーソングライター・米津玄師氏のニューシングル『Pale Blue』に関するインタビューが放送された。そこで、お節介だが、私なりの解釈でインタビューをまとめつつ、解説してみようと思う。
※以下、敬称略
『Pale Blue』のジャケットの女の子の表情について
『Pale Blue』のCDジャケットについて。米津玄師のCDは常に自身が描いているのはご存知だと思う。そして、今回のインタビューで、 『Pale Blue』のジャケットの女の子の表情について、「曲を作り終えた後に描いた」し、次のように語っていた。
できあがったものを客観的に説明付けるなら
あれはおそらく「恋に落ちた瞬間」ということになるのかなと
「開き気味の瞳孔」で「ちょっとサイケデリック」な「めまいみたいな色使い」にしたいと言う意識があったと言う。米津玄師にとっての “恋愛” には、 “ある種のナルシシズム” であり、 “自分の主観がグシャグシャになるような体験” と言う性質があるではと。ここの米津玄師の言葉選びのセンスにゾクッとした。
もちろん、彼の楽曲を聴けば、彼の恋愛観みたいなものには、恋愛は美しく、ピュアで、清らかな感情や関係ばかりでないと言うのは理解出来る。しかし、“ある種のナルシシズム” は分かるとして、“自分の主観がグシャグシャになるような体験” と言う性質を持っているとの表現にはハッとした。
「相手に翻弄される」とか「相手にメロメロ」とか「自分を捧げたい」とか、そう言う、ある種のポエトリーな言葉選びをせずに、「自分の主観がグシャグシャになる=自分自身が破壊される」と “恋愛” の性質を表現しているのは、あまり他で見たことがない。
『Pale Blue』のジャケットのデザインについて
そして、米津玄師は、このジャケットのデザインについて、次のように語った。
それを絵に表現する時に
毒々しいくらいにまでビビッドな
そういうものでないと
この曲には似つかわしくないんじゃないか
さて。当blogの読者さんなら、『Pale Blue』と言う楽曲は、6月18日に最終回(17日にオール・クランクアップ)を迎える連続ドラマ『リコカツ』の主題歌として書き下ろされたであることは、ご存知のはず。
ドラマの内容は「離婚から始まる恋」であり、その主題歌も、何となく「離婚から始まる恋」を意識した優しいラブソングに仕上がっているが、当然、主題歌とシングルカットの楽曲の意味する事が合致する必要性も必然性もないわけで。
実際の『Pale Blue』の歌詞も「離婚」と言う法律的な関係や、元夫婦と言う新たな人間関係を描くことに執着し過ぎていない。稚拙な例えにはなるが、結婚関係にあった男女の別れであったり、結婚未満の関係に於ける価値観の違いによって次第に遠ざかる男女の距離感など、あらゆる関係、あらゆる立場に於ける “様々な別れの情景” を「ずっと ずっと」を繰り返すことで…
タイトルの『Pale Blue』と言う言葉について掘り下げる!
こうなってくると、私の知的探求心が止まらない。まず、タイトルの『Pale Blue』と言う言葉について掘り下げる。
『Pale Blue』とは、当然 “色” を表す単語で、「青白い」とか「淡い青色」を示す。具体的な色を示すと言うよりも、「青」と言う色や言葉や単語から連想&発送される “情景” を表す言葉だ。では、「青」と言って、(一応)映像ディレクターでもある私の頭に浮かぶ情景は、例えば次のようなものだ。
●青春…明るくて楽しくて元気でキラキラ輝いた瞬間の連続
●青空…多くの人の心を晴れ晴れとさせる美しい情景
●憂鬱…「ブルーな気分」みたいな使い方で “憂鬱な気持ち” を表す。
ここで、上記の3つの内で「憂鬱(ブルー)だけが、何か意味が違うように思わないだろうか。そう感じた人は繊細な神経の持ち主だ。
「青」と言う言葉には、「青春」や「青空」のような明るいイメージがある。しかし、これは英語としての由来を考えないといけない。この「憂鬱(blue)」は、「きれいに青空が広がった月曜日の朝(blue monday)」が由来になっている。まあ、一般的に考えれば、月曜の朝が晴れ晴れしていたら「今週も頑張ろう!」と思うはず。
「憂鬱をblue」と言った遠い昔のアメリカに思いをはせて…
でも、昭和から平成にかけて「サザエさん現象」と言うのが一部の小中学生や大人たちの間で流行した。毎週日曜日の夕方に放送されているアニメ『サザエさん』のエンディングテーマを聞くと、その時は楽しいが、曲が終わった瞬間に、「明日は暗い現実に戻らなきゃいけないのか…」と憂鬱になった人が増えたのだ。
それを思い出せる人は思い出して、「憂鬱をblue」と言うようになった遠い昔のアメリカに思いをはせて欲しい。
その昔、肉体労働に従事していた人たちは、休み明けの月曜日の朝が晴れていると、「あ~、また肉体労働か。雨だったら仕事が休みになるのに。願えば、雨が降らないかなぁと、青空を見上げて神に祈ったのだ。でも、目の前に広がるのは「青空」だから、「青」に「憂鬱」の意味が加わったと言う説だ。
なぜ楽曲のタイトルを単純に『Blue』にしなかったのか推測
ただ、ここにもう一つ、米津玄師の言葉選びの卓越差がある。それは、楽曲のタイトルを単純に『Blue』にしなかったことだ。直前に「Pale(ペール)=淡い」と言う単語を添えることで、「濃い青」ではなく「淡い青」や「明るめの青」を印象付けることに成功している。
だから、この楽曲を聴くと、ドラマの登場人物たちも、歌に登場する人物たちにも、ちょっぴり明るさと前向きさが添えられると言う巧みな工夫が施されているのだ。と言うのは、あくまでも私の推測に過ぎないが。
『Pale Blue』を連想させ、呼応し合う「淡く青いメロディー」
そして、歌詞について掘り下げようと思ったが、ここは敢えて、深掘りは止めておこうと思う。はしごを外された気持ちになった人も多いと思うが、これだけの名曲を私如きの平民が拙稿で解説したところで、 『Pale Blue』の歌の世界観の全てを開設できるはずがないからだ。
ただ、少しだけ私なりの解釈を。歌詞の中にタイトルの『Pale Blue』を連想させ、呼応し合う歌詞として「淡く青いメロディー」が出て来る。その意味、意図は何なのか。
それは、恐らく歌詞の全編から伝わる、歌の中の主人公が「Pale Blue=淡く青い光」を探し求めていると言う現実。そして、「憂鬱(blue)」の感情に占拠された主人公にとって「Pale Blue=淡く青い光」こそが、自ら見出せる小さな希望であり未来であると言う願い。
別れや後悔を経験した全ての人たちに歌詞がグサッと刺さる
この辺まで歌詞の解釈が進むと、この楽曲がドラマ『リコカツ』ファンにとっても、心に響く楽曲であることも解釈できそうだ。
一目惚れで結婚した夫婦だが、一緒に暮らせば暮らす程に苦しさが増して、それから逃れるために離婚する。しかし、例え一目惚れであろうと、離婚することになったであろうと、元夫婦には誤魔化すことの出来ない、正真正銘の “愛” があったのだ。
そう、「リコカツ=離婚活動」と言う婚姻関係の最終段階的な状態を表す言葉と、映画やドラマの最終段階的な「エンドロール」と言う状態を表す言葉を対比させて、「リコカツ中=エンドロール」で気付いてしまった、もうやり直せず報われない愛を描いているのだ。
だから、ドラマ『リコカツ』の終盤で『Pale Blue』が流れると、やむを得ず別れをしたり、様々な事情で後悔を経験した全ての人たちの心に、ドラマと歌詞がグサッと刺さるのだ。
『ゆめうつつ』には公式MVがない理由について
そして、『news zero』の1月から番組の最後にその日のニュース映像に合わせて流れる『ゆめうつつ』についても、米津玄師は語っていた。その中で、私が最も興味深かったのは、この『ゆめうつつ』には公式MVがないことの理由だった。
あの曲はミュージックビデオとか作ろうかなと思っていたんですけど
あれ(ニューズ番組の最後)を見た時に
それでいいんじゃないかという
ニュース番組のテーマ曲を初めて作る米津玄師が感じたこと
そして、ニュース番組のテーマ曲を作るに当たって、米津玄師が感じたのは…
自分の中ではものすごく怒りに満ちた曲という意識があって
今なお続く新型コロナウイルスによる困難というものが
去年においては今以上にものすごかったりというか
その中でいろいろ主張だったり
イデオロギー(政治や社会に対する考え方)
そういうものが混濁していく様をみて
どうしてもわき上がってくる負の感情というか
そういうものがどうしようなくなって
それをいかにポップソングに落とし込むのか
その葛藤というのがものすごくありました
だから本当に飛ばすかと思いました
ここでいう「飛ばす」とは、「曲ができないと断ること」を意味していると思われる。そして、キャスターの有働さんが「曲について細かく聞くのは無粋だと知りつつ」とおっしゃっていたので、この『ゆめうつつ』の歌詞の細かい解釈については、避けることにする。
是非、曲を買って、聴いて、『news zero』のラストで1日のまとめの映像から感じ取って欲しい。
少年・米津玄師の不安が、コロナ禍で"可視化"された怖さ
ただ、少しだけヒントを。米津玄師は小さい頃、集団行動が苦手で、なかなか自己主張もできず、自分がここで生きていて良いのかと言う疑問が常にあったと言う。
でも、去年の新型コロナウイルス感染拡大によって、みんながマスクを付けて声を出すことを許されない、相互監視社会を目の当たりにして、少年時代の米津玄師の中に存在していた漠然とした不安が “可視化” されたと言っていた。
米津玄師は「夢と現実は反復が大事」と。だから明日も大事
そして、この歌の最後に「また明日」と言う歌詞がある。米津は「夢と現実は反復が大事」と言った。恐らくほとんどの人たちにとって「くだらない地味な猥雑な明日」が始まるのだが、それを受け入れないと始まらないとも言った。
そう、この言葉こそ、前述の「憂鬱(blue)」は、「きれいに青空が広がった月曜日の朝(blue monday)」が由来する… に繋がっているのだ。だから、言いたい。『Pale Blue』と『ゆめうつつ』は連続して聴くべきだと…
あとがき
米津玄師さんの歌詞もインタビューも、言葉選びのセンスの抜群さには驚きますね。そして、奥深い意味とポップソングならではの親しみやすさの融合も素晴らしいです。
まだ、読んでいない方は、下記の米津玄師さんに関する投稿もお読み頂けると嬉しいです。
ドラマ『リコカツ』主題歌・米津玄師「Pale Blue」と藤井 風「青春病」のMVの縦横比「1:√2」を深読みしてみた ※追記あり
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/15665/
【新型コロナウイルス関連の投稿】
これまでの新型コロナウイルス関連の投稿一覧
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