ドラマ『リコカツ』主題歌・米津玄師「Pale Blue」と藤井 風「青春病」のMVの縦横比「1:√2」を深読みしてみた ※追記あり

結論!
数学が苦手な読者さんも大勢いらっしゃると思うので、出血大サービスで結論を先に言っちゃいます。
ドラマ『リコカツ』主題歌・米津玄師「Pale Blue」と藤井 風「青春病」のMVの縦横比「1:√2」は、日本人が大好きで馴染みのあるA4版やB5盤などの紙の寸法にも用いられている「白銀比」や「大和比」だから、歌の世界観が自然にMVから伝わって来る… ってことです。
興味がわいたら、下記の解説を読んでみて下さい。ちょっと勉強になるかも… です。米津玄師さんの新曲「Pale Blue」の特別版の購入リンクも記載してありますので、どうぞご利用頂ければ幸いです。
米津玄師さんの『Pale Blue』のMVを良く見て気付いたこと
米津玄師さんの『Pale Blue』のMVが凄く良くて、最近よく見るのだが。
いつも、不思議に思っていることがある。それは画面の縦横比、所謂「画角」と言うやつだ。テレビや映画の画面の “縦横の比率” を考えて頂ければ良いと思う。そして、映像の世界には、一般的に下図のように大きく「4種類」に分類される。
●「16:9」の縦横比は「約1.77」
●「16:10」の縦横比は「1.6」
●「4:3」の縦横比は「約1.33」
●「2.25:1」の縦横比は「2.25」
『Pale Blue』の画角の縦横比は「約1.45」で、他と違う
しかし、米津玄師さんの『Pale Blue』の画角を計測してみると、「約1.45」となる。要は、普通の地デジ放送の「16:9」よりも横幅が短く、アナログ放送時代よりも、僅かに横が長い。この比率は(藤井 風さんの『青春病』デジタルEP)のMVでも使用されている。監督は、『Lemon』、『馬と鹿』、『カムパネルラ』を手掛けた映像作家の山田智和氏。
「映像の世界」から「絵画の世界」へ旅行してみよう!
ではなぜ、監督は「1:1.45と言う縦横比を選んだのか、私なりに深掘りしてみる。そこで、話を「映像の世界」から「絵画の世界」へ旅行してみようと思う。 「絵画の世界」には、「キャンバスサイズ」と言う独特な “縦横の比率” が存在する。大きく分けると、4サイズある。
●FサイズのFはフランス語で “人影” を表す “Figura”
●Pサイズは “風景” を表す “Paysage”
●Mサイズは “海景” を表す “Marine”
●Sサイズは “正方形” を表す “Square”
この世で縦横の比率が最も美しく安定して見える「黄金比」
と言う単語の意味から、4サイズが決められていて。ここで登場するのが、この世で縦横の比率が最も美しく安定して見えるとされるのが「黄金比」。おおよそ「1:1.618(正確には1:(1+√5) / 2)」とされている。身近で黄金比を使ったものと言えば、
●トランプ
●キャッシュカード
●パスポート
●名刺
などがある。
「1:√2」はA版(A3・A4等)とB版(B4・B5)などの紙の寸法
そして、この黄金比とほぼ同じなのが「Mサイズ」。「Mサイズ」を半分にしたのが「Fサイズ」、「Sサイズ」は正方形なので黄金比と関係ない。
残ったのが、「Pサイズ」で、「Pサイズ」は、2分割しても比率が変わらない「1:√2」となっている。「√2=1.41421356・・・」ですが、学生時代に “一夜一夜に人見ごろ[ひとよひとよにひとみごろ]” なんて覚えた方もいるのでは?
では、身近に「1:√2」のモノは無いのか? それがあるのだ。実は、「1:√2」には、立派な「白銀比」や「大和比」と言う名前がついている。そして、私たちの身近な所にあるA版(A3・A4など)とB版(B4・B5)といった「ISO 216規格」で定められる紙の寸法に用いられている。
もう、お分かりだろう。山田智和監督は、MVなのに、A4やB4の紙に書いたような雰囲気、1コマ1コマ、1フレーム1フレームでなく、1枚1枚積み重ねた紙芝居のような造形美を映像で表現したかったのではないだろうか。
「√2」は。「無理数(循環しない無限小数)」である
そして「√2」は「無理数」である。「無理数」とは具体的に言うと、循環しない無限小数こと。つまり、小数の位が続いていくが、続き方に規則がない小数のことだ。
ん? 「ここは、ドラマ『ドラゴン桜』の「東大専科」か?」と思う読者さんも、おられるかも知れない。しかし、ここは間違いなく『ディレクターの目線blog」だから、もう少しだけお付き合い頂きたい。
そこで、中学数学にタイムスリップだ。中学数学に登場する代表的な無理数は、「π(パイ)」だ。そう、直径と円周の比の円周率のことだ。これも分数に出来ない上に、無限に続く少数に全く規則性が無い。試しに、円周率を100ケタぐらいみても…
π=3.14159265358979323846264338327950288
41971693993751058209749445923078164
062862089986280348253421170679…
無限に「ずっと ずっと」と思い続けることと、循環しない無限小数の取り合わせの妙!
さて、「√2」に話を戻そう。「1:√2」は一般的な用紙の縦横比。そして、分数で表せない循環しない無限小数。ここから、米津玄師さんの『Pale Blue』の歌詞を思い出そう。
ずっと、ずっと、ずっと
恋をしていた
で始まり…
ずっと、ずっと、
ずっと、ずっと、ずっと
恋をしている
で終わる。途中にこんな歌詞もある…
どれだけ生まれ変わろうとも
意味がないくらい
どこか導かれるように
あなたと出会いたい
今更言いたいことなんて
一つもないのに
私あなたに恋をした
ほら、歌詞に登場する二人はそれぞれが「完全な1人」ではないのだ。数字で表せないようなその都度都度の割合で、相手に恋をして、相手に導かれて、相手に会いたいのだ。そして、規則性がなく、無限に「ずっと ずっと」と思っている。だから、この縦横比が合っているのだと思う。
そして、この楽曲が主題歌となっているドラマ『リコカツ』の主人公・咲と紘一に強引に当て嵌まれば。まず、「婚姻届用紙」と「離婚届用紙」は「1:√2」の “A3用紙” と決まっている。
循環しない無限小数と、「"青春病"を断ち切るんだ!」と言う強いメッセージが見事に呼応する!
また、前述の藤井 風さんの『青春病』のMVだが。内容は、コロナ禍で青春を謳歌したくても出来ない人たちへ向けて、架空の青春、あったはずの青春、本当なら体験していたはずの青春を見せてあげようとする意図で作られていると思う。
「1:√2」の画面比率でつくられた映像だからこそ、若者たちが楽しそうに踊る姿がよりノスタルジックに映るし、写せたはず、残せたはずの思い出を記録したポラロイド写真のように見せるエンドロールも、「1:√2」の中に正方形の写真が収まるから、劇中の若者たちの思いが成仏されるような収まり感が強まるのだ。
コロナ禍で思うように叶えられなかった予想外の青春を “病” と表現し、更に歌詞とMVが、その「青春病」を断ち切るんだ! と言わんばかりの鮮明なメッセージの可視化だ。
山田智和監督と、米津玄師さんと藤井 風さんの世界観の融合
なんだか、とめどもない話になってしまったが。「黄金比」のように美しく安定はしていないが、馴染みのある「1:√2」の画角サイズで日常を切り取る山田智和監督と、米津玄師さんと藤井 風さんが奇しくも同じように描く「規則性のない無限の世界」が、妙にしっくりとオジサンにも伝わって来た。
あとがき
「1:√2」の白銀比は、世界最古の現存する木造建築物である法隆寺の金堂や五重塔に使われており、国内の寺社建築や仏像の顔、日本絵画など「日本人が美しいと感じる比率」として古くから用いられています。
また、「ドラえもん」「ミッキーマウス」「となりのトトロ」「スヌーピー」は、身体の幅と身長が「1:√2」。「ドラえもん」「アンパンマン」 「キティちゃん」の顔の部分が「1:√2」。最近では、東京スカイツリーの全高634mに対して第2展望台までの高さが448mが「1:√2」です。
いろいろな角度で映像と音楽、ドラマを重ねて考えるのも、楽しいですね。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/15622/
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