大豆田とわ子と三人の元夫 (第8話・2021/6/1) 感想

関西テレビ制作・フジテレビ系・火9ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(公式サイト)
第8話『ファミレスの密会・深まる秘密の恋心』の感想。
また、本作は昨夏に全話を撮影終了しているため、要望などは基本的に書きません。
買収騒動に揺れる「しろくまハウジング」に、外資系ファンドの人達がやって来た。双方が話し合いの席に着く中で、とわ子(松たか子)は社長辞任を迫られることに。そんな折、とわ子の変化を察した慎森(岡田将生)と鹿太郎(角田晃広)が2人でマンションを訪ねてきて、とわ子を驚かせる。一方で、とわ子は公園で知り合った男性(オダギリジョー)から、意外なお願いをされる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:坂元裕二(過去作/東京ラブストーリー、問題のあるレストラン、カルテット)
演出:中江和仁(過去作/映画「嘘を愛する女」、きのう何食べた?) 第1,2,6,8話
池田千尋(過去作/プリンセスメゾン、まどろみバーメイド) 第3,4,7話
瀧悠輔(過去作/僕はどこから) 第5話
音楽:坂東祐大(過去作/美食探偵 明智五郎)
ナレーション:伊藤沙莉(過去作/ひよっこ、これは経費で落ちません!、いいね!光源氏くん)
挿入歌:「Ils parlent de moi feat. Maika Loubte」
「All The Same feat. Gretchen Parlato, BIGYUKI」
主題歌:STUTS & 松たか子 with 3exes(Sony Music Labels)
「Presence I (feat.KID FRESINO)」(第1.2話)
「Presence II(feat. BIM, 岡田将生)」(第2,7話)
「Presence III(feat. NENE, 角田晃広)」(第3,8話)
「Presence IV(feat. Daichi Yamamoto, 松田龍平)」(第4話)
「Presence V(feat. T-Pablow)」(第5話)
視聴者の心を心地良く、かき乱すドラマだから咀嚼したい
やはり、本作って、一度見ただけで感想が書けなくて。少なくともリアタイ視聴して、更に1度、2度見てから感想を書く。それ程、難解と言うわけでない。むしろ、先週の感想に書いたように、脚本が数学的に緻密に計算されて書かれいる。
その上、更に緻密に演出、演技させることで、「視聴者の心を心地良く、かき乱す作戦」みたいな部分があるから、何度も咀嚼することで味わいたいと言うのが本音なのだ。
巧みな仕掛けの小鳥遊の台詞で、とわ子の心情描写をやる
例えば、今回の冒頭。もう、「これでもか!」と言わんばかりに、大豆田とわ子(松たか子)の “朝から気分のいい1日” を描いただけ。描いただけだから、それだけで、とわ子って人の人柄が見えて来る。
じわじわと、とわ子の人柄が見えて来た中で、前回で、しろくまハウジングを買収した外資系ファンド・マディソンパートナーズの責任者で “企業買収の悪魔” と呼ばれる人物であり、最近親しくなったばかりの小鳥遊(オダギリジョー)が登場する。そして、今度は、次のやり取りで、とわ子と大史の思考回路の違いをさらりと描く。
とわ子「エアコンみたいに暖かいの冷たいのって切り替えできません」
小鳥遊「仕事上の対立があったからって
それじゃあ さよならっていうのは
むしろ それこそ 切り替えられないっていうか」
そう、ここの大史の台詞が緻密に計算されていると思う。普通なら「むしろ」と相手に対して軽く反論しているわけだから、「 それこそ (あなたは)切り替えられていないんじゃ?」みたいに、オンとオフ、仕事とプライベートを切り替えできないとわ子のことを「切り替えられていない人」と評価すると思う。
でも、実際の小鳥遊は「切り替えられないっていうか」と、とわ子は「切り替えができない」と決めつけているだけで、本当は「切り替えできるのでは?」と疑っている、いや、期待していると思う。
なぜなら、前回での かごめ(市川実日子)の急死を整理が出来ない とわ子に「中国剰余定理」を使って数式で証明し、フランスの哲学者「アンリ=ルイ・ベルクソン」(1859~1941)の「時間に秒単位などの “刻み” は無く、流れを持った空間として存在する」と言う論理展開に、少なくとも、とわ子は共感し “救われ” て、何かを眺めながら歩くように “変化” したのだ。
だから、とわ子も “切り替えよう” と思うに違いないと、台詞の中へ暗に含んでいると思う。もちろん、私はそう言う展開になることを、この時点で期待しているわけで、そこを僅かな台詞の書き方で、さらりと匂わせているのが上手いなと思う。
自分から八作からの電話を切れないとわ子の描写がいい感じ
次のシーンも好き。元妻の恋心を敏感に察した慎森(岡田将生)は、鹿太郎(角田晃広)2人でとわ子のマンションへやって来て、ハンカチ貸すの貸さないのをやった後に、八作(松田龍平)が夜遅いけど会わないかと二度尋ねるが、とわ子が「結局 2人して 同じこと考える感じになるよ」と断るシーン。
同じ価値観で結婚した元夫婦(今は離婚しているが)から、「同じこと考える感じ」になることは分かっている。分かっていても、これまでは結構、付き合っていたように思う。
でも、とわ子は小鳥遊と出会い、自分と異なる “価値観” や “思考回路” の持ち主と関係を持つことで得られる、ある種の “刺激” に中毒化し始めているように感じた。「し始めている」のは、「切って」と自分からは、まだ電話を切れないことで分かる。そのことに気付いていないようなとわ子がいい感じだ。
小鳥遊が手にした「ガウス算出研究整数論 駒野健介|著」
さて、数学大好きな私の、ちょっとした数学のうんちくを。小鳥遊が手にした本が「ガウス算出研究整数論 駒野健介|著」だった。ガウスとは、ドイツの数学者、天文学者、物理学者、カール・フリードリヒ・ガウス(1777~1855年)のこと。今でも、「数学者の王子」や「歴史上最高の数学者」と呼ばれている。
ガウスの逸話で有名なのが、7歳の時の小学校での算数の授業での出来事。算数の先生は、クラスの生徒に「1から100までの整数をすべて足しなさい」と問題を出した。先生は答えを出すのが一番早い生徒でも10分は掛かると思っていた。しかし、ガウスは一瞬で説いてしまった。その方法が次のやり方。
「1から100までの整数をすべて足しなさい」の斬新な解法
「1+2+3+4+?+98+99+100=?」を計算するに、まず「1と100」を加算する。すると、「1+100=101」。続いて「2と99」を加算して「2+99=101」。更に「3と98」を加算して「3+98=101」となる。このように、1から100までの数を外側から順に足していったのだ。加算する数は、100の半分の50と分かるから、「101を50回」加算すると言うことは、「101×50=5050」。
これの計算方式を僅か7歳の時に、一瞬で思い付いたのが、ガウスが天才であり、数学好きが好きになる魅力なのだ。
また、昨日放送が始まったテレ東の連ドラ『シェフは名探偵』をご覧になった方向けのエピソードもご紹介してみる。ドラマの中で “素数” が出来たと思う。「素数とは、1と自分自身の数字でしか割り切れない整数のこと」だ。そして、ガウスが発見したのは「数が大きくなるほど、素数が見つかり難くなる」と言う “ガウスの素数定理”。
前回では哲学、今回では数学を脚本家が強調する理由…
先の「1から100の足し算」も「ガウスの素数定理」にも、本作に共通するところがあると思っている。1つは「固定概念に捉われない自由な発想」を取り込むことが意外と大事ってこと。もう1つは、歳を重ねると割り切れないことを歳を重ねれば重ねる程に、何らかの理由をつけて気にしないようにするようになるってこと。
あくまでも、私の勝手な論理展開だが、ここまで、前回では哲学、今回では数学を脚本家が強調するには、それだけの理由があると思って、推測してみた。
小鳥遊と天才ガウス少年の思考回路が重なっているよう感じ
そして、前述のガウス少年が一瞬で解いた「1から100までの整数をすべて足しなさい」に類似した表現が、用いられていたことにお気付きだろうか。とわ子と小鳥遊がプライベートで話すシーンだ。それが、小鳥遊が言い始めた「結婚と離婚の両方が好きなんですね」からだ。
「スポーツとけがの両方」とか「サウナに入ったあとの水風呂」とか。なんか「1+100」、「2+99」に似ていないだろうか。相反する状態を比較して重ねることを、小鳥遊は「前向きな表現」と言っていた。何となく、小鳥遊と天才ガウス少年の思考回路が重なっているよう感じが、本作らしいなと。
小鳥遊は、どこまでも解らない男…
いやあ、22分の小鳥遊に言った とわ子の次の台詞が、私の心にグサッと刺さった。
とわ子「解明も証明も定義もしなくていいのが普通の会話です」
これ、私、ついついやっちゃう。って言うか。わかっているのに、ついつい妻との会話の中でやっちゃう。そして、コツンと叱られる。「数学じゃないのよ、夫婦の会話は」と、中森明菜さんの歌のタイトルのように(苦笑)
この、小鳥遊の社長令嬢との交際のやり方を伝授してるとわ子って、どことなく、既に自立して手元を離れてしまった娘・唄(豊嶋花)へ注ぐ愛情を、小鳥遊に注いでいるようにも見える。恋愛未満と母親の立場の中間地点みたいな、ざわざわしたとわ子の心理が、上手く表現されていたと思う。
そして、「3つのケーキを4人で均等に分ける方法」からの、数学なんて人生の役に立たない、数学が無い方が思い出ができると、さり気なく言う小鳥遊。どこまでも、解らない男だ。
とにかく、とわ子と小鳥遊の関係が気になる…
本編の感想(遅っ!)。仕事とプライベートのシーンの切り替えが多かった今回。仕事とプライベートを、きっちりと分ける小鳥遊は、17歳から31歳まで人生が無かった男であり、社長に従順なロボットのよう。でも、一方で、数学や論理展開が大好きなのに思い出を大事にする不思議な男。
そんな謎めいた男に、惹かれるとわ子。なぜ、とわ子が小鳥遊に惹かれるのかは、かもめや3人の元夫たちの人柄や性格から察すると、彼女独特の嗅覚や感性があって、それで惹かれるのだろう。とにかく、とわ子と小鳥遊の関係が気になる…
あとがき
とわ子の心理描写が秀逸ですね。それと、先の展開の分からない脚本。とにかく、「先の展開が気になる連ドラ」感が、更に増したのは間違いありません。次回にも大いに期待します。
最後に、「3つのショートケーキを4人で分ける方法」の回答を。二等辺三角形の同じ大きさの3つのケーキがあると仮定します。本当は、正確に上から見て面積比で「1:3」になるところで切るのが良いです。でも、出来ないなら、3つを下図のように台形に並べて、真ん中あたりを切ります。そして、三角形に尖った部分3つが、残りの台形部分と “ほぼ同じ” 体積になるってわけです。もちろん、イチゴの数は違いますが…

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【これまでの感想】
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