リコカツ (第7話・2021/5/28) 感想

TBS系・金曜ドラマ『リコカツ』(公式サイト)
第7話『離婚宣言! そして、新たな恋の予感…!?』の感想。
咲(北川景子)の部屋に両家が全員集合、咲と紘一(永山瑛太)は自分達の離婚を報告する。そしてそれぞれ歩み始めた二人の前には、早速新たな恋の相手が現れ始める。咲やその家族の相談に乗りつつ、咲が心配でならない元カレ・貴也(高橋光臣)。離婚を知り猛アプローチを仕掛けてくる小説家・連(白洲迅)。一方、父・正(酒向芳)と侘しい二人暮らしになった紘一の実家に、上官・純(田辺桃子)が手料理を持って訪ねて来て…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:泉澤陽子(過去作/あまんじゃく2018,2020、お迎えデス。、ブラックスキャンダル、大恋愛)
演出:坪井敏雄(過去作/凪のお暇、カルテット、わたナギ、恋あた) 第1,2,5話
鈴木早苗(過去作/3年B組金八先生ファイナル) 第3,7話
韓哲(過去作/ATARU、IQ246、コウノドリ、集団左遷!!) 第4話
小牧桜(過去作/この恋あたためますか) 第6話
音楽:井筒昭雄(過去作/民王、99.9、トクサツガガガ、妖怪シュアハウス、書けないッ!?~脚本家)
主題歌:米津玄師「Pale Blue」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アバンの冒頭で時間軸を撒き戻したのは、いいアイデア!
今回のアバンタイトルの冒頭のシーン、緒原家、いや両親が離婚済みだから正確には「元緒原家」か? の、3人が咲(北川景子)の部屋に集合して土下座するシーンって、今フジテレビで放送中の火9ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』へのオマージュでは? いやいや同時期に放送している恋バナドラマとしてリスペクトしているのかも?
なんて思ったのは、咲が「なぜ こんな事態になっているのかというと…」のモノローグが、「○○する大豆田とわ子」のナレーションみたいに聞えたから。まあ、恐らく意識して作っているわけでは無いと思うが。
序盤で時間軸が大きく巻き戻る展開は、本作では新鮮だし、面白いと思う。だって、前回で主人公夫婦には大きく区切りがついたわけだから、今回から最終章に向かって、更にアクセルを踏むと言う意味で、いいアイデアだと思う。
武史の携帯電話の着メロが、映画『鎌田行進曲』の挿入歌
オマージュ繋がりで言うなら、第4話から咲(北川景子)の父・武史 役が佐野史郎さんから平田満さんに交代したのは、ご存知のはず。その初登場シーンでは “眼鏡” へフォーカスして、何気なく交代の違和感を腐食下を覚えている人も多いはず。
そして、今回は、武史の携帯電話の着メロが、平田満さんの代表作、映画『鎌田行進曲』(1982年)の挿入歌だった。因みに、主題歌は桑田佳祐作詞作曲の中村雅俊さんの『恋人も濡れる街角』。
もしも、佐野史郎さんだったら、冬彦さん現象のドラマ『ずっとあなたが好きだった』の主題歌、サザンオールスターズの『涙のキッス』かなぁなんて思ったりして。おっと、桑田さんで繋がってるわ。おっと、感想から脱線してしまったが、どうか佐野史郎さんには、また元気な姿を見せて欲しい。
注目したのは、両家が全員集合した咲の部屋のセットの撮影
感想に戻って… と。
咲の部屋に両家が全員集合、咲と紘一は自分達の離婚を報告すると、両家の両親と、咲の姉・鹿浜楓(平岩紙)まで離婚宣言。これだけで面白いのだが。私が注目したのは、咲の部屋のセットの撮影。
時代劇の大屋敷の場面では珍しくないことだが、近年のホームドラマで、ここまで奥行きの深いスタジオセットを使ったカメラアングルで8人もの登場人物(+ぬいぐるみ)が一堂に手前から奥に向かって並んで演技をしたドラマがあっただろうか。
それも、奥行き感を出しつつ、各登場人物が “ダンゴ(カメラに対して重ならないこと” にならないように、前回の感想にも書いたが、部屋のセットが「2段」になっている。まるで、時代劇のお殿様が奥に居て、手前に家臣たちがいるみたいに。いや、元緒原家が正座しているのは、明らかに時代劇を意識した構図。まあ、紘一は “武士野郎” だから必然性もあるし。
更に、毎度書いて恐縮だが、本作で用いられているTBSではドラマ『渡る世間は鬼ばかり』でしかやっていない、カメラ6台を使ったマルチ撮影によって、ド~ンと引いたカットを中心に、細かくカット割りをする。
特に、マルチ撮影が際立ったのが、咲のアップで「私も 紘一さんとは別々に生きていきます」と言う時の「私は」の直後にカメラが切り替わり、台詞終わりで紘一のアップにスイッチングするところ。カメラ3台で撮影しているが、2カット目のカメラの位置は、恐らく紘一の背後にある。
で、3カット目が紘一のアップだから、カメラが映らない。これがマルチ撮影だと容易に出来ちゃうのだ。
一ノ瀬の謝罪で紘一の複雑な心境を"グー"と"鼓動"で魅せた
好き嫌いはあると思うが。私が前半で好きだったシーンが、 20分頃、紘一の航空救難団での後輩で、階級は3つ上の3等空尉で上司の一ノ瀬純(田辺桃子)が緒原家に突然やって来たシーン。
紘一の父・正(酒向芳)と将棋を指して正が勝つが、「実に 面白い将棋を指す 戦況を冷静に広く捉え 敵が想像しない好展開の一手を指す いい指揮官になる証左です」と言った後に、一ノ瀬がこれまでのやったことを「悪事」と認めて謝罪するところ。
そこで、紘一が力強く右手をグーにするアップがワンカット入ったこと。そして、離婚したのは一ノ瀬のせいではないと言う時に、紘一の息が少しだけ上がっていたこと。紘一の複雑な心境がグーと鼓動で魅せた。演出も演技も上手いから出来る技だ。
今回最も衝撃的だったのは「離婚する理由100個」の"続き"
そして、 が始まったこと。確かに、前回で続きをやるとは言っていたが。いきなり始まったから驚いてしまった。と同時に、この離婚してしまったことで、かなりシリアスな展開になって半分も進んだから、ここでガラリと展開を変えるのは、感心したし、お見事だ。
感心し、見事なのは展開の妙だけではない。離婚して、心も居場所も離れているはずなのに、最初はLINEで、次は電話で、今や「離婚 “した” 理由100個」を続けることで、二人が本音を言い合い、むしろ、結婚中よりも “心の距離” が近くなっているのを、ユニークに魅せたこと。
大砲や犬の吠える声や鐘の音の効果音、二人の画面ワイプの編集や劇伴の選曲などの演出はもちろん、メリハリある会話劇の内容も、そして、北川景子さんと永山瑛太さんの演技も。5分間のやり取りだったが、本作の作り手たちのポテンシャルの高さが見事に輝いた秀逸なシーンだった。
思い出の地「よしの食堂」のシーンの演出や演技も良かった
一つひとつ、拾わなくても良いのだが。咲が緒原家にワイシャツを届けた帰りに、思い出の地「よしの食堂」のシーンの演出や演技も良かった。
まず、咲が店先に立つまで、まるで背景の街並みが合成のように、カメラに向かって歩いて来る先にピントがピッタリ合っていた。これ位、北川さんの瞳にピントが合っていると、それだけで気持ちが良い。更に背景のボケ味も夕景ちょっと前の時間帯も、本当に美しい。
そして、「空自唐揚げ定食」が届いて、モノローグがあって、割り箸を割って唐揚げを掴んでから口に運ぶまでの動きに合わせて、ガヤ(店内の騒がしい音)がフェードアウト。
そして、切ない感じの劇伴。このまま、咲の切ないモノローグで終わると思わせて、紘一の「ああ もう一人」の声だけ先行して、唐揚げを口に頬張ったまま顔を上げる咲に驚く紘一のカットバックから2ショット。そして、再び二人のアップがどんどん切り返されて、唐揚げのオチ。
やはり、このシーンも作り手たちのポテンシャルの高さが見事に輝いた秀逸なシーンであるのは間違いない。
連ドラとして完成度も満足度も高い。お見事!
いやあ、スゴイ。スゴ過ぎる。離婚したから、どうやってその後を描くのかと思ったが。実際は、紘一の気持ちは「グー」で、咲の気持ちは「唐揚げ」に象徴させて。更に、同時に恋のライバルをイラっとする程に強調することで、主題歌である米津玄師さんの「Pale Blue」が際立ち、それをバックに逃げる咲と追い掛ける紘一。そして、あのラスト。
こう言う表現は使いたくないが、本当に連ドラとして良く出来ている。二人の気持ちはまだ完全に離れ切ってはいないと言うように描きつつ、ライバルを絡めて、徹底的に視聴者を焦らす。焦らして焦らして、焦らしまくる。だから、先が気になって次回も見てしまう。イラっとするのが分かっているのに見ないといられない。
これこそ、連ドラとして完成度が高い証拠。そして、満足度も高い。お見事!の一言だ。
あとがき
私もですが、恐らく多くの視聴者が、「咲ちゃん、言っちゃえ! 意地なんて張るな!」ってテレビに向かって叫んだのでは? そして「邪魔者は、全部消えちゃえ!」って。丁寧に丁寧に、徹底的に、咲と紘一の本音と本心を描いているから、感情移入し過ぎる位に完成度が高いのです。次回にも、大いに期待します。
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【これまでの感想】
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