リコカツ (第6話・2021/5/21) 感想

TBS系・金曜ドラマ『リコカツ』(公式サイト)
第6話『家売る夫婦の最後』の感想。
ついに離婚を決めた咲(北川景子)と紘一(永山瑛太)。新居の買い手も見つかり、残された日々を穏やかに過ごそうとする2人の一方で、それぞれの両親のリコカツも結末を迎えようとしていた。そんな中、図らずも元カレ・貴也(高橋光臣)や、担当する小説家・連(白洲迅)との距離が縮んでいく咲。そして迎えた夫婦最後の夜、紘一の基地では緊急招集のサイレンが鳴り響いていた。それが咲に届くはずもなく、彼女は夫を待ち続ける…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:泉澤陽子(過去作/あまんじゃく2018,2020、お迎えデス。、ブラックスキャンダル、大恋愛)
演出:坪井敏雄(過去作/凪のお暇、カルテット、わたナギ、恋あた) 第1,2,5話
鈴木早苗(過去作/3年B組金八先生ファイナル) 第3話
韓哲(過去作/ATARU、IQ246、コウノドリ、集団左遷!!) 第4話
小牧桜(過去作/この恋あたためますか) 第6話
音楽:井筒昭雄(過去作/民王、99.9、トクサツガガガ、妖怪シュアハウス、書けないッ!?~脚本家)
主題歌:米津玄師「Pale Blue」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
離婚を決めたからこその"幸せ"と言う残酷な現実との葛藤
序盤での朝食シーンでの「他人と思うと 気が楽」と言う咲(北川景子)の印象的なモノローグで始まった第6話。中盤のダブルレインボーでも「私 今 幸せだ」と言って。離婚を決意したからこそ、気持ちが楽になって、そのお陰で、幸せをかみしめる二人。思いの他、心地良い… 夫婦、家庭、家、食事、そして生活。
でも、それら全てが、離婚を決めたから得ることの出来た “幸せ” だと言う残酷な現実。だから、葛藤する。離婚を止めようかと…
「離婚取り消し」の流れに、い感じのトラブル発生
このまま「離婚取り消し」になると思いきや。最後の晩餐の日。紘一(永山瑛太)の基地では緊急招集のサイレンが鳴り響き、家には咲が担当する小説家・連(白洲迅)がやって来て。咲の手作りの最後の晩餐が帳消しに。トラブル発生だ。
でも、何となく、「離婚取り消し」の流れに単純に進みそうなところへ、いい感じのトラブル。小説家の屈折した心情もちょぴり見えたし、咲や紘一への気遣いも見えたし。
切なさと感動的な悲劇と喜劇を組み合わせた秀逸なラブコメ
そして、最後の晩餐が「焼き魚定食」になって、「うちの味」からの「離婚する理由 100個」へ進むが、100個出て来ない。ホント、ラブコメとして秀逸過ぎる展開だ。とにかく、ベースになっている恋バナの部分を、徹底的に大小揃えたエピソードを次々と紡いで、丁寧に丁寧に積み重ねている。
だから、その恋バナの上にコミカルな描写を乗せても、土台は全くぐらつかない。いや、ぐらつくどころか、コミカルな部分がクスッと出来れば出来る程に、より切なさを感じるし、感動的な悲劇と喜劇を組み合わせた恋愛ドラマとして、秀逸なのだ。
咲が左手で紘一の右腕を軽く叩く演技が映っていたのが良い
また、毎回書いて恐縮だが、本作でも散られている、家のシーンでの6台のカメラを使ったマルチ撮影も、今回は絶妙な芝居を逃さずに捉えていた。それは、終盤で咲が注文していたカーンを窓に取り付けた後のシーンだ。紘一が家を売らなくて良いと咲に告げる。そして、こう、たどたどしく言い始めた…
紘一「自分は 思いを 言語化するのに 時間がかかる。すまない」
この後、咲は「遅い 遅いよ」と言うが。紘一が台詞を言ったあと、窓のカーテンの方へ向かう時、咲が左手で紘一の右の腕(肩の付近)を軽く叩く演技が映っている。これ、普通の撮影だったら、紘一の台詞の時は紘一のアップで、紘一の「すまない」からは、咲の泣き顔で引っ張って、紘一のアップへ戻すはず。
でも、このドラマには二人の演技を背後からずっと撮影しているカメラがある。だから、一度そっちに切り替えることで、「二人の顔」は映らないが、「二人の心の距離」が映るのだ。それも、咲は離れたくない気持ちを表すが、紘一は後ろを見ずに前だけを見ていると言う “離れていく距離感” が映るのだ。
あの咲が紘一の腕を軽く叩いても、紘一が反応しないのが見えるから、咲の降った手のやり場の無さ、気持ちのやり場の無さが見えてくるのだ。あの1カットが今回のベストカットだと言っても過言でない。
紘一が離婚届を出す場面は脚本、演出、演技の絶妙な組合せ
終盤の終盤で、紘一が離婚届を出すシーンにも、脚本、演出、演技の絶妙な組み合わせを見ることが出来た。
あのシーン、咲が離婚届の提出を辞めたければ、紘一に電話を掛ければ良いだけなのだ。でも、咲は走った。全力で走った。そして、市役所で既に離婚届を提出した後の紘一に会う。もしかしたら、紘一は咲が追いかけて来るかも知れないと察して、全力疾走で区役所に走ったかも知れない。紘一なら、息切れしないはずだ。
リュックも額縁も持っていなかったのが気になるが。でも、全力疾走するために、途中の何処かに置いてでも提出しないと、と思ったのかも知れない…
ここの回想を含めたシーン構成、走る咲を映すカット割りとスローモーション撮影、紘一のジャケットの緑色と咲のトップスの濃い紫色を区役所の柱などの照明演出の色に反映させて、正面玄関ではちょっとチャペルの雰囲気を感じさせる奥行き感のある場所で奥から照明が当たって。
二人それぞれの顔には奥から強い光が当たって、明るい部分と暗い部分がハッキリとなって、それが “離婚による、この先の明暗” を感じさせる演出になって。そして、北川景子さんと永山瑛太さんの見事な演技が、更にこのシーンを盛り上げる。
離婚届を出した、離婚届を出せた、離婚届を出してしまった、紘一の魂が抜けた目。当然間に合わなかった、提出を止められたかもしれない、そんな迷いと、紘一への “ある種の感謝” のような咲の複雑な心境が、更にドラマを盛り上げた。
遂に離婚してしまった。一体この咲、どうなるのだろう?
さて、遂に離婚してしまった。一体この咲、どうなるのだろう? だって、この二人は一目惚れで結婚したようなものだから、共通点、接点が他にない。
ただ、第6話までに、咲の元カレ・貴也(高橋光臣)、紘一の航空救難団での後輩で上司の一ノ瀬純(田辺桃子)、そして今回で小説家・連(白洲迅)が、咲と紘一にとって共通の知り合いになったのは確かだ。だから、この3人と、離婚した両親を上手く使って、最終回、新たな結末に向かって作り込むのだろう。
一体、どうやるのか、お手並み拝見だ。いや、ラブコメなのだから、第1回と同じで、遭難して救助でも十分に感動できるとは思うが。
あとがき
脚本のエピソードの作り方と展開、演出で見せるべきものの的確さ、演者の登場人物の繊細な心理を表現する演技、それらが高次元で一体化していますね。凄く良く出来たドラマだと思います。そして、離婚ドラマとして、新たなジャンルを構築しているようにも思います。次回にも、大いに期待します。
今回のサブタイトルは『家売る夫婦の最後』ですが、完全に『家売るオンナ』へのオマージュですね。上手い!
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