リコカツ (第4話・2021/5/7) 感想

TBS系・金曜ドラマ『リコカツ』(公式サイト)
第4話『誕生会が地獄絵図へ… 全員離婚の結末は!?』の感想。
異動した咲(北川景子)は人気小説家・水無月連(白洲迅)の担当に指名され、厳しくも充実した日々を送っていた。一方、紘一(永山瑛太)は咲の元カレ貴也(高橋光臣)と対面してから、彼女への想いに変化が生じ、リコカツの一環として咲の母・美土里(三石琴乃)の誕生会を新居で開こうとを提案する。しかし、貴也だけでなく、紘一を慕う上官・純(田辺桃子)なども勢揃いし、パーティーは思いもよらない結末を迎える…!?
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:泉澤陽子(過去作/あまんじゃく2018,2020、お迎えデス。、ブラックスキャンダル、大恋愛)
演出:坪井敏雄(過去作/凪のお暇、カルテット、わたナギ、恋あた) 第1,2話
鈴木早苗(過去作/3年B組金八先生ファイナル) 第3話
韓哲(過去作/ATARU、IQ246、コウノドリ、集団左遷!!) 第4話
小牧桜(過去作/この恋あたためますか)
音楽:井筒昭雄(過去作/民王、99.9、トクサツガガガ、妖怪シュアハウス、書けないッ!?~脚本家)
主題歌:米津玄師「Pale Blue」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
冒頭"約4分間"のマルチ撮影での俳優陣の"間"が素晴らしい
毎回書いて恐縮だが、知らない読者さんがいたら、知って見る方が断然に楽しめるドラマだから。それは、本作が、TBSではドラマ『渡る世間は鬼ばかり』でしかやっていない、カメラ6台を使ったマルチ撮影を咲(北川景子)と紘一(永山瑛太)の自宅のシーンへ取り入れていることだ。
この収録技法によって、一連の芝居(演技)を1度で撮影するため、実際に俳優同士が台詞の掛け合いをしている “間”が、全て収録され、ドラマに生きて来るのだ。恐らく今回では、冒頭から紘一が部屋に閉じこもる直前の咲のガッカリした表情のアップまで、約4分間を一気に撮影している。
咲の母・美土里(三石琴乃)が咲に追い出され、紘一が「新婚旅行おめでとう」のカードを見るタイミングが絶妙にカット割り(正確には「スイッチング(切り替え)だが)されているから、間違いないと思う。
子役を含めて、6人の流れる演技を、録画があるなら是非見直して欲しい。紘一のドアフォンのピンポンを何度も押すタイミングと、その他の人たちの演技の “間” が絶妙だから。
恋愛小説家の話を聞いて帰路に就く咲の"BGM"に注目!
そして、ドラマは、第3話まで、何となく “いい雰囲気” になってきたのに、紘一の「言いわけしなくていい。離婚するのだから」で、ふり出しへ。この辺の “一区切り感” と言うのか、一進一退、散歩進んで二歩下がる的な、連ドラならではの回の重ね方が上手いと思う。
更に物語は、カリスマ恋愛小説家・水無月連(白洲迅)の新作の企画の話を聞いた咲が、「もしかして 私達 まだ 間に合うのかな?」と、紘一に対するモヤモヤしたし気持ちを抱えながら帰宅する。その時の劇伴が、3曲構成のフランツ・リスト作曲「愛の夢」の第3番「おお、愛しうる限り愛せ」。何と言う絶妙な選曲センス。
リスト作曲「愛の夢」の第3番「おお、愛しうる限り愛せ」
因みに、このリスト作曲「愛の夢」の第3番「おお、愛しうる限り愛せ」は「ピアノ独奏曲」として有名だが、本来はソプラノのための「独唱歌曲」として書かれた作品だ。従って、歌詞がある。そのことを少し書いてみる。ご存知の方には、釈迦に説法であろうが。
この曲は恋愛のことを歌った曲ではない。敢えて言うなら人間愛だ。内容は、こんな感じ。
大切な人が死んで、その人のお墓の前で嘆き悲しむ時は来るものだ。だから今、目の前にいる大切な人を愛しうる限り愛しなさい。そして、自分に心を開く人がいたら、その人に尽し、決して悲しませてはいけない。また、言葉には気を付けよ。悪い言葉は容易に口から出てしまう。
例え「おお、神よ、それはあなたの誤解です」と謝罪しても、神は嘆いて立ち去ってしまう… と言う内容だ。
だから、もう、この選曲を聞いただけで、今回がこれまでと違った結末になることが予想出来る。もちろん、「愛の夢・第3番」を知っている人だけだが。また、そこが良いじゃないか。誰もがわからない仕掛けがあるのも…
両親の離婚劇が、主人公の離婚劇へ見事にフィードバック!
物語は、特に、咲がモヤモヤを抱えながら、離婚も咲の母の誕生日パーティーの準備の淡々ようと進めているように見える紘一が丁寧に描かれて行く。離婚と言う “別れ” と、誕生日会と言う “お祝い” と言う、相反する準備を進めた。そして、パーティーが終わったあと、咲と紘一が両親の離婚の “修羅場” を目の当たりにして、大きな決断をする。
紘一「離婚はやめよう」
咲「何言ってるの だって…」
紘一「君が傷つく姿を もう見たくない」
泣いている咲が顔をあげて、紘一の後頭部がフレームインした直後に、米津玄師さんが歌うイントロ無しの主題歌「Pale Blue」の「ずっと…」の歌い出しがカットイン。ここも絶妙なタイミング。もう「あそこしかない!」って感じだ。
今までは、相手の存在意義や価値を再認識すると言う “カタチ” で、離婚する気持ちがブレる… と言うエピソードだった。
しかし、今回は、「だが まだ君の夫だ」とか、「だって 私… まだ… あなたの妻だから」と言う迷いの台詞でなく、離婚は決意しているのだが、両親の離婚の現実を見て、二人の気持ちが変化した様子が丁寧に、且つコミカルに描かれた。これこそ、両親の離婚劇が、主人公夫婦の離婚劇に、ちゃんとフィードバックしたってことだ。
そして、中盤で書いたリスト作曲「愛の夢」の第3番「おお、愛しうる限り愛せ」にも、しっかりと帰着している。お見事としか言いようがない。
咲の元カレと、紘一の後輩で階級上の一ノ瀬の存在理由
これまで、「何のために、この人いるの?」と思っていたが、実は本作にとって、咲の元カレと同じ理由で、程良いアクセントと言うか、お口直しだなぁと思ったのが、紘一の航空救難団での後輩・一ノ瀬純(田辺桃子)だ。
後輩だが、紘一が「1等空曹」で、一ノ瀬が「3等空尉」だから「全17階級」ある自衛官では “7階級も上” のバリバリの上司と言う設定だ。そんな一ノ瀬が、世間の目も気にせず、ドカドカと他人の懐に入り込んだり、結婚している男にちょっかいを出そうとしたりする。それを、元カレが阻止。でも、ここにも、モヤモヤが。
この2人がいることで、ドラマに僅かだか現実味が加わる。そこがいい。まあ、この2人の言動には好き嫌いはあると思うが…
全話の構成が相当にしっかり作り込まれている
第4話になったから、少し全体の構成について、私なりの考えを書こうと思う。
本作の咲と紘一は、偶然に知り合って結婚した。まあ、言ってしまえば、一目惚れで結婚したわけだ。だから、結婚後に生活のリズムや価値観や考え方が違い、そこから生まれる違和感を互いに、少しずつ埋め合わせて来たわけだ。空いた穴を少しずつ埋めて来たから、離婚すると決めた気持ちが揺らいで来た。
そして、今回のエピソードで大きなポイントなのは、「咲の両親の離婚」と言うトラブルが、咲と紘一へ “同時”に “同じこと(離婚)” が起きたことだ。これまでは、違和感だらけだったのに、今回のトラブルは、咲と紘一が “同時に共有可能” な問題に直面したってこと。
そして、リコカツ中の咲と紘一が、自身のリコカツを見つめ直した… と言う展開になっていたのだ。当初は、3組も “リコカツ” を盛り込んで、何をする気なのかわからなかった。しかし、今回を見て、両親の離婚が娘たちの離婚を阻止することになると言う展開は、全話の構成が相当にしっかり作り込まれている証拠だ。
なかなか見応えのある連ドラに、更になってくれると思う。
あとがき
この状況で、元カレを絡めるんですね。一体、今後、どんな展開になるのやら。また、今回から、腎臓機能障害の発見により佐野史郎さんが降板され、平田満さんが代役になっておられました。佐野史郎さんの元気な姿を、また拝見したいです。
どうやら、金曜日の夜の連ドラは、『半径5メートル』も本作も、『生きるとか死ぬとか父親とか』も、大人向けの作品が多くて、嬉しい…
最後に、リスト作曲「愛の夢」の第3番「おお、愛しうる限り愛せ」の動画をご紹介します。珍しくバリトンが歌っており、日本語歌詞もやや恋愛の方向に振ってあるのは気になりますが…
井上雅人(バリトン)、小瀧俊治(ピアノ) / リスト:愛の夢 第3番「おお、愛しうる限り愛せ」S.298
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