宮城発地域ドラマ「ペペロンチーノ」 (2021/3/6放送) 感想

NHK BSプレミアム / BS4K・宮城発地域ドラマ『ペペロンチーノ』(公式)
『津波でレストランを失ったシェフ(草彅剛)が震災から10年の3月11日、友人を招き再建した店で特別な宴席を設けた。どん底からはい上がるまでの軌跡を群像劇で描く。』の感想。
津波でレストランを失ったイタリアンシェフ小野寺潔(草彅剛)とその妻灯里(吉田羊)。その後、潔は新しく店を建て直し、震災から10年の3月11日に友人を招きある宴席を企画する。潔は突然の招待に戸惑う友人たちに、その意図を語り始めるー。そして、宴会が進むなか、発災から10年間のそれぞれの秘めた物語が浮かび上がってくる…。苦難があっても前向きに人生を送れるかもしれない。そんな思いになれる極上の群像劇。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:一色伸幸(過去作/映画「私をスキーに連れてって」「病院へ行こう」「僕らはみんな生きている」)
演出:丸山拓也(過去作/不明)
音楽:世武裕子(過去作/ストロボ・エッジ、べっぴんさん、リバーズ・エッジ)
まえがき
いつもは、私がドラマ・ソムリエのように “おすすめドラマ” の感想を綴るのだが、今作は複数の読者さんから「機会があったら、是非見て欲しい」と言うコメントを頂いたので、今回はNHKオンデマンドにて有料鑑賞してみた。
私の知らない「どえらいドラマ」が、まだまだ存在する
結論から言うと、私の知らない「どえらいドラマ」が、この世にはまだまだ存在するんだと言うこと。とにかく、ラスト4分間、身体の震えが止まらなかった。と言うわけで、今作はネタバレしないように感想を綴ろうと思う。そして、興味が湧いたなら、私のように鑑賞して頂きたい。
こんなシーンから、物語は始まって行く…
さて、ドラマは仲睦まじい夫婦が、明るい日差しが差し込む部屋に敷かれた布団の中で、仲良くまどろむシーンから始まる。
そして、10年前の東日本大震災の津波で自分のレストランを失ったイタリアン料理シェフの小野寺潔(草彅剛)と、妻・灯里(吉田羊)が海辺に店を再建して、10年目となる2021年3月11日に、潔にゆかりのある友人たちを招く展開へ進んで行く…
2021年3月11日にレストランに集まった人たち…
招待され、やって来たのは、レストランに食材を卸す漁師・高橋友作(一色洋平)なたね(富田望生)。仮設住宅で隣同士だった高校の同級生の阿部より子(矢田亜希子)と娘・葵(蒼波純)。仙台発のウエブマガジン編集者・庄司結衣香(斉藤夢愛)。潔は、招待はしたが来るか来ないか分からない、整形外科医・佐々木春文(國村隼)との出会いを語り始める…
記憶を風化させないためにも、今作のように明瞭に描くべき
毎年、3月11日近くになると、NHKは東日本大震災関連のドラマを幾つか放送する。当blogでも、NHK・Eテレで初の本格ドラマして一昨日まで放送していた黒島結菜さん主演の連ドラ『ハルカの光』(全5回)や、NHKスペシャルで放送された遠藤憲一さん主演の『ドラマ 星影のワルツ』を紹介した。
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NHKスペシャル「ドラマ 星影のワルツ」 (2021/3/7) 感想
この群のドラマは、初期の頃は具体的な描写を避けて、心情などぼやかして表現してた作品が多かったが、ここ数年はズバリ、震災の体験者の心情や状況描写を明瞭にして来ている。私は、人の記憶は時間と共に曖昧になって行くから、時が経てば経つ程、記憶を風化させないためにも、明瞭に描くべきだと思っている。
だから、先ほど紹介した2作品も、今作も私が望む方向性の「NHK東日本大震災プロジェクト」の一群の良作ドラマだと思う。
今作には、心に引っ掛かる幾つかのキーワードが登場する
今作には、いくつものキーワードが登場した。例えば、主人公がアルコール依存症になった際に、担当医から「マラソンはゴールがあるから走れるんだ」、「10後に会おう」と、それまでは酒は飲まないように約束するシーンがある。また、自分の紹介記事に「被災者」とレッテルを張らなかったウェブマガジンの編集者に涙する主人公。
また、「食べる事は、生きること」
と言うのは良く耳にする言葉だが、これは凡そ「人は食べる為に生きています」とか「生きるために食べるのです」と言う意味に受け取れられる。しかし今作に於いては「食べてもらうことが、生き続けること」と言うようにも聞こえて来る場面もある。いきています。 また生きる為にたべるのです。
更に、世間やニュースでは、「10年の節目」と言う言葉が多用されているが、果たして災害に “節目” は存在するのか? 生きて行く中で本当の “安心” や “安全” はあるのか? と言う問い掛けもある。
「乾杯」と「献杯」の違いこそ今作のテーマであり存在意義
しかし、ネタバレせずに書くのは難しいが、今作の脚本家がこの作品で伝えたかった最大のキーワードであり台詞は、次の2つであることは間違いないと思う。
「乾杯」と「献杯」
既にお分かりの方には釈迦に説法になるが、ホテルで働く身としては、マナー研修で教わったことでもあるので、是非改めて考えて欲しいので書いてみる。
乾杯と献杯には根本的な違いがある。それは、漢字を見れば分かる。「乾杯」は「乾(かわかす・ほす)」の意味で、即ち注いだ飲み物を一気に飲み干し、祝いの気分を盛り上げる時に行うことを意味する。
一方の「献杯」は「献(ささげる・たてまつる)」の意味で、即ち故人に敬意を払って杯を捧げる意味合いがある。だから、「献杯」では「杯(グラス)」どうしをカチンと打ち合わせたり、杯を高く掲げる行為は不作法と言うことになる。蛇足ついでに、「献杯」は一気に飲み干すのはマナー違反だ。
と言うわけで、今作では、序盤では「乾杯と献杯」が入り混じり、終盤では「乾杯」だけになる点が、実に絶妙に書かれているのだ。是非とも、ここは見て頂きたいし、既に見た人なら、ラストでは「乾杯」だけだった意味は分かって頂けると思う。
そう、ギリギリ言うなら、あのシーンでは、もう「故人に敬意を払って杯を捧げる」と言う意味は、彼ら彼女らに必要ないのだ。参加者全員と視聴者全員が、レストラン「ペペロンチーノ」へ特別な思いを持った人たちが集まった楽しい宴になっただからだ。
コロナ禍の中での、小さな希望と人それぞれの幸せの在り方
今作が描いたのは、コロナ禍の中での、小さな希望と、人それぞれの幸せの在り方だと思う。
そして、人は、一人では決して生きてはいけない。誰かに寄り添って、誰かを支えて、生きている。もはや、絶対の安心や安全なんて、この世にないことを私たちは東日本大震災を始めとした災害や、この度の新型コロナウイルス感染で学んだ。だからこそ、今作が描いたことの意義の大きさが胸に沁みる…
あとがき
途中、「おやっ?」と思った演出が幾度かありましたが、「区切りを付けたら、いなくなってしまうかも知れない…」と潔が言ってからの終盤の7分間を見て、全てに納得できました。そして、前述の通りに、全身の震えが止まらなかったです。また、草彅 剛さんや吉田 羊さんら出演者の演技にも魅了されました。
今日、看護師の妻は新型コロナのワクチン接種を受けていると思います。今夜は、本作を妻と一緒に見ようと思います。紹介して下さった読者の皆さん、ありがとうございました。
そして、なぜこれを地上波で全国放送しないのか? これが最大の疑問です。もったいないですよ。
【有料配信や再放送など情報】
●NHKオンデマンドにて有料(220円)にて配信中(直リンク)
●〔東北地方・総合〕3月19日(金)よる7時30分
●ドラマの舞台裏を紹介する番組をNHKプラスで公開中!(配信は3/13(土)午前11:54まで)
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