連続テレビ小説「おちょやん」 (第68回・2021/3/10) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『おちょやん』(公式サイト)
第68回/第14週『兄弟喧嘩(げんか)』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
万太郎一座に捕まった鶴亀家庭劇の座員・小山田を助けに来た千代(杉咲花)。小山田は、万太郎(板尾創路)の情報を少しでもつかもうと偵察に忍び込んでいたのだった。万太郎一座の連中に取り囲まれ、絶体絶命の二人。その時、万太郎本人が現れ、意外にもあっさり手の内をすべてさらすのだった。他にも何でも聞いて良いと言う万太郎。千代は思い切って、千之助(星田英利)と過去に何があったのか、二人の因縁を聞き出すのだった…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
●作:八津弘幸 ●脚本協力:吉田真侑子 ●演出:小谷高義(敬称略)
今回のアバンタイトルは、良かった
私は、朝ドラの感想を書く際に、アバンタイトルの良し悪しについて書くことが多い。しかし、現実問題としては、アバンタイトルが脚本家によって書かれているのか、それともその週の担当の演出家に采配があるのか正直知らない。
でも、これまで見て来た朝ドラで考えると、明らかに週毎に上手い下手がある。だから、アバンの仕上がりは演出家の力量が試されると思っている。だからこそ、敢えて、アバンタイトルに拘って感想を書くのだが。
演出はメインの梛川善郎氏より今週の小谷高義氏の方が好み
で。前置きが長くなったが、今回のアバンタイトルについて書く。常連の読者さんなら先週末で私が本作への “好意的な解釈” を放棄したことはご承知の通り。提灯感想やアゲ感想も書くつもりはない。あくまでも、「好意的視聴モード」から一段格下げした「様子見モード」に突入している。そんな目線で今週の演出を見ていると…
明らかに本作のメイン・ディレクターである梛川善郎氏よりも、今週が本作初担当の小谷高義氏の方がいい。「良い」と言うより「私好み」とした方が的確かも知れないが。
「千代を画面に出しておけば良い」と言う短絡的な演出になっていない!
そう判断させる演出が、今回のアバンタイトルにあった。それに触れる。それは、道頓堀の芝居業界では “天上人” のような存在(の設定だったはず)である「須賀廼家万太郎一座」を率いる喜劇王・須賀廼家万太郎(板尾創路)が登場して、千代(杉咲花)を目の当たりにして、こう言ったシーンだ。
万太郎「鶴亀家庭劇の 竹井千代さんやったな」
どの辺が良いのかと言うと。脚本にも寄るところが大きいが。
これまでの本作なら、いくら “天上人” のような万太郎が目の前に現れても、恐らくギャーギャー騒いで、「ごめんだす!」みたいに不自然に存在感を強調したと思う。しかし、今回の千代はポカーンとした顔だけで、万太郎の台詞をどのような表情で受けたのかのは無いまま、オープニング映像へ繋がった。これが良いのだ。
何となくではあるが、アバンだけ見ると、珍しく千代が騒動に巻き込まれる雰囲気を感じなかっただろうか? これまでのように自ら脇役の騒動に首を突っ込むのでなく、万太郎と千之助(星田英利)の騒動に千代が巻き込まれる感じ。
こう言う、ちょっとした「千代を画面に出しておけば良い」と言う短絡的な演出になっていないのが、“私好み” と言うわけだ。
「とんでもない男」を映像化したシーンが、ここ!
主題歌明け、万太郎本人が、意外にもあっさり手の内を全て晒した。この辺の脚本は “私好み” だ。このシーンを見て、私の仕事上の映像制作に於ける大先輩に、20年程前に言われたことを思い出した。
私が作った “ある超有名百貨店” の100周年記念の店頭放映用の映像が、翌年に他の百貨店でパクられたのだ。私はまだ若かったから当然の如く怒り心頭。しかし、大先輩はこう言った。「パクられるような作品を創り続けるのが本物のクリエーターだよ。真似される、真似したくなる作品を作ったのだから自信を持つべき」と。
それから、私のモノづくりへの思想は変わった。そんな昔話だが、今回の “笑いを込めて馬鹿にしつつ” 手の内をあっさり見せた万太郎と言う設定は、今週の物語を面白くする可能性を高めたと思う。なぜなら、万太郎の才能が如何に凄いのかを明確に提示したのだから。正に台詞にあった「とんでもない男」を映像化したわけだ。
千代に約3か月描いて来た物語を動かす"役割"が与えられた!
物語は、他にも何でも聞いて良いと言う万太郎に、千代が思い切って、千之助と過去に何があったのか、二人の因縁を聞き出すくだりへ進んだ。ここには、2つの良い部分があった。
1つは、前回での千代には、「万太郎一座に捕まった鶴亀家庭劇の座員・小山田を助けに来た」と言ういつもの役割、そう、主人公特権を発動して騒動に首を突っ込んだようにしか見えなかった。
でも、この場面での千代は、「万太郎と千之助の、これまで引っ張り続けた因縁を聞き出す」と言う、『おちょやん』と言う約3か月と少し続けて来た物語を動かす “大切な役割” が与えられた。まあ、本来はこう言うのが普通なのだが、普通をやって来なかったのが本作だから、普通をやっただけ良いこと。
因縁話の場面での"千代と万太郎の立ち位置の変更"に注目!
もう1つ良かったのは、このシーンでの千代と万太郎の立ち位置の変更だ。シーンの最初は、千代は下手(画面左)に正座しており、上手(画面右)にはソファーのような椅子に万太郎が座っている。偉そうにのけぞった万太郎に、千代が子犬がきゃんきゃん吠えるように上目遣いでわめきたてた。
いつもの演出ならこのまま進むのに、今回は、万太郎が千代を落ち着かせようと、千代をソファーへ座らせて、万太郎が「面倒くさいなあ」と言って胡坐をかく。これ、私の予想だが、脚本には立ち位置の変更までト書きで指示はないと思う。恐らく「万太郎、千代と窘(たしな)める」程度のト書きだと思う。
でも、2人の立ち位置が変わったことで、正確に言うと、視聴者は下手に要る人物に共感しやすいと言う傾向があって、だから演出家は主従関係の登場人物は見せたい方を下手に置くことが多い。それをここでやっているのだ。
だから、このシーンの主従関係は、「主は話す万太郎」で「聞く千代は従」の関係に見えるのだ。その演出が主人公特権を感じさせない工夫だと、私には見えたのだ。
化粧鏡を使った意図的なカット割りが良かった
そして、長尺の板尾創路さんと星田英利さんの名演技が光った “因縁” の回想シーンが終わると、丸い化粧鏡に映り込んだ千代と万太郎と言う洒落た構図のカットで現実に戻って来た。その直前の回想シーンが、万太郎が舞台化粧をしながら、千之助に素っ気ない態度をする場面だったから、化粧鏡で回想と今を繋げた演出だ。
その上、画面全体の千代が映らないから、無理矢理に千代を際立たせようとしない演出にもなっている。これは、前述の「見せたい登場人物は下手に置く」が踏襲されていることからも、意図的な演出であることも分かって頂けると思う。
まだ脚本と言うより演出で、ドラマらしく描いている感じ…
ただ、褒めてばかりもいられない。それは、万太郎が千之助の首を切った理由が曖昧なままであり、千代があれだけ千之助を高評価する理由も曖昧なのだ。この辺は、先週の一平(成田凌)の両親のエピソードの曖昧さと同じ。従って、脚本と言うより演出で、ドラマらしく描いている… と、言わざるを得ないが…
あとがき
先週までのように、主人公特権をやたら発動して、結果的に大騒ぎをしているだけだった状態よりも、感想の本文にも書いたように「騒動」ではなく「物語」を見ている感じはします。
また、杉咲花さんも若干抑え気味の演技になって、その分、板尾創路さんと星田英利さんが魅せてくれているので、“先が見たい連ドラ感” は、かなり増したと思います。次回に少し期待してみます…
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【これまでの感想】
第1週『うちは、かわいそやない』
1 2 3 4 5 土
第2週『道頓堀、ええとこや~』
6 7 8 9 10 土
第3週『うちのやりたいことて、なんやろ』
11 12 13 14 15 土
第4週『どこにも行きとうない』
16 17 18 19 20 土
『おちょやん よいお年を!』
第5週『女優になります』
21 22 23 24 25 土
第6週『楽しい冒険つづけよう!』
26 27 28 29 30 土
第7週『好きになれてよかった』
31 32 33 34 35 土
第8週『あんたにうちの何がわかんねん!』
36 37 38 39 40 土
第9週『絶対笑かしたる』
41 42 43 44 45 土
第10週『役者辞めたらあかん!』
46 47 48 49 50 土
第11週『親は子の幸せを願うもんやろ?』
51 52 53 54 55 土
第12週『たった一人の弟なんや』
56 57 58 59 60 土
第13週『一人やあれへん』
61 62 63 64 65 土
第14週『兄弟喧嘩(げんか)』
66 67
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