六畳間のピアノマン〔全4回〕 (第3話・2021/2/20) 感想

NHK・土曜ドラマ『六畳間のピアノマン』(公式)
第3話〔全4回〕『いい人になりたい』の感想。
なお、原作の小説、安藤祐介「六畳間のピアノマン(改題:逃げ出せなかった君へ)」は、未読。
工事現場で働く上河内(原田泰造)は、芳江(麻生祐未)が営む子ども食堂の常連。ある日、上河内は見知らぬ男に責められ、詳細を調べることに。一方で、食堂に通う小学生のカズト(又野暁仁)を手伝い、3台見たら願いがかなうという車・ビートルを探す。食堂を手伝う真治(上地雄輔)は8年前に出会った若者達と彼らが見ていた「六畳間のピアノマン」の動画のことを上河内らに話す。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:安藤祐介「六畳間のピアノマン(改題:逃げ出せなかった君へ)」
脚本:足立紳(過去作/佐知とマユ、いつかティファニーで朝食を)
演出:野田雄介(過去作/スカーレット、西郷どん、マッサン、天地人) 第1,3話
泉並敬眞(過去作/わろてんか、スカーレット、まんぷく、これっきりサマー) 第2,4話
音楽:伊賀拓郎(過去作/歌舞伎町シャーロック、私に天使が舞い降りた)
「先が見たくなる」気持ちにさせるアバンが秀逸過ぎる!
アバンタイトルから凝った作り込みだ。以前の感想で、本作が「オムニバス形式」のドラマであることが、劇中で使用されるビリー・ジョエルの『ピアノマン』の楽曲構成に由来することは書いた通り(ご存知でない読者さんは第2話の感想をお読み下さい)。そして、前回の終盤では上河内(原田泰造)が働いていた工事現場は工事完了になっていた。
しかし、今回のアバンタイトルでは、時間が撒き戻されて、上河内(原田泰造)は工事現場で働いており、8年前に上河内から一緒にパワハラを受けていた村沢(加藤シゲアキ)と大友(三浦貴大)が久し振りに再開した場面と、上河内を恨めしく見る夏野(古舘佑太郎)の父・泰造(段田安則)が交錯している様子が描かれた。
これこそが、本作が「オムニバス形式」のドラマであることの象徴だし、何より「泰造の件は、前回で一件落着したのに、どうなるの?」と言う、興味深い “ツカミ” としても、大変成功したと思う。
夏野を介した偶然の人間関係が重なり合っているのが上手く描かれた導入部
いやあ、今回は、序盤からこれまでの2話分の人間関係が複雑に交錯している。
大雑把に説明すると、こども食堂を営む芳江(麻生祐未)は、“六畳間のピアノマン” こと夏野から夜遅くウォーターサーバーの訪問販売を受け、過酷な営業ノルマを察して気の毒になり契約した人。真治(上地雄輔)は生前の夏野が訪れた居酒屋で働いており、前回で泰造に2杯のビールを注ぎ、店内のBGM『ピアノマン』に反応した人。そして、今回の新事実は、工事現場で働く上河内が “記憶喪失” になっていたこと。
夏野と言う人間を介した偶然の人間関係が重なり合っているのが、上手く描かれた導入部だ。
第3話のキーパーソンは、「ビートルを1日に3台見ると願い事が叶う」と信じるカズトとユウトの兄弟
さて、まず、記憶喪失になった上河内が動き出す。上河内にとっては “見知らぬ男” に「お前を殺したい」と責められたことに、フラッシュバックを覚え、矢野探偵事務所の矢野(坂田聡)に依頼して “自分の身元” を調べてもらうことに。
で、第3話のキーパーソンは、「ビートルを1日に3台見ると願い事が叶う」と信じている、芳江のこども食堂に通う父親のいない、カズト(又野暁仁)とユウト(田中嵩也)の兄弟であることが見えて来る。
しかし、物語はそちらの方向へ進まずに、探偵の矢野が、上河内は8年前のパワハラ事件の加害者であったことを調べ上げ、上河内に報告した。更に、上河内の身内が存命でないか、探す気がないからなのか、捜索届が出ていないために、上河内の身内の所在は調べられないと報告。上河内は、事実を知り、混沌とした世界へ入り込みかけて行く…
夏野は"六畳間のピアノマン"ネットの中で生き続け、今も多くの人に勇気や希望を与えている…
そして、今回は、「美味いはずのない凍らせたビールと、夏野ら3人と、♪ピアノマンの思い出話」によって、真治(上地雄輔)の過去も明らかになった。敢えて詳細は書かないが…
真治が居酒屋のバイトリーダーとして “腐り切っていた自分” を変えようと決意させたのが、客として来ていた夏野らの「人生で一番美味しい一杯のビール」と大喜びしながら “美味いはずのない凍らせたビール”を 飲み干し、死ぬ気になって仕事してることを熱く語らう姿であったこと。
そんな3人を見て罪悪感に襲われ、反省し、生き方を決意したこと。その話を聞いて、“六畳間のピアノマン” の演奏動画を見る場面で、真治は奏者が誰で今はこの世に存在しないことを知らず、上河内も夏野であることに気付かないのが切な過ぎる。
と同時に、夏野はネットの中で生き続け、今も多くの人に勇気や希望を与えているのが描かれたのは良かった。
夏野が歌う『♪ピアノマン』の動画がしっかりと接着剤となった、本当にいい話、感動的な物語だ!
第3話は、「ビートルを1日に3台見ると願い事が叶う」が結び付けた、上河内と真治の二本立て仕様だった。しかし、その間には“六畳間のピアノマン” こと夏野が歌う『♪ピアノマン』の動画がしっかりと接着剤となって、いい話、感動的な物語に仕上がった。
時間は交錯するし、人間関係も交錯するが、とにかく描写と編集が秀逸で、見ていて全く迷うことはないし、むしろタイムスリップと “人の縁の妙” を堪能できるヒューマンドラマになっている。そして、次回の最終回がどんな内容になるのか見当もつかない不思議さ。本当に良く出来た「オムニバス形式の連ドラ」だと思う。
あとがき
今回は、「ビートルを1日に3台見ると願い事が叶う」と言うのが、問題を抱える大人や子供たちの支えになるアイテムとして、効果的に利用されていました。自動車好きなら、ビートルには、いろいろな幸せ伝説があることは、ご存知かも知れません。
ビートルは、あの1933年にドイツ首相に就任したナチ党党首アドルフ・ヒトラーの大衆政策(プロパガンダ)の一つとして開発され、当時の世界の自動車産業を牛耳るような役割を果たした “因縁のあるクルマ” です。だから、のちに “幸せ伝説” が世界中で作られたとも言われています。
「パワハラをする人」や「意図的に人を騙す人」を “ヒトラーのような人” と例えることがあります。今回で上河内と真治が「3台のビートル」で自分を変えるきっかけを掴むストーリーは、何とも皮肉であり、その皮肉な世界そのものが、本作で描かれる人と人の縁が織り成す皮肉な世界に繋がっているわけです。ドラマの裏設定としては、とても興味深いですし、面白いと思います。
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