俺の家の話 (第5話・2021/2/19) 感想

TBS系・金曜ドラマ『俺の家の話』(公式)
第5話『恋と反抗期が渋滞!? 目指せ!家族旅行!』の感想。
40歳の寿限無(桐谷健太)が遅めの反抗期を迎え、寿一(長瀬智也)にも反発した態度を取る。そんな折、寿一は寿三郎(西田敏行)の願いをかなえるため、家族旅行をしようと考え、さくら(戸田恵梨香)や家族に相談。ケアマネジャーの末広(荒川良々)の了解も得て、寿限無にも旅行を切り出すが、寿限無は卑屈になって話を聞こうとしない。寿一はそんな寿限無を、ある場所へと連れ出す。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:宮藤官九郎(過去作/あまちゃん、ゆとりですがなにか、いだてん)
演出:金子文紀(過去作/G線上のあなたと私、恋つづ、逃げ恥) 第1,2話
山室大輔(過去作/天皇の料理番、グランメゾン東京、テセウスの船) 第3,4話
福田亮介(過去作/初めて恋をした日、恋つづ、恋する母たち) 第5話
音楽:河野伸(過去作/おっさんずラブ、恋つづ、天使にリクエストを、知ってるワイフ)
「ツカミはオッケー!」な、秀逸なアバンタイトル!
前回から、本作の劇中で能『道成寺』が取り扱われている絶妙な理由については、前回の感想で “深掘り推測” しているので、そちらを参考にして頂くとして。
クゥ~、これは凄いアバンタイトルだ。まず、これまでの全4話分のダイジェスト版になっている。しかも、それらが “ほぼモノローグ” で語られ、最小限の回想シーンしか使われず、ただただ、朝食を食べるだけの映像で、それらを一気に見せちゃった。
その上で、ここのキャラを見せつつ、内面(本心)を描くことで、ギスギスした家族関係を約6分間で描いてしまった。これこそ、「ツカミはオッケー!」と言うやつだ。
介護情報を盛り込んでも、きちんと即軌道修正するのが見事
さて、主題歌明けは「家族旅行」のエピソードが始まった。寿三郎(西田敏行)のケアマネージャー末広涼一(荒川良々)が言っていたトラベルヘルパーは、介護技術と旅の業務知識を備えた「外出支援」の専門家介護支援専門員で、まだ多くの人に認知されていないが現実に存在する資格。「外出支援専門員」とも言う。
こんな介護情報をさらりと入れて来る宮藤官九郎氏の優しさが垣間見られるし、その優しさの照れ隠しに、旅行先が海外でなく国内旅行と聞くと同行するつもりだったため勝手に残念がることを想定していたため勝手に残念がる末広を直後に持って来て、相殺させて元のホームドラマへ。脇道に反れそうになっても、きちんと即軌道修正するのが見事だ。
家族旅行は家族が出来る介護として、とても魅力的で意味があると思う…
どうも本作の感想は、私自身の十数年間に亘る両親の介護と内容が重なってしまって、いつも通りの “感想オンリー” にならないから、読者さんも大変読みにくいと思うが、ドラマは自分の人生を重ねて見るものだから、許して頂きたい。
そこで、介護を必要とする家族との旅行のお話だ。多くの人が、軽度の認知症や身体的な障がいのうちに、家族旅行に行きたいと思う。私も母を生まれ故郷へ連れて行ってやりたかった。当然、母も「死ぬまでに言って、海を見たい」と言っていた。
でも、いざ「家族旅行」を提案すると、完全拒否。理由は、「家の外で、病人扱いされるのがイヤ」だった。のちに聞くと「元気な姿で行きたかった」と本音を言っていた。だから、経済的にも、家族の支援も出来る条件が揃っているなら、家に居がちな人を外の刺激に触れさせると言うのは、家族が出来る介護として、とても魅力的で意味のあることだと思う。
アバンで白拍子を演じて退場した寿限無と、リング上で兄弟げんかをして去る寿限無の重ね方が秀逸!
そして、14分には、「デスメタル」。先日に放送された『にじいろカルテ』でも「デスメタル」が効果的に使われていたが、今のドラマ業界で流行しているのだろうか。私は大好きだからノリノリ気分で楽しいが。
感想に戻ろう。で、兄弟げんかの舞台がプロレスのリングに移ってからのエピソードの展開も見事。
前回でも描かれた能『道成寺』では、寿限無(桐谷健太)が演じた恋愛御法度の山伏を追い掛けて女人禁制の寺に潜り込んで舞を舞った白拍子(実は女の怨霊)が僧侶たちの読経によって、釣り鐘に鎮められ、毒蛇になって死んでいった “嫉妬” と “恨み” を、リング状の寿限無に重ねて、寿一に爆発させた。
『道成寺』では白拍子は “負け” て毒蛇となって死んで去るわけだが、本作の寿限無では、「釣り鐘」が長州力(本人役)の「オイ 誰か止めろよ!」とレスラーたちに置き換えられ、「釣り鐘が上がる=レスラーたちを払い除ける」になり…
寿限無「決めた… 俺が継ぐ 二十八世 もう一歩も引かない」
と、寿限無は、「負けた毒蛇」よりも怖い存在となって立ち上がる。この辺の、能と後継ぎ問題を上手く重ねつつ、能との違いを描くことで、オリジナリティーが出て来るのだ。そして、「能で勝ってみろよ!」の寿限無の一言を言って、堂々と去って行く。
この去る寿限無のしっかりとした足取りで去る姿が、アバンで白拍子を演じて袖にハケた寿限無と絶妙に重なるから、切ないのだ。そして、大人なのに、まるで子供同士の取っ組み合いの兄弟げんかに仕立てて、寿限無の苦悩をしっかりと描いた。だから、余計に切ない…
台詞と台詞に隙も無駄もない凝縮感に満ちた面白さ
「家族旅行」の話が始まるシーンの冒頭では、一気に話を進めずに、寿一が「好き」を連呼して、「我ながら隙だらけだな」と掛け、「すき」のくだりを一度締め括って始まるのも、本当に台詞と台詞の間に隙が無く、無駄もない。この辺の凝縮感も本作の面白味の一つだ。
そして、O・S・D(ロバート/秋山竜次)の “ニセ世阿弥” があって、前半で大州(道枝駿佑)の彼女がフワちゃんでなく不破万作に似ていると言って画像検索で不破万作(本人役)さんが登場したと思ったら、今度は、寿三郎の主治医・大迫 役で小松和重さんが登場。最近では前期朝ドラ『エール』で裕一と共にビルマを訪れた洋画家 役で出演されていた。
誰もが感じたり経験したりすることを、さり気なく盛り込んで、普通のホームドラマのように見せてしまう
おっと、話がズレた。主治医がなぜ家族旅行に拘るのかを寿一に聞いた時の、寿一の答えが良かった。
寿一「これしかねえだろ 親父が笑ってる写真
このまんま 親父が死んだら これが遺影になっちゃうんだぜ」
この辺も、恐らく介護をした人、介護をしている人なら、いや介護を受けている人も、誰もが思っていることだと思う。
「遺影」のこと。宮藤官九郎氏が描くホームドラマの秀逸さは、小ネタの面白さもあるが、本質的な部分では、前述の、兄と弟の確執のネタもそうだが、誰もが感じたり経験したりするが、意外と口には出せない “ネタ” をさり気なく盛り込んで、普通のホームドラマのように見せてしまうことなのだ。
ほんの僅かに「観山家らしさ」が感じ取れる仕掛けが活きたシーン
そして、遺影の “介護あるある” 的なエピソードに続けて、今度は寿一にこんな台詞を言わせる。
寿一「25年ぶりにさ 同じメンツで
こんなふうに笑えるか 確かめたくねえか?
認知症とか相続とか隠し子とかさ
色々あった俺達が色々踏まえて笑えるか
確かめたくねえか?」
この台詞も良く出来ている。仲の良くなかった家族の再起を賭けた一大作戦である「家族旅行」と言う意味では、意外と誰もが感じたり体験したりする “ネタ” ではあるが、ほんの僅かに「観山家らしさ」が盛り込まれ、感じ取れる仕掛けになっている。だから、寿三郎や寿限無のインサートカットが活きて来る。そう、やはり本作は「観山家のホームドラマ」なのだ。
『アイ・オブ・ザ・タイガー』から、婚約者の立場の嘘を貫いたさくらと、男としてのけじめを貫きたい寿三郎の対比が絶妙
そして、シルヴェスター・スタローン監督・主演の『ロッキー3』の主題歌『アイ・オブ・ザ・タイガー』をBGMに、寿三郎の血圧と血糖値と体重を下げるリハビリと、寿三郎を岩風呂に入れるイメトレが始まる。
まあ、普通のホームドラマなら、このまま全部正常値になって家族旅行に出発するだろうが、やはり宮藤官九郎氏のドラマは、残り10分でもう一つ捻って来た。それが『新作能 白衣之天女』からの “最後の逢瀬” のくだりだ。婚約者の立場の嘘を貫いたさくら(戸田恵梨香)と、男としてのけじめを貫きたい寿三郎の対比が絶妙に良過ぎる。
まだ第5話だから「神回」とは評価しないが、これまで以上に作り込まれていた
とにかく、今回を「神回」なんて評価してしまうと、まだ第5話だから超える放送回が出る可能性があるから、前回以上に秀逸だったと評価しておくが。
やはり、今回の見所は、序盤での寿限無の反抗期、複雑な恋愛関係、中盤での家族一丸となった寿三郎の体質改善、終盤での寿一と寿限無の兄弟のやり取りに、次々出て来る寿三郎の女性関係など、一見特別なことのようなことを、きちんと誰もが感じたり経験したりしたことのある出来事に落とし込んで、多くの人が我がことのようにホームドラマにのめり込めるように、絶妙に作り込まれていたことだ。
クドカンの極上のホームドラマの本質が際立って見えた!
更に今回は、いつもよりも小ネタを少なめにしたことで、クドカンが創るホームドラマの持つ、テンポの良さ、メリハリの楽しさ、そして、奇を衒わずに家族同士の心情をつぶさに描写して、丁寧に積み上げていく極上のホームドラマの本質が際立って見えた。だから、「観山一家に関われた」と言う視聴者ならではの満足感も得られたと思う。
あとがき
次回のスペシャルゲストは、阿部サダヲさん。「宮藤官九郎×長瀬智也×阿部サダヲ」のタッグは、2005年のドラマ『タイガー&ドラゴン』以来の15年ぶり。
予告編を見ると、各地のスーパー銭湯を回るムード歌謡グループの一員のように見えましたが、ステージで寿一が歌うシーンもありました。一体どんな展開になるのか? ほんと、これだけ大風呂敷を広げて多数の出演者がいるのに、一向に破綻する気配はなく、どんどん一点に向かっているように見えるのもスゴイと思います。
前回の感想の投稿直後に、コメントして下さったのに、システムの不具合ですかね。でも、ちゃんと日曜日には読めました。私の母との思い出を書いた投稿も読んで下さりありがとうございます。今後は本お返事コーナーでは「オレンジさん」と呼ばせて下さい。コメント投稿時は、以前と同じでお願いします。
さて、オレンジさんのお母さまは血糖コントロールのためにインシュリン投与対応施設へ転院予定とのことですが。私の母は長らく糖尿病を患っており、飲み薬で血糖コントロールをしていました。
やはり、「要介護3」となると、「立ち上がりや歩行が自分では困難で、日常生活全般に全介助が必要。また認知症の症状があり、日常生活に影響がある状態」 ですので、自分での投薬管理が難しいので、転院されるのは良い判断だと思います(看護師の妻も、同意見でした)。
でも、私の母も「要介護3」の時は、意外と会話は普通に出来ました。短期記憶障害は強かったですが、家族の顔も判別出来ましたし。ですから、私は、妻と妹とケアマネさんの4人で相談して、意識がハッキリしているうちに「母に延命治療を受けたいか?」を聞くことにしました。
実は、父が亡くなった時に、その確認を事前にしておらず、病院で「今晩がヤマです…」と言われた時、医師から「長男さんが決めて下さい!」と問われ、重圧に耐えられず、暫し返事に困ったことがあったからです。
その意味では、オレンジさんのお母さまは筆まめでおられて、ご自身で「延命治療はしないこと、安らかに眠らせてね」と書き記してくれたのは、“お母さまからの大きな愛” だと思います。
悪いことを書くつもりはありませんが、先々を考えると、「要介護4」になりますと、「ミュニケーションの部分でも、理解力の低下があり、意思疎通がやや難しい状態」 になります。これは私の母の時もそうでした。昔の写真を見ても思い出せなくなり、1週間前の出来事の記憶もおぼろげ、月に一度は挨拶に来てくれた50年来の友だちの名前も間違えるようになりました。
今できること、きっと一緒に思い出を語ったり、「旅行に行くなら、どこがいい?」みたいな、前向きな話をして、お母さまとオレンジさんが一緒に “イベント” として介護に向き合うのが良いかなと思います。そして、無理して頑張らず、やれることは丁寧に。それで良い… と思います。
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