天国と地獄 ~サイコな2人~ (第4話・2021/2/7) 感想

TBSテレビ系・日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』(公式)
第4話『入れ替わりの真相!?本当のアイツの正体』の感想。
なお、本作のモチーフとなった奄美大島に伝わる「月と太陽の伝説」(参考)は、既知。
日高(高橋一生)の姿の彩子(綾瀬はるか)を取り調べた河原(北村一輝)は、日高と彩子の口論を見て、2人の関係に疑念を抱く。彩子の姿の日高が殴打した男性の遺体が見つかったことで、捜査本部は混乱。今回の殺人と日高の関係を立証することは不可能だった。殺人の隠蔽(いんぺい)に協力せざるを得ず、悔しさをかみしめる彩子。その一方、日高の社長としての一面を知り…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
モチーフ:奄美大島に伝わる「月と太陽の伝説」
「日本昔話記録12 鹿児島県喜界島昔話集」
脚本:森下佳子(過去作/義母と娘のブルース、JIN-仁-、ごちそうさん、天皇の料理番)
演出:平川雄一朗(過去作/義母と娘のブルース、JIN-仁-、天皇の料理番) 第1,2話
青山貴洋(過去作/下町ロケット2、インハンド、グランメゾン東京) 第3話
松木彩(過去作/下町ロケット2018、グッドワイフ、半沢直樹2020) 第4話
音楽:髙見優(過去作/義母と娘のブルース、仰げば尊し、お迎えデス。、べしゃり暮らし)
主題歌:手嶌葵「ただいま」(ビクターエンタテインメント)
今回で最も良かったのは"入れ替わった状態の二人"を"均等"に描いたこと!
今回を見て、最も良かったのは、「日高が彩子になっている現実」と「彩子が日高になっている現実」がしっかりと表現されたこと。そして、更に良かったのは、その “” を放送尺としても、ドラマの内容としても、ほぼ均等のバランスをもって描いたこと。
私の記憶では、この両方が成立したのは、この第4話が初めてだと思う。そう、私はこう言うバランスの取れたドラマ、ミステリーを見たかったのだ。
ドラマの楽しみ方は、人それぞれだと思うが…
お目当ての俳優さん見たさで、ドラマを楽しむ人を否定するつもりはない。俳優の演技に魅了されるのが楽しくてドラマを見る人も否定はしない。
ただ、私の楽しみ方は、「ドラマで何を描こうとしているのか?」であり、「そのために、作り手はどんな初期設定を創り出したのか?」でもあり、「初期設定が余すことなく活かされて、ドラマが面白くなっているか?」を見極めたり、作り手の想像していない領域まで勝手に深掘りしたりして自己満足(自己陶酔か?)することなのだ。
「演技派の二人が異性をどのように演じるか?」へ期待したのではない!
従って、本作の放送前の大量の番宣を見た時、本作へ期待したのは、「演技派の二人が異性をどのように演じるか?」ではないのだ。だから、「綾瀬はるかさんが男を演じること」にも「高橋一生さんが女性を演じること」にも、さほど興味はなかった。
だって、繰り返すが演技派であり、特にどんなキャラにも変幻自在な高橋一生さんが、男勝りな綾瀬はるかさんを演じるなんて容易なこと」だと分かっていたから。
今回は、入れ替わった彩子と日高が"対等"に現実と向き合って見たのが秀逸!
だから、私が見たかったのは、「日高になってしまった彩子」と「彩子になってしまった日高」であり、その “入れ替わってしまった二人” が、刑事と、(断定はできないが、第4話時点では)真犯人が入れ替わった状態で、どっちも本気で自分に起きてしまった現実に “対等” に向き合って解決しようと必死な姿だった。
そして、第4話では、私には二人が “対等” にやりあっていた… と見えた。もう、これだけで、「入れ替わったあとの日高がオドオドし過ぎた」とか「入れ替わったあとの彩子が入れ替わり前の日高に見えない」などの不満は(ほぼ)吹っ飛んだ。
やはり、今回のバランスの良さこと、本作で見たかったことであり、本来本作がやるべきことだったと確信した。
だって、ミステリーとして結末がどうなるかなんて、2時間サスペンスだって味わえるし、二人の関係が元に戻るかどうかなんて、「入れ替わりモノ」には当然の期待であり、そこを強調したところで、過去の「入れ替わりモノ」と大した差別化は計れないのだから。
脚本の森下佳子氏が本領を発揮、腕の見せ所で魅せて来た!
これらのことを総合的に判断すると、いよいよ… なのか、遂になのか、本作の脚本家・森下佳子氏が本領を発揮した、腕の見せ所で魅せて来た… と、言った良いのではないだろうか?
特に、何となく二人の関係の違和感に気付き始めた河原(北村一輝)の働きぶりに、且つては「セク原」と蔑んでいたのに評価を改め始めた “日高に入れ替わった彩子” の描写は良かった。
また逆に、 “彩子に入れ替わった日高” が、彩子の「自分が捕まることさえ躊躇(ためら)わずに真相に辿り着こうとする刑事の正義感を認め始めて来たような雰囲気を、全話の折り返し地点の前に漂わせたのは、脚本としてなかなか考えた戦略に思えた。
森下佳子氏の得意な"主人公と極周辺の脇役で構築する人間ドラマの楽しさ"が見えた!
また、「猟奇」や「変人」を上手く描く脚本家は他にもたくさんいるが、森下佳子氏の脚本ドラマの見せどころは、やはり、その登場人物の奥深さと二面性を、ただ描くのではなく、リアリティーを忘れずに描く人間描写。
そして、当然のように主人公を際立てつつも、主人公の極周辺の脇役たちの魅力を十分に引き出して、主人公と側近の脇役で構築する人間ドラマの楽しさだ。その点に於いて、今回で前者は相当満足の域に達して来たが、後者の部分はハッキリ言って、物足りない。しかし、まだ連ドラとして半分以上は残っているだろうから、今後に期待しようと思う。
演技と演技指導によって、二人のバランスが均等に見えるように微調整してきたか!?
もちろん、主演の綾瀬はるかさん、高橋一生さんの演技力と、第4話から本作初担当になった松本彩氏の演技指導によって、二人が均等なバランスに見えるように演技を微調整してくれたのは言うまでもないが。
女性演出家になり、男性視点では難しい"男女入れ替わりモノ特有の面白さ"を補強できた
更に、最近のある元総理の女性蔑視発言と混同して欲しくない… と、前置きするが。
やはり、演出家が女性になったことで、女性目線でのちょっとした仕草や癖の見せ方や撮り方で、入れ替わった男女の見え方が微妙に最適化され、男性視点では難しい “男女入れ替わりモノ特有の面白さ” を補強できたと思う。
よく考えれば、「男女入れ替わりモノ」なのだから、演出家も男女が入れ替わると、今回のように上手く行くと言うのを再認識もした。そして、この30年近くで、テレビ現場に多くの女性スタッフが増えた。映像業界全般に言えることだが、やはり、多種多様な考え方や思いが作品に良い影響を与えていると、実感している…
中身は彩子の日高を、警察が重要参考人にしないのは、ちょっと不自然だが…
今回、いつも以上に褒めまくったから、褒められない部分もあることを書いておきたい。
それは、少なくとも河原は日高と彩子に違和感を覚え、と八巻(溝端淳平)はほぼ “入れ替わり” を実感しているのだから、せめて、見た目が日高へ入れ替わっている彩子は “見た目は刑事” だから同僚でもあるから難しいかも知れないが、逆に、彩子に入れ替わっている日高を重要参考人として監視するのが(河原ではなく)警察の仕事では? ってこと。
まあ、それをしっかりやってしまうと、会社の部下たちが「記憶喪失」で安易に納得したようなくだりに警察も描かないとバランスが取れないし、強引に日高の “異変” に気付けば、すぐに終わってしまう可能性がある。
と言うわけで、褒められないが、この部分に関しては好意的に捉えておこうと思う。その方が、“はるか” に本作を楽しめそうだから。
あとがき
先手先手を打つ日高に、刑事としての矜持を強く意識する彩子。これらによって、また「先が読めないドラマ」の面白さが増したような気がします。あとは、奄美大島に伝わる「月と太陽の伝説」が、もっとストーリーに影響するのかも気になります…
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