俺の家の話 (第2話・2021/1/29) 感想

TBS系・金曜ドラマ『俺の家の話』(公式)
第2話『後継者決定の舞い! 魔性ヘルパーの正体』の感想。
寿一(長瀬智也)は「二十八世観山流宗家」を継承すべく、1週間で門弟達を納得させる芸を披露する羽目に。稽古も介護も寿一に厳しい寿三郎(西田敏行)。だが、婚約した介護ヘルパー・さくら(戸田恵梨香)にはめっぽう甘く、寿一は胸中、複雑だ。そんな折、寿一は元妻のユカ(平岩紙)と学習障害のある息子・秀生(羽村仁成)と面会し、養育費の支払いを待ってほしいと頼むが…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:宮藤官九郎(過去作/あまちゃん、ゆとりですがなにか、いだてん)
演出:金子文紀(過去作/G線上のあなたと私、恋つづ、逃げ恥) 第1,2話
山室大輔(過去作/天皇の料理番、グランメゾン東京、テセウスの船、キワドい2人)
福田亮介(過去作/初めて恋をした日、恋つづ、恋する母たち)
音楽:河野伸(過去作/おっさんずラブ、恋つづ、天使にリクエストを、知ってるワイフ)
強気の脚本と演出と演技だからシビアな「介護の世界」をユーモラスに描ける!
前回の要介護認定で「要介護1」となった寿三郎(西田敏行)。第1話があのテンションだったから、第2話のアバンタイトルもアクセル全開、踏みっ放しで進むのを期待したら…
何と門弟達を集めて、まずは婚約した介護ヘルパー・さくら(戸田恵梨香)の和服姿のお披露目&鑑賞会。続いて、茶目っ気たっぷりに自慢すらする感じで「要介護1」を大々的に発表。もう、スゴイの一言。
だって、この冒頭2分は言うなれば「箱根の関所」。これを見てダメな人は門前払いの強力フィルターを設置しているのと一緒だから。
不人気の幽霊屋敷みたいに「出るよ、出るよ」と言いつつ出てきたお化けは怖くないのとは大違い。だって、最初から強力なお化けが出ちゃうわけだから。こう言う、強気の脚本と演出と演技でないと、シビアな「介護の世界」をユーモラスに描くドラマは作れないと思う。
序盤から「短期記憶障害」をユーモラスに描いて来た
寿一が寿三郎を風呂に入れている時も、さりげなく「アルツハイマー型認知症」の初期症状である「短期記憶障害」を入れて来た。大昔のことは鮮明に覚えているが、直前のことを忘れてしまう。これが進行すると、直近も昔も忘れることが増える、所謂「まだらボケ」になる。
出来れば、この「短期記憶障害」の時に、認知症医の早期診断を受けると、その人に合った薬が処方されて痴呆の進行を遅らせることが出来る。私がそれを知ったのは父で失敗したからだ。寿一たちにも気づいて欲しい… と、ついつい気持ちが入り込んでしまった。
今回も、グサりグサりとクドカンの脚本が私の心をえぐって来る
「短期記憶障害」の次は、寿一の別れた妻・ユカ(平岩紙)と息子・観山秀生(羽村仁成)の多動症や書記障害の話。まあ、こちらもゴールデンタイムの地上波民放ドラマとして、コミカルに扱うには非常に困難なテーマだ。
それにしても、「好きな人 旦那にしたら 幸せになれるわけちゃうねんな」とか「収入ゼロって よう胸張って言えるな! 離婚前なら 許したかもしれんけど」って。
宮藤官九郎氏は、当blogを読んで私に向かって書いてる!?(もちろん、そんなことはあり得ないが) 本来は土曜日は休暇なのに同僚の体調不良で急きょ病院へ出勤になった妻に何と言ったら良いのか? そして、今夜、本作の録画を見るのを楽しみにしている、自分(妻)の両親の介護中で、開店休業状態の夫を抱える妻と、私はどんな顔をして第2話を見れば良いのか?
ほんと、ドラマの中の出来事とは言え、今回も、グサりグサりとクドカンの脚本が私の心をえぐって来る。これがまた、いいのだ。
前半の約20分間は、笑いと涙、お金と幸せ、労働と夢、いろんな具が詰まったシーンの連続
もう、見ながら感じたことを全部綴ったら、SNSならタイムラインが埋まってしまう程に、ほんとに良い意味で “いちいち” 私のツボにハマる。
寿一が言った「元気なのか元気じゃねえのかハッキリしろよ!」も、寿三郎の「多少 元気なんだよ~」も。寿一が寿限無(桐谷健太)に誘われてデリバリーサービス「飯の運び屋」で金を稼ぐシーンとか。全盛期の寿一に憧れてプロレスラーになったプリティ原(井之脇海)と寿一への切ない思いと、容器からこぼれ出た中華料理のダラ~んとした感じとか。
もちろん、長州力(本人役)が寿一をロープに飛ばすくだりとか。他の選手に比べて腕が短い長州さんならではの得意技「リキラリアット」のオチとか。もう、どうしてこんなに短時間の中へ具が詰まってるの? って感じ。
笑いと涙、お金と幸せ、労働と夢、いろんな具が詰まったシーンの連続の前半の約20分間に、こっちが「リキラリアット」を食らった気持ちだ。ごっつぁんです!
第2話で、"さくらへの疑惑の追及"を持って来たのは想定外!
さて、第1話がドラマの初期設定の説明をやらざるを得ないから、多少の説明過多に陥ったのは止むを得ない。ただ、初期設定の説明が無くなった第2話は、前述の通りに、冒頭からアクセル全開で「寿一の日常」が駆け足で描かれた。
駆け足と言っても、全く拙速さはなく、むしろ内容は濃いしテンポは良いし、実にシリアスな内容を宮藤官九郎ドラマらしい味付けで魅せてくれた。そして、CMを挟んだら、話は一気に「さくらの疑惑問題」へ。確かに、第1話でネタ振りがあったから、いずれの何処かで疑惑の追及をするとは思ったが、まさか、第2話の中盤からやるとは思わなかった。
だって、疑惑ありきのまま最終章まで引っ張ったって楽しいだろうし。でも、25分の地点で、家族会議による疑惑の追及が始まった。こう言う私の想定外の展開を仕掛けて来るから、クドカン流にやられてしまうのだ。
「寿一の日常」に起きている “多種多様な欠片” が、まるで化学反応のように相乗効果を発揮!
そして、ドラマの終わり寸前ではなく、まだ10分以上も残した41分の時点で、さくらが、寿三郎との婚約に恋愛感情は無かったと言う衝撃の事実の告白を持って来たのにも驚いた。
ここまで、介護認定から始まって、短期記憶障害、学習障害はもとより、親子の問題、兄弟の問題、家元の問題、借金話など、「寿一の日常」に起きている “多種多様な欠片” が、まるで化学反応のように相乗効果を発揮。
ドラマを時に複雑に、時にピュアにしながら、ストーリー全体は、じわじわと、且つ、きれいに「寿三郎をめぐる寿一とさくら」の物語に集約、帰着、絞り込まれて行った。
本作で最も凄いのは、この先なにが起こるかも、結末も、全く見えないこと!
とにかく、しっかりと宮藤官九郎氏の脚本ドラマらしさは盛り込んだまま、ベタ以上のホームドラマに仕上がった第2話。寿一のモノローグの巧みな入り方、劇伴(未発売)の選曲とタイミングの良さなど、全ての “本作のカタチ” が整ったと言える。
そして、本作で最も凄いのは、この先なにが起こるかも、結末も、全く見えないことだ。恐るべし『俺の家族の話』、お見事だ。
私の拙い介護経験で、日本の介護保険の現実を語りたい…
本当に楽しいドラマだし、フィクションだから、本来の感想としては重箱の隅を楊枝でほじくるようなことは書かずに終えたい。
でも、やはり、「虚構の中の真実」が “より真実” に見えるから、本作も面白いわけで、ここでは「日本の介護保険制度の真実」について、10年以上に亘って両親を自宅(私は別居)で訪問介護を受けて看取った拙い私の経験をお話しようと思う。「ドラマの感想だけで結構です」と言う方は、「あとがき」に飛んで構わない。
ドラマと現実の「要介護1」の世界は、だいぶ違う!
さて、私が言いたいのは、本作で描かれた「要介護1の世界」は、“あんなに豊かではない” と言う事実だ。専門的な説明は間違えるといけないし、皆さんも興味が薄いだろうから省略するが、私の実体験をもとに話すとこうなる。
そもそも介護保険を受けるには、第1話にあったような認知テストを受けて、軽度の方から順に「要支援1,2」と「要介護1~5」の7段階に査定される。まず、大きく違うのは「要支援2」と「要介護1」の境界線だ。「要支援」では基本的に訪問介護は受けられない。僅かに公的な補助が出るだけ。
介護サービスを受けるには「要介護」に認定されないとダメ。「要支援2」と「要介護1」の分かれ目はズバリ、「認知症を発症しているかどうか」「心身状態が安定しているかどうか」の2点だ。そして…
●その人に認知機能の低下が診られ、医師から認知症の可能性が高いと判断された場合
●主治医意見書で「半年以内に心身状態が悪化していく恐れがある」と判断されている場合
上記のうち、1つでも該当すればが、「要介護1」となる。
「要介護1」で、どのような介護サービスが受けられるのか?
では、「要介護1」では、どのような介護サービスが受けられるのか? 要介護1の場合、介護サービスを利用する際に支給される限度額は、月額16万7650円(2019年10月施行、1単位=10円換算)。このうち、所得に応じて1~3割を自己負担額として利用者が支払う。要介護認定等基準時間は、1日に32分以上50分未満。
例えば、「要介護1」で “一人暮らし” の場合、週2回の訪問介護で、衛生的で安全な生活をするため掃除と洗濯をヘルパー。更に、自分で商品を選択できるはずなので買い物同行サービス。薬の飲み忘れ確認の訪問介護。これらを「平均2回/週」。更に、入浴や運動などのための通所介護とその際の昼食代で「平均8回/週)」程度。これが現実。
要は、週2回は介護ヘルパーさんが50分まで作業して、週2回は通所リハビリに通って(昼間)、あとの週3日間と早朝や夜は “孤独との戦い” になるわけ。
日本の介護保険制度は、そんなに甘くない!
従って、独居でなく健康な家族が同居していれば、掃除や洗濯など家事全般の介護サービスは基本的に受けられない。また、料理も作るのは介護されている人の分だけ。ついつい、「介護認定が受けられたら家政婦さんがやって来て家族が楽になる」みたいな幻想を描きがちだが、日本の介護保険制度はそんなに甘くない。
当blogの読者さんとは、ドラマと現実の違いを知った上で、共に笑って泣いて本作を楽しみたい…
それと、私の亡き母の場合で言うと、「要介護3」から「要介護5」まで約1年半で進んでしまった。基本的に介護認定審査は年1回なので、介護プランを作るケアマネージャーさんと常に連絡を取り、体調や状況が変わったら、すぐに地域包括支援センターに連絡し、都度都度に認定を変えてもらう必要もある。
折角、『俺の親の話』と言う家族が介護をするドラマで出会った読者さんだけには、ドラマと現実の違いと知った上で、次回も、私と一緒に笑って泣いて、また笑ってドラマを楽しみたい…
【注意】介護保険制度は、毎年変更されますので、正確な情報は関連機関に問い合わせたり、公式サイトを見たり、私がおすすめのサイト「よくわかる介護ガイド|みんなの介護」を読んだりなさって下さい。
あとがき
実は、さくらのドラマの中でのポジションが第1話ではよく分かりませんでした。単なる遺産詐欺師なのか、違う目的があるのか? もちろん、まだ本当の真相は分かりませんが、今回で分かったのは、お金目当てなのを明かして働き続ける介護ヘルパーだと言うこと。
そして、借金に困っている寿一や観山流と、金を持っているさくらとの今後の関係も楽しみです。それにしても、予告編を見ただけでは、次回の展開がさっぱり見当がつかないのも、改めてスゴイなと思います。
今回も「自宅介護あるある」をちょっとだけ。意外と、介護サービスを受ける人と介護ヘルパーさんの “相性” は大切です。劇中のように、若い女性のヘルパーさんが来るとシャキッとするおじいちゃんとか、若い男性ヘルパーが来るとお化粧をするおばあちゃんとかいますね。
うちの場合は、異性と年が離れた人は気を遣うからイヤだと言って、同性で年配のヘルパーさんに来てもらっていました。自分が同居していない場合の自宅介護は、自分よりヘルパーさんと親のいる時間の方が断然長いですから、相性のよいヘルパーさんと巡り合えることも、介護を上手く回すカギになると思います。
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★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/15111/
【これまでの感想】
第1話
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