俺の家の話 (第1話/初回15分拡大・2021/1/22) 感想

TBS系・金曜ドラマ『俺の家の話』(公式)
第1話/初回15分拡大『濃すぎる家族の全力介護が始まる!』の感想。
プロレスラー「ブリザード寿」こと寿一(長瀬智也)の元に、「二十七世観山流宗家」で重要無形文化財「能楽」保持者の父・寿三郎(西田敏行)危篤の知らせが届く。父に反発し家を出た寿一は、25年ぶりに家族と再会。弟の踊介(永山絢斗)と妹の舞(江口のりこ)が相続の話をすることに激高し、引退して寿三郎の跡を継ごうと決意する。ところが退院した寿三郎は結婚すると言い…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:宮藤官九郎(過去作/あまちゃん、ゆとりですがなにか、いだてん)
演出:金子文紀(過去作/G線上のあなたと私、恋つづ、逃げ恥) 第1話
山室大輔(過去作/天皇の料理番、グランメゾン東京、テセウスの船、キワドい2人)
福田亮介(過去作/初めて恋をした日、恋つづ、恋する母たち)
音楽:河野伸(過去作/おっさんずラブ、恋つづ、天使にリクエストを、知ってるワイフ)
「初期設定を説明するか?」が本作の成功のカギだと思った
いよいよ… である。TBSが本気モードでキャスティングしたクドカン脚本ドラマが、いよいよ放送開始だ。とにかく、TBS肝入りの連ドラだから、番宣も大量投下。それ故に、流石の私も通常モードの「視聴前は出来るだけ事前情報なし」には出来なかった。
だからこそ、この第1話に期待したのは、脚本家・宮藤官九郎氏が、どのように今作の初期設定を説明するか? だ。恐らく、そこに “クドカン流” のアイデアが見い出せれば、あとは問題ないと思って期待していた。
映画『ミリオンダラー・ベイビー』の主人公と、長瀬智也さんの低音のモノローグが妙にシンクロしてグッと来た!
すると、ドラマが始まると、まずは「やはり…」と言う感じで、今作のために12,3キロの体重増量(情報源)をして41歳の現役プロレスラー役に挑む長瀬智也さん演じる プロレスラー「ブリザード寿」こと寿一の、リング上でのファイティング・シーン。
しかし、それも40秒ほどで終了し、ストップモーションによる動画紙芝居風演出の中で、寿一のこんなモノローグから、初期設定の説明が始まった。
寿一(M)「ロープに飛ばされてる最中だが 今から俺の家の話をする」
偶然だが、この放送の夕方に1/19に『午後のロードショー』の放送5000回記念月間の中で再放送されていたボクシング映画の金字塔とも言えるクリントイーストウッド監督の名作『ミリオンダラー・ベイビー』を久し振りに見て号泣した後だったから、長瀬智也さんの低音のモノローグと “闘う主人公” がシンクロし、もうこのモノローグからグッと来てしまった。
補足ですが、映画『ミリオンダラー・ベイビー』は必見です。ちょっと辛いラストが待っていますが、貧しい女性ボクサーとベテラントレーナーの王道のヒューマンドラマです。(Amazonリンク)
注目すべきは、久し振りに宮藤官九郎氏が"家族を真正面から描くホームドラマ"に挑戦したこと
さて、本作の本編の感想だ。もちろん、「長瀬智也×宮藤官九郎」も大きな話題性ではあるのだが、テレビドラマ好きなら、やはり注目すべきは、宮藤官九郎氏が “家族を真正面から描くホームドラマ” に挑戦したことだ。恐らく、“王道の” と言う意味では、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年前期)以来だと思う。
もちろん、今作までの間に、 “家族” や “社会問題” を扱った作品はあった。また、昨今は「家族×社会問題」を扱うドラマが増えているから、広域の意味で『ごめんね青春!』(2014年10月期)や『ゆとりですがなにか』 (2016年4月期)もホームドラマの要素を含んでいると言う解釈も成立するとは思うが。
クドカンらしい斬新な設定と、王道の「介護と遺産相続を描くホームドラマ」の組合せが絶妙!
とは言え、やはり、宮藤官九郎氏の脚本のドラマには「細かなギャグの多用」と「幾重にも捻りまくった奇異な設定」と「登場人物と演者の絶妙な組み合わせから発せられる生きた台詞の数々」と言う “クドカン流” の特徴があるし、それらへ呼応するようにきめ細かな演出による作り込みが見どころだ。
そして、番宣を見た限りでは、前述のような雰囲気のドラマに仕上がると思っていた。しかし、蓋を開けてみると、確かに「細かなギャグの多用」と「登場人物と演者の絶妙な組み合わせから発せられる生きた台詞の数々」はあったが、意外に「幾重にも捻りまくった奇異な設定」が無かった。
いや、プロレスや能の世界、若いヘルパーと結婚など初期設定は “クドカン” らしい斬新な設定だが、展開自体は思いのほか捻りが少なく、「介護と遺産相続を描くホームドラマ」としては、“王道” だった。
コロナ禍だからか、少し尖った部分を削って誰もが楽しめる王道のホームドラマに
とは言え、そこはやはり宮藤官九郎氏が創出する独特な世界観はしっかりとあった。むしろ、コロナ禍に放送する金曜夜の連ドラとして、少し尖った部分を削って、万人ウケ、誰もが楽しめる王道のホームドラマを提供したと言う感じだった。
セリフや効果音を連動させた小ネタや、期待を僅かに裏切って上回る台詞のやり取り、俳優陣の演じる役とのハマり過ぎる感じなど、ほぼ全編が満足と言っても過言でなかった。
介護、認知症、学習障害を"問題化"せず、辛さは少なめに、シュールさとシニカルさを添えて描いたのは見事だし、秀逸過ぎる
また、ゴールデンタイムの民放地上波の連ドラでは扱いにくいと思われる介護、認知症、学習障害と言う事柄を、単純に「問題」として描くのではなく、もちろん軽率に描くのでもなく…
ピークを過ぎたプロレスラーの主人公が、能楽の人間国宝である父の介護のために現役を引退し、名家の長男として家族と財産を守るために、謎の女性介護ヘルパーを巻き込んで挑む激しいバトルと言うユニークな物語の中に必然性のある設定として、しっかりとドラマの土台にして…
その上に、辛さは少なめに、シュールさとシニカルさを添え、更に「正しい知識や情報提供」と言う部分まで盛り込んで、描いたのは見事だし、秀逸過ぎる。
あとがき
10年以上に亘って、両親の介護をして看取った私にとっては、いろいろ思い出したこともありましたし、「ああすれば良かったかな?」と考えさせられる部分もありました。本作って、笑えるし泣けるし考えさせられる複雑なドラマではありますが、全体的に “カラッと” しているのが良いと思います。
実際の介護も “息抜き” を上手くやらないと続きませんから。幅広い世代の人たちに見て貰いたい良質なホームドラマと言う感じでした。次回にも期待します。
そう言えば、私の父は12月初旬に受けた初めての認知症テストで、「今の季節は何ですか?」と聞かれて、しばらく考えていたので子どもたちは「親父、そんなにボケていたっけ?」と内心で思っていたら、「晩秋か初冬の間だと思います」と答えて、「認知症は大丈夫ですね」と言われ、家族みんなで苦笑したのを思い出しました。
しかし、1年後には季節が分からなくなり、その翌年には今日の日付も言えないようになる。それが介護の現実です。でも、決して辛くて苦しいことばかりでないことも、本作で描いてくれたら良いと思います。
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