連続テレビ小説「エール」 (第20週/土曜日版・2020/10/31) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『エール』(公式サイト)
第20週『栄冠は君に輝く』の
『土曜日版』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
「長崎の鐘」を書き上げ、音楽への情熱を取り戻した裕一(窪田正孝)は、戦時中に出会った新聞記者の大倉(片桐 仁)からの依頼で「全国高等学校野球選手権大会」の曲作りに取り組む。そんなある日、裕一と鉄男(中村蒼)は藤丸(井上希美)に案内されて、久志(山崎育三郎)と再会する。戦後、自暴自棄の生活を続けていた久志に立ち直ってほしい裕一は、高校球児のために「栄冠は君に輝く」を歌ってほしいと頼む。しかし久志は…。
---上記のあらすじは[公式サイト]より引用---
「裕一の音楽=応援歌」は、国民にも親友にも影響を与える
N「応援歌といえば やっぱり 裕一しかいないでしょう」
こんなナビゲーションから始まった第20週『栄冠は君に輝く』の「土曜日版」。やはり「裕一の音楽=応援歌」と言うのが、多くの日本人だけでなく、幼馴染で親友にも効果覿面だったと言うのを丁寧に描いた一週間だったのは間違いない。
裕一と久志の"どん底"と"回復"の均衡を図って欲しかった
ただ、最初に、少ししょっぱい(愛想ない)ことを言うと、裕一(窪田正孝)と久志(山崎育三郎)は共に “どん底を味わった” ことには間違いないが、ドラマを冷静に見ると、どん底の深さが違うと言うか、主人公と脇役ではもっとどん底の深さに差があった方が、より盛り上がったように思うのだ。
例えば、裕一は戦地で恩師である藤堂先生(森山直太朗)の戦死を目の当たりにし、音(二階堂ふみ)の音楽教室の教え子だった弘哉(山﨑聡真)の戦死を通して、トラウマになる程のどん底に陥った。しかし、戦後になって再び仕事の依頼が入って、2曲を作曲して所謂 “再出発” している。
一方、脇役である久志については戦時中はほぼ描かれず、裕一のトラウマに比べると心の傷はやや小さい。そして今週一週間で、どん底になっている現状から再出発までが描かれた。こう書き出してみると一目瞭然だと思うのだが、ドラマとして裕一のどん底の方が深いが回復は速く、逆に久志はどん底は浅いが回復は遅い…と見える。
それは裕一の “立ち上がる過程” がしっかりと描かれなかったからだ。もちろん、「長崎の鐘」の誕生秘話の際には丁寧に描写されたが、あれも週末の2日間位。やはり、ドラマとしては、主人子のどん底の方をより深く、這い上がるまでの過程もより困難に描いて欲しかった。
もちろん、コロナ禍の影響で話数も減ったし、撮影現場の事情もあっただろうから、やりたくてもやれなかった可能性はある。でも、褒めるばかりが私の感想ではないと思っているから、「やって欲しかったこと」だけは、まず書いてみた。でも、今週の仕上がりを見てしまうと、全体はどうでも良いかなと思う自分もいるのは確かだ。
ナビゲーションが「犬井」に触れなかったのは少し残念
さて、「土曜日版」の感想。本作の語り担当の津田健次郎さんが、久志の麻雀仲間の犬井 役として登場する際に、バナナマン日村さんのツッコミが入るのかと期待したが、流石に、このシリアスな展開では無理だったか。でも、それでも強引に入れてこそ「土曜日版」だと思うのだが。
必死に音符を書いて行く窪田正孝さんの目の演技が凄くいい
甲子園のマウンドの上で裕一が、作詞家・多田良助の詞を手にして、『栄冠は君に輝く』のメロディーが振って来るような映像表現は良かった。
N「これが 誰もが知る あの有名なメロディーの誕生の瞬間です」
ここの、裕一が帽子を取って、マウンドの土の上に譜面を置いて、溢れて来るメロディーを必死に譜面に音符として書いて行く時の、窪田正孝さんの目の演技が凄くいいなと。
福島の久志の家の "夕景の照明" に注目してみた
本編の感想で触れなかったので、ここで一つの照明演出について書こうと思う。そのシーンは、久志が福島に帰って、亡き父の仏壇の前で裕一と話す時の照明の色だ。時間は誰が見ても “夕方” だと気づくはず。でも、どうだろう? 普通に “夕方” と言ったら、もっとオレンジ色や赤っぽい色の照明が一般的だと思う。
しかし、このシーンでは、“ほぼ黄色” と言っても良い位の照明で夕方が表現されている。これは、オレンジ色などの暖色系で夕景を作ると、温かく温和な雰囲気が出たりノスタルジックな印象が強くなるから、それを避けるために、「電球色」と言われるオレンジ系をやめて、日常的な電球や照明では出せない黄色のグラデーションを使うことで “たそがれ時の空の光” を評点しているように思う。
分かって頂けるだろうか? 決して、遠くでカラスが鳴く感じがしない、列車の走る音が合わないような、お線香の煙が流れていくだけ、時間が経過して行くだけの夕景。そこに、裕一と久志を置くことで、裕一が知らなかった久志があの空間に満たされ、じわじわと裕一の中に入って行くイメージ。そんなのを狙った演出のように思う。
池田が久志を説得しに来る場面でも同じ "夕景の照明" が…
そして、興味深いのは、この黄色の夕景の照明が、 裕一と藤丸(井上希美)に連れられて久志の説得にやって来た池田(北村有起哉)のシーンにも使われていること。
本放送では、別の日になっているし、スタジオセットも違うから意図的に同じにしている。そのことで、前述のシーンで久志の本心を知った裕一が、その思いを持ったまま、このシーンにやって来たことが分かる。まあ、見ていれば当然そう見えるのだが、照明演出でもしっかりやっているってことだ。
高校球児たちのユニフォームに学校名も背番号もないから…
もう一つ、演出で気付いたことを書きたいと思う。もう、『エール』の名シーンの一つと言うか、名シークエンス(シーンとシーンの一連の繋がり)の一つと言うべき、久志が『栄冠は君に輝く』を三番まで歌うシークエンスだ。「土曜日版」でも、途中に、甲子園で球児たちが熱戦を繰り広げ応援するシーンがインサートされた。
そのシーンに登場する選手たちのユニフォームに、学校名や背番号がない。純白のユニフォームを着ているのだ。野球帽には恐らく「B」のワッペンが刺繍されてはいるが、特定はできないようになっている。
もちろん、ドラマとして特定する必要は全くないが、むしろ、見ている人たちが自分の思い思いの学校名や背番号を心の中で重ねて作品に感情移入しやすいような配慮もあるのではないかと思う。
春夏の甲子園が無い年の朝ドラだからグッとくるものがある
因みに、『朝ドラに栃木GB寺内監督が出演|NHK 栃木県のニュース』によると、甲子園の球場内としてロケ地になったのは栃木県内の野球場で、『栄冠は君に輝く』の作曲家役は、野球のBCリーグ、栃木ゴールデンブレーブスの寺内崇幸監督が出演されたそう。春と夏の甲子園がなかった2020年に『栄冠は君に輝く』を扱う朝ドラだからこそ、野球に拘ったキャスティングだったのだ。
あとがき
やはり、今週を「15分間」にまとめると、箇条書きになってしまいましたね。でも、それでないと本編を毎日観る価値がありませんから、これで良いと思います。
さて、「約13ヵ月に渡る撮影が、10月29日にクランクアップした」(引用元)との報道がありました。13か月、凄いとしか言いようがありませんね。次週は久し振りに 千鶴子(小南満佑子)が登場するようですね。音の歌手になる夢のその後を描きつつ、晩年に向かって行くのでしょうか。
この調子で、主人公と音楽が全ての人々に “エール” を送る朝ドラであり続けて欲しいです。
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【これまでの感想】
第1週『初めてのエール』
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第3週『いばらの道』
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第11週『家族のうた』
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