連続テレビ小説「エール」 (第19週/土曜日版・2020/10/24) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『エール』(公式サイト)
第19週『鐘よ響け』の
『土曜日版』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
終戦後、裕一(窪田正孝)は曲を書かなくなっていた。しかし劇作家・池田二郎(北村有起哉)との出会いでラジオドラマ「鐘の鳴る丘」、そして「長崎の鐘」の作曲をすることに。裕一は歌詞の元になった本の著者・永田 武(吉岡秀隆)に会いに長崎へ。原爆投下で自らも被爆しながら医師として人々の救護に当たった永田は、裕一に…。一方、吟(松井玲奈)の夫で元軍人の智彦(奥野瑛太)は職探しをしている中、戦災孤児の少年と出会って…。
---上記のあらすじは[公式サイト]より引用---
一人でも多くの人に「土曜日版」を見て欲しい
もう、「土曜日版」の感想については毎回のように書いているが、一週間の中の無駄や蛇足が削除され、説明不足の部分はバナナマン日村氏のナビゲーションで補強されるから、通常放送の「週5回」を見た後に見てこそ、「作り手が今週で描きたかったこと」が明瞭になる。
まあ、本音を言えば、「土曜日版」を見なくても丁寧に描いて欲しいのだが、やはり「1回15分」と「週5回」と言う放送の制約があるから、止むを得ない部分はあると思う。だからこそ、この「土曜日版」を一人でも多くの人が見て、コロナ禍で制作されている『エール』を理解し、楽しんで欲しい。
今回のナビゲーションにも、良いものが幾つもあった
さて、今回も、こんな適切なナビゲーションから始まった。
N「大切な人を戦争で亡くし 傷つき 悩み
ついに曲を作ることができなくなってしまった裕一。
しかし 音楽は そんな裕一を見放しませんでした」
「音楽は そんな裕一を見放しませんでした」、ここがとても良く出来ている。裕一が音楽から遠ざかっているのではなく、主語を「音楽」にして「音楽は裕一を見放さなかった」と表現したのだ。この「主語が “音楽”」と言うのが良いのだ。
本編では、どうしても人間を中心に描くから、「紺碧の空」の少し後から、「音楽」が添え物になって、登場人物の話ばかり描いて来た。それが先々週までの『エール』。
でも、先週の第18週『戦場の歌』で 裕一(窪田正孝)を戦地の最前線に送り込んだ、朝ドラとしては思い切った戦争描写をやったことで、再び、「裕一と音楽のドラマ」に戻った。その週を受けた今週は、正に「音楽は そんな裕一を見放しませんでした」だった。
音より華の方が、裕一の寄り添って見えるのは頂けない
本放送の時の感想にも書いた通り、今週は、月曜日から水曜日と、木曜日と火曜日で脚本家が違う。恐らくコロナ禍の影響で放送回が短縮されて影響を受けた結果であると勝手に推測するが。
簡単に言えば、前半は「『鐘の鳴る丘』を生み出すまで苦悩する裕一」で、後半は「永田医師とのやり取りで長いトンネルから抜け出した裕一」と言った感じだろうか。だから、基本的にメインは裕一と言うことになる。
N「華の声も 裕一には届きません」
これ、読者さんからも幾つかのコメントを頂戴したが、音(二階堂ふみ)よりも華(古川琴音)の方が、裕一に寄り添って見える…と言うことだ。確かにそう見えた。特に「土曜日版」の編集を見ると、「なぜ音は裕一の傍にいないの!?」としか思えない。これが、裕一と音が夫婦二人三脚に見えない元凶。
あちこち話は飛ぶし、急にコミカルな演出を盛り込む、本作のメイン脚本&演出の吉田照幸氏の悪い癖だ。この “グセ” が今週前半をぶち壊したのは間違いない。音が本気で裕一を心配し立ち直って欲しいと願う映像が無いから、使えるカットをいくら摘まんでも、尺が少ない分だけ “音の独りよがり” に見えてしまった。
まあ、何とか劇作家・池田二郎(北村有起哉)の熱意が描かれたのが唯一の救いだ。
後半の2回分の方が、前半の3回分より凝縮されていた
さて、興味深いのは、前述の前半が放送7分で終わったこと。と言うことは、前半と後半が同じ尺で「土曜日版」に収容されたことになる。やはり、前半は3回分あっても伝えるべき内容は、2回分の後半の方が凝縮されていたことの証明だ。
不思議なものだ。前半での「鐘の鳴る丘」が「土曜日版」では、意外な程にあっさりと完成してしまったから、裕一がその勢いを利用して、長崎の永田医師(吉岡秀隆)に会いに行ったように見えた。本編の時は、重い腰を上げて…と言う感じだったのに。まあ、ドラマとしては、物語に “勢い” をつける意味でも、こちらの解釈の方が良いと思った。
ヒッピーのスローガン"武器ではなく花を"と花植えのシーン
話が『エール』から逸れるが、本編の感想の際に書こうと思って控えていたことを書こうと思う。後半で印象的なシーンの一つに、子どもたちが色とりどりの花を花壇に植えるシーンがあった。私は、このシーンを見て、ある一枚の報道写真を思い出した。それが下の写真だ。
©Bernie Boston / The Washington Post / Getty Images / Kyodo News
ご存知の方も多いと思うが、少しだけ稚拙な解説をしたい。1960年代の半ばからアメリカ西海岸では “ヒッピー族” が急増し始めた。時はベトナム戦争の頃で、アメリカでは徴兵カードを燃やして反戦デモをやっていたヒッピーの一人の若者が銃を構える警備隊に近づき、州兵が突きつけたM14ライフルの銃口に1本ずつカーネーションの花を差していったのだ。
自分に向けられた銃口に花を挿すと言う勇気ある行動によって、ヒッピーたちと警備隊の張り詰めた緊張の糸が切れ、他のヒッピーたちも、次々と自分に向けられた銃口に花を挿した。この時の歴史的な写真が、上の写真で、その年のピューリッツァー賞にノミネートされ、彼らは “フラワーチルドレン” と呼ばれるようになった。
なぜ、こんな話をしたのかと言うと、この写真が撮影されたのが、1965年10月21日なのだ。奇しくも偶然ではあるが、『エール』で「長崎の鐘」のエピソードが描かれた日と同じ…と言うわけ。そして、ヒッピーたちの有名なスローガンが「武器ではなく、花を」だった。何か、通じるものがあると考えるのは、やり過ぎだろうか?
そして、1967年の6月にはカリフォルニアで「音楽と愛と平和」を掲げたフェスティバルが開催され、約20万人のヒッピーが参加し、このふぇすのためにママス&パパスのジョン・フィリップスが書きおろし、スコット・マッケンジーが歌ったのが「花のサンフランシスコ」。ヒッピーのテーマ曲とも言える楽曲だ。
音楽が人々の救いと励みになる。未だにコロナ禍で先が見えない日本、いや世界。そんな今、この60年代のアメリカ西海岸を感じさせる柔らかなメロディを聞くと、一日も早くコロナが収束して、日本、世界が再び立ち直る姿に思いをはせた…
あとがき
今週を上手くまとめた「土曜日版」だったと思います。殆ど、妻の音が関わっていないことだけが大変気になりますが。予告編によると、来週は久志(山崎育三郎)を中心に描くために、今週中に裕一の葛藤を片付けておこうと言う展開だったのですね。
まあ、撮影現場は混乱しているでしょうから、やや箇条書きになって来ているのもしょうがないかもしれません。だからこそ、もっとナレーションを活用すべきと思います。ナビゲーションだけで、こんなにも印象を変えること出来るのですから。
第18週「戦場の歌」再放送のお知らせ
●第18週「戦場の歌」(第86~90回)
10月25日(日) [総合]
午前2時35分~3時50分 (※土曜深夜)
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