MIU404 (第8話・2020/8/14) 感想

TBS・金曜ドラマ『MIU404』(公式)
第8話『君の笑顔』、ラテ欄『未解決の連続殺人!? 警察官になった理由』の感想。
山中で男性の遺体が見つかり、伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)が現場へ急行。遺体の特徴的な傷と残された文字から、未解決の連続猟奇殺人の可能性が浮上し、事件は初動捜査もそこそこに捜査一課の管轄となる。捜査会議に参加した伊吹と志摩はそのまま手伝いに駆り出され、司法解剖が行われる施設に同行。車での待機を指示された隙に、座席上の捜査資料を盗み見る。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:野木亜紀子(過去作/重版出来!、逃げ恥、アンナチュラル、コタキ兄弟と四苦八苦)
演出:塚原あゆ子(過去作/アンナチュラル、グッドワイフ、グランメゾン東京) 第1,2,3,6話
竹村謙太郎(過去作/アンナチュラル、警視庁ゼロ係シリーズ) 第4,5,8話
加藤尚樹(過去作/コウノドリ1,2、ホワイト・ラボ) 第7話
音楽:得田真裕(過去作/家売るオンナ゙、アンナチュラル、インハンド、監察医 朝顔、俺の話は長い)
主題歌:米津玄師「感電」 (ソニー・ミュージックレーベルズ)
劇中使用曲::BABYMETAL「PA PA YA!!(feat. F.HERO)」(TOY'S FACTORY)
まえがき
この感想は最後まで見終えてから書く手法でなく、録画を見ながら気になったら一時停止して書き、映像チャックしてから書き進めるスタイルで書いておりますので、読者の皆さんも「その都度、先が分からない」つもりで読んで頂けると、感想の内容が分かりやすいと思います。
"作り手の情熱"が感じられる、冒頭の1分30秒間!
冒頭から、企画力、脚本力、そして演出力を見せつけてくれた。今期の連ドラはコロナ禍の影響を受けて、春と夏の連ドラが混在しており、「視聴率=ドラマの質」でないことは重々承知の上で、やはり制作陣は視聴率(リアルタイムの視聴とタイムシフト視聴を統合視聴率を含む)が唯一の指標なわけで。
その意味で、今期の民放連ドラの視聴率は、1位『半沢直樹』、2位『私の家政婦ナギサさん』、3位『ハケンの品格』、5位『アンサング・シンデレラ』となっており、本作『MIU404』は4位に甘んじている。敢えて、「甘んじている」と表現したのは、本作を最高に楽しんでいる私や、他の視聴者はもちろん、制作陣ももっと上を狙っているはずなのだ。
だから、序盤の1分30秒間で、「前回の振り返り」を単純な編集で済ませずに、刑事が桔梗(麻生久美子)と志摩(星野源)に事情聴取すると言うシーンを作って、志摩と伊吹(綾野剛)がコンビであることや、羽野麦(黒川智花)の素性、“敵” のターゲットが羽野麦であると言うことまで一気に描いた。
これで、少なくとも前回を見ていない視聴者にも、今回のイントロとしては十分な情報が与えられた。やはり、「もっと多くの人に本作を見て欲しい」と言う “作り手の情熱” が感じられるドラマは熱を入れて応援したくなるのだ。
メインタイトル直後のシーンの作り方が秀逸!
アバンタイトルが終わった1シーン目は、桔梗の息子・ゆたか(番家天嵩)が、アバンで言っていた「警察官だけが住んでいるマンション」らしき建物からエントランスに出て来るシーンだ。サントラ盤にも収録されている機捜404号車の「メロンパンのうた」が聞えている。
そこへ、誰かに「おはよう」と言いながら、ゆたかが手に閉じた傘を持って出て来て、野球の素振りのような動作をすると、「#08 君の笑顔」のサブタイトルが消える。
©TBS
©TBS
まあ、この位の演出は本作に於いて、わざわざ称賛するレベルではないのだが、ここの作り込みが秀逸なのはサブタイトルの消え方でなく、メインタイトルを挟んでの直前のシーンは、 機捜404号車に乗った不安げなゆたかだったのに、メインタイトル明けには、「おはよう」と声を掛ける相手がいると言うこと。
まあ、「メロンパンのうた」が聞えているから、「見せる警護」をしている伊吹と志摩に挨拶をしたと思わせて、素振りのカットのまま、カメラが下手(左)にパンすると画面右上に「2ヵ月後」のテロップが出る。
©TBS
そして、ゆたかと集団登校する子どもたちも、伊吹と志摩と仲良くなっていることまで描かれた。更に伊吹の「引っ越し 夏休み前で良かったよな」の台詞と、2019年9月のカレンダー。
©TBS
こう言うサブタイトルと時間経過の表現を組み合わせた魅せ方は本当に上手いと思う。
またもや『MIU404×アンナチュラル』の "世界観の融合"
7分過ぎ、ついに『MIU404×アンナチュラル』の “世界観の融合” である「不自然死究明研究所(UDIラボ)」が登場。 更に2018年1月期に放送した『アンナチュラル』にUDIラボの臨床検査技師役で出演していた飯尾和樹(ずん)さんが、同作と同じキャラクターの坂本誠役で登場。
しかも、ムーミン・シリーズのキャラクターが大好きと言うキャラ設定まで引き継いで。こう言うのは単純に楽しいから大歓迎だ。
管理人・みっきー お薦めする商品を、Amazonと楽天市場から安心して ご購入して頂けます!
|
本作には "放送回を超えた伏線" があるから見逃せない!
その後、遺体は解剖のため、UDIラボの技師・阪本にメロンパンのあるなしで絡まれている間、捜査資料を読んでいた伊吹は、被害者の堀内伸也に前科があり、その事件を担当していたのが、伊吹の師匠である “ガマさん” こと蒲郡(小日向文世)であることを突き止める。
ガマさんの家に行くと先客の男性ベトナム人のフォンさんがいて、第5話『夢の島』に登場したベトナムからの女性留学生チャン・スァン・マイを演じたのがフォンチーさんで、伊吹からも「沖縄のマイちゃん」と言う台詞もあった。やはり、本作には放送回を超えた伏線があるから見逃せない。
小ネタの面白さと想像させる余白を同時に作る巧みな魅せ方
17分過ぎには、飯尾和樹(ずん)さんに続いて、UDIラボの所長・神倉保夫(松重豊)が登場。神倉のユニフォームの胸ポケットに、ムーミンが大好きな坂本から貰ったであろうムーミンの世界に登場するミステリアスな生き物「ニョロニョロ」のペンが刺さっていた。
©TBS
脚本家の指示なのか、演出家や美術スタッフの遊び心なのか分からないが、緊張感のある『MIU404』の中に、『アンナチュラル』の緩さを持ち込んで、更に神倉の台詞の中に「中堂はね」と井浦新さんの存在まで匂わせて、小ネタの面白さと、視聴者に想像させる余白を同時に作ったのは巧みな魅せ方だと思う。
ひき逃げで殺された日の翌日が、志摩が煽り運転の犯人を…
志摩が、ガマさんの痴呆の原因が「事故」だと知って、その事故の「捜査報告書」を読んでいるシーンで、ガマさんの奥さんが「ひき逃げ事件」にあった日が、「2019年4月5日 金曜日」となっていた。この日は、第1話『激突』で、伊吹の異動初日で煽り運転を受けた日と同じ。
©TBS
そして、翌日の4月6日に、犯人と接近戦になった伊吹が「轢かれた 殺された 正当防衛だよ?」と言って、犯人に拳銃を発砲しようとするが、志摩は「発砲の要件に適ってない」と説得。でも、伊吹は「規則なんて、どーでも良くない? 誰も見てない。防犯カメラもない。ここにいるのは俺と志摩ちゃんと、このクソ野郎だけだ」と言うくだりがあった。
ガマさんの妻・麗子(丸山瑠真)が車に轢かれて殺された日の翌日が、煽り運転の犯人を正当防衛だと主張して殺そうとした日と言う、何とも皮肉な運命。こう言う細かい伏線も見逃せない。
伊吹はライブに行くのがかなり好きだと言う設定が分かった
本編には直接関係はないが、伊吹の人物設定上の演出として興味深かったのが29分頃の伊吹の部屋のシーン。部屋にはミュージシャンの「King Gnu」の「CEREMONYツアー」や「King Gnu」の常田大希さんが新たに始めた音楽集団「millennium parade」らの “らしきTシャツ” があった(チラリとしか映っていないため確信はない)。
©TBS
「King Gnu」と言えば、第7話『現在地』で、Vo.&Keyの井口理さんが「出前太郎」のデリバリー配達員・飛田を演じたばかり。ただ、「岡本体育」の盆地テクノTシャツ(黒)は間違いなく棚に折り畳んであった。もしかしたら米津玄師さんのTシャツもあったかも?
いずれにしても、伊吹はライブに行くのがかなり好きだと言う設定が分かった。あの、時々現れるハイテンションな言動やリズミカルな動きは、こんな基本設定がイカさているのかも知れない…と、考えるだけで楽しくなってくる。
管理人・みっきー お薦めする商品を、Amazonから安心して ご購入して頂けます!
|
今回で怖かったのが、「処刑人にも 良心の呵責がある」
今回で怖かったのが、44分過ぎ、ガマさんが「キリシタン 殉教者に学ぶ 生き様と教え」を手にし、伊吹の方を振り返って伊吹の目を見て、こう言ったシーンから始まった…
蒲郡「処刑人にも 良心の呵責がある」
と、言ってからの蒲郡の回想シーンから始まった、刑事の鏡、目標にし、ずっと頼り信じ切っていた恩師の、信じ難い真実を恩師自身の吐露を聞いて知って行く過程の伊吹の心理描写が怖い程にリアルだった。
もちろん、狂気に迫る小日向文世さんの演技も素晴らしいし、綾野剛さんの刻々と変化する心情の変化の演技は秀逸、カメラもやたらに動かず、どアップも多用せず、じわじわと被写体の伊吹へ寄って行くカメラワークを採用して、伊吹の心の中の怒り、落胆、痛み、苦しみと言った感情を丁寧に切り取った。
恩師の最後の教訓「事件を事前に阻止できないこともある」
殺害を自供し、死刑にしろと言う蒲郡。そんな恩師に「俺は どこで止められた?」と問う伊吹に、「お前にできることは何もなかった。何も」と志摩から伝えるように言って警察車両に乗って行った。伊吹は自分自身が “最後の砦” に慣れなかったことを悔い続けるだろう。
しかし、「お前にできることは何もなかった。何も」と言われたことで、恩師からの最後の教訓として、「事件を事前に阻止できないこともある」と言う教えを残したように思う。そして、この教えが、第1話の最後に伊吹が言った「機捜っていいな 誰かが最悪の事態になる前に止められる」へ “帰着” するのだ。
今、機捜にいる伊吹だからこそ、止めるべき最大の事件を止められなかったと言う大きな贖罪の意識と現実。そんな、どん底の伊吹を “相棒” として日常業務に連れ出す志摩が、またきっと「機捜っていいな 誰かが最悪の事態になる前に止められる」を具現化して来るのを期待したい。
今回で印象的な場面に登場した小道具に「傘」を掘り下げる
今回も、一つ深掘りをしてみようと思う。今回で印象的な場面に登場した小道具に「傘」がある。「傘」と言う漢字の由来には諸説あるが、中学校時代の国語の先生に聞いた有力な説を紹介すると。「傘」と言う漢字は「傘骨(かさぼね)」のカタチを表していると言う説。
自分で傘を内側から見ると分かるように、傘は、傘の生地が張ってある太い「親骨」と言うパーツと、その親骨を手元(ハンドル)が付いている中棒(シャフト)に突っ張るように支える「受骨」と言うパーツの2種類で作られていることが分かると思う。その「親骨」と「受骨」の構造を「人」という漢字を4つ使って表現している…と言う説なのだ。
傘を閉じている時に目立つのは手元(ハンドル)が付いている中棒(シャフト)だが、いざ雨を凌ごうとして開く時には、これまで裏方のような存在の「親骨」と「受骨」が傘の生地をピーンと張って、風に飛ばされないようにするのだ。
©TBS
今回で描かれた二つのエピソード、「羽野麦に降り掛かる恐怖」と「ガマさんに降り掛かったひき逃げ事件」、ハムちゃんに降り掛かった恐怖は、伊吹と志摩や桔梗たちが差した “傘” によって一時的に回避できた。
©TBS
しかし、ガマさんに降り掛かった妻の事故死と言う不幸は、伊吹が “傘” を差し出す前に最悪な結果になってしまった。こんな深読みは強引だろうか?
また、King Gnuの曲にも2019年発表の「傘」と言うタイトルの楽曲がある。ざっくりと歌詞を説明すれば、「別れの悲しみと、失ってから知る大事なもの尊さ」を謳った曲だ。これも、どこか今回の内容と重なっているように思えてしまう。
あとがき
先日に描かれた “志摩の過去” と対照的に位置するような “伊吹の過去” の物語。一つの事件を発端にして、過去に向き合い、相棒が支える…と言う構成は、二つとも同じ。物語の展開も、それぞれにとって “かけがえのない人” を失うと言うところまでは同じですが、結末が全く違いました。
伊吹と志摩のキャラクターの描き分けもちゃんと出来ていますし、刑事ドラマとしても、ヒューマンドラマとしても極上の仕上がりだったと思います。
【お願い】読者の皆さんも大変な状況とは思いますが、仕事激減の折、勝手なお願いで恐縮でございますが、Amazonと楽天市場からお買い物する際は、当blogのリンク経由で買って下さると、皆さんのおかげで私にポイントが貯まる上に、何よりもブログを書き続けるモチベーションアップになりますので、引き続き、ご協力の程、よろしくお願いいたします(謝) ※暫く“テンプレ”です。
「楽天市場」からのおすすめ商品
「Amazon」からの最新のお知らせ
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/14515/
【『MIU404』に関連した投稿】
ドラマ「MIU404」第3話に登場した「バシリカ高校」と言う学校名を勝手に掘り下げてみた
ドラマ「MIU404」第3話に登場した「バシリカ高校」の制服が、芳根京子主演「表参道高校合唱部!」と同じ! 両校に共通点も!!
ドラマ「MIU404」第3話の「バシリカ高校」校長室の"額に入ったメッセージ"を勝手に掘り下げてみた
ドラマ「MIU404」第4話を、イソップ挿話「ライオンとウサギ」に重ねて、勝手に掘り下げてみた
【これまでの感想】
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話
- 関連記事