「アンサング・シンデレラ」で薬剤師が大活躍し過ぎるのは調剤会社4社がCMスポンサーの異常事態が原因?
私が小学生の頃の"昭和の刑事ドラマ"のCMスポンサーは…
思えば、私が小学生の頃、まだ昭和の時代でも、刑事ドラマではたくさんの自動車が使われるからCMスポンサーには自動車会社が付いて新車をどんどん警察車両に使うとか、自動車損害保険会社がCMスポンサーだと自動車事故による事件の話は作れないとか、製薬会社がCMスポンサーだと薬物自殺の話は作れないとか言われていた。
「アンサング・シンデレラ」とCMスポンサーの関係を紐解く
なぜ、そんなことを、ふと思い出したかと言うと、フジテレビ系で木曜22時から放送中の石原さとみ主演『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』にも、上記と同じような「ドラマの内容」と「CMスポンサー」との “大人の事情” でドラマの内容が不自然になっているのではないか? と思ったから。
あまりにも「薬剤師」だけが活躍し過ぎていることに違和感
私は、放送前から「期待度満点の星5つ」を付けて待ちわびていたし、医療ドラマ好きにとっては、謎が多い「薬剤師」が主人公のドラマとして大変注目していた。だから、敢えて、原作の漫画も読まずに第1話を見た。しかし、あまりにも「薬剤師」が活躍し過ぎていることに違和感を覚えた。
CMスポンサー9社中、4社が調剤会社なのは異常事態では!?
そこで、今作のCMスポンサーを調べてみると、第5話の時点で以下の「9社」がCMスポンサーになっている。
●ライオン(大手生活用品メーカー)
●クオール薬局グループ(調剤薬局チェーン)
●コーセー(化粧品の製造、販売)
●大和ハウス(住宅総合メーカー)
●日本調剤(調剤薬局チェーン)
●武田デバ(調剤薬局チェーン)
●コムテック(自動車関連商品等の製造・販売)
●LACCOCOルミクス脱毛サロン(脱毛器メーカー)
●アイングループ(調剤薬局チェーン)
※ドラマのクレジットタイトル順
大手生活用品メーカー「ライオン」が最大手のスポンサーで、以下は化粧品の製造販売の「コーセー」、住宅メーカー「ダイワハウス」、ドライブレコーダー等の自動車関連製品の製造販売「コムテック」、ルミクス脱毛サロン経営「LACCOCO」の5社は、直接的に医療関連と連想し難い。
しかし、残りの4社である「クロール薬局グループ」と「日本調剤」と「アイングループ」は、下記の「2020年 大手調剤薬局の売り上げランキング」の上位4位に入っている、謂わば「調剤業界のトップ企業」なのだ。
【2020年最新】大手調剤薬局の売上ランキングと上位薬局の特徴 | 薬剤師の転職相談所 -ファーマシストライフ-
https://www.onenationworkingtogether.org/49897
1位 株式会社アインHD(アイン薬局)
2位 日本調剤株式会社(日本調剤)
3位 クラフト株式会社(さくら薬局)
4位 クオールHD株式会社(クオール薬局)
「半沢直樹」「MIU404」「私の家政夫ナギサさん」は、どうか?
「薬剤師」が主人公のドラマのスポンサーの半分近くが「薬剤師」と強い因果関係のある「調剤薬局」であることが、どの位に不自然なことかと言うと、実際に放送されている、または放送されていた連ドラのスポンサーを調べてみた。例えば、以下の通り…
『半沢直樹・2020年版』
Kao(花王)、SUNTORY、日本生命、SUBARU
『MIU404』
P&G 、森永乳業、小林製薬、KIRIN(キリンビール)
『私の家政夫ナギサさん』
Kao(花王)、AJINOMOTO(味の素)、小林製薬、KIREIMO(全身脱毛サロン)、アコム、meiji 明治、DUSK!N(ダスキン)、コミックシーモア(NTTソルマーレ)+週替1社
『半沢直樹』に「みずほ銀行」や「三菱UFJ銀行」などがスポンサーだったら、視聴者が「銀行って土下座させるの?」みたいに見てしまう可能性があるから、銀行系のスポンサーはつかない。逆に銀行系のスポンサーがついていないから、土下座でも左遷でも自由に出来る。
また、『MIU404』には、前述のように、保険会社のスポンサーはついていないから、様々な事件や死因でドラマを創ることが出来る。その意味では、検死を扱ったドラマ『アンナチュラル』のスポンサーは、P&G、TOYOTA、森永乳業、KIRIN(キリンビール)で、こちらも保険会社はスポンサーでなかった。
また、面白い例だと、『私の家政夫ナギサさん』は主人公が製薬会社勤務のためか、小林製薬がスポンサーになっており、家事を扱うためスタッフに家事監修として「ダスキンメリーメイド事業部」が入っているため、ダスキンもスポンサーになっている。
薬剤師のイメージを悪くするような描写を許すはずが無い…
では、話を『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』に戻そう。ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』の主人公の職業でもあり、中心的に描かれ登場するのは薬剤師。
そして、薬剤師が資産のような調剤会社の「トップ4」の内の3社がスポンサーが、 処方箋の絶対的プロフェッショナルのイメージを悪くするような描写を許すはずが無い…とは思わないだろうか。
"最後の砦"を勘違いして、"薬剤師以外は間違っている"に!?
実際に、ドラマを見れば分かるが、特にヒロインのみどりは、本来は看護師がやるべき仕事にまで手を出し、医師の診断にも踏み込み、勝手に院内をうろつき、時には患者のプライベートに入り込み外出までして、患者を救う。
ドラマの公式サイトには、「“縁の下の力持ち(=アンサングヒーロー)” として患者のために奮闘する病院薬剤師たち」と書いてあると同時に、「患者にとっては “最後の砦(とりで)” ともいえる重要な存在です。決して脚光を浴びることはありません」とあるのに…
実際のドラマの病院には看護師が見当たらず、医師も薬剤師の指示にすぐに従ってしまい、“最後の砦” を勘違いして、「薬剤師以外は間違っている」と描写してしまっているのだ。
「ハケンの品格」には「テンプスタッフ」がCMスポンサー
これに似た例が、先日最終回を迎えた『ハケンの品格2020』にも言える。本作は、13年前の前作『ハケンの品格2007』にも、人材派遣会社「テンプスタッフ」がCMスポンサーになっている。
2007年と言えば、派遣業界で大きな出来事があった。製造業務への派遣期間が最長1年から3年に延長されたのだ。それによって、人材派遣会社があちこちに増え、派遣ブーム的なムーブメントまで起きた。だから、派遣社員が雇用先の正社員より活躍しても、多くの派遣社員の共感を呼べたのだ。
ただ、2020年ともなると、社会も会社も情勢は大きく変化し、「1人のスーパー派遣社員が手柄を根こそぎ持って行く」と言うのは現実的でなくなった。だから、予想よりも視聴率や話題性に乏しかったと言わざるを得ない。
全編が「院内薬剤師のプロモーション」に見えてしまう…
「薬剤師のドラマ」を作りたいから「調剤会社」のスポンサーを集めたのか、「調剤会社」が「薬剤師」のイメージや地位向上の目的で「薬剤師のドラマ」を作って欲しいと、広告代理店に願い出たのかは分からない。
しかし、第4話までを見た限りでは、今後も「薬剤師以外は間違っている」と言う描写は続くだろうし、そのために劇中に登場する病院は、「医療従事者が積極的に協力して患者管理にも問題がある設定」と「末期的な看護師不足に陥っており、病院内に多数の看護師の姿はない設定」を続けるとも思う。
こうなると、全編が「院内薬剤師のプロモーション」に見えてしまう。
益々医療従事者や病院を良く知る人の共感しづらいドラマに
ただ、フジテレビも考えているはずだ。劇中で “大活躍” するのは「病院内の薬学部」で働く「院内薬剤師」であり、「院外薬局」の薬剤師ではないと、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送基準に抵触しないと言うだろう。
更に、第3話から、所謂「町の薬局」と「院外薬局の薬剤師」も “活躍” するようになっているから、益々、薬剤師でない医療従事者たちや、病院のことを良く知る人たちからは共感しづらいドラマになる可能性は高いと思う。
あとがき
主演の石原さとみさんを始め、出演者の人たちは脚本通り、演技指導の下で一生懸命演じているし、コロナ禍での撮影はさぞ大変だと思います。だから、もっとスタッフは内容をきちんと精査して作って欲しいのです。
また、 私は、昨年10月に『「防災用の薬の備えは何日分?」を大学の薬学部長さんに聞いてみた』と言う投稿をしたくらいに、「薬剤師」と言う仕事に敬意を払っているので、あまり “薬剤師贔屓” になり過ぎないドラマを期待します。
2020年8月8日 19:30 追記
基本的に(結果的に原作と言わざるを得なくなった)小説や漫画と、映像化されたテレビや映画も比較しない立場ですが、この投稿後から、原作となっている漫画を読み始めました。かなりドラマと薬剤師の描写が異なることに驚いています。
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