連続テレビ小説「エール」 (第55回・2020/6/12) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『エール』(公式サイト)
第11週『家族のうた』の
『第55回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
浩二(佐久本宝)は、養蚕農家の畠山(マキタスポーツ)を再び訪ねる。畠山は浩二の資料がよく調べられていたと話し、素直な返事をしてくれる。一方、三郎(唐沢寿明)は、浩二(佐久本宝)に大事な話があると、二 人で話をする。そして、裕一(窪田正孝)は、三郎のためにハーモニカを聞かせようとするのだが…。その後、裕一と音(二階堂ふみ)は、久しぶりに権藤茂兵衛(風間杜夫)を訪ねるのだった。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
これまでの『エール』らしさを封印したアバンにグッと来た
・原案:林宏司 ・作:嶋田うれ葉 ・演出:松園武大(敬称略)
前回のラストシーンが、かなり深刻だったから、今回のアバンタイトルはどのような作戦で作り込むのかと思いきや。前回のラストシーンでの、三郎(唐沢寿明)の裕一(窪田正孝)への「おめえに 承諾してもらいてえことがあんだ」を2カットに分けた部分だけを使った。
更に前回では劇伴無しだったのに、今回は冒頭からリバーブ深めで低音を活かした静かなピアノソロの劇伴を付けて、そのまま『エール 第11週「家族のうた」(第55回)』のタイトル画だけインサートして、場面は、前回に登場した養蚕農家の畠山(マキタスポーツ)の家を再び訪れた浩二(佐久本宝)のシーンへ。
ここまで僅か40秒だが、これまでの『エール』らしさを封印した演出にグッと来てしまった。
浩二と畠山には「割を食うやつ」と言う共通点があったのか
浩二が、畠山に本音を吐露した。きっと、ここまで浩二の本音をストレートに表現したのは、本作で初めてだと思う。親や兄弟には言えないが、赤の他人だから素直に言えたのだろう。
畠山「どんな家族にも 割を食うやつはいる。
俺だって 虫なんか大嫌いなのに お蚕様と30年だぞ」
この畠山の台詞で、畠山と浩二の何らかの共通点があることが分かる。
浩二「役場入って うちみたいに潰れた商売人や
農家が大勢いることを知りました」
この浩二の台詞の直後に、浩二の言葉に反応する畠山の妻(柿丸美智恵)の1カットが入る。ここが、いい。何の才能もない浩二が、何でも良いから “見返すことが出来るもの” を探し続けた20余年の人生。
その中で、「喜多一」を失い、「古山家」と言う殻を飛び出して役場に勤めることで知った “世の中” が、自分が見返したかった “世の中” と違うことが再認識した浩二の気持ちを、畠山の妻が汲み取ったような感じ。
映像的には、畠山夫妻がどんな人物なのか前回と今回の2シーンしか描かれていないが、どうやら「割を食うやつ」と言う共通点があるようだ。
約4~5年のリンゴ収穫期には裕一と浩二の蟠りも解けて…
そして、畠山が「いっちょ やってみっか」と言う時に、畠山の妻はほんの少しだけ驚いた表情を見せる。きっと、一晩、夫婦で浩二が持って来た資料を読んで、考えたのだろう。そして、ほぼリンゴ栽培をやってみようと言う方向性には辿り着いてはいたが、まさか今日言うとは思わなかった。そんな表情だ。
でも、それが、浩二と畠山夫夫妻の “縁” を感じさせてくれる。いいシーンだと思う。そして、「営業」と言う仕事こそ、こう言う地道な、人と人のやり取りの積み重ねだと思う…のは、もう時代遅れだろうか。
そして、リンゴは苗木を植えてから実がなり始めるまでに約4~5年は掛かる。その頃の秋の収穫時期に、浩二と裕一の蟠りも無くなっていると信じたい…
「赤い噛み痕」、「赤い椿」、「白い湯気」で描いた秀逸な世界観
三郎の容体が急変した。折角、音(二階堂ふみ)が、裕一が三郎に聴かせるために買って来たハーモニカも、床に転がった。仕事先から飛んで帰って来た浩二。医師によれば、睡眠薬を飲ませたが、このまま息を引き取る可能性もあると…。
そんな中で、浩二が父親に病状を隠していたことを後悔する。裕一は、父が自分の命が長くないことは知っていたと告げて、「痛みが出るたんびにね…」と言いながら。寝ている父親の左腕の袖をめくって、父親の噛み痕を見せる。既に両親を亡くした私にとっては、涙が溢れて来るような展開だ。
裕一「こうやって 噛んで我慢してたんだって」
しかし、演出は冷静かつ丁寧だ。赤い噛み痕のアップのあとに、画面手前の上手(画面右)に、前回でも触れた「赤い椿の花」を入れ込んだが、この椿は葉っぱも含めて全く風で揺れていない。鮮やかな赤い花をつけているのに動かない。その奥の下手(画面左」には、まるで生き生きと生きているようなヤカンの白い湯気。
そして画面中央の奥に咳き込みながら痛みを堪えている三郎の回想シーンを挿入した。画面の手前で最も大きい椿が動かずに、画面奥の三郎が一番大きく動く。この気構えこそが、 赤い椿の花の花言葉である、「控えめな素晴らしさ」、「気取らない優美さ」、「謙虚な美徳」にやっと繋がったような気がする。
父・三郎も"割を食うやつ"だったのに浩二も気付いたと思う
きっと、浩二は分かったのではないだろうか。父親が、三男なのに長兄と次兄が相次いで亡くなったから「喜多一」を次ぐことになった “割を食うやつ” で、自分と同じだったことに。
浩二「バカだ… バカだ 父さん。
だったら… 文句の一つぐらい言えよ」
裕一「浩二…」
浩二「俺 だます気だったのかって怒れよ」
まさ「浩二!」
浩二「何 かっこつけてんだよ…」
そして、自分が「家」に縛られて “割を食うやつ” になったからこそ、自分の息子たちには自分の信じた道を歩んで欲しいとと願っていたことも。切ないシーンだ。
裕一と三郎の会話の回想シーンの編集が素晴らしい
裕一が、父親に何の恩返しも出来ていないと延々と悔やんでいると、3日も寝たままの三郎が突然に目を覚ます。三郎が、浩二と二人きりになる。
三郎「俺が死んだら… 喪主は おめえだ。
喜多一を継いだやつが この家の主だ 家長だ。
この家も土地も 全部 おめえが引き継げ。
ちゃんと承諾取ったから」
ここも編集が実に見事。本来なら「ちゃんと承諾取ったから」の直後に、その説明と根拠を提示する意味で、裕一と三郎の回想シーンを入れるのが一般的な編集だ。だが、この演出家は「全部 おめえが引き継げ」の直後に挿入した。そのことで、回想が承諾の証拠の映像でなくなり、長男と父親の大切な遺産相続の映像になった。
そして、裕一が「父さんの好きにして」と言ったことで、息子たちから愛され、信頼されて来た父親像が描かれた。
ドラマだから創ることが出来た理想の父と息子のやり取り
ここの編集だけでも見事なのに、この三郎と浩二の会話を縁側でハーモニカを片手に聞いている裕一から、再び、回想シーンに戻したのには驚いた。自分の死期が近いことを悟っているのに、いや、悟っていたからこそ、きちんと息子たちに感謝の気持ちを伝えた三郎。そこへ、裕一が吹く弱々しいハーモニカの音色が被さって来る。
ドラマだから創ることが出来た理想の父と息子のやり取りだが、そう言うのを映像で見せてくれるのがドラマ。「ナレ死」では決して描写できない “親子愛” だ。久し振りに、「人の死」を軽率に扱わない朝ドラを見られて満足だ。
茂兵衛の軽妙なオチが、何とも清々しい気持ちにさせた
終盤で、三郎の葬儀の後、裕一と音が久し振りに権藤茂兵衛(風間杜夫)を訪ねるシーンがあった。
茂兵衛「好きなことだけで飯食えるやつなんざ 一握りだ。
せいぜい気張って かみさんと子どもに
苦労かけるんでねえぞ」
と、茂兵衛が裕一と音に、夫婦茶碗を添えて “エール” を送った。夫婦茶碗なら大きさの違いがあるのに、茂兵衛が作った夫婦茶碗は “曲線” に拘った逸品だった…と言う軽妙なオチが、何とも清々しい気持ちにさせた。
あとがき
今回は、15分間全てが、登場人物たちの「人生讃歌」であり、登場人物同士や視聴者への「応援歌」だから、敢えて本作の「主題歌」は使わないと言う選択肢の演出もお見事。「週5回放送」になって、ここまで15分間を使い切ったのにも拍手を送りたいです。
松園武大氏の演出には不安がありましたが、この金曜日の演出を見て、だいぶ安心度が増しました。
また、脚本の嶋田うれ葉氏も、先日言ったように「シリーズ構成」と言う仕事を浴して来た嶋田氏だからこそ、本来なら、もっと番組開始当初に描写をしておくべきだった「裕一と浩二の確執」や「三郎と浩二の関係」が少ない中で、安易に「ナレ死」を選びませんでした。
そして「ないモノは無い」と踏ん切りをつけて、今の浩二の立場、今の裕一の心情、死期が迫っているのを知っている三郎の息子たちへの感謝の気持ちを徹底的に丁寧に描写することで、三郎の人生に一区切りをつけてくれました。秀逸な15分間、金曜日と言って良いと思います。
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【これまでの感想】
第1週『初めてのエール』
1 2 3 4 5 土
第2週『運命のかぐや姫』
6 7 8 9 10 土
第3週『いばらの道』
11 12 13 14 15 土
第4週『君はるか』
16 17 18 19 20 土
第5週『愛の協奏曲』
21 22 23 24 25 土
第6週『ふたりの決意』
26 27 28 29 30 土
第7週『夢の新婚生活』
31 32 33 34 35 土
第8週『紺碧(ぺき)の空』
36 37 38 39 40 土
第9週『東京恋物語』
41 42 43 44 45 土
第10週『響きあう夢』
46 47 48 49 50 土
第11週『家族のうた』
51 52 53 54
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