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「野ブタ。をプロデュース」特別編 (第8話・2020/6/6) 感想

「野ブタ。をプロデュース」特別編

日本テレビ・『野ブタ。をプロデュース』特別編特別編公式
PRODUCE 8『いじめの正体』の感想。
なお、原作の「野ブタ。をプロデュース」白岩 玄(河出書房新社)は未読で、ドラマも未見。
 私は本作を初見なので、ネタバレ等のコメントは無視させて頂きます。



修二(亀梨和也)と彰(山下智久)が信子(堀北真希)をプロデュース!修二は酔っ払いに絡まれたOLを助けるが誤解され、傷害事件の容疑で警察に事情聴取される。「信じてもらえない」恐怖を知った修二は、後日別のケンカを見てみぬ振りしてしまう。翌日ケンカの被害者がクラスメートだと判明し、修二は友人を見殺しにした冷たい人間として周囲から避けられ孤立してしまう。そんな中、信子への嫌がらせの真犯人が明らかになって…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---


原作:「野ブタ。をプロデュース」白岩 玄(河出書房新社)
脚本:木皿泉(過去作/すいか、富士ファミリーシリーズ、パンセ)
演出:岩本仁志(過去作/時をかける少女2016、崖っぷちホテル!) 第1,2,3,5,7
   佐久間紀佳(過去作/Missデビル、あなたの番です、トップナイフ) 第4,6
   北川敬一(過去作/あり得ない!、ろくでなしBLUES) 8
音楽:池頼広(過去作/相棒シリーズ
主題歌:修二と彰「青春アミーゴ」(ジャニーズ・エンタテイメント)

まえがき

(前回の感想にも書きましたが)この感想は最後まで見終えてから書く手法でなく、録画を見ながら気になったら一時停止して書いて、チャックしてから進めるスタイルで書いておりますので、読者の皆さんも「都度都度、先が分からない」つもりで読んで頂けると、感想の内容が分かりやすいと思います。そして、今回の感想は前回よりも(多分)長文です…

冒頭の中島健人さんと平野紫耀さんの内容紹介が良かった

いやぁ、流石、視聴者の気持ちを理解している日テレだ。冒頭、中1週間、放送が空いてしまったので、6/27から放送が決まった(嬉)『未満警察 ミッドナイトランナー』でダブル主演を務める中島健人さんと平野紫耀さんが、これまでの「ダイジェスト版」と「今回の見所」の紹介を行った。

まず「ダイジェスト版」は適度な放送尺で、「見所」もチラッと見せるだけ。お二人の先輩へのリスペクトを感じる丁寧な語り口調にも好感が持てましたし、内容もネタバレせずに、本当に良く出来ていた。

なぜ、こんなことまでわざわざ書くのかと言うと、金曜夜にNHKで再放送されている『アシガール』では、「赤ペン先生」なる、大いなる視聴者の邪魔者が登場し、本編の冒頭に「今回の見所」を、本編終了後に「次回の見所」を映像付きで全部ネタバレしてしまうのだ。これに怒りを苦慮している私だからこそ、日テレが如何に『野ブタ。をプロデュース』の視聴者を大切にしているのかが伝わって来るのだ。

深浦加奈子さんの声が聴けるとは思わなかった…

さて、冒頭は、いつも通りの修二(亀梨和也)の実家での、男3人所帯のやり取りから始まった、海外を転々とした仕事をしているキャリアウーマンである、修二の母・伸子(深浦加奈子)が声で登場。深浦加奈子さんと言えば数々のドラマの脇役として活躍されていたのに、このドラマの3年後に残念ながら他界された。

当時は、私も大きなショックを受けて『深浦加奈子さん死去:主任ナースと言えば深浦さんだったのに・・・』と言う投稿までしたほどだ。『野ブタ』のWikipediaによれば、既に深浦さんの体調が優れないため、設定を変更して出番を少なくした…とあった。声だけでも聴けて懐かしかった…

これまでと異なり、"演劇仕立ての演出" が目立つ…

では、本編の感想。もう、冒頭の演出から、これまでの第7話までと全く違う。クレジット・タイトルを見たら、本作初担当(第8話のみ)の北川敬一氏の演出だ。

まず、何が違うって、冒頭から “演劇仕立て” の演出が目立つ。例えば、修二の「2人の友達」として、彰(山下智久)が信子(堀北真希)が登場するが、暗い室内に、スモークを焚いて、スポットライトを当て、まるで舞台演出だ。

その直後、修二がベッドに寝転がっているところへ、修二の弟・浩二(中島裕翔)が茶化しに来るシーンでも、突然周囲が暗くなって、修二だけにスポットライトが当たる。

こんなことは普通なら現実にはあり得ないが、前述の彰と信子があっての修二だから違和感はないし、このシーンに直結するのが、前回での最大の見所だった「夜の公園のダイジェスト版」で、回想シーンから現実に戻る繋ぎ目も、スポットライトが薄く消えて部屋の明かりが元に戻ると言う演出が選択された。

このことで、前回の感想にも書いたが、この夜の公園の回想シーンは、 修二自分自身が作り上げて来た学校における「桐谷修二」ブランドが、彰と信子と別れ、プロデュースも止めたことで、「新生・桐谷修二」ブランドになるのか、元に戻るのか苦悩しつつも、脱皮をしようとしている “蛹(さなぎ)” らしさが強調された。

ほら、“蛹” で身体が何かに包み込まれていて、枝から寂しそうにぶら下がっているように見える。正に、ベッドに横たわる修二が、脱皮直前の “蛹” に見せる照明演出だと思う。実際に、修二も両腕で上半身を包み込むし、布団に頭から包まるから、ほぼ解釈は間違っていないはずだ。

そして、更に深読みすれば、修二と浩二の間にあるワイヤーネットで、修二の寝床が何処となく「虫かご」や「鳥かご」にも見えてくる…と、思わないだろうか。

今まで以上に丁寧且つ繊細に描こうと言う演出意図が伝わる

3分過ぎ(番組冒頭からの時間が基準)に、今度は大体に教室内で演劇仕立ての照明演出があった。一瞬だが、修二を避けて席に着いた信子と、教室の入り口に立つ修二だけにスポットライト。そこから、今度は映像演出らしいスローモーション。修二がモノローグから台詞に代わった瞬間に、スローモーションから通常撮影。

ホント、今回はこれまでと演出が違い過ぎて、全く先の展開が読めないし、シーンとシーンの繋がりも、分かり難いと言うよりシュールな構成になっており、ここまで見ただけで、修二の苦悩と信子の変化と成長が、今まで以上に丁寧、且つ繊細に描こうと言う演出意図が伝わって来る。早く、彰への演出も見たいものだ。

修二をどことなく睨みつけるような信子の表情が印象的…

なんだろ? 脚本家は同じなのに、ちょっと別のドラマを見ている感覚だ。例えば、信子が「まり子さんは… あの日… 誰かに慰めてもらえたのかな?」と修二に問うて、僅か1秒前後の泣くまり子(戸田恵梨香)の回想を挟んで、信子が修二にこんなことまで言う(ようになった)。

信子「できれば… 1人残らず幸せになってほしい」
修二「いや… そりゃ無理だろ」

夢を語った信子、その夢を簡単に否定した修二。修二をどことなく睨みつけるような信子の表情が印象的だ。どうなんだろう? そもそも信子がいじめられていたのは、“人との接し方の不器用さ” が原因だったのが、修二と彰のプロデュースによって、不器用さの奥にある “心の優しさ” が表に表れて来た瞬間ではないだろうか?

そして、逆に修二は、自分が構築して来た「桐谷修二」ブランドの奥にあるのは “単純な幼稚さ” に見えた瞬間でもある。このシーン、予想でしかないが、今後の展開を予想出来る、実は重要な場面だと思う。

信用を無くした修二と、屋上から落ちるくす玉が重なって…

更に、前述のシーンの直後の「3人による再結成」の夕景の校舎の屋上のシーンも、いつもなら外の風景をぐるりと見せるカット割りなのに、くす玉を割るシーンでは、下手(画面左)に大きく壁を、上手(画面右)には水槽タンクを、画面中央にもいろいろあって遠くの風景が見えづらい画角になっている。

そう、冒頭の修二の部屋が「虫かご」や「鳥かご」に見えるように撮影されたのを、ここでも利用している。再結成して、くす玉まで用意して、明るい前進のはずなのに、なぜか「3人は、かごの中」と言う演出だ。そして、そのくす玉が不発に終わって、くす玉は大きくジャンプして、屋上から校庭に落っこちて行く…

修二(M)「思えば、この時の くす玉は
     これから後の 俺のようだった
     落ちて行く俺を
     誰も止めることは できなかった」

この↑修二のモノローグが実に切ないし、この先の展開の怖さを滲み出させている。だって、この↑修二のモノローグがなければ、普通なら、「修二=くす玉」は「鳥かご」から飛び出して、自由に何処へでも飛んで行ける…と、解釈する。

しかし、このくす玉は一度天高く上がるが、一気に下へ “落ちる”。まるで、この先の修二、いや「桐谷修二ブランド」が地に “堕ちる” のを案じるかのように。

約7分間のアバンタイトルには、十分な見応えがあった

そして、このシーンは、3人が楽しそうにジャンケンをする映像のコマ落ち効果で再結成が多難な三日なることを暗示させた上で、次の修二のモノローグで締め括られた。

修二(M)「俺自身 何もできずに 落ちて行った…」

ここまで、約7分間のアバンタイトル。前回から第2章のようにリスタートした「新たな3人の関係の物語」のプロローグとしては十分な見応えがあった。

町内会会長とデルフィーヌの"大人からの人生訓"も良かった

メインタイトル明けは、意外な展開に。修二が酔っ払いに絡まれたOLを助けるが誤解され、傷害事件の容疑で警察に事情聴取される。殴っていないことを警察に信じて貰えないで悩む修二に、交番の中にたまたま居合わせた町内会の会長と名乗る男が、関西弁でこう話し掛ける。

会長「世の中っちゅうもんはなぁ
   ホンマかどうかなんて どうでもええんや。
   信じてもらえる男か
   信じてもらえへん男か そのどっちかや。
   それからなぁ にいちゃん
   どん底に落ちても 人生終わりとちゃうど!?
   落ちても 人生続くど!
   人生は なかなか終わってくれんどおぉ!」

その後の、今度は、ちょっと能天気なゴーヨク堂店主・デルフィーヌ(忌野清志郎)の含蓄のある一言も組み合わせて、学園ドラマとは思えない「人生訓」が描かれた。この町内会会長の言葉が、今後の修二の運命を暗示しているに違いない。いや、そうに決まってる。だって、そう書かれているのだから。

「それゆけ! 小谷突撃飯!!」の活かし方が絶妙過ぎる!

12分頃、いよいよドラマが大きく動き出す。

先日の濡れ衣疑惑で、警察に「信じてもらえない」恐怖を味わった修二は、後日、別のケンカを見て見ぬ振りして、その画から逃げてしまう。ここからの展開と構成、メリハリが実に見事。本当は信子を自分のものだけにしたい彰の複雑な心情を描いた後で、明るく「それゆけ! 小谷突撃飯!!」と言う昼食時間に放送する校内テレビ生中継企画が始まる。

信子の素直な味への反応が面白くて企画も信子も人気が上がって行く。その一方で、修二は必死に従来の「桐谷修二」を演じるも、ケンカを見て見ぬ振りした自分に嫌悪感を抱いたのか、恥じているのか、まり子と敢えて一緒にランチをしない。

一人でお弁当を食べるまり子のもとへ、修二を探しに来た彰が、まり子が修二のために作って来たお弁当を食べてもいいよと差し出し、二人が向かい合ってお弁当を食べているところに「それゆけ! 小谷突撃飯!!」がやって来て、修二が、まり子とのことをクラスメイトたちにウソをついていたことがバレてしまう。

ここまで、サクッと約3分間で、「桐谷修二ブランド」に一気に傷がつく。いや、地に落ちる一歩手前だ。

健太の思い違いから下校までの演出と演技が。実に秀逸…

ドラマは、更に畳み掛ける。先日、修二が見て見ぬ振りしたケンカの被害者が、なんと吉田浩(石井智也)と修二と同じグループにいる谷口健太(大東俊介(現・大東駿介))、通称「タニ」だった。健太は、ケンカの真っ最中に修二と目が合ったと主張するが、修二は顔は見えなかったと主張する。

修二「もしかして あの時のケンカ お前だったの?」
健太「ひでぇよな。
   友達がやられてるのに 見て見ぬフリだもんな」
修二「いや 違うって!
   ホントに気付かなかったんだって」
健太「ありえないって こっち見てたし」
修二「いや… ホント 顔とか全然見えなくてさ」
健太「お前 ホント 口うめぇからさ!
   そうやって 何とか 俺をごまかそうと
   思ってるかも しんねえけどさ!
   お前って そういう奴だったんだよな…!」

男子トイレで、この2人のやり取りを聞いていたクラスメイトがいた。トイレを出ても「信じて!」と修二は健太の後を追いかけるが、健太は修二を無視する。

渡り廊下での、再びコマ落としで修二を描写する1秒に満たないカットで、あっと言う間に「修二 見てたのに 助けなかった」と事実が湾曲されて、校内に「虚像の桐谷修二」が蔓延してしまうのを描いたのはお見事。

そして、遂に吉田にも信じてもらえなくなった修二。下校時には、自転車置き場で彰と信子が「一緒に帰ろう」と持ち掛けるが、一瞬だけ3人の目が合うが、修二はスローモーションで2人とは別に帰って行く。この時の、修二の背中を見ているだけの、山下智久さんと堀北真希さんの無言の表情の演技が実に秀逸だった。

まり子と修二の "心の距離感の見せ方"に注目してみた

次の日も、修二の濡れ衣は晴れぬままで、修二は1人校舎の外階段で、パックのコーヒー牛乳とメロンパンを食べている。そこへ階上から、女子高生の足だけが映り込む。足は一度階上で立ち止まり、カメラが引きの画になると、その足の主が「まり子」らしいと見えて来る。画面手前に、あの青色のお弁当包みが見える。

暫くカメラは引いたままで、まり子と修二の距離は、「1階の半分」の2メートルも無いのに、引きの画によって、心の距離の遠さが的確に表現されている。まり子が階段にそっとお弁当を置いたところで、やっと、まり子のバストアップ(胸から上が映る)にカットチェンジして、すぐにフレームアウト。

カットは、青色のお弁当包み越しの修二に切り替わって、まり子の気配を感じた修二へ。ここの、無言のやり取りと心の距離感の描写も上手いと思う。だって、事の発端は、まり子が修二のために作ったお弁当でもあるのだから…

今は信子より修二を心配する彰を、言葉少ない表情で魅せた!

このあとの、屋上で、3人が集まって、修二が彰と信子に「今後一切 話し掛けんじゃねえぞ」と切り出す一連のシーンも良かった。

複雑な心境の修二を演じる亀梨和也さんも良いが、今回はいつもより台詞が少ない彰を演じる山下智久さんが、実は修二以上に複雑な心境にいる彰が、今は信子との関係よりも、修二のことを優先して心配している、言葉少ない表情だけの演技が秀逸だ。

逃げるかすみ、追い掛ける修二の、チェイスの描写はスリルがあった

修二が、公園で鳥たちに向かって石を投げている姿を、木の陰からそっと動画撮影している女子高生。それに気づいた修二が女子高生を追い掛ける。ここで、注目するカメラアングルのカットがあった。上手(画面右)に塀、下手(画面左)に住宅街、奥に走って逃げる女子高生、手前に追い掛ける修二。

普通なら、このままカメラは前進(2人を追い掛ける)するのに、ここではカメラが後退(バック)する。この1カットが入るだけで、まず2人の走る速度の速さが表現される。

そして、今度のカットで追いつくかと思わせて、カメラは2人の顔が認識できない位の超ロングショットになって追いついて、寄りの2ショットになって、逃げた女子高生が、あの蒼井かすみ(柊瑠美)と分かる。ここのチェイスの描写はスリルがあって良かった。

「プロデュース」と言う聞こえの良い単語も受け取る人によって…

そして、遂に、信子への全ての嫌がらせ行為の首謀者が、かすみだと分かってしまう。「修二の成長記録」を残すと言う意味不明な意図で、修二のプライベートを盗撮し続けていたことも判明してしまう。ここからの展開が実に怖ろしい。

かすみ「何で こんなことするんだって聞きたいわけ?
    それは 桐谷君が 小谷さんをプロデュースする理由と
    多分 一緒だと思うよ。
    陰に隠れて 全然関係ありませんって顔してさ。
    自分の力で人を変えて行くのって 面白いよね。ねっ」

修二が信子をプロデュースすることが、かすみの目には、「陰で人を支配する」と言うように見えていたと言うことか。これ、最近の匿名性を武器にして相手を苦しめるSNSの存在にも通じるし、古くは「いじめの構造」そのものでもある。

「プロデュース」と言う一見聞こえの良い単語だが、受け取る人によっては、「コントロール」や「制御」や「支配」や「陰で暗躍」などの、マイナスのイメージにも受け取られてしまうと言う、様々な価値観が存在する現実の恐怖を、たった1回の盗撮写真で描いてしまう、このドラマの本質の深さに恐れ入った。

全てのエピソードが、「ブタ」に纏わる脚本の仕掛けが素晴らしい

第6話の感想で、信子が作ったピンク色のブタのマスコットが大ヒットする話の時に、こんなことを書いた。

「ピンク色のブタさんグッズ」について調べてみると、ブタはヨーロッパでは「幸せのシンボル」とされており、 風水では「平和のシンボル」とされている。また、カラーコーディネートの観点からは、ピンクは「愛情や優しさを与えてくれる色」とされているから、これらを私が勝手に合体させると、「ピンク色のブタさんグッズ」は “女性同士のトラブルを解決してくれる力がある” と言う意味になる…のではないかと。

そして、あの時、信子は、かすみに特別なピンクのブタさんを作った。その、かすみが実は嫌がらせの犯人だったと言う日皮肉。更に、今回の中盤での桐谷家で、またブタさんグッズが登場し、「小さなブタが幸運を運んで来る」と言う修二の父・悟(宇梶剛士)の台詞もあった。

そして、今度のブタさんは「友情の証」と言う役割が与えられた。全てのエピソードが、「ブタ」に纏わると言う脚本の仕掛けが素晴らしい…

「2ショット写真」を見て崩れ落ちる彰の心情を指先だけで演じた!

もう、この辺から、怒涛の展開が続いて、1シーン毎に感想を綴っている暇がない。とにかく、書き残しておきたいのが、例の「夜の公園での修二と信子の隠し撮り写真」が、遂に彰の手に渡ってしまうシーンだ。

鉄道の高架下を歩く彰を、かなり引いた画で捉えている。写真を見て驚く彰の顔のアップもなく、足元から崩れ落ちる演技で、山下智久さんが彰の複雑な心情を魅せる。地面に胡坐をかいても顔のアップは無くて、写真と彰の指先のアップが先。

人差し指で信子をさする動作だけで十分に友情と恋愛の狭間でもがく彰が表現されているのは素晴らしい。その直後に彰のバストアップって、やっと彰の表情が見えるが、もうこの演技だけで十分過ぎる。今回は、あまり出番が少ないだけに、このソロのシーンは見応えがあった。

第6話のコインと今回のマジックは、明らかに重なっている!

毎回、“キャサリン” こと佐田杳子(夏木マリ)の登場シーンは、本編に無関係のようで、とても本作の核心に迫るシーンにもなっているし、終盤への展開の良い分岐点にもなっている。今回も、冒頭の演劇仕立ての演出で始まった、佐田教頭のシーン。なぜか吸血鬼の恰好をしているが、突然、信子にこんな話を始めた。

杳子「吸血鬼ってさ ホントにいるのかしらね」
信子「いないと… 思います」
杳子「いるわけないっか。
   でもさ 地球上に1人でも信じる人がいれば
   吸血鬼は… フフ いるような気がする。フフフ。
   本当だから 信じるんじゃなくて
   信じるから 本当になるっていうの 分かる?
   誰も信じなくなった その日
   吸血鬼は本当に
   この世から 消えてしまうんじゃないかしら?」

杳子が、ボールが消えるマジックを信子に見せて、答えさせる。悩む信子。

杳子「信じたほうを いえばいいのよ~。
   本当のことなんて 誰も分かんないの!
   だったら 信じたいほうを選ぶしかないでしょ?」

これ、第6話で、杳子がコインの裏表のエピソードに、ちゃんと繋がっているのがお分かりだろうか。

あの時の感想に私はこう書いた。どこかで聞いたコインの話。人生には「どっちにしようかな?」と選択に迷う時がある。そんな時にするのが「コイントス」。コインの表と裏のどっちが出るかで決めるってやつだ。しかし、このコイントス。

本当はこうやるのだ。例えば「表がA」で「裏がB」として、コイントスをする。そして「決める瞬間」は「コインを手に伏す時」ではなくて、コインを上に投げて、何気に「○が来い!」と願う方が、今の自分が本当にやりたいことってわけ。

ねっ? 結局、第6話も、この第8話も、杳子は「信じたい(選びたい)方が、自分にとっての真実(本当の気持ち)だ」と言っているのだ。ここ、第7話を挟んで、 コインとマジックとネタは違うが、明らかに重ねて来ている。きっと、ここが脚本家の言いたい部分に確実に隣接していると思う。

教頭のどっちの手にボールがあるのかと、回想シーンの編集の妙

そして、このマジックのシーンでも演出は秀逸だ。赤いボールが右手なのか左手なのか悩む信子のカットに、校庭で修二とかすみが信子を挟んで立つ回想シーンを一瞬だが挟み込んだ。実は、ちょっと不思議に思っていたのだ。なぜ、あの時、信子は寂しそうに下校する修二のあとを追い掛けなかったのかって。

かすみの圧力に引っ張られて動けないのかなぁと。そんな感じに見えたのだ。そして、今回、その読みがほぼ当たっていたように思う。本当は、信子は杳子の向かって左手を選んだように、あの校庭の時も画面向かって下手(画面左)を選びたかったのではないのか…と。当たりのボールを持った時の、嬉しさと後悔と希望が見えた信子の表情も印象的だった。

この時代の「俳優・山下智久」の子どもっぽい演技が、やがて…

「夜の公園での修二と信子の隠し撮り写真」を大切に家に持って買ってからの、“おいちゃん” こと平山一平(高橋克実)と彰のやり取りは感動的だった。山下智久さんの向かって右側の横顔のカットから始まるシーンは、だいたい「俳優・山下智久」の真骨頂が楽しめる場面だ。

今回も、「今見たくないものは、糠床に埋めちまって、何十年かして掘り出したら、笑って見れる」と言う、糠床と言う生活臭のあるものと、メルヘンチックなエピソードを巧みに混ぜ合わせた、彰のよい指南役らしい話を作って、それを信じて彰は写真を糠床に埋める。結局、ここも彰は「信じたいほうを選ぶしかない」のだ。

そして、糠床の匂いを嗅いで「クサイ」と言って糠床に手を合わせる彰が、敢えて子供っぽい仕草をすることで、現実から逃げたいと言う心情が見事に描かれた。やはり、この時代の「俳優・山下智久」の子どもっぽい演技は、のちに『アルジャーノンに花束を』に於ける “咲ちゃん” の名演技に繋がって行くのだと思う。

「魔法使いの紐結び」で"3人のかけがえのない友情"を描いた!

さて、このまま修二は孤独のまま、第8話は終わってしまうのかと思いきや、私の想像を遥かに超えたドラマチックなシーンが用意されていた。クラスメイトたちは、相変わらず修二を無視しており、一人寂しく帰ろうとする修二の手を信子が引き留める。

音を立てて椅子から立ち上がる彰。教壇の前に3人が集まると、教室は静まり返る。呼び止める。信子がそれぞれにロープを渡して結ばせる。3本のロープを1つに束ねた信子が、束ねたままの3本のロープを修二の手の中へ返す。

信子「信じれば どんなことも解決できる。
   一緒に 信じてください。ノブタパワー注入」
彰「注入」

日本語では「魔法使いの紐結び」、英語では「リンキング ブレンドロープ(Linking Blend Rope)」と言う、3本のロープが1つに繋がると言う古典的なマジックだ。だが、全く違和感も不自然さもない。むしろ、このシーンのために開発されたマジックのようだ。マジック繋がりでここまで持って来る脚本家の才能が素晴らしい。

単純だけに複雑に見えるし、複雑なように見えて単純な仕掛けで、3人のかけがえのない友情をサラリと描いたのはお見事だ。

あとがき

ラストの、夕景の校舎の屋上、「草野彰」と書かれ封印された「あの写真」が埋めてある糠床が入っている蓋付半胴かめ陶器、素焼きのチリ土産の幸せの3本足の豚さん3つへのカットチェンジも素晴らしかったです。現実の登場人物が存在しないラストカットなんて、テレビドラマとして斬新ですね。

そして、ラストカットからの「♪青春アミーゴ」の晴れ晴れとしたメリハリある展開まで、全部良かったです。

また、今回は、修二の人生観の変化を描く大事な放送回だったので、彰の出番が少なめでしたが、その中でも、「俳優・山下智久」でしか演じられない見せ場は、きっちりと演じ切ってくれましたし、「俳優・亀梨和也」も複雑な心理状態の修二を熱演したと思いますし、徐々に心を開放していく信子を演じる堀北真希さんも良かったです。本当に、見応えのある作品だと思います。

そして、チリ土産の「幸せの3本足の豚さん」について少し調べました。その昔、父親が病気で困っている貧しい牧場一家がいて、遂に食べ物が無くなったその夜に、家で大事に飼っている豚が父親の夢に出て来て「僕の足を食べれば元気になります」と言ったそう。


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父はお告げ通りに、大切な豚の足を1本切って家族で食べたら、病気が治って仕事に行けるようになった。そこで家族は豚の恩を忘れないために、粘土で3本足の豚を作ったら幸せになった…と言うことで、それ以来、3本足の豚は幸運や愛情を運んで来るお守りとなったそうです。

最後に、前回の感想に、171回ものWeb拍手を頂き(この感想の投稿時点で)、ありがとうございました。今朝も気合を入れて、朝6時過ぎから録画を見始めたのですが、書きたいこと、お伝えしたいことがあり過ぎて、感想を書き終えるのに、また7時間近く要してしまいました。

でも、読者の皆さんの応援は大きな励みにっており、長時間も苦になりません。本当にありがとうございます。先週は妻から「掃除が出来ない!」と苦情が入りましたが、今週は「そんなにたくさんの人が読んでくれるなら、終わったら声をかけて」と言ってくれるようになりました。

そうそう、先週も書きましたが『野ブタ。をプロデュース』のサントラ盤を欲しくて探したら、Amazonで中古盤が売っていたので買いまして、今我が家でヘビロテしてます。DVD-BOXも購入予定ですが、今買ってしまうと全部一気に見てしまいそうなので、「お気に入り」に入れて、特別編を最終回まで見て感想を書き終えてから、買い物カゴにいれます。と言うわけで、引き続きネタバレはご遠慮下さいませ。

山下智久さんのファンの皆さんへ

ご訪問、ありがとうございます。本放送当時、読者の皆さんからたくさんの応援を頂いた山下智久さん主演の『アルジャーノンに花束を』と『インハンド』の全話の感想もあります。最終回の感想文に全話の感想のリンクがあります。
アルジャーノンに花束を:Web拍手への御礼と最終回の新たな感想
インハンド(第11話/最終回・2019/6/21) 感想



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「野ブタ。をプロデュース」特別編 第8話

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★職業:宴会/映像ディレクター(フリーランス)

★略歴:東京下町生まれ千葉県在住。ホテル音響照明映像オペレータ会社を経て、2001年独立。ホテルでイベント、パーティー、映像コンテンツ等の演出を手掛ける。活動拠点は都内と舞浜の有名ホテル等。

★ブログについて:フリーの宴席/映像ディレクターが、テレビ,映画,CM,ディズニー,音楽,仕事等を綴ります。記事により毒を吐きますのでご勘弁を。

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