「逃げるは恥だが役に立つ」ムズキュン特別編 [再放送] (第2話・2020/5/26) 感想

TBSテレビ・『逃げるは恥だが役に立つ』ムズキュン特別編 [再放送](公式)
第2話『たかが匂い、されど匂い…』の感想。
専業主婦として “就職" した森山みくり (新垣結衣)は雇用主である夫・津崎平匡 (星野源) との “契約結婚" が周囲にバレないように注意を払っていた。しかし突然の結婚宣言に不信感を抱いていたみくりの伯母の土屋百合 (石田ゆり子) を説得するため、みくりと平匡はみくりの父 (宇梶剛士)、母 (富田靖子) や津崎の父 (モロ師岡)、母(高橋ひとみ) らを集め、両家の顔合わせが嵐が巻き起こる!
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:海野つなみ「逃げるは恥だが役に立つ」(講談社「kiss])
脚本:野木亜紀子(過去作/重版出来!、アンナチュラル、コタキ兄弟と四苦八苦)
演出:金子文紀(過去作/G線上のあなたと私、恋つづ) 第1,2,6,7,9,最終話
土井裕泰(過去作/重版出来!、カルテット、凪のお暇) 第3,4話
石井康晴(過去作/花より男子シリーズ、花のち晴れ、テレウスの船) 第5,8,10話
音楽:末廣健一郎、MAYUKO
オープニングテーマ:チャラン・ポ・ランタン「進め、たまに逃げても」
主題歌:星野源「恋」
台詞に作品名を入れるドラマでは、ダントツの秀逸さ!
数え切れないほど見ている本作だが、引っ掛かったり気になったりしたことを書こうと思う。
で、やはり、全てのドラマ…とは言わないが、ドラマのタイトルを登場人物の台詞に盛り込んで、タイトルの意味を視聴者に伝えるシーンは数々あれど、本作の “そのシーン” はいつ見ても「上手く入れ込んだなぁ」と感心する。それが、みくり(垣新結衣)と平匡(星野源)が両家顔合わせを終えて、橋の上で話し合うシーンだ。
平 匡「ハンガリーに こういう ことわざがあります
『逃げるのは恥 だけど役に立つ』
みくり「役に立つ?」
平 匡「後ろ向きな選択だって いいじゃないか
恥ずかしい逃げ方だったとしても
生き抜くことの方が大切で
その点においては 異論も反論も認めない」
みくり「逃げるのは恥だけど 役に立つ」
平 匡「はい」
みくり「そうですね 逃げても生き抜きましょう」
これ、まず脚本として秀逸なのは、台詞の中に「逃げるは恥だが役に立つ」と言うタイトルそのものを入れていないこと。だって、上↑のみくりの台詞の直後に、平匡に「そう 逃げるは恥だが役に立つ…です」と言わせることだって可能なのに、意図的にタイトルを直接言わせるのを避けている。
このことで視聴者は、ちょっと焦らされると共に「なるほどね」と感心しちゃう。この番組のタイトルを “感心しちゃう” と言う感情が、平匡の説明に「そうですね」と “感心しちゃった” みくりと同じ感情。だから、視聴者は自然に、みくりに同調するし共感もしちゃう。
今だから「生き抜くことの方が大切」重みと温かさが響く…
まあ、ここまでは、本放送時に気付いてことなのだが、今回の特別編、と言うか、2020年5月26日の夜に見て、改めて感じたのは、平匡の「恥ずかしい逃げ方だったとしても 生き抜くことの方が大切」と言う言葉の重みと温かさ。
具体的には避けるが、数日前から報道されている若い女性の残念な死にしても、新型コロナの影響でまだ先が見えずにどうするか悩んでいる人も(私を含めて)、やはり「生き抜くことの方が大切」と言う、辛いし、きついけど、“生き抜く” ことが大切と言うメッセージは、今だから余計に心に響いた。
平匡が契約結婚に雇用期限を設けなかった理由を考えてみた
このやり取りのあとに、橋の上を歩く二人のカットに、みくりのこんなモノローグが被さって来る。
みくり(M)「私達は夫婦でも恋人でも友達ですらない
雇用主と 従業員の関係なのだ」
ここ、初めて、ちょっと引っ掛かった。なぜ平匡は、みくりとの “契約結婚” に雇用期限(期間)を設けなかったのか? って。 派遣社員のように「1年毎の更新」などの雇用期間条件を出しても良さそうなのに。
だって、平匡は第1話で、みくりを雇う際に2か月の期限を設けたし、気に入らなければ、いつでも採用を取り消せるように前払い制を導入していた位に慎重な男なのだから。例えば、平匡が、第2話の冒頭で提出する契約書に「1年毎の更新」と提示があったら、それも面白かったかなって。
ただ、逆に、平匡とみくりは頭のいい二人だから、雇用期間の要項がないのには気付いているけど、平匡は敢えて書かず、みくりも敢えて触れないことで、既に二人は普通の「雇用主と従業員」ではないと感じ始めている…とも受け取れる。また、恋愛ドラマとしての広がりやその楽しさを描こうとした可能性はある。
もちろん、冒頭付近で「その他 必用な項目は その都度 話し合って決めていきましょう」と平匡が言っているから、「その都度=雇用期限を設けない」と、素直に受け取るのが正しいのかも知れないが。
カメラが壁を跨いじゃうカットに込められた作り手の思い…
私が、第2話の中で映像的に好きなのが、夜、二人が寝入るシーンのカメラワークと編集。ここは何度見ても、スタジオセットでの撮影でしか作れない名演出の一つだと思う。
それはこんな場面から始まる。みくりと平匡が、“私達は夫婦でも恋人でも友達ですらない独身の男女” が、壁一枚を隔てた部屋に別々で寝ていることへの、違和感のなさをコミカル且つシリアスに個々がつぶやき、終わる。
するとカメラは突然、下手(画面左)にベッドに寝ている平匡を俯瞰(真上から)で撮影して、上手(画面右)半分は真っ暗がカット頭(最初)で、その後、カメラは上手にゆっくり動いていき、隣の部屋で布団で寝ているみくりを俯瞰で捉えるのがカット尻(終わり)。
カメラが壁を通り抜けてしまっていると言うか、カメラの視点が天井裏から二人の生活を覗き見しているようなカットになっている。実際は、壁の上の面を美術さんが撮影用に作り込んでいると言う手の込みよう…
もちろん、普通のスタジオセットは撮影する必要が無ければ天井は作らないのが大前提だが、そのことを利用してスタジオセット撮影ならではのアングルで、実は二人が相手に感じていることは “一緒” であることを、この1カットで描いている。こう言う、ひと手間を手抜きしないから、おもしろいドラマが出来ると思う。
沼田と風見がやって来る場面は、1.5倍速再生で楽しさ倍増
実は、第2話には、私なりの楽しみ方で楽しんでいる、好きなシーンがある。それが、沼田(古田新太)と風見(大谷亮平)が平匡の家に来るシーン。急遽、日野(藤井隆)が来れなくなって、代わりに沼田が来る事になって、平匡が慌て始めるところから、「1.5倍速再生」で観る…と言う楽しみ方。
何をするか、どうなるのか全部分かっているから、1.5倍速で慌てる平匡とみくりを観るのが楽しくて。もしも、やったことがなければ、やって見て欲しい。沼田と津崎が息を切らせて平匡のマンションのドア前に立つのも、とても楽しく見えるから。その後は、通常速度でOK。
脚本と演出と演技が、完璧にシンクロした絶妙なシーン!
沼田と風見が帰った後、夕食を済ませた平匡とみくりは、元のようにそれぞれの寝床に戻って言うモノローグのシーンは、何度見てもムズキュンしてしまう。脚本の構成も、演出による編集も秀逸過ぎる。少々長くなるし、専門用語も飛び出すが、出来るだけ分かり易く解説するので、最後まで読んで頂きたい…
まず、二人は元々は別々に寝ているはずなのだから、二人が布団に入っている状態で、個々のシーンを描いても良いのに、それをここでもやると少し前の、沼田と風見が居た時のシーンと似てしまう。だから、それを避けたのは賢明な判断。そして、既視感を排除した上で新鮮味を加えるために映像処理を工夫した。
まず、みくりの心理描写は、時間軸を巻き戻して、「昨日の夜」のみくりのモノローグで始まる回想シーンにした。その時も「昨日の夜」のモノローグの直前に、CG処理で、ちょっと夢の世界観を感じさせるような色とりどりのレンズフレア(明るい光源がレンズに入って来たり、強い光が暗部へ漏れる現象)効果を使ったトラディション(画面の切り替え効果)を使って、恋バナ感をプラス。
そして、“一緒に寝ている感” を出すために、みくりの隣りにフェードイン効果で寝ている平匡を重ねて、今度は寝ているみくりをフェードアウト効果で消して、平匡の「甘い香り」のモノローグの直前で、時間軸を現在に戻すと言う高等テク。でも、ちょっと分かり難さもあるから、ここは丁寧に「ゆうべ」と言う単語を加えてフォロー。
このあとも、本来ならさっきのように、寝ているみくりをフェードイン効果で合成しても良いのだけれど、このシーンが、第2話の主題歌が流れる重要なだからインパクトを与えるために、平匡の目には、真横でみくりが寝ているような錯覚に陥っていると言うお茶目さと醸し出すために、真横で平匡の見つめているみくりを、短いカットバック(カットを交互に切り替えること)で繋ぐ。
更にそのカットバックの速度を主題歌『恋』のイントロのドラムのスネアのテンポに合わせると言うスゴ技。そして、最後は、前述した「私が第2話で映像的な好きなカット」で紹介した、壁を飛び越えて天井裏から見ているカットのカメラの動きの逆バージョン。本当、脚本と演出と演技が、ここまで完璧にシンクロしたドラマは数少ないと思う。
あとがき
今回の、最後のクレジットタイトルの「恋ダンス」の中に、テレワーク的に、現在の新垣結衣さんと星野源さんが、別々に撮影されたダンス映像がインサートされていましたね。こう言うファンサービスは嬉しいですね。
そして、次回の第3話は私が大好きな観光地、山梨県の勝沼町が舞台です。みんなで叫ぶシーンのロケ地、山梨県笛吹市八代町岡にある八代ふるさと公園にも、放送後に行きました。そして、この秋にはワインを楽しみに旅行に行く予定なのですが、行けるかどうか…。それだけに、次回は山梨を満喫しま~す。
そして、ドラマの感想ではないですが、あの顔合わせ会のロケ地は、東京・早稲田にあるリーガロイヤルホテル東京で、未だ宴会場が動いておらず、今年も8月にある医学学会の仕事があるはずだったのに、新型コロナの影響で開催が危ぶまれており、また仕事が一つ減りそうです。ホテルの宴会場が平常運転になるまで、自粛&主夫します…
ただ、第3話以降も感想を書くかは未定です。書きたくなったら書きます。何せ、本放送時の感想で、いつものような演出解説はやり尽しておりますので、そちらを読みたい方は、下記のリンクを参考にして下さい。感想以外の『逃げ恥』関連の全ての情報のリンクが掲載されております。演出のちょっとした勉強にもなると思います。
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【ムズキュン特別編 [再放送]の、これまでの感想】
第1話
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