連続テレビ小説「エール」 (第6回・2020/4/6) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『エール』(公式サイト)
第2週『運命のかぐや姫』の
『第6回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
家が貧しく昼間も学校に行かず家業を手伝っている鉄男(込江大牙)は、学校もやめるという噂。鉄男が父親からひどく叱られているのを目撃した裕一(石田星空)は鉄男のことを心配していた。翌日、鉄男が裕一の前に現れるのだが…。一方、源蔵(森山周一郎)は茂兵衛(風間杜夫)に跡取りを急げとプレッシャーをかける。三郎(唐沢寿明)は、茂兵衛(風間杜夫)からの融資を受けざるを得ないことになるのだが…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
「先が見たくなる」仕上がりのアバンタイトル
今回の僅か40秒程度のアバンタイトルを見て、今週も “イケそう” な気分で始まった『エール』の第2週。
その理由は、土曜日の「1週間の総集編」よりも、実にコンパクトに編集され、劇伴の選択もピアノの単音を活かしたシリアスな曲調で、土曜日を見ずに金曜日の続きで月曜日を見る視聴者に対して、私がいつも言っている「先が見たくなる」仕上がりになっていたと思うから。
第2回は、いきなり善治の衝撃的なこの台詞↓で幕を開けた!
主題歌明け、金曜日で、父・三郎(唐沢寿明)に高価な「妹尾楽譜」を買ってもらった裕一(石田星空)が、いじめっ子の太郎(田村継)と史郎(細井鼓太)に、“青い” 袋に入った楽譜を奪われてしまい、楽譜を取り返そうと体格の大きい太郎に向かっていく裕一だが歯が立たない。
そこに偶然居合わせた鉄男(込江大牙)がケンカの仲介役を買って出て、太郎たちが退散して行った。学校では “乃木大将” と呼ばれるガキ大将の鉄男に、鉄男が落として行った “青い” 表紙の「古今和歌集」を返すことを決心して、鉄男の家に行くと、鉄男が魚屋「魚治(うおはる)」の店主で父の善治(山本浩司)から暴力を受けているのを、つい見てしまう。ここまでが金曜日。
本来なら、この金曜日のラストシーンをもう少し週明けに盛り込んで編集しても良いのに、今回の演出はそれを敢えて選択せず、いきなり、善治の衝撃的なこの台詞↓で幕を開けた。
善治「親に口答えなんか 100年早えわ!
もっと稼げ! 稼ぐまで帰ってくんな!
おめえは魚屋だ。色気出すんでねえ!」
鉄男が家で書いていたであろう「詩」を書いた紙を、ぐしゃりと握り潰して鉄男に叩き付ける善治。「魚屋に勉学は要らねえ!」ではなく「おめえは魚屋だ。色気出すんでねえ!」が胸にグサッと刺さった。親が子どもの人生を決めつけ押し付ける。何とも衝撃的なシーンだ。散らばった紙には、こう書いてあった。
空にかかれし 満月の
地上に落ちて はかなくも
光里包みて 紅燈の
小袖を濡らす 涙雨
「詩」が書かれた一枚の紙が、ポツリポツリと降り始める大粒の雨に濡れていく。その紙を裕一が拾い上げる時には、ザーザーと降る雨。裕一が鉄男に本を変えそうとするが、見られたくない自分の姿を見られてしまった恥ずかしさからか、大声で鉄男が裕一を追い返す。裕一が去った後、家の前に本が入った肩掛けカバンと壊れたハーモニカを見つける鉄男。
これ、単純に見ちゃうと、見られたくなかった鉄男と、見ちゃいけないものを見ちゃった裕一の切ないシーンに捉えてしまうと思う。でも、ここには、きちんと「経済格差」がしっかりと描かれていて、誰もが自分のなりたいものになれない “不条理” が、誰にでも平等に降り掛かる “土砂降りの雨” で見事に描かれた。
なぜなら、本来ならここで裕一は傘を持って雨を凌ぐ展開もアリなのに、それをしないと言う選択は、祐一と鉄男の家には経済的な格差はあるが、傘がなければ “二人共、土砂降りの雨に濡れる” わけだから。中々、考えられた脚本だとも思う。
小川の上での裕一と鉄男の距離感の見せ方の演出が良かった
「家に戻って来た裕一」と「融資の相談に銀行へ行く三郎」のシーンはそこそこに(この辺の放送尺の使い方も悪くない)、雨が上がった例の小川に降りる階段のある場所。実に自然が美しいシーンだ。
そして、それ以上に美しかったのが、裕一が置き忘れた肩掛けカバンと壊れたハーモニカを修理して持って来た上に、自分のことを「筋を通す男」と言った鉄男の正直な気持ちと謝罪の気持ちだ。
カメラを二人の立ち位置から低い場所に据えて、足元が見えない位まで煽ったカメラアングルを選んだことで、ロングショット(引きの画)なのに二人の少年が大きく見える。更に引きの画は、パンフォーカス(手前から奥までピントが合っている)。そして、手元と二人の顔のアップは背景をボカしたカット。
この背景の魅せ方の違うアップと引きの画の切り返しだからこそ、二人の距離感が、少しずつ縮まって行くのが分かる。ここも中々の演出だ。
祐一と鉄男の友だち関係を描きたいと言う意図が伝わる場面
三郎とまさ(菊池桃子)が金策に走るシーンも、藤堂先生(森山直太朗)と久志(山口太幹)のシーンも、徹底的に短めにして挿入。この辺の構成(編集かも?のメリハリの付け方も上手いと思う。今の本作では、祐一と鉄男の友だち関係を前面に描きたいと言う作り手の意図がしっかりと伝わって来るから。
そして、詩を書くのを諦め掛かている鉄男に、先日藤堂先生から教わった「得意とは何か?」を引用して、祐一なりに鉄男の力になりたいと頑張る姿が愛おしい。
鉄男「親父が許さねえ」
裕一「でも 詩を書ぐのは得意なんでしょ?
人より ほんの少し努力することが
つらぐなくて ほんの少し簡単なこと。
それが得意なことだって 藤堂先生 言ってた。
しがみつけば 必ず道は開ぐって。大将 詩人になれるよ!」
鉄男「バカ言うな」
裕一「いや 絶対なれる!」
鉄男「うるせえ。母ちゃんや弟の面倒も見なきゃなんねえ。
おめえとは違うんだ」
裕一「でも…!」
鉄男「おめえ 明日食うもんの心配したこと あっか?
明日食うものがねえ。弟に食わせるものがねえ。
そんな心配したこと あっか?
俺は毎日だ。毎日毎日 明日食うもんの心配してんだ」
裕一「なら 僕の家の…」
鉄男「バカにすんな! 俺は乞食じゃねえ!」
裕一「ごめん」
そして、あんな詩を書く鉄男だから、きっと裕一の気持ちが分からないはずが無い。でも、「俺は乞食じゃねえ!」と突っ張る。この辺の経済的な格差と、二人のモノの考え方の違いを、このやり取りが上手く描写した。書かれた台詞と言うより、登場人物が発した言葉に聞こえる。こう言う部分も褒めたいところだ。
「問題解決能力に長けている」主人公の朝ドラは面白くなる
そして、更に褒めたいのは、この主人公・裕一に学習能力があること。先生に言われたことを自身で咀嚼して、今回は鉄男の詩にメロディーをつけて励まそうと言うところまで昇華しちゃう。ある意味、「問題解決能力に長けている」一面が見える。こう言うタイプが主人公の朝ドラは、大体面白くなるケースが多い。
逆に、「学習能力がない」、「問題解決力に乏しい」主人公は、物語が他力本願になって脇役主導の予定調和になる。最近の前2作は正に後者。と言うわけで、少々期待感が高まって来た…
"夜逃げ→裕一の歌→藤堂先生→ハーモニカ→音"の流れが良い!
展開は激変。鉄男の村野一家が、近所に借金するだけして夜逃げした。山の中で野宿する村野一家。それを知った裕一は、山の頂近くの高い所まで登って来て、父に買ってもらった五線帳の「浮世小路行進曲 詩・村野鉄男 作曲・古山裕一」と書かれたページを開いて、夕景の山々と川の流れる街並みに向かって、歌い出す。
この裕一の歌声が鉄男に届いたのか分からないが、普通ならここで「つづく」としても良いと思う。しかし本作には続きがあった。時間軸を巻き戻して、夜逃げ前の鉄男が藤堂先生に相談する夜のシーンへ。そこで、藤堂先生が「俺は ないものを追ったんだ」と、鉄男には「自分の才能から逃げるな」と諭すシーンがインサートされた。
そして場面は、再び山頂近くで「浮世小路行進曲」をハーモニカで吹く裕一と山中の鉄男をカットバックしながら、ラストシーンは第4回に登場した教会で出会った音(清水香帆)が裕一の運命の人であることも描かれて終了。なかなか、充実した15分間だった。
演出家二人体制で、週を跨いでもスムーズに物語が流れた!
さて、意外なことに、第2週目なのに演出家が、第1週目担当の吉田照幸氏に加えて、松園武大氏の二人体制になった。これが、「週5回放送」になったために、週の半ばで交代するのか分からないが、とにかく明らかになったのは、週を跨いでも、物語としても、ドラマとしても、流れに “途切れのなく” て “継ぎ目の分りに難い” と言うこと。
要は、「週5回放送」が “一区切り” と言う感じでなく、週を跨いでもドラマが続いているってこと。これは演出家二人体制よりも驚きだ。このまま、ドラマが週を跨いでも、内容があまりサブタイトルに引っ張られずに進むとしたら、余計に「総集編の土曜日」の存在意義が変わって来ると思う。いろんな意味で、今後が楽しみだ。
あとがき
安心して見られる朝ドラですね。今週は、もう少し音楽が前に出て来るのを期待します。
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