コタキ兄弟と四苦八苦 (第11話・2020/3/20) 感想

テレビ東京系・ドラマ24『コタキ兄弟と四苦八苦』(公式)
第11話『十一、生苦』の感想。
レンタル兄弟おやじの一路(古舘寛治)と二路(滝藤賢一)の今回の依頼人は、さっちゃん(芳根京子)が同棲していた元恋人・ミチル(北浦愛)だ。復縁を迫るミチルにさっちゃんは突き放すような態度で「嫌い」と追い返してしまう。そこには深い事情があった。ところが、一路は心ない言葉でさっちゃんを傷つけてしまう。兄弟は、2人の幸せのために自分達にできることを考える。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:野木亜紀子(過去作/掟上今日子の備忘録、重版出来!、逃げ恥、アンナチュラル)
演出:山下敦弘(過去作/深夜食堂シリーズ、山田孝之のシリーズ)
音楽:王舟&BIOMAN(スペースシャワーネットワーク)
オープニング:Creepy Nuts「オトナ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
エンディング:ちょうどいい幸せ/スターダスト☆レビュー(日本コロムビア)
アッと言う間に世界観に引き込む導入部のツカミがお見事!
前々回で、 さっちゃん(芳根京子)が、一路(古舘寛治)と二路(滝藤賢一)の腹違いの妹であると言う衝撃の事実が明かされて、前回で、一路と二路の実父・零士(小林薫)が登場して、このまま古滝兄弟、いや古滝一家の物語を継承して行くのか、はたまた全く違う展開で最終章に向かっていくのか、期待と(不安はゼロ)楽しみばかりで迎えた『コタキ兄弟と四苦八苦』の第11話。
とにかく、導入部分、所謂 “ツカミ” がお見事。さっちゃん(芳根京子)が腹違いの妹であることを知った古滝兄弟の “真逆の性格” を巧みに利用した、さっちゃんへの態度の違いの描写が実に面白かった。
俳優陣の演技や演出のせいもあるが、やはり脚本が素晴らしい。全く不自然でない登場人物らの台詞が実に馴染んており、アッと言う間に『コタキ兄弟と四苦八苦』の世界観に引き込まれる。
そして、さっちゃんが同棲していた元恋人・ミチル(北浦愛)が登場して、いつも通りの波瀾万丈な展開の予感の漂わせ方含め、僅か数分のアバンタイトルを見ただけで、今回も期待感の高まりしかなかった。
LGBTの根本的な説明を3人のやり取りで巧みに乗り越えた!
メインタイトル明けは、予想外の展開。実は、ミチルがさっちゃんと復縁を迫るために、レンタル兄弟おやじを利用して喫茶店「シャバダバ」に来たことが分かる。そして、さっちゃんはミチルに突き返すような態度で「世間知らずなところが嫌い」と追い返す。
ここからの展開が興味深かった。いつもなら、依頼者の相談を聞くのが仕事のレンタル兄弟おやじが、さっちゃんの恋愛の顛末を聞いて行く過程で、まずは視聴者に「LGBTとは?」、「レズビアンとは?」を3人のやり取りを通して、確認させる仕掛けになっていたのが丁寧だと思う。
平たく言えば同性愛系ドラマでは、意外とLGBTの根本的な説明は省略して進める作品が多いのに、本作は予習済みの二路と予備知識がなく古い固定概念を捨てられない一路を使って、コミカルな雰囲気の中で超シリアスな説明を難なく乗り越えた。やはり、野木亜紀子氏の脚本力は素晴らしいと思う。
レトルトカレーを運んで来たさっちゃんの強張った表情…
二路が店を追い出された格好のミチルを探し当てて、ミチルの言い分も聞いてみる。ミチル側の、性自認が “女性同士” のカップルだから祝福されない不幸と幸せだった頃の話と、先程のさっちゃん側の不幸と幸せに、ちょっとだけ違和感が描かれたのも絶妙。
さっちゃんの家と、ミチルの家の違いと言うのか、さっちゃんとミチルの置かれた運命、歩いて来た道のり、進もうとする方向が、微妙に違う。特に、ミチルは家や親の束縛からの解放があって、そのミチルの思いを背負っている分だけ、さっちゃんの荷物が重かったってことか。
それが、そのあと喫茶店「シャバダバ」のシーンで、突然の再会から1週間経ったのに、ムラタ(宮藤官九郎)と二路にレトルトカレーを運んで来たさっちゃんの強張った表情で描写されていた。
古滝兄弟の「さっちゃんとミチルの恋の落し所」の匂わせ方の妙
そして、一路が「LGBT」関連の本を読みまくって、さっちゃんに向けてしまった言動を悔やむ。ここで、さっちゃんとミチルの両者の気持ちを聞いた二路が行って台詞が良かった。
二路「さっちゃんと チルチルミチルの幸せな。
片方だけが 幸せじゃダメなんだよ。
両方 幸せじゃないと」
台詞も良いが、この先の展開のための “フリ” としても上手い。古滝兄弟が望む「さっちゃんとミチルの幸せ」が、「個々が、別々に幸せになること」なのか、「二人が再び恋人の関係に戻るのか」を、曖昧にしてCMを跨がせた。この辺は、脚本家と演出家がちゃんと申し合わせて、巧みに作り込まれているような気がする。
『生苦』に相応しい素晴らしいラスト!
ラストは、本当に素晴らしかった。「ミチルの家族からの解放」と言う重い荷物を背負って身を引いたさっちゃんだが、実はその「自分のために身を引いたさっちゃんの荷物」をミチルが更に背負っていて、歯科医師の国家試験に自分が合格することで、二人のことを親に認めさせようと努力していたことが、二路から明かされる。
さっちゃんは、「どうして 私たちは祝福されないんだろう。どうして こんなふうに 生まれて来ちゃったんだろう」と以前にミチルが言っていたと泣きじゃくる。そんな、さっちゃんを見て、思わず大声で天(天井)に向かって叫ぶ一路兄ちゃんの熱弁が心に突き刺さった。
一路「それでも 生まれちゃったんだよ 俺たちは。
出ちゃったものは 戻せない。
この体で この心で 生まれてきてしまった。
けれども その先は 好きにさせてもらうぞ 神様!
か まあ 仏様かもわかんないけど。
あなたが あなたたちが
あなたとして生きていくことを 俺は祝福する!」
天を仰ぎながら、涙を拭いたさっちゃんが、古滝兄弟に一礼をして、店を出て行き、ミチルの試験会場の外から、太陽の光を鏡で反射させて、自分の存在をミチルに教え、ガラスを挟んでミチルに声は聞こえないが「頑張れ! 頑張れ!」と叫んだ姿が印象的だった。そして、さっちゃんの気持ちがミチルに伝わった。
結果的にドラマとしては、超直球勝負で捻りのない展開ではあるが、随所に「人の心の揺らぎ」が丁寧に描写され、正に今回のサブタイトル『生苦』に相応しい内容だった。
あとがき
前回は破天荒寺で自分勝手な置いた父親で『老苦』を描き、今回がその腹違いの娘の生まれ持った運命で『生苦』を描きました。第1話から、このサブタイトルの順番も絶妙だなと感心しています。そして、今回は「レンタル兄弟おやじが大活躍したラブストーリー」を見せて貰いました。
笑いあり、涙あり、怒りあり、そして感動ありの大満足の40分間でした。次回が最終回なのが残念でなりません…
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オトナ Creepy Nuts
ちょうどいい幸せ スターダスト☆レビュー
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/13962/
【これまでの感想】
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