アライブ がん専門医のカルテ (第11話/最終回・2020/3/19) 感想

フジテレビ系・木曜劇場『アライブ がん専門医のカルテ』(公式)
第11話/最終回『乳がん再発を乗り越えて』の感想。
薫(木村佳乃)の‘記念日’の告白により、心(松下奈緒)と薫の生活が慌ただしくなる中、食道がんの患者・千寿子の手術が決まる。千寿子は執刀医の薫に、手術の日程を遅らせてほしいと言い出す。結婚を控えた娘・麗奈に予定通りに挙式させたいという。だが、麗奈は心に手術を優先するよう願い出る。一方で、心は自身の進む道や、患者の治療と生きがいについて悩み…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:倉光泰子(過去作/突然ですが明日結婚します) 第1,2,3,5,6,8,9,最終話
神田優(過去作/アリバイ崩し承ります) 第4,7,10話
演出:髙野舞(過去作/隣の家族は青く見える、セシルのもくろみ、昼顔) 第1,2,6,最終話
石井祐介(過去作/SUITS/スーツ、民衆の敵) 第3,4,7,10話
水田成英(過去作/小説王、医龍4) 第5,9話
岩城隆一(過去作/刑事ゆがみ、絶対正義の演出補) 第8話
音楽:眞鍋昭大(過去作/後妻業、ミス・ジコチュー天才天ノ教授の調査ファイル)
主題歌:須田景凪 「はるどなり」(unBORDE / ワーナーミュージック・ジャパン)
心の夫の死にまつわる薫のサスペンスは必要なかったと思う
今から書くことを感想の後半に書くと、「褒めておいて貶す」ようになるから最初に書いておく。
どうして、全11話の中盤まで心(松下奈緒)の夫・匠(中村俊介) の医療事故? と薫(木村佳乃)のサスペンス劇のようなものを描いたのかが不思議でならない。
全身がんの患者・民代(高畑淳子)の治療から退院、そして残念な死までを、あれだけドラマチックに、ストーリーも細切れに描きつつも破綻させることなく脚本が書けるのなら、あのサスペンス調の部分は無くても、いやあの部分を削って…
その分を民代と乳がんの若い莉子(小川紗良)の物語に分け与えて、最終回まで2人の患者を(こう言う表現は適切でないかも知れないが)生かせ、ドラマに利用した方が、どれだけスッキリとした「がん診療のスペシャリストである腫瘍内科医と、自らも関患者の経験がある敏腕外科医の医療ドラマ」として大成功したか…と思う。そこが本当に残念でならない。
もちろん、第6話くらいまでを民代、それ以降は薫を描いても良かったと思う…
実際に、がん患者の親と子の披露宴の話は良くあること…
さて、ここからは褒めポイントだ。
ご存知の方もいるかも知れないが、私は、土日祝日には某有名ホテルで結婚披露宴の音響照明映像のオペレーターの仕事をしている。そして実際に、「親や祖父母ががん患者で余命宣告を受けているから1日でも早く結婚式を挙げたいから」と言って、2月中旬から3月上旬に規模を縮小して結婚披露宴を開催した、2組の新郎新婦のお手伝いをさせて頂いたばかりだ。
そして、3月8日以降、同じ状況でも「招待客への感染のリスクを考えると開催出来ない」と言う理由で、延期の日程が遠すぎて(宣言された余命期間の中で延期できる日が混んでいて予約できないから)キャンセルせざるを得なかった新郎新婦が何組もいる…と、ホテルの婚礼営業担当から聞いた。
縁談が破談なのを隠した娘にした脚本家の一工夫の絶妙さ!
そんな私だから、今回の食道がんの治療をする患者・橘千寿子(三田寛子)の「娘に予定通りに挙式させたい」と言う気持ちと、千寿子の娘・麗奈(佐津川愛美)の「1日も母に手術をして欲しい」と言う気持ちがひしひしと伝わって、中盤前の20分頃からうるうるしてしまった。こう言うエピソードって、ドラマ用のお涙頂戴エピに思い、あざといと感じる人もいるかも知れない。
しかし、この投稿では「新型コロナウイルス」が原因の話を書いたが、普段でもたくさんある。人工呼吸器と車椅子のお父さんと教会のバージンロードを歩く新婦や、人工呼吸器をつけてやせ細ったお母さんをおんぶして中座する新郎とか。私にとっては “非日常” でなく “日常” だ。でも、こんな仕事をしていなければ、知らない人も多いはず。だから、本作でこのエピソードを扱ってくれたことに感謝したい。
そして、今回のエピソードが秀逸だったのは、実は縁談がとっくに破断しているのを寂しがる母を思って破談を隠して母に接している娘を盛り込んだこと。これによって、この最終回の大きなテーマである “生きがい” が “相手がいてこそ” のものであることが、より強調されたと共に、感動的なドラマになった描かれた点だ。脚本家の一工夫の花が見事に咲いたエピソードだ。
脚本の工夫で最も褒めたいのは心の義父を脚本家にした事!
また、本作が医療ドラマとして良かったのは…
まず、看護師をむやみに登場させエピソードに絡ませなかった点。兎角、「医師と看護師」の関係を描いて、医療ドラマとして崩壊する作品が多いから、それをしなかったのは褒めたいところ。
更に、登場する医師たちが全員真面目なこと。新人研修員のズッコケを描いて、本編までズッコケるドラマがあるから、そこを選択しなかったのも褒めたい。
そして、主人公の私生活の盛り込み方の上手さも是非とも褒めたい。特に、シングルマザーだから子育ての部分を匠の父・京太郎(北大路欣也)の義父にして、彼の職業を “脚本家” にしたことで、医療ドラマには有り勝ちな「クサい台詞」が、逆に「カッコいい台詞」になった。脚本家が脚本家の役を書くのは、かなり難しいと思うが、こちらも大成功したと思う。
あとがき
今期、複数の連ドラの医療ドラマがありましたが、本作の院内シーンを撮影に借りていた北里大学病院が「新型コロナウイルス」感染の出た駅に近いため、前回と今回は急きょスタジオセット内での撮影に切り替えたそうで、最終回もかなりスタジオセットが多かったです。でも、そのお陰と言っては何ですが、ラストの青空のシーンは、特に印象的になりました。
地味であまり世間で話題にならず、DVD-BOX等の映像作品の発売のお知らせもありませんでした。でも、今期に放送された医療ドラマでは、民代さんは残念でしたが、ハッピーエンドを含めてトップクラスの仕上がりだったと思います。そして、多くのがん患者とその家族や周囲の人たちに、大きな希望を与えたと思います。
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★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/13956/
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