コタキ兄弟と四苦八苦 (第10話・2020/3/13) 感想

テレビ東京系・ドラマ24『コタキ兄弟と四苦八苦』(公式)
第10話『十、老苦』の感想。
5年前、瑞樹(手塚理美)という女性が、一路(古舘寛治)の元へ行方不明だったはずの父・零士(小林薫)の居場所を知らせに来た。それ以来、一路はたびたび零士の元へ足を運んでいるという。父親らしいことを何一つせず、浮気性で母親を泣かせてばかりだった零士に対して、二路(滝藤賢一)は複雑な思いを隠せずにいた。だが、一路の誘いで父親と再会を果たすことになる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:野木亜紀子(過去作/掟上今日子の備忘録、重版出来!、逃げ恥、アンナチュラル)
演出:山下敦弘(過去作/深夜食堂シリーズ、山田孝之のシリーズ)
音楽:王舟&BIOMAN(スペースシャワーネットワーク)
オープニング:Creepy Nuts「オトナ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
エンディング:ちょうどいい幸せ/スターダスト☆レビュー(日本コロムビア)
序盤の回想シーンは、複雑な家族関係の20年間を丁寧に描いた
前回で、 さっちゃん(芳根京子)が、一路(古舘寛治)と二路(滝藤賢一)の腹違いの妹であると言う衝撃の事実が明かされた。そして、ドラマは、5年間の回想シーンへ。笹野瑞樹(手塚理美)と言う女性が、一路の元へ行方不明だったはずの父・零士(小林薫)の居場所を知らせに来たところから始まった。
瑞樹の話によれば、20年前に離婚届に自分の名前だけを書いて “行き別れた元・夫” が “行き倒れの老人” になり、そのおじいちゃんが古滝兄弟の父親だと言って、現在の居場所を書いたメモを一路に渡す。そして、さり気なく瑞樹の話から「さっちゃん=五月」であることも分かった。
小さい頃から、さっちゃんはレスカが好きだったのだ。手塚里美さんの名演技もあって、この回想は複雑な家族関係の20年間を丁寧に描いたと思う。やはり、この丁寧な人間描写が本作の見所なのは間違いない。
「長男」の運命を背負った一路に、謝る二路の複雑な心情…
そして、一路は、5年前に真実を知ってから、度々零士に会いに行っていると二路に言う。父親らしいことを何一つせず、浮気性で母親を泣かせてばかりだった零士を受け入れられずにいた。一路が “長男” だから無責任なことは出来なかった、辛い子ども時代を振り返る姿に、「ごめん」と謝る素直な二路の複雑な思いが、じわじわと伝わって来た。
「1分33秒」の長回しに、二路の"逃げ癖"の原点が見えた!
二路が一路の誘いで、千葉県の「希望苑」と言う零士のいる介護施設にやって来た。女性介護士にスケベ親父丸出しの零士に驚く二路。で、一路が「弁護士の先生」と言う体(てい)で父親に面会に来ていることも分かる。長年の恨みを怒りの言葉で零士にぶつける二路。とぼける零士。悔いる二路。冷静な一路と次々とカットバックしながら。
3人の人間関係を描きながら、「(たかちゃん=母親が)弟と親父の区別がつかなくなって 顔見るたびに 弟を罵倒するようになった」の台詞をきっかけに、二路の1ショットに変わり、自分の存在が母親を苦しめているのではないかとの積年の苦悩を語り、最後に涙でグショグショになるまでのショットは、「1分33秒」の長回し。
滝藤賢一さんの芝居に魅了された。そして、二路の “逃げ癖” の原点が見えた瞬間だった。
一路の「自由とは心もとない」のモノローグが必死な生き様を表現
「希望苑」からの帰り道、古滝兄弟が喫茶店「シャバダバ」に立ち寄る。しかし、二路は、入店直後に二路の妻・有花(中村優子)から「レンタルおやじ3時間無料券」で妻と娘と食事に行くと店を出て行ってしまう。店には、一路とさっちゃん。そこで、再び序盤の5年前の回想シーンへ。今度は、「五月」の名前の由来を瑞樹から聞く一路。
そして初めて零士の面会に行った時の後悔の念が、「ジロウには知らせない。こんな気持ちになるのは 俺だけで十分だ」との一路のナレーションで語られ、予備校講師の仕事を辞めて “自由の身” になったことも分かる。
しかし、すぐに次の仕事は見つからず、趣味も無く自由を持て余す日々を「自由とは 心もとない」とのモノローグで、一路に言わせた脚本家の一路が「長男」と言う、捨てようにも捨てられない運命のもとで必死にもがく “様” を表現したのは深いと思う。
ユーモアとウィットに加えてペーソス(哀愁)が込められた秀逸なラストシーン
さて。なぜ、介護施設からの帰路で「シャバダバ」に立ち寄った二路が、家族に会うシーンを脚本家が作ったのか不思議だった。いつもなら、さっちゃんに真実を告げられない古滝兄弟の右往左往する姿をコミカルに描きそうなのに。
しかし、その理由が36分頃の、二路と有花の2ショットのやり取りに隠されていた。夫婦関係が上手く行っていない二人。既に離婚届を書いている妻と書かない夫。そんな不安定な夫婦のやり取りが良かった。
二路「ユカが 寝たきりの おばあちゃんになって
ボケて 俺のことを忘れたとしても
最期まで一緒にいるよ」
有花「なんで泣いてるの?」
二路「泣いてねえべ 笑ってんべ」
二路は、自分の両親の生き様を見て来て、自分なりの夫婦と家族を作ろうともがいているのだ。ありふれた表現だが、「夫婦、家族の数だけ、夫婦と家族がある」と言うことか。そして、自分たちなりの夫婦や家族を作って生きることが、第10話のサブタイトル『老苦』に繋がる…と言いたいのだろうか。
絶対に避けられない「老い」と言う「苦しみ」の中に、「心の若さ」を見出しなさいとお釈迦様はおっしゃっている。ラストでの、一路がムラタ(宮藤官九郎)を “レンタルおやじ” として居酒屋に雇うシーンで、ムラタが家族だと言って猫の写真を一路に見せながら、「自由は 心もとない」と言った。
もしも、「心の若さ」を保つものの一つが「趣味」であるとすれば、居酒屋での一路とムラタの会話には、 ユーモアとウィットに加えてペーソス(哀愁)が込められた秀逸なラストシーンだと思う。
あとがき
50歳をとうに過ぎた私だが、「老い」が「苦」であると言うのが、まだまだ分かりません。自分が老いて苦しいことが「老苦」なのか、老いた自分が周囲を苦しめることが「老苦」なのか? まだまだ、私の生きる修行が続くと言うことを、今回でしみじみと感じました。次回も楽しみです。
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オトナ Creepy Nuts
ちょうどいい幸せ スターダスト☆レビュー
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/13936/
【これまでの感想】
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