スカーレット (第71回・2019/12/20) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第12週『幸せへの大きな一歩』の
『第71回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)の結婚をかけた陶芸展の結果発表直前、川原家では喜美子と八郎が暮らす部屋が増築される。常治(北村一輝)も口では反対しているが内心、喜美子と八郎の幸せを願っている。そして朗報が。照子(大島優子)が八郎の入選を告げる。その知らせは信楽中に広まり、祝福の声が次々に届く。喜美子と八郎の結婚準備も始まり、信楽にある人物が訪れることに。一方、喜美子に意外なオファーが届く。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
アバンで、八郎の出品作品を作る過程を回想で見たかった…
前回のラストで、唐突に八郎(松下洸平)が陶芸展に出品予定のシンプルな大皿が登場した。どうやら「色で勝負」の一品のようで、描写はされていないが、喜美子(戸田恵梨香)の「カフェ サニー」用の珈琲茶碗と同時並行で制作していたようだ。
ならば、本作が “まだ” 女性陶芸家の草分けを描く朝ドラならば、八郎が釉薬をかける真剣な表情、それをじっと見守る喜美子、そして本焼きが終わって電気釜から取り出す時のハラハラドキドキの瞬間は映像で見たかった。キスするしないのハラハラドキドキより、描くべきことだと思う。
劇中の時間が、正月三が日から一気に3月30日へ…
で、もしや、今回のアバンタイトルで、その期待した映像が回想シーンでインサートされるのを期待したのだが、劇中の時計は、前回が雪が降る正月三が日で、「カフェ サニー」の開店が1月15日で、陶芸展の出品締め切りが1月末で、それらをとっくに過ぎた「3月30日」 に飛んじゃった。
どうやら、常治(北村一輝)は有言実行で長距離トラックの運転手をやっているようだ。それにしても、川原家のガラス戸が全開だったが、滋賀県信楽の3月末ってそんなに温かな気候なのだろうか? 調べてみると、温暖化の今でも3月の平均気温が4.9度、4月が10.4度で、まだまだ関東の感覚だと冬なのだが…
増築も終わり、結果発表当日。今回が上手く行けば…
そして、いつぞや描かれた増築も終わっていた。更に、陶芸展の結果発表の当日と言う設定。どうせ、当選して…となるのは “ほぼ決定事項” だから、違和感も不快感もなく描いてくれることだけを主題歌明けに期待した。
まさか、この夫婦、家で使う食器は全部会社から持ち出し?
う~ん、このもったいぶった八郎から喜美子への「入選」の告げ方、好きな人は好きなのだろうが、捻くれ者の私には、「もしかして、この夫婦、家で使う食器の全部を丸熊陶業の資材や電気を使って作るのでは!?」と怖くなってしまった。
祝福の声が川原家に次々と集まるシーンから雰囲気が一変!
でも、その後の展開は、まあ、実に普通。特に、入選の知らせが信楽中に広まって、祝福の声が川原家に次々と集まって来るシーンなどは、やはり、喜美子と八郎だけのシーンでは絶対に醸し出せないホームドラマらしい明るい雰囲気が描かれた。
やはり、2人芝居で15分の斬新さを否定はしないが、キスシーンを2日跨ぎで視聴者を欺くよりも、こんなストレートな描写の方が自然にドラマを受け入れられると思う。
例のハープからヴァイオリンへ乗り替わる劇伴で一気にドラマチックに!
そして、宴が終わって静かになった夜の川原家の縁側に座る常治の横へ、ガラスのグラスに入った日本酒を持って来て「まだ 一緒に飲んだことなかったんで…」と八郎が座る。ここは、映像的に分かり難いからガラスにしたのだろうが、安物の湯呑み茶碗で日本酒を酌み交わしたいところだったような。
しかし、ここは、北村一輝さんと松下洸平さんの演技と、常治と八郎の台詞が光った。
常治「娘が3人おって…」
八郎「はい」
常治「男は 俺一人で。息子が欲しかったんや。喜美子を頼むな」
以前にも書いたが、「物事に感動したり共鳴しやすい心情」を「琴の糸(=琴線)が触れて鳴るさま」に喩える表現に「琴線に触れる」と言うのがあるが…
文字通り、この常治の台詞の「喜美子を頼むな」の直前から、ハープ(竪琴)の音色の劇伴が小さめの音量でスネークインしてくる感じが、娘が結婚する父親の、口では反対していたが内心は2人の幸せを願っている常治の変化を上手く補強した。
実はこの演出は第39回(2019/11/13)で、ちや子(水野美紀 )が「グッとこらえて 頭下げて」と男性社会の出版業界の仕事に就いた話を熱弁するシーンでも同じ手法が使われた。その週と今週の演出家は違うが、劇伴と使用するシーンの適切さは共通化されているようなのは良いこと。
ここんとこ、演出家が変わる度に描写も変わったし、恋バナ中心になったこの約1か月をそれ以前と比較したら、別の脚本家が書いているようにも見えていたから、こう言う “連ドラこその共通点” は、今後もどんどん作って利用すべき。いつぞやに言った、例の本作らしい「暗い四角の中に明るい四角がある構図」も最近見ていないから…
前夜から八郎の姉がやって来る場面転換の劇伴と映像も中々
このハープからヴァイオリンに乗り替わる劇伴が使用されるシーンは、相当演出家が肝入りのシーンが多く。今回は演出家も頑張ったと評価したい。一度、ヴァイオリンの音色が極々小さくなった瞬間を使って、夜の川原家のシーンから、翌朝の「カフェ サニー」がある商店街のシーンにカットチェンジ。
劇伴が一度フェードアウトしてフェードインするような効果を持った楽曲だから、映像は敢えてオーヴァーラップをさせずにカットチェンジ。道行く人の影が濃く長いことから昼間と言うよりで午前中の早い時間帯であることも分かる。
そのことやカフェの店内が混雑していないことからも、大阪から亡くなった両親の代わりに八郎を育てた姉・十代田いつ子(しゅはまはるみ)が、急いでやって来たことも描けている。
1曲3分間でシーン4つを跨いで描いたのが成功したと思う!
その劇伴を更に、次のいつ子の川原家への挨拶のシーン「夜の川原家 → 商店街 → カフェ サニー店内 → 川原家挨拶」と4つのシーンを跨いで引っ張った。
その尺、約3分間。この3分間で、かなり約1か月間に亘って描かれた、ドラマとして間違っているとまでは言い難いが、私にとっては無駄に長かった喜美子と八郎の出会いから結婚までの経緯を、意外とチャラにしてくれた印象だ。
もちろん、私が望んだのは、2人が一目惚れ同士で、喜美子が常治の反対を押し切って結婚し、仕事も夫婦生活も実家への仕送りもする…と言う単純な展開だ。
しかし、脚本家も演出家もやってくれないなら見るのを止めるか、望みを捨てずに観続けるかの二択しかない。その意味では、この3分間は、これまでの無駄話を取り敢えず掃除してくれる効果はあったと思う。
パーマ頭の直子登場から、新たな展開に少し希望が持てた…
そして、13分過ぎには、パーマ頭になった喜美子のすぐ下の妹の直子(桜庭ななみ)が帰郷。常治の言っていた増築が、母屋と離れの関係であることも分かった。
ハイテンションの直子に合わせて、劇伴もテンポ良い楽曲に変わって花嫁衣裳のシーンになったと思ったら、劇伴が終わると八郎と直子と喜美子の一番下の妹・百合子(福田麻由子)のご挨拶のシーン。続いて、絵に描いたようなトントン拍子が始まる。
まあ、相変わらずの予定調和な展開ではあるが、何とかダラダラ続いたイチャイチャが終わって、次回からは新展開になりそうだ。ホッ…
あとがき
さあて、これからですよ、大切なのは。この約1か月は喜美子に絵付け師としても、陶芸への興味もほぼ無いように描かれ、お金と八郎にしか興味を示さなかった喜美子に、偶然の(恐らく) 珈琲茶碗の大量の注文が舞い込んで来て、果たして話が繋がるのか?
ここの物語の “繋ぎ目” を上手く熟せば、再び、「滋賀・信楽を舞台に描く、女性陶芸家の波瀾万丈な物語」へ返り咲く可能性はあると思います。
ここ最近、ずっと私と同じ “モヤモヤしつつも離脱する程でもない人”の皆さん、いよいよモヤモヤから脱出できそうな “気配” が見えて来ましたよ。
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【これまでの感想】
第1週『はじめまして信楽(しがらき)』
1 2 3 4 5 6
第2週『意地と誇りの旅立ち』
7 8 9 10 11 12
第3週『ビバ!大阪新生活』
13 14 15 16 17 18
第4週『一人前になるまでは』
19 20 21 22 23 24
第5週『ときめきは甘く苦く』
25 26 27 28 29 30
第6週『自分で決めた道』
31 32 33 34 35 36
第7週『弟子にしてください!』
37 38 39 40 41 42
第8週『心ゆれる夏』
43 44 45 46 47 48
第9週『火まつりの誓い』
49 50 51 52 53 54
第10週『好きという気持ち』
55 56 57 58 59 60
第11週『夢は一緒に』
61 62 63 64 65 66
第12週『幸せへの大きな一歩』
67 68 69 70
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