スカーレット (第57回・2019/12/4) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第10週『好きという気持ち』の
『第57回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
東京で働く直子(桜庭ななみ)から電報が届く。3通に渡る内容は切実なもので、喜美子(戸田恵梨香)や常治(北村一輝)は気が気でない。家族会議の結果、元・居候の草間(佐藤隆太)に頼んで、直子を連れ戻すことに。その後、喜美子は絵付けをしつつも、湧き上がる陶芸への思いを抑えきれない。八郎を訪ねて陶芸を学ばせてほしいと頼み込む。すると意外な答えが。一方、信作(林遣都)の実家が大がかりな改装中。まさかの商売を…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
いよいよ本格的に "好みが分かれる作風" になって来たかな
最初に書いてしまうが、いよいよ本格的に “好みが分かれる作風” になって来たかな、と言う印象の第54回だった。矛盾もあるし、好き嫌いが分かれる登場人物もいるし、不明瞭だったり雑だったりの脚本や演出もある。
ただ、私には、まだ継続視聴離脱する程でもないし、まだまだ “先” が気になる展開であることは確かだと思えるから、“あばたもえくぼ” と言う感じだ。
水曜日はギアチェンジの日、アクセルを踏むのは木曜日から
さて、本作に於ける水曜日の役割は、木曜日、金曜日と盛り上げ、土曜日には来週のネタ振りに繋げる、謂わば、月曜日と火曜日からのギアチェンジの日だと私は思っている。アクセルを踏み込むのは木曜日ってこと。
その意味で、今回は15分間を “3つのエピソード” に分けて、それぞれの “先” へのフラグを立てつつ、それら “3つのエピソード” が巧みに連携してギアが1速から2速にサクッと入ったと言ったら、余計に分かり辛いだろうか?(汗)
そう見えたのには、“3つのエピソード” の内容と並び順の良さと、1つ1つのエピソードの “繋ぎ” の部分の滑らかさが、私にそう感じさせたと思う。
今回の約5分間の川原家の微笑ましい家族会議は良かった
まず、1つ目のエピソードは、東京で働く直子(桜庭ななみ)から、切実な内容の電報3通が届き、喜美子(戸田恵梨香)と父・常治(北村一輝)と母・マツ(富田靖子)は気が気でなくて、家族会議の結果、元・居候の草間(佐藤隆太)に頼んで、直子を連れ戻すことになるってくだり。
ここで興味深かったのは、先日も感じたことだが、明らかに常治の言い分に “まとも” な部分が増えたことと、家長としての傲慢さも減り、逆に妻や娘たちにやり込められる場面もあって、川原家のシーンがホームドラマらしくなって来たことだ。今回なんて、常治に内緒で喜美子とマツが直子に送金していたことが明かされた。
きちんと家族会議が成立する環境になったことも、常治が喜美子に対して「草間流で ダ~ッ 投げ飛ばしてくれ言うて」なんて、ふざける様子まで描かれた。これでもまだ、「直子の話は要らない」とか「マツにイライラする」と言う人たちはいるとは思う。でも、朝ドラは基本的にホームドラマ。だから、家族を描くのは当然のこと。
そして、互いに迷惑を掛けたり心配させたり助け合うのが家族。そう見れば、今回の約5分間の川原家の微笑ましい家族会議は良かったと思う。
大野家で時代に逆らわず時代に合わせて生きる人が描かれた
そして、第1エピソードと、信作(林遣都)の実家「大野雑貨店」が大掛かりな改装中をして、畑違いのカフェ経営に乗り出す第2エピソードの “繋ぎ” が良かった。
これ、別に順序を第3エピソードとなる喜美子が八郎(松下洸平)に陶芸を学ばせて貰うのと逆にしても良いのだが、「幸いにも草間さんとは すぐに連絡が取れました」のナレーション1つを咬ませたことで、“繋ぎ” に違和感が無くなった。で、ここで描かれたのは「時代の変化と、それに対応して生きて行かざるを得ない現実」だ。
大野忠信(マギー)と陽子(財前直美)夫妻も実に前向きに明るいし、信作も明るく前を向いている。時代に逆らうでなく、時代の波に乗って生きる人たちが描かれた訳だ。しかし、信作とやり取りをした喜美子は、まだ耳朶の波に乗って生きる人たちの仲間入りをしていないところでシーンが終わる。
迷う喜美子と漠然とした目標で、猪突猛進の喜美子を強調
そう、第2と第3のエピソードの “繋ぎ” は “迷う喜美子” だ。それは、夜の川原家から始まった。
今回の “繋ぎ” は、ちょっと長めの尺。絵付け火鉢の生産が減っていると言う「時代の変化」を喜美子とマツのやり取りで描きつつ、「うち 陶芸を学びたい」「陶芸を? また修業するのん?」で第3エピソードへのフラグを立てた。ここの “繋ぎ” での1つ目の肝になるのは、次の喜美子の台詞だ。
喜美子「修業いうか… 見させてもろて
勉強させてもらえへんやろかて お願いしよう思うんよ
(中略)絵付け以外にも いろいろ学ばせてもろて
考えていこ思うんよ。もっと… 自分の世界を広げたい」
これまでの喜美子は、大阪の荒木荘時代にはベテラン女中の大久保(三林京子)に「大久保の仕事っぷりに感動して、一人前の女中になりたい!」と言う熱意を伝えて約3年間と言う期限付きで手解きを受けた。
次の丸熊陶業では有名な日本画家で絵付け師の深野心仙(イッセー尾形)に「フカ先生の生き様に共感して、一人前の絵付け師になりたい!」との熱意を受け入れて貰い、結果的に深野が自主退社したことで、丸熊陶業の唯一の絵付け師になれた。
でも、今度は明らかに違う。明確に「一人前の陶芸家になりたい!」と言う熱意でなく、八郎の粘土いじり(作陶か?)を見て、更に作陶に打ち込む八郎を見て、漠然と「自分の世界を広げたい」のだ。
普通なら、ここがヒロインの人生の大転換期になると想像するから、今回こそキッチリと「陶芸をやりたい!」と意思を描いて欲しいと思う。でも、本作は違う。「自分の世界を広げたい」と言う漠然とした目標を掲げた。
でも、前回の感想でも書いた通り、2度の異業種の修業を経た喜美子は、目標に向かうと “猪突猛進” してしまう喜美子になりつつある。だから、“先” が楽しみになる。
ちょっと図々しくも見える喜美子に、愛着を感じてしまう…
また、もう1つの “繋ぎ” の肝になったのが、次の喜美子とマツのやり取りだ。
喜美子「身につくまで 何年かかるか分からへんし
物になるかも分らへんけど…」
マ ツ「ええ ええ。気長に学ばしてもらい? それ タダなんやろ?」
喜美子「タダや。ええ人やで? 感じのええ人や」
ここなんかも、前回で描かれたのと同じだ。 喜美子は、既に21歳の大人の女性で、一家の大黒柱の稼ぎを補完して来た(今も)稼ぎ頭なのだから、「大人」とか「一人前」と言う自覚があるのは大阪の荒木荘時代に描かれたが、信楽での3年の修業で、また元に戻っちゃった。
まあ、今度は「昇給した絵付け師の月給」があるから余裕があるってことだろう。で、教えてもらうのを平気で「タダ」とか「感じのええ人」と言っちゃう。この辺の喜美子も好みが分かれるだろう。
しかし、脚本も演出も一貫性はある。だって、作り手は、“無邪気で真面目で素直で天然的な部分こそが喜美子の魅力” として描いているのだから。あとは、それが好みに合うかどうかってだけのこと。私は、ちょっと図々しくも見える喜美子に、なぜか愛着を感じてしまうが…
どうやって恋愛と修業の境界線を描くのかが新たな楽しみ!
そして、11分過ぎに第3エピソードが始まった。ここには、いろいろな課題や分かり難い表現や良い所があった。まず、課題と言うべきかどうかだが、恋愛のプロセスを描くことの難しさが分かること。前作『なつぞら』は交際開始から結婚までが相当端折られた。
で、もしも、先週あたりからの喜美子と八郎のやり取りが、恋愛のプロセスの初期段階だとすると(そうかどうかは「喜美子 呼んで。つきあって下さい」だけでは分からない)、かなり丁寧に描こうとしていることになる。それが良い所でもあるし、難しい表現になって終わったのも事実。
また、もしもこのまま八郎が作陶を教えると言う展開が続くと、ちょっと不自然な展開になる可能性も秘めている。だって、八郎は「京都の美術大学を卒業した後は、学生に陶芸を教える手伝いをしていた」のであって、前述の大久保やフカ先生とは明らかにレベルが違う。
こうなると、「好きだから」「一緒に居たいから」が八郎に教わる理由になっちゃう。出来れば、八郎が「私は信楽発の女性絵付け師に陶芸を教えられる立場ではありません」と、大学時代の先生なり紹介するなり、今度は八郎が社長に相談し、新製品を作るのを喜美子の時間外に手伝ってもらうと言う約束で、社内や外の業者のプロに師事するとか、八郎は密かに陶芸のプロに教わっていると言う設定にした方が良いように思う。
まあ、喜美子が絵付け師の才能を突然に開花させたように、実は八郎には陶芸の才能が秘められている可能性もあるが。このまま、喜美子と八郎が朝晩の計4時間のイチャイチャで来週には結婚なんて展開にならないことだけは期待したい。
でも、私の予想を裏切るのが本作だから、きっとそうなるに違いない。だとすると、どうやって恋愛と修業の境界線を描くのか、新たな楽しみでもあるが…
あとがき
「豪華3本立て」とは行きませんでしたが、「週の後半を見たくなる3本立て」にはなっていたと思います。
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【これまでの感想】
第1週『はじめまして信楽(しがらき)』
1 2 3 4 5 6
第2週『意地と誇りの旅立ち』
7 8 9 10 11 12
第3週『ビバ!大阪新生活』
13 14 15 16 17 18
第4週『一人前になるまでは』
19 20 21 22 23 24
第5週『ときめきは甘く苦く』
25 26 27 28 29 30
第6週『自分で決めた道』
31 32 33 34 35 36
第7週『弟子にしてください!』
37 38 39 40 41 42
第8週『心ゆれる夏
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第9週『火まつりの誓い』
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第10週『好きという気持ち』
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