スカーレット (第47回・2019/11/22) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第8週『心ゆれる夏』の
『第47回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
照子(大島優子)の後押しで喜美子(戸田恵梨香)の考えたデザインが新しい火鉢に採用されることに。会社の若社長・敏春(本田大輔)が喜美子を「信楽初の女性絵付け師」として売り出し、火鉢の販売促進につなげようと、新聞取材の話を持ってくる。勝手に写真撮影まで決められ、喜美子は困惑。父・常治(北村一輝)には秘密のまま、取材日を迎える。近所の女性たちの協力で、見違えるほどかわいく着飾った喜美子の姿にマツの涙が…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
劇伴の有無でシーンの印象が変わるのを感じることができる
今回も、どんなアバンタイトルで楽しませてくれるのか期待をしていたら、あっさりと前回のラストシーンを26秒間借用しただけ。
ただ、演出家の工夫と言うか “ひと手間” があったのは、前回のラストシーンでは “先” への期待感を高めるために、ちょっと緊張感のある劇伴が付いていたが、今回のアバンでは劇伴は外されていた。
前回の録画がある人は今回と見比べると、劇伴があるととても “ドラマチック” に見え、アバンでは再利用だから一度見ていると言う新鮮味は失われるが、劇伴が無いと喜美子(戸田恵梨香)の日常に起きた照子(大島優子)が持って来た “サプライズ” に見える。劇伴の有無でシーンの印象が変わるのを感じることができると思う。
良い意味で、私の想像を裏切ってくれる展開にホッとする…
主題歌明けは、これまた私の予想を上手いこと裏切ってくれる展開に。実は、私は婿の敏春(本田大輔)が喜美子を「信楽初の女性絵付け師」として売り出して、丸熊陶業への世間の評判を高めて、“やり手の若社長” の実績を秀男(阪田マサノブ)に見せつけて、丸熊陶業を乗っ取る作戦かと思ったのだ。
しかし、本作は違っていた。秀男と敏春はこれからの時代に経営を対応させるべく、2人で業務拡大を計画していたのだ。秀男が敏春を褒める台詞もあったし、秀男の妻・和歌子(未知やすえ)も加わって、楽しく明るく丸熊陶業の未来を語らうシーン。ビジネスの場面も、しっかりとホームドラマの面白味が入っているのが、実に良いと思う。
そして、前回の感想に書いた通り、良くある「ヒロイン特権」で闇雲に喜美子のデザイン画が誰か決定権を持っている登場人物が認められるのでなく、新しいものを探している登場人物が、新しいものを作りたい喜美子のデザインに惹かれると言うのが本作らしくて、これまた良いと思う。
画面に映らなくても存在感のある常治になっているのが見事
続いてのシーンは、その晩の川原家。どうやら父・常治(北村一輝)はまだ東京から買ってきていない様子。
喜美子が、自分が新聞取材を受けることになったことを家族に報告するだけの他愛のない場面だが、「新聞て 悪いことせんでも 載ることあるんやねえ」との如何にも母・マツ(富田靖子)らしい台詞を組み込んで、どこかネジが緩んでいるマツで川原家らしさを醸し出した。
また、この一件を常治には秘密にしておこうと言う展開で、恐らく大人の事情で出演不可能な北村一輝さんを巧みにフォロー。もちろん、これまで何かと煩わしいキャラであることが明確に強調されているから “画面に映らなくても存在感がある” のも見事だ。やはり、これまでの丁寧な描き込みが功を奏している訳だ。
もちろん、今回が 所見 初見の視聴者向けに、もはやお約束の常治のちゃぶ台返しを含んだ3カットだけ回想を挟んだのも、演出の気遣いだと思う。
更に、このシーンでは、喜美子の一番下の妹・百合子(福田麻由子)の成長(いや豹、変か!?)も描かれた。まさしく前回の感想で書いた「父父たらずと雖も子は子たらざるべからず」だ。だからこのシーンも、ちゃんと楽しいホームドラマになった。
堪忍袋の緒が切れる喜美子の、前後の劇伴の使い方が絶妙
そして、新聞記者(帽子屋・お松)が絵付け室を訪れて、取材が始まる。ここの展開も絶妙。深野心仙(イッセー尾形)を知らない新聞記者に対して、秀男はフカ先生の実績を話し出すのを敏春が止める。
「おや? やはり父と婿の仲違いなの?」と一瞬ビクッとさせて、敏春の「丸熊陶業のマスコットガールみたいな感じで」、新聞記者の「もちろんです」をきっかけに、ちょっとコミカルで優美な音色と情熱的な演奏のアコーディオンのスパニッシュな劇伴は入って来る。ここ、物語の展開と劇伴の曲の構成がシンクロしていた。
序盤の新聞記者と敏春の言いなりに架空のマスコットキャラを作られて困惑する喜美子の時は、音の切れ間の無いアコーディオンの優美な音色で、徐々に状況に流されそうな喜美子を表現し、ついに堪忍袋の緒が切れた喜美子の時は、情熱的な旋律になって、場面が絵付け室の外になると劇伴はす~っとフェードアウト。
これで、一旦外に出た敏春たちには、中に居る喜美子の心情が伝わって来ていないのが表現された。なかなか、手の込んだ音編集だ。
熟考された脚本だからこその照子の方が"うわて"だったオチ
また、照子と喜美子のやり取りも楽しかった。幼少期の照子が婦人警官への夢を抱いたものの、丸熊陶業を継がなくてはならず夢を諦めたシリアス&友情の展開で、“喜美子の反乱” を収拾されるのかと思いきや、先に結婚し跡継ぎになった照子が一枚も二枚も喜美子より “うわて” だったと言うオチ。良く熟考された脚本だと思う。
マツが微妙に可愛げのある呑気な母ちゃんに変化している…
敏春に、マスコットガールにしては服装が地味だと言われて、自転車ですっ飛んで帰宅して来た喜美子。エレキギターのテケテケサウンドの劇伴に乗せて大慌ての図。そこに、偶然信作(林遣都)も現れて、それも真っ赤なシャツを着て。地味な川原家との対比も楽しいし、豹変した百合子が機転を利かせて速攻に常治対応するのも、本当に楽しい。
そして、信作の母・陽子(財前直美)を始め、ご近所さんたちが明るく派手めな服を持って、川原家に集まって来た。3人も加勢したのだから、ぼちぼち決まりそうだが決まらない。その理由を、マツにこんな風に言わせたのには恐れ入った。
マツ「隠しても隠しても 貧乏はこぼれ出るな」
如何にもマツらしい呑気な台詞。でも、ちゃんと的を射てるのがスゴイ、そして面白過ぎる。暫く前は、マツのキャラ設定にイラっとしたが、喜美子が信楽に帰って来てから、例の “へそくり” の件もあったように、微妙に可愛げのある呑気な母ちゃんになっている。だから、ホームドラマとして面白いのだ。
川原家と大野雑貨店の"行ったり来たり"が面白さを増す
そして、場面は大野雑貨店に変わり、百合子が東京に居る常治と電話している。その傍らに信作と信作の父・忠信(マギー)。百合子では話の埒が明かない様子に痺れを切らした信作が受話器を取って “バレバレの喜美子の真似” をして、その受話器を忠信が横取りして再び“バレバレの喜美子の真似” のプチコント。
1分にも満たないシーンだが、新聞取材再開までの2時間を省略して描くには、絶好の仕掛け。一度、舞台を川原家から大野雑貨店に移して、再び川原家に戻ると時間が経過しているって訳だ。
この手法は幾らでも他のドラマや映画で使っているが、先日も書いたように、舞台が少ない朝ドラでは、このように複数の舞台を巧みに行き来させると、物語に動きが生まれるし、登場人物も自然に増えて楽しくなる。
もちろん、下手をやれば “単なる群像劇” になるから諸刃の剣ではあるが、本作は常に物語の中心に喜美子が存在するから心配ないと言うことだ。
正に、きれいな衣装で、きれいに"まとめ"たと言う感じ!
シーンが川原家に戻ると、既に喜美子の衣装は決まっており、最終メイクを終えた段階。きれいに着飾った娘を見て、感涙のマツ。
マツなら「馬子にも衣裳やな」と言うかと思ったが、これまでの喜美子の頑張る姿を見て来たマツには、もう「隠しても隠しても 貧乏はこぼれ出るな」のような呑気な言葉は出なかった…と言うことだろう。正に、きれいな衣装で、きれいにまとめたと言う感じだ。
あとがき
ラストシーンの十代田八郎(松下洸平)が、喜美子の記事を読むシーンが “先” にどうなるのか気になりますね。新聞記事のカットを一時停止させて読んでみると、「深野心仙」の名前が一度も書いてありませんでした。
大阪出身で “ 京都の美術大学で陶芸の奥深さを知り 卒業後は 学生に陶芸を教える手伝いをしながら 働き口を探して” いた八郎ですから、もしかするとフカ先生に何らかの思いれがあって丸熊陶業に入社して来たのかも? その憧れのフカ先生が蔑ろにされたことに苛立って…。
でも、本作にはあまり “反発的な表現” は使われないので、どんな展開になるのか楽しみです。
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