スカーレット (第42回・2019/11/16) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『スカーレット』(公式サイト)
第7週『弟子にしてください!』の
『第42回』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
絵付けを満面の笑みで楽しむ深野(イッセー尾形)の姿に心打たれた喜美子(戸田恵梨香)は、深野の弟子になることを熱望。反対する父・常治(北村一輝)を改めて説得しようと考える。その頃、常治は飲み屋で偶然、深野と出会う。酔った深野が弟子入りを志願する喜美子の話題に触れ「すぐ諦めるだろう」とつぶやくと、常治は思わず「そんな根性なしちゃう!」と反論。深野を驚かす。翌朝、喜美子が常治に声をかけると意外な反応が…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
筋を通す喜美子が、どうやって家族を説得するのか楽しみで
うん。いい感じに前回の最大の見せ場を40秒にまとめたアバンタイトルで始まった、第7週『弟子にしてください!』の土曜日。私としては、“筋を通すヒロイン” である喜美子(戸田恵梨香)が、どのようにして、まず家族を説得するのか?に興味があった。
だって、喜美子は過去の朝ドラのヒロインとは少し違うから
なぜなら、本作のヒロインは、これまでの朝ドラの典型的なヒロインとちょっと違うのだ。まあ、私の朝ドラ歴も子どもの頃に見た作品以外だと、再放送で観た『カーネーション』と今観ている『ゲゲゲの女房』と、『あまちゃん』以降の15作品(本作は入れず)しかないが、大体は次の2パターンだと思う。
親を含めた家族がとても優しくて大きな愛に包まれ育ったヒロインが夢を実現するパターンと、親や家族がキツいとかダメとかろくでなしとか貧し過ぎるとかの環境の中で育ったヒロインが家を飛び出し自らの未来を切り開くパターン。
喜美子は、生命力があり筋を通し問題解決能力に長けた女性
ところが、喜美子はダメな両親も妹たちも家そのものも捨てない。いや、捨てられない。でも、自分がやると決めたことは徹底的に突き詰めて、世間からも自分でも一定の評価を得るまで引き下がらない。
だから、家族のために大阪へ女中に働きに出て、自分の大切な仕送りが盗まれようが、家に戻らず、女中と言う仕事を3年間で極めて、手に職を付けて実家に帰って来た。
喜美子は、とても “生命力(バイタリティ)のあるヒロイン” であり、 “筋を通す(ブレない)ヒロイン” であり、 “問題解決能力(ブレイクスルー)に長けたヒロイン” だ。
本作は、ドラマ自体がアグレッシブ(攻撃的<、積極的)なのだ!
『カーネーション』のヒロイン・糸子に似たところがあるが、違うのは、『カーネーション』では主人公の糸子がアグレッシブ(攻撃的、積極的)だったのに対して、『スカーレット』はドラマ自体がアグレッシブ(攻撃的、積極的)なのだ。
とにかく、丁寧な描写は徹底的に丁寧に、省略する部分はサクッと切って、一見地味に見えそうな内容なのに攻めまくっているのだ。
筋を通す喜美子を笑顔で受け入れるマツと妹たちも良かった
で、感想を本編に戻すと、どうだろう。実に丁寧に喜美子が深野(イッセー尾形)の弟子になることで、母・マツ(富田靖子)と上の妹の直子(桜庭ななみ)と一番下の妹・百合子(住田萌乃)に迷惑が掛かることを説明して、必死に理解を求めるように努める。そんな “筋を通す喜美子” を気持ち良く受け入れる家族。それも笑顔いっぱいに。
喜美子が一大決心を告げるのが昼で、居酒屋は夜って?
一方の父・常治(北村一輝)は。とその前に、一応気が付いたから書いておく。主題歌明けの喜美子たちのシーンでは外は明るい時間帯だったのに、そのあとに直結した常治と深野が呑んでいる居酒屋は障子やガラス戸から日が差し込んでいないから夜。と言うか、前回の終盤では、喜美子が家族に一大決心を告げるのは昼間で、その夜の出来事のように居酒屋が編集されていた。
録画を観なおしても居酒屋の店先の提灯には灯りが灯っているし、明らかに夜で「つづく」になった。これ、翌日って見るの?きっと、どっちも撮影しちゃったあとに、居酒屋のシーンを割ったんだと思う。想像するに、喜美子の一大決心のシーンが良かったから切り刻めなかったから、居酒屋のシーンを2分割にせざるを得なかった…のだと思う。
まあ、こう言うことは見て見ぬふりしておくのが、紳士的かも知れない。とにかく、飲んだくれの常治も、喜美子には一定の評価をしていることが分かったのだから良しとしよう…
常治が喜美子を許す展開も、実にアグレッシブ!
6分過ぎ、まあ好意的に解釈すれば、一大決心と居酒屋の翌朝だ。意外にも、常治が絵付け修業をするのを「丸熊陶業やないとあかんのや!」と喜美子に叫んだ。
常治「やるんやったら 遊びでやったらあかん。本気でやらんと」
本当に意外だ。こう言う展開が「ドラマ自体がアグレッシブ(攻撃的、積極的)」と言う理屈に繋がるのだ。
"修業に於ける緩急"の大切さをドラマの緩急と重ねた!
8分過ぎには、今度は丸熊陶業の絵付け室。深野に三番弟子にして貰えるように頼む喜美子。
そして、これまた意外な程にあっさりと九番弟子の「キュウちゃん」になって、深野に新聞紙と筆を渡され、早速、最初の修業である「一本の線を描く」が始まるのが、10分。でも、11分には深野の絵柄の見本を真似る模写の練習に移って、このままトントン拍子に練習が進むかと思いきや、この深野の台詞で一時停止。
深野「近道はないねん。あってもな 近道はお勧めせえへん」
と、深野の絵の模写から外れて、葉のついたミカンのスケッチに取り掛かる。こう言うのは、勉強や練習にも当て嵌まること。1つの道だけをやっていると、それに凝り固まってしまう。だから、ちょっと脇道に逸れることで本道がきっちりと見えて来る…ってことが。
本作は、そう言う “修業に於ける緩急” の大切さを、ドラマの展開での緩急を使って、巧みにシリアスとコミカルを混ぜて、真面目に丁寧に描くとは! その上、「草間流柔道」まで持ち出して、朝ドラを最初から観ている視聴者に “観続ける醍醐味” まで与えたのはお見事だ。
正確に「あれから●年●か月が経ちました」とした方が…
そして、14分に「そして 月日は流れ…」て、時代は昭和34年(1959)へ。何と、喜美子が21歳に。正確な年月は分からないが、3年近くは時間経過したようだ。予告編を見る限り、一番下の妹・百合子役が中学生に見える福田麻由子さんが演じているし、喜美子の衣装もだいぶ変わっているから、恐らく3年前後は時間経過して終わった。
出来れば、正確に「あれから●年●か月が経ちました」としてくれると良いのだが、本作は、これも意外なのだが「何月なのか?」を殆ど描かない。理由は不明だが、書いた方が分かり易くて良いと思う。
約3年間の修行の初期が描かれなかったのを、どう捉えるか?
さて。今回の放送で、物議を醸し出しそうなのが、約3年間の修行の初期段階が描かれなかったのを、どう捉えるかだと思う。恐らく、視聴者は、「見たかったものが見られなくて残念…派」と「描く必要のないものは省略して当然!派」に分かれると思う。皆さんは、どっち派だろうか?
私は、後者。意外? 意外でも何でもない。前述の通り、喜美子は、とても “生命力(バイタリティ)のあるヒロイン” であり、 “筋を通す(ブレない)ヒロイン” であり、 “問題解決能力(ブレイクスルー)に長けたヒロイン” なのだ。そのことは、大阪の荒木荘の3年間で、きっちり&丁寧に描かれた。
キュウちゃんの"この先"を描くために繰り返しを避けたと思う
そして、いつぞやにも書いたが、喜美子が先輩女中の大久保の背中を見て師のように仰いで、一人前の女中に成長したのと、この度の深野を師匠にして一人前になるのは、目指すものも表面的にも違いはあれど、骨格部分は同じ。だから、繰り返し描く必要はないと思う。
だって、喜美子は言われた通りに真面目に修業をしながら、食堂の仕事も自宅の家事もやるのは分かっているのだから。もちろん、トントン拍子も箇条書きも困るが、描くべきことのために “無駄を描かず話を先に進める” のを優先したと思う。だって、予告編ににあった深野の「キュウちゃんは… この先 どうするつもりや?」を描くのだから…
あとがき
先週の土日に亡き母の通夜と告別式の喪主をやり、この土日はお客様の結婚披露宴の仕事で、因みに来週は義父の米寿祝いと、何だか慌ただしい週末が続きます。でもって、ここへ来て『スカーレット』も慌ただしくなりましたね。私も、最後の20秒で、一気に3年前後も時間経過したのは驚きでした。
でも、やはり本作は「ドラマ自体がアグレッシブ(攻撃的、積極的)」なのですよ。だから、納得しました。とにかく、クドい程に丁寧に描写しているのに、テンポが良くて、分かり易いのが、実に朝ドラに合っていると思います。まあ、また次週で演出家が交代すると、今週の週明けのような不安は出て来る可能性は無きにしも非ずですが…
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